14、それは誰の思惑か
ゴーティエ伯爵家、リリアーヌ嬢。
ラグランジュ辺境伯家、ルネ嬢。
ニルド侯爵家、キャロライン嬢。
グリーズ公爵家、アナベル嬢。
そして、候補筆頭のミュロス公爵家、ソフィア嬢。
彼女のことだけははっきり覚えている。
黒い髪に少し日に焼けた肌を持つ私とは反対で、髪も肌も白く美しい女。
よく比較もされたけれど、覚えている理由は……彼女が第二妃となった者だからだ。
私が嫉妬に狂って殺そうとした……陛下が寵愛する第二妃。
勿論、そんなことはしていないが、誰も信じなかった。
度々、遠目から二人の仲睦まじい姿を見たのは確かだけれど……嫉妬はしていない。
美しい二人が並ぶ姿に感嘆はしたが。良い意味で。
あの方が寵愛するのも理解出来る程に美しく愛らしい女性と記憶しているが、あんな形で罪を着せられたら、少し疑う気持ちは出てくる。
どれだけ愛されていようと第二妃は所詮……第二妃でしかない。立場が違い過ぎる。王妃の持つ権限に比べたら第二妃の権限は無いに等しい。
彼女ではなくとも、周りの者が私を塡めたのかもしれない。
いや、王の子を死なせるという大罪もある。
そこまでするだろうか?
彼女の為と考えた方が自然だとするなら、王の子は本当に存在していたのか。
いない者を殺したと言った可能性は?
宮廷医師の、私への態度の悪さを考えたら、懐妊が虚偽であっても可笑しくはない。
そうなれば、彼女も知っていた可能性も出てくる。
現在思い返すと、疑える要素は幾らでもある。
城に私の味方はいなかったのだから、どうすることも出来なかったが、悔しさが込み上げる。
そもそもの話、誰もがソフィア嬢が王妃となると思っていた。
家柄は良く、魔法にも優れ、あの方と深い仲にある幼馴染みだ。
他の家の娘達は形式的に候補として、そこにいただけ。
にも関わらず、王妃となったのは、私。
当時の私は浅はかで、深くは考えてはいなかったが、可笑しいことだった。どれだけ努力をしようと彼女より優れた要素はないのだから。
何か含みがあったのだろう。
でなければ、あの方が寵愛するソフィア嬢が王妃になるのが自然なこと。
わざわざ私を王妃に置き、ソフィア嬢を第二妃としたのは何故か。
あの方の思惑なのか、それとも……。
そういえば、あの日……あの、初夜の時に陛下は何と言っていた?
腹痛で余裕も無く、聞き流してしまった言葉。
死を体験したことで、飛んでしまった記憶だけではない。
かつての私の生き方は、あまりに浅はか過ぎた。
変えていかなればならない。
私らしさを捨てずに。
【危ない魔法使い】