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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
五章
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19、虚しい夜(side.G)


“扉”が使えなくなったことで支援や新しい仕組みが必要となり、指示を出す為に王都を離れ、各所を行き来する日々が数ヵ月続いていた。


腹立たしいことに、始めに王都を空けた際に王太后は「忙しい王に代わって」という名目で勝手な発表をした。私の新たな婚約者をニルド侯爵家の令嬢──キャロライン=ニルドとした、と。

王都を空ければ何かはするとは思ったけど、新しい婚約者の発表とは……。


しかも、ニルド家の娘。確か、歳は私より一つ上だったか。先代の大魔導の主の孫で、魔力に秀でていると自負する家に生まれたからか、高慢なところがある。これまでは王太后に可愛がられ聖女と持て囃されていたソフィアがいたことと、たった数年で子供に大魔導の主の座を奪われた不名誉があった為にニルド家は鳴りを潜めてはいたが、ミュロスが落ち目となった今貴族筆頭に返り咲こうという魂胆なのだろう。王太后が一度は見限ったニルド家にもう一度チャンスを与えたのだから、自分達の権威を守る為に汚い手は幾らでも使って来る。汚いことをやっている奴らの権威なんて塵屑以下でしかないけど。


何度か王都に返ったが、キャロライン=ニルドは太々しくも王妃面をして城にのさばっていた。王太后もそれを許していて、頭の痛いことだよ。

勿論、王太后には抗議した。既に公的に発表したものを撤回は出来ないと言われた。

まぁ、そう言うだろうとは思っていたから、それはそれで仕方がない。王家が簡単に意見を変えていたら、信頼性が失くなるからね。

でも、「これからはキャロルを愛でなさい」と当然の様に言って来て、全部消し炭にしたくなった。後ろに控えていたニュイテトワレの刺さる様な視線に気付いて我慢したけど。ニュイテトワレがいてくれて良かったよ。王都事燃やして、危うくディナの帰るところを失くすところだった。


王太后が余計なことを言うから、キャロライン=ニルドは調子に乗って私の腕に纏わり付こうとしてきた。触れられる前にニュイテトワレが止めた。苛立っていたから、もし触れられていたら燃やしていたね。私に触れて良いのはディナだけ。だから、ニュイテトワレは私を庇ったのではなく、無駄な犠牲を出さない様に私の邪魔をしたんだ。優秀で……困る。

その意図に気付かないキャロライン=ニルドは恩人であるニュイテトワレに文句を言っていた。

しかも、私の後を付いて来る。鬱陶しいことこの上無い。

夜は当然という表情で寝室にも入って来ようとするし、本当に燃やしちゃ駄目かな?見せしめ一人作れば、安易に婚約者になりたいなんて言い出さないと思うんだよね。暗君と呼ばれても良いよ。

後でニュイテトワレに相談したら、「嫌われますよ」と言われた。誰に、と言われなくても解る。ディナに、だ。それは困るから、我慢する。

本当に王都に留まる時間は忍耐の時間だった。

キャロライン=ニルドもなかなか手強く、毎晩寝室にやって来た。婚姻だけは絶対にしないけど、婚約者になったばかりとはいえ婚姻するには十分な年齢に達している。私は十七になるし、キャロライン=ニルドは十八だ。

向こうにしてみれば婚姻は確定だから、夜を共にしても問題はないという考えらしい。いや、婚姻をより確かなものにする為にさっさと既成事実を作りたいのか。

先王までの王妃や王配は国の外で見初めた奴隷や賊徒の類いだ。処女性を問うことはして来なかった。

だが、王太后は元は他国の王女。王族や貴族の常識があの人の常識だ。

祖国も、他の多くの国々も少なくとも王族に嫁ぐ者の処女性は問われてきた。…………早い話、私にさっさとキャロライン=ニルドを抱かせて妃にさせたいのだ。未婚且つ高位の令嬢の処女を奪ったとなれば、娶らない訳にはいかなくなる。更に言えば、子を──王子でも授かれば奴らの立場は安泰になる、と思っている。私との子では、()()()は生まれないかもしれないのに。……私の願望だけど。

ソフィアはまだ若かったから、流石に周りも強行手段には出なかったが、キャロライン=ニルドは十分閨をこなせると判断されたのだろう。露骨に誘って来たし、食事に媚薬まで盛られた。

只の媚薬じゃあ、ペンダントの効果も意味がない。ニュイテトワレには「媚薬入りの秘薬でも……媚薬の効果は消せませんよ」と淡々と告げられ、部屋に一人放置された。ディナ以外抱く気はないから、そこは良いんだけどね。もう少し気遣ってほしい……!


ディナを想って、一人で慰めたよ。

本当なら、結婚を済ませて、彼女と過ごしていただろう夜なのにね。









【危ない魔法使い】






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