33話 合同軍議
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「国家連邦政府宇宙軍第6艦隊の皆さん。ようこそお越しくださいました」
会場であるベトナム第1艦隊航宙母艦に到着した第6艦隊参謀府を迎え案内してくれたのは、アオザイ姿の綺麗な女性秘書官だった。
思わず笹本もうっとりさせられる。だって第6の秘書官の各務原は普通な顔立ちだから。
思わず顔を赤らめる笹本に小島やらアリーナからチャチャが入る。小島は笹本の足を脛を蹴り続けている。これはチャチャではない。嫉妬だ。
一方ベトナム宇宙軍は各女性陣に完全に見惚れている。これはちょっと歳が行った大場霰さんも何故かカレシが居ないナオミ・フィッシュバーンも例外ではない。今回は相手の階級差に呑まれまいと騎兵隊長という唯一のエンブレム持ちを呼び込み、また参謀府以外で准将になった人物にも意見を言わなくていいから来て欲しいと懇願し、なんとか階級で主導権を取られまいとしていたが、何だか地味な所からマウントの取り合いが発生してしまったようだ。
会議室ではグェン提督が代表して挨拶を行ったが、人をボトムアップしたり調整するのが上手いだけのグェン提督は、ベトナムの危機にも一切動じず、戦略的な事を笹本達参謀に任せている。
笹本はむしろグェン提督を尊敬すらした。自分の事をよく知っている。だから分に相応しない事は(堂々と)しないでいるのだ。
会議はベトナム宇宙軍のスタイルに従い着座した状態で始まった。ベトナム軍から状況が説明されたが、笹本達はそれを掴むことが出来なかった。無理もない。状況説明に色違いのトルコの旗みたいな図形を見せられているのだから。
「あの、その図形は何ですか?」
思わず笹本が聞くと答えられた。
「第2惑星を子午線で切った最近の断面図ですが」
第6艦隊側がざわつく。
「あの、その冗談で出来たような中に2艦隊」
「すっぽり入っています」
「昔からこんな形を?」
「いいえ。公国がやりました」
そのざわざわを黙って見ていたサントスがおもむろに口を開いた。
「まだ作戦は見えませんが、我々は必ず勝利します。だってカナメはいつも言っているじゃないか」
小島の方をちらりと見たサントス。小島もピンと来たようだ。
「「古来より陥ちなかった要塞はない!」」
思わず二人の声がハモッた。
この言葉は西暦年間にアメリカ軍特殊部隊から歴史作家に転身した人物が小説に残した言葉だ。笹本が何度か呟いたその言葉を、どうした事か戦略の立て方が正反対であるこの二人がハモれるほどに覚えているのは驚きだった。
「その通りだと思うよ。ビザンティウム、旅順、セバストポリ。ベトナムの皆さんも歴史書を紐解けば経験は有るはずですよね。落ちなかった要塞は無かったと」
笹本も二人を援護する。しかしアイデアは全くなかった。はったりでもこの際やるしかない。
「今まで行った作戦ですが……」
ベトナム軍からも情報を仕入れる。
その内容は概ね5つになる。
①強行突入。これは1回やって失敗したそうだ。全ての艦船が開口部に向かっている為、辿り着く前に斉射を大量に食らい、全滅したそうだ。
②閉塞戦。3回行って全て失敗したようである。老朽艦などをリモートで突入させ、衛星の開口部を物理的に封鎖する作戦に出たが、徹底した砲撃に沈黙したそうだ。現在は老朽艦の方が不足しだしたらしい。
③放置。やってみた所、むしろ一部の艦船が出てきて通商破壊やチャフ散布、通信妨害をしてきてベトナムの宇宙間輸送が一時麻痺してしまい、無視も出来ない状況なのだそうだ。
④コロニー、小惑星落とし。穴に向けてコロニーや小惑星を落っことすのだが、歩兵に使っているライトバリアをまさかの開口部防御に採用し、前面の防備が抜群だったそうだ。恐ろしく電力を消費するが、それを行うにはウルシュラ曰く核融合発電を開口部内に58個焚くか、地球規模の大きさの惑星を丸々1個太陽光発電機で埋め尽くし、それを超電導ケーブルで繋げば出来ると言っている。
⑤包囲。結局現状ここに落ち着いているらしい。お互い視線は届いても主砲が届かない位置から監視している状況だ。
その中では実は衝撃的な事が行われていた。
「内部には工廠もあり、我が軍が閉塞戦に使用した老朽艦を鋳つぶして駆逐艦を3隻建造しています」
さすがにみんなもこれの攻略に嫌気がさしてくる。まさか中で生産活動までしているとなれば、手足を出す事が危険極まりない。
「なあケンジ、こいつらは多分穴ぼこしか警戒してないよな」
アリーナがにこやかに言って寄越す。
「だったら反対側から穴掘って攻め入ったら簡単だ」
この意見にはベトナム宇宙軍もざわついた。あまりにあり得ない話だからだ。
笹本も内心『このガキンチョ何言ってくれてんだよ!』とは思ったが、とっさに閃いた。
「良いよ。意見やアイデアは出し尽くすまで出して行こう」
アリーナが立ち上がって発言したのを皮切りに、第6艦隊の面々が立ち上がり始めた。
「笹本君、今回は無線傍受を試してみたいんだ。構わないかい?」
「ササモト。籠城は思いの外心理的圧迫感が有るらしいわ。その辺りから敵を切り崩せないかしら?」
「誘い出しからのかっぱらった艦艇のねじ込みなんか出来るかも知れないよ」
「こっそりペスト菌とかの細菌兵器をですね」
突如立ち上がり、実行の可不可を問わず飛び出すその姿にベトナム宇宙軍の面々が感心してくれている。
「アリーナ、その案は陽動として採用します。彼奴らが飛び出してくれたら嬉しいし、揚陸成功は相手にイライラくらい与えるでしょう。いっそド派手に賑やかに掘削してくれないか?予算は掘削機レンタル以外に1千万出そう」
「一千万?半額でお願いします」と各務原若葉さん。
「予算は私の所からも回すよ。傍受なんて一人で出来るし」と、ウルシュラ。
「ウルシュラ、傍受ではなく無線ジャックなんて出来ない?」
「良いのか?精魂尽きるまでやってやるぞ。ククククク」
「ユボーさんの心理的圧迫感だけど、投降要請や脅迫文に挑発文。その他イライラや絶望感ある文面任せて良いですか?並の煽りで良いですよ」
「ちょっと友人にも頼ってやってみるわ。友人の人事、頼んだわよ」
「承知しました。叢雲さん……籠城の時は相手に病気を発生させるために糞便や鼠なんか投石機で送ったんだけどさぁ」
「いえ。不採用なのは構いません。ただ惑星ティック・クワン・ドックにはなかなか斬新な宇宙外来生物が居るみたいなので。真空上で増える生き物でしたよね」
「ああティック・クワン・ドックオオトカゲですか?あれが?」
「あの穴に送り込みましょう。増えて身動きが取れなくなればしめたものです」
「よし。検討してみよう。誘い出しはアリーナがやってくれるかもしれないので、彼奴らを寝させない為に定期的に穴に何か攻撃してみましょう。変化くらいは有るでしょう。他に意見は有りませんか?」
その声にベトナム宇宙軍の参謀が手を挙げ発言した。
「そちらはいつもそのような活気ある軍議をしていらっしゃるのですか?これは学ぶところが多いです」
「いつもに比べて穏やかで、みんな少しだけ緊張気味です。今度見に来てみませんか?」
「参考には出来ても体質を改善するのには時間がかかりそうですね。特にあの少女さんなんか素晴らしいです。敢えて会議の煮詰まりを打破しに行くあの姿勢。感服です」
と言ってアリーナに手を合わせた。笹本も手を合わせたい気持ちでいっぱいだった。
ごめんアリーナ。きみ、意外と高評価なんだな。ガキンチョよばわりしてごめんね。と。
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昨日一瞬だけ宇宙、SF部門で100位に入っていました。皆様のお陰です。ありがとうございます
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