30話 パラメスワラ揚陸作戦
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笹本達の第6艦隊は現在待機しか指令が来ていない。これは残党がまだ居るのかもしれないし、他の軍団が遅ればせながらの増援に回る可能性も有るからだ。笹本とグェン提督は日中に充分仕事をこなし、夜は大概どこかの宴会やサークル活動を視察して回る単調な日々を過ごしていた。
このように戦闘が無い時、宇宙軍は狭いところに押し込まれたままな上、退屈なのでサークル活動は大いに推奨されている。
その様な期間と言うのは過ぎ去るのは早いものだ。基地で追加の研修生を受け入れながら基地としての運営をしている教官から連絡が来た。
「第6艦隊に指令です。公国が惑星パラメスワラに降り立って採鉱場を建設しようとしているようです。相手の人数などは……」
要約すると技術大佐以下200名とAI歩兵5000が、公国民500人と共に資源採取用コロニーを作っているようなので片付けてきて欲しいという事だった。
「これ民間人がいますので」
「武器は出来る限り実弾ではない方が良いですね」
「相手には戦車みたいな車輛は有るのかしら?居ないなら騎兵が一番ね」
「かーちゃん以外騎兵なんてできないじゃないか」
「私と雄哉は捕縛係ね。仕方ないわ」
「あらそう?じゃあ私が先鋒隊頂くわね。あなたたち徒歩でしっかり制圧なさい」
血の気が多いのだろうか。揚陸の話を大場一家に話したら早くもポジションの取り合いになっている。この話にもう一人首を突っ込んできたのは小島鼎だ。
「一豊号Mk-Ⅱの出番だよね?出番だよね?」
前回の改装以来見せ場に納得いかない小島が小躍りしながら出番待ちをしている。前回一回衝角戦をしたのに今一つ乗っていなかったらしい。
「実際相手の車両は建設機械程度だね。破壊したいならバズーカー持ってけば十分かな。モンゴル原始共産主義国、ナイマン共和国、トマット国、ウイグル首長国連邦の有志も70人程一緒に騎兵やるから車輛破壊を任せてみては?」
メンテナンス担当なのに何故かメカの操作に詳しいウルシュラ・キタがスパイアイというメカを操作し、採取場の特定まで済ませている。挙句の果てに人員の募集までやっている。
「まあ素敵。モンゴル祭りみたいじゃない」
これで先鋒隊を言いだした大場霰が俄然乗り気になった。
「どうしてこうなっちゃったのかねぇ。キミを見てても日本人ってそんなに血の気多くないじゃないか」
ウルシュラの問いかけに笹本は何も答えられなかった。
ほんの少し手際とAI騎馬の操作の練習をして2日後、揚陸作戦は開始された。
本来揚陸前に徹底した艦砲射撃により抵抗に必要な施設や陣地、武装を破壊するのが定石なのだが、今回は相手方に民間人が多数存在することから見送られている。また、一度降伏勧告を行った所、民間人を質種に防衛強化を図り始めた。なかなか最悪な状況から始まってしまった。
それは今まで見た事も無い多国籍軍の編成だった。小島の座乗艦以外の艦艇は何一つ抵抗を受けないまま、採取場2キロ手前に降り立った。現地の気温32℃、天候曇天、風は大風。木星型惑星らしい気候ではあるが、本来は目の前に出した指さえ見えない程暗い惑星だ。人間の士官達は暗視ゴーグルを装着している。
大地にAI騎馬で降り立つ大場霰さんの颯爽たる様がハイライトの一面に来るのも頷ける。その後続はモンゴル原始共産主義共和国、ナイマン共和国、トマット国、ウイグル首長国連邦の騎兵部隊。それぞれ手にはボルトアクション式のスナイパーライフルを麻酔銃に改造した物を携えている。
他の艦からは大場霙さんが相変わらずの薙刀で薙刀サークルの腕利きを15人。更にマレーシア出身の女性8人と共に整列を始めている。騎兵は暴動鎮圧などではこの宇宙開発歴年間に於いても有効だ。しかし薙刀歩兵が有効かどうかは笹本にも効果は分からなかった。しかし霙は霰の弓と馬にリーチを求めて薙刀を振るう事にした子だ。何か策がるのだろうと確信していた。
さらに別の揚陸艦から降りてきたのは大場雄哉君と銃剣道サークルの有志。更にマレーシア出身の男性9人だ。霙と雄哉は騎兵の脇に整列し合図を待つ。
揚陸隊の隊長を務める母親霰が口上を述べる。
「エンブレムが有ろうと無かろうと、敵を屠る作業に何ら変わる所が有るものか。全軍、ゆっくり前へ進め!」
騎兵と歩兵の大きな違いはその足の速さだ。2キロ先から突撃してしまうとその足の差は1.2キロの距離となって現れる。ここはゆっくり前進が正解だ。
敵の野営陣地500メートル手前で全軍が一旦停止する。普通の兵員が持っているだろうアサルトライフルや無反動銃では大幅に命中精度が落ちる反面、騎兵が持っているスナイパーライフルなら射程にギリギリ入っている絶妙な位置だ。ここで大場道直さんが霰さんの前に出て峰打ちに刀を構える。
敵の将兵だってバカではない。多数のバリケードや塹壕を掘り、早くもトラックなどを前に出している。車で引き殺してしまうつもりだ。
「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそはサムライダディの妻大場霰。見事討ち果たせると思わんものは前に出よ」
堂々たる口上に公国側の返答はこすからかった。こちらがスナイパーライフルが有るなら向こうにも有るに決まっている。霰に向けて2発の銃声が聞こえた。それを忠道が刀で弾き、霰が狙撃してきたうちの一人を狙撃した。
「あらあなた。毎度毎度よく銃弾を弾き返せたものね」
「暗視ゴーグルは普段より見えやすいからな」
各騎兵が次々狙撃銃で頭が出ている敵兵を狙い撃つ。バリケードは有ってもどうしても頭位出さなくては接近しているかどうかが掴めない。当初は何個か有った壁から飛び出していた双眼鏡は真っ先に狙撃されて破壊された。頭を出すとスナイパーライフルの餌食になってそこら辺に意識を失って転がされてしまう。出ている頭が無くなった時大場霰の号令が奔る。
「突進!」
この号令に全ての兵員が反応して突撃を開始する。騎兵部隊が先頭になり、各歩兵部隊はその後に着いて行く形だ。この動きが分からない敵ではない。
少し後方に置かれた重機関銃を操作しようと何人か出てきたが、それらはあっという間にスナイパーライフルに仕留められた。各国の騎兵隊にせよ霰にせよ。そして歩兵に混ざった狙撃部隊にせよ、射撃が恐ろしい程上手だった。
軽くバリケードを飛び越えて突破した騎兵隊がバリケード内の敵兵やAI歩兵に襲い掛かる。この宇宙開発世紀に於いても騎兵は存在する。今回のようなケースは本来稀で、民衆暴動の鎮圧に登場すると有効なのだが、通常の戦場で活躍してしまっているのはちょっとこの戦場がおかしいからだ。
「ハハ。敵は大砲も迫撃砲も持っていない。どうしてなんだ?」
ハイライトで観戦していたナオミ・フィッシュバーン第1戦艦船団長が笹本に聞いてきた。
「分かりません。しかし技術士官ばかりと言う話なので、そういった重火器なんて持ってないのかも知れません」
後から調べてみるとそれらは武器庫の中に沢山あった。しかし銃の扱いさえ満足に出来ていない状況の技術士官達は、銃を探すので精いっぱいであり、それらについては有る事すら知らなかったという事だ。
騎兵に後方をかき回され、AI兵には容赦ない実弾が飛び着々と敵方が不利な状況になっている中、遂にバリケードを歩兵が飛び越えた。
「やあ皆さん。痛い目を見る時間ですよ」
そこに居るのは大場雄哉だ。AK-47をひょいと構え早速3人程サラリと仕留めてしまう。今回銃剣には電磁警棒を取り付けており、民間人に対する備えも万全だ。
「大場霙、推参!」
敵地に降り立った霙も薙刀を振りかざし敵の無力化を始める。薙刀は峰打ちに構えてこちらも民間人に配慮している。
敵方から恐れられているのは実の所雄哉の方だ。カノープスの一戦では指揮艦に揚陸し、185人の兵員に打撲骨折などの実害を与えているからだ。
「殴り銃士だ逃げろ」
雄哉は公国ではそのように呼ばれているらしい。
制圧戦は佳境に向かっていく。この後如何なる抵抗が有るのかもまだ分からない。
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