神社へ向かう道中
餌を待つ鯉のようにぽかんと口を開けていると、眼前の細身のわりにしかるべき部分は肉付きの良い女子がケタケタと笑う。
「あっはっはっ。相変わらず間抜け面ですね。」
初対面の人間に対してなんと失礼なと思ったがどうやら違うらしい。
「従妹に迎えに来てもらえないと神社にも行けないなんていい加減しっかりしてくださいよ。」
…従妹?中年男性と少女は似ても似つかないがどうやら親戚関係にあるらしい。
妙なことに頭がフル回転で働くわりに自分自身の現状を誰かに説明する言葉が思い浮かばない。
「もういいからいい加減神社に行きますよ。」
突然、腕を引っ張られ強引に部屋から連れ出された。
どうやら今までいた部屋は2階にあるらしく、階段を降りるよう促される。
待てよ。私ちゃんと服を着ていたか?と悩んでる間に外に連れ出されてしまった。
明るいところで落ち着いて見ると少女はえらく露出度が高い服を着ていてなぜだか目をそらしてしまう。
「何恥ずかしがってんですか?じろじろ見るならお金払ってくださいね。」
とどぎついジョークをニコリともせずに言う。
「あーしは…」
と言いかけて中年男性が突然自分は女子中学生だと主張した際に起こりうる悲劇がエンジン全開のアルファロメオ並みのスピードで頭の中をめぐり、二の句が留まった。
怪訝な顔でこちらをひと睨みした後、すたすたと先を歩く彼女に仕方なくついていく。
5分ほど歩くと梨を鳥居の上に飾っている奇妙な神社に着いた。
「さあ神主さんに挨拶しましょ。」
と彼女がニヤニヤしながら言う。
なぜニヤついているのか疑問に思ったが言われるままついていくしかない。
「ソンナさーん」
呼ばれて出てきた神主を見て私は言葉を失った。
そこにいたのは元の世界の私にうり二つの女性だったのだ。