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6. 悪役令嬢は次のステップに進みたいようです

 先日のお茶会以降、メリアとの仲は確実に縮まったと思う。


 元々アリシアとメリアの関係は、レイネスを挟んでのものだった。

 婚約者と浮気相手。

 そんな二人が仲良くなれるはずもなかった。


 しかし、アリシアが婚約破棄されたことによって、その関係が崩れた。

 それぞれの立場が二人の仲を阻んでいたが、もうそれはない。

 そうなると、後は互いの気持ちだけである。


 メリアからしたら、婚約破棄をしたからといって、すぐにアリシアに対する苦手意識が変わることはないだろう。


 だがアリシアは違う。

 メリアへの愛に目覚めたアリシアにとって、メリアは憎むべき相手ではない。


 お茶会の間も、公爵令嬢として、最低限の振る舞いは維持していたものの、全身から溢れでる親愛の情は、到底隠しきれるものではなかった。


 そしてそれは、アリシアと二人きりでお茶会をしたメリアにも伝わったことだろう。

 小言ばかり言われていたという立場が、メリアの中に、アリシアに対する苦手意識を形成していた。

 だが、実際に同じ時を共有し、言葉を交わすことで、本当はアリシアが話しやすい相手だと感じたのかもしれない。


 家格の差があるので、砕けた関係とまではいかないが、数日もすると、メリアは緊張せずに挨拶をしてくれるようになった。

 初めてメリアから挨拶をされた日は、あまりの衝撃に気を失いそうになったものだ。


「おはようございます、アリシア様」


「おはようございます、メリアさん」


 ああ、今日も素晴らしい一日が始まる。

 朝から惚けているアリシア。

 だが、思考の一部は、視界の隅でこちらに鋭い視線を向けている人物へと割かれていた。


 アリシアたちがそのまま雑談に花を咲かせようというところで、その人物がいつものように横槍を入れる。


「メリア、少しいいか」


「あっ、殿下。

 アリシア様、申し訳ありません」


「いえ、気になさらないで」


 メリアはペコリと頭を下げると、レイネスの元へと向かっていった。

 その様子を目で追うと、自然とレイネスと視線が交わる。


 婚約破棄をされたとはいえ、相手はこの国の第一王子だ。

 失礼のないよう会釈をしたが、レイネスは鼻を鳴らすと、すぐにアリシアから視線を逸らした。

 このところメリアとアリシアの仲が良いことが気に入らないのだろうか。

 たとえそうだとしても、この態度はいかがなものかと思うが。


「マジラプ」では、メリアの視点で物語が紡がれる。

 そのため、方向性の違いこそあれ、攻略キャラたちは皆、善良な性格をしている。

 レイネスも口調こそ王族故のぶっきらぼうな感じはあるが、基本的に優しい人物として描かれていた。


 しかし、こうしてアリシアとしてレイネスを見ると、その感想はガラリと変わる。

 レイネスのために人生を捧げてきたというのに、突然の婚約破棄。

 会釈をしても返してくれない。

 そして、目の前で堂々と他の女性との仲を深めようとする。


 アリシアからしたらたまったものではないだろう。

 乱心くらいするというものだ。


 もし、アリシアがメリアではなく、レイネス推しだったとしたら、原作通りにメリアをいじめていたかもしれない。

 そう考えると、背中が冷たくなる。


 だが、レイネス推しだろうとメリア推しだろうと、本質は変わらなかった気もする。

 結局のところ、誰かと結ばれるためには、誰かと闘わなければならないのだから。


 メリアと結ばれるために、レイネスと闘う。

 レイネスだけではない。

 他の攻略キャラも同様だ。

 誰にもメリアを渡すわけにはいかない。


 アリシアとして、しばらくこの世界を観察していたが、今のところメリアへの好感度が高いのはレイネスだけに思える。

 勿論、ゲームのように数値として好感度が見えるわけではないので、確実ではないが、メリアへ積極的に声をかけてくるのはレイネスくらいのものだ。

 当面の要注意人物はレイネスだけだろう。


 このところ、教室でアリシアがメリアとの会話という安らぎの時間を過ごそうとすると、必ずレイネスが邪魔をしてくる。

 文句の一つでもいってやりたいところだが、相手は腐っても第一王子。

 浅慮な行動は、己の身を滅ぼしかねない。


 仕方がないので、断腸の思いで引き下がっているのだが、いつまでも遠慮しているわけにはいかない。

 もしこのままメリアがレイネスエンドを迎えでもしたら目も当てられない。


 現状に満足せず、次なる行動に移行する必要がありそうだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、私はレインズ様がライバルになった方法が好きです。 決まり文句かもしれませんが、このような乙女ゲームストーリーが役割を逆転させるとき、私はそれが好きです。 ガンバッテアリシアさん!
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