1. 魔王討伐と過去
初めまして、ごるたと申します。
まだまだ未熟な身では御座いますが、温かい目で見守って頂けると有り難いです。
投稿頻度につきましては、1日1つ以上を目標に投稿してしていきたいと思います。
誤字や矛盾的、気付いたことなどがありましたら、コメント欄にお知らせくださると助かります。
「終わったな……」
ここは魔王城玉座の間。
そして玉座の前には1人の青年と、首が切れ落とされた魔王の姿があった。
青年は目の前の玉座に座ると、ため息を吐きながらゆっくりと上を向いた。
「ふぅー! 終わったぞリリス。
約束通り俺を地球に戻せ」
……
反応がない。
青年は王座の肘掛けを破壊し、思いっきり叫んだ。
バコォーン!
「おい、クソ女神」
すると目の前に光の渦が現れ、その光の渦の中から露出度の高い格好をした美女が現れた。
上半身には胸を隠す布が1枚と、ペンダント、ブレスレット、下半身には下着のようなパンツと腰蓑みたいな物がぶら下っているだけ。
「なんですかぁ〜そんな大声出してぇ〜せっかく気持ち良くお昼寝してたのにぃ。
ふわぁ〜」
女性は大きな欠伸をしながら、体を伸ばした。
(俺に魔王討伐を依頼しておきながら、自分は悠々と昼寝かよ。
いつかぶん殴ってやる。)
「あ、それとクソ女神じゃないですよぉー。
リ・リ・ス。女神リリスですよぉー」
女神は顔を近づけると眉間にシワを寄せながら、人差し指をチョンっと青年の鼻に当てた。
(あははは。よし、やろう。)
青年は満面の笑みでリリスの肩にそっと手を置いた。
そして「炎昇」と呟く。
すると、リリスの足元に魔法陣が浮かび上がり、そこから噴火するかのように炎が上へと立ち昇った。
「へっ? ちょっ、ちょっ、まっ、キ、キャャャャャャー」
リリスは一瞬にして炎に包まれた。
外からは一切姿を見ることはできない程の炎がリリスを包む。
暫くして、炎が消えるとそこには髪の毛をチリチリにし、体中墨だらけになった女神がへたり込んでいた。
「ゴホォ、ゴホォ。
うぅー、ひどいですぅーなんてことするんですかぁー。私じゃなきゃ死んでますよぉー」
そう、女神は死なない。不死の存在。
「うるさい! いいから俺を地球に戻せ。
お前の言った通り魔王を討伐したんだから」
「……え?」
女神は辺りを見回す。
ここは『魔王城王座の間』、人間社会の謁見の間に似た造りになっているが、威厳と高貴感を表すために派手な装飾が施された謁見の間とは違い、使われている色は黒と赤だけ。
王座と扉を繋ぐ赤い絨毯と大きな柱が数十本立っているだけの部屋。
そんな部屋だからこそ、頭のなくなった魔王を見つける事は容易なことだった。
「……えぇぇぇぇぇぇー! なんでなんで? なんで魔王が倒れてるんですかぁー?
まだ旅を初めてから数年しか経ってないでしょう。倒せないでしょう普通。
なんなんですか? 化物ですかあなた?」
リリスは目を見開き、さっき以上に顔を青年に近づけた。
(相変わらずウザいな。)
「あ? こいつが大したことなかっただけだろ? クソ弱かったぞ。」
そう言って大悟は、倒れている魔王を指差した。
「ってか、そんなことはどうでもいいから俺を約束通り早く地球に戻せよ。
俺は早く帰ってゲームの続きをやらなきゃいけないんだぁー」
◇◇◇
……時は遡ること17年前。
都心から少し外れた郊外にあるアパート。
1LDKでセキュリティーシステムがしっかり完備され、近くには駅、スーパー、病院、銀行、コンビニなどが揃っており、良い条件が揃ったアパートである。
そこの205号室に彼はいた。
彼の名前は佐藤大悟。
趣味はゲーム、読書、人間観察で、性格はめんどくさがり屋。
アパートで1人暮らしをしている23歳の大学4年生である。
実家から離れ、大学の近くで1人暮らしを始めた青年……であったが、今ではここが大悟の唯一の家となってしまった。
大悟の家族は2年前に交通事故で亡くし、実家も売り払ってしまっていた。
大悟は家族を失ったショックで大学にも行けず、引き篭もっていたが周りの助けもあり、なんとか立ち直ることが出来た。
そして、休学していた大学にも再び通い始めることが出来ていた。
大学4年生の夏、学生として最後の夏休み。
就職活動を終え、夏休みを満喫する人。
灼熱の日差しの中せっせと企業面接に向かう人。
大学院に進む人。
そんな大学4年生の夏。
大悟は部屋でクーラーをガンガンにかけながら1日中ゲームをしていた。
就職活動が終わったわけではなく、就活の準備も対策も一切行っていない。
では、なぜ大悟は1日中ゲームをしているのか?
それは大悟が、新薬の開発によって莫大な資金を得ていたからである。
大悟は生物学、薬学に関しては右に出る者はいない程の超天才であった。
彼は、多くの薬品を発明してきた。
病気は因果応報であり、必ず原因があってその結果(病気)が生み出されている。
生物学、薬学の天才の彼ならその原因を調べることは造作ないことであった。
原因を探り、その対策を考え、完璧な薬品を開発していったことで、大悟は莫大な特許料を得る権利を持っていた。
今まで、不治の病と言われてきた病気を治す事ができる。
そんな事が発表されれば世界から賞賛され、大注目を浴びる事ができる。
しかし、大悟は目立つことが嫌いであった。
そのため、その新薬の情報は全て大企業のヤマデラ製薬会社に売っていた。
ヤマデラ製薬会社には昔、大悟の父親が務めていた。
そして父親と同期の開発部部長の加藤さんとは、お互いの家族同士を含め交流が深かった。
加藤さんは家族を失った大悟をとても心配し、毎日のように電話を掛けてくれた。
失意のどん底から立ち直れたのも加藤家の存在がとても大きかった。
そんな加藤さんに高校3年の時に作った新薬について父親と俺は彼に相談しにいっていた。
その時に、彼は新薬の権利をヤマデラ薬品会社に売る話を持ちかけてきた。
もちろん双方のメリット、デメリットを提示して
大悟はその話に乗った。
大悟にとって新薬の扱いなど、どうでも良かった。
ただ、目立たずお金が手に入ればそれで良かった。
それに加藤さんの事は、家族と同じぐらい信用している。
こうして大悟は莫大な資金を手に入れ、毎日大好きなゲームだけをして過ごしていたのだった。