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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第4章 悲劇の寸法線
95/162

0-12 凶暴砲台、大暴走

ーー前回のあらすじーー


ミーシャが機関銃を握ったきっかけを作ったのはジョージだったそうだ。


 彼はヤムチャの狩りの成果に不満があったのか飛び道具を使うように勧めたが、自分の肌に合わないからと拒否する。


 すると、ここぞとばかりにスナイパーライフルの威力を見せつけ、ヤムチャはハンターから荷物持ちへと成り下がってしまった。


 とても楽しい鹿肉パーティをしたミーシャとシンタローは、肉を目当てに自分たちもハンターになろうと決意したのであった……。



 前にも言いましたが、人類は肉の前では抗うことが出来ない生き物のようです。

それがたとえ生きた肉だとしても……。(えっ??)


 人前で生きた動物にかぶりつくのは引かれるので止めた方がいいです。

近所の国では近隣で飼われているペットの犬を食べたりしているそうですが……。


 犬を食べることは何とも思わないですが……。

人のペットを食べるとなると、読者の皆さんは事前に飼い主の許可を得た方が良さそうです。

そして一週間後……。



 俺とミーシャはそれぞれスナイパーライフルを背負ってジョージとヤムチャに付き添われ、森の外にやって来た。




えっ?どうして次の日から行かなかったのかって?



 それはな、四頭分の鹿の肉を食べきるのに三日かかって、そこからヤムチャ以外は全員胃もたれがして、肉なんて見たくないって状況に陥ったんだよな……。


それでキヌタニ以外が胃もたれから復活したのが一週間後だったってわけだ。





 キヌタニは『もう何も食べたくないよ……。』って感じで二週間ほど晩飯に顔を出さなかったな。

きっと駄菓子屋で一人、胃薬でも飲んでいたんだろう。




「よーじ、じゃんじゃん狩りまくるわよ!!」


「ハーッハッハ!!我の力を思い知るがよい!!」




俺とミーシャは高らかにそう叫んだ。




「はぁ……本当に大丈夫なのかよ?」



いつもと変わらず両手にノコギリを持ったヤムチャは、不安しかないという表情を浮かべていた。




「まあ見てなって、ちゃんと一から教えるよ。二人とも、まずは銃の構え方だな……。」



と、俺たち二人はジョージのレクチャーを受けて銃の扱いを学んだわけだ。





「……とまあ、こんな感じだな。じゃあ二人とも、まずはあの大木目掛けて実際に撃ってみよう。」



ジョージは20mほど離れた大きめの木を指差した。




「ふん!!そんな近い的をどうやって外せと言うのだ!?」



俺は余裕ぶってそう答えた。



「近いように見えて意外と難しいんだぞ?よーく狙ってみな?」


「そんなこと言われずとも当ててやるぞ!……。」





パーン!!



俺の撃った弾は大木の幹のど真ん中を貫いた。



「……これくらい我からすれば当然だ!」


「おお、やるじゃねえかシンタロー!!お前実は射撃の才能があるんじゃねえのか??」



 これにはヤムチャも感心していたようだった。

まあ、本当に当たるかは分からなかったけどな。




「なかなかの腕前じゃないか!じゃあ次はミーシャちゃんだな、教えた通りにやってごらん?」


「まあ、シンタローに出来たんなら私にも出来るわよね?」



ミーシャは半端なく集中して大木に狙いを定めた。





パーン!!



「うーん……当たらなかったね。まあまあ、最初はこんなもんさ。」


「ふん!口ほどにもない奴め!!」




俺はバカにしたようにミーシャを見た。




「な、何よ!今のはたまたま外れただけだもん!」


「二人とも喧嘩してんじゃねえぞ。まあ、上手くなりたきゃ練習するこった……な……?」




 ヤムチャが戸惑っているような口調だったので三人とも奴の方を向いたら、ミーシャのほぼ真横に立っていたヤムチャの左手に握られているノコギリに銃弾が突き刺さっていた。




「うーん……これは……大丈夫なのかな……?」


「だ、大丈夫なわけがねえだろ……!!!止めとこうぜ??ミーシャ、てめえはそれ没収だ。」



ヤムチャは速やかにミーシャからライフルを取り上げた。



「え、えっ!?な、何で私だけそうなるのよ!」


「何でってなあ……むしろ何でこっちに弾が飛んできたのか聞きてえんだが……。」





結局、その日はミーシャを無理やり森に連れ戻してその次の日……。






「いきなりスナイパーライフルは難易度が高かったな。最初はハンドガンで練習しよう。」




 ミーシャはスナイパーライフルではなく小型のピストルに得物を変えて練習していた。

もちろんミーシャよりは誰も前に絶対出ないよう気を付けていたな。



「いいか絶対に銃は動かしちゃダメだぞ?狙いを定めたら動かすのは引き金を引く指だけだ。」



ジョージは後ろからミーシャの腕を押さえて構え方を覚えさせていた。



「そんなに言わなくたって分かるわよ!」



本当にジョージの話を聞いていたのか怪しいミーシャは、少しうざったそうに引き金を引いた。




ドーン!という音が辺り一体に響き渡った。




「命中して……ねえな。」



 この時は駄菓子屋から持ってきたダーツボードをぶら下げて的にし、10mくらいの近距離から練習していた。


あいにく……ダーツボードに穴は開かなかった。




「ふん、ノーコンめ!やっぱりきs……あいでっ!」



 俺はミーシャを煽ろうとしたが、空から降ってきた何かが俺の脳天を直撃してそれどころではなくなってしまった。



「うおっ!?な、何だあ!?!?」



どういうわけかヤムチャが大慌てで俺の方に駆け寄ってきて、俺の足元をまさぐり始めた。





「痛いぞ……ま、まさか悪魔の軍勢が丸腰の我を狙って襲撃を!?くっ、奴らどこから……。」


「いーや、こりゃ悪魔の仕業なんかじゃねえぞ。」



ヤムチャはそう言いながら腹に穴が開いた鳩の死骸を持ち上げた。




「うえっ!?な、何よそれー!?!?」



 ミーシャは衝撃のあまり後ろにひっくり返った。

もちろん、後ろでミーシャの腕を支えていたジョージを下敷きにしてな。




「いてて……何で血まみれの鳩が突然降ってきたんだ?」



「ジョージ、これを見ろや。……俺の言いてえこと分かるよな?」



ヤムチャはジョージに鳩の死骸を見せた。





「じゅ、銃創……み、ミーシャ、ちゃん……?」



 ジョージは恐ろしい物を見るように視線をゆっくりとミーシャに向けた。

もちろん意味の分かっていたヤムチャも同じだ。



「えっ??二人ともどうしたのよ???」


「分からんのか?二人とも貴様のノーコン具合に呆れているのだ!」




「いやシンタロー?そうなんだけどそうじゃねえんだって……。」





 とりあえずあの二日間でミーシャがどれだけ銃撃のセンスがないか発覚したので、よしだくんの協力まで借りてミーシャは練習することとなった。



「こんな感じか?」



「いや、もうちょっと腕を持ち上げた方がいいな。」





「……こうか?」



「少し重心が左に傾いてる気がするんだよなあ。」






「……これならどうだ?」



「うーん、よく分からないけど何か違うな。」





「これも違うのか……どうすればいいんだ?」






 鉄パイプとゴムベルトを使ってよしだくんがミーシャの狙撃姿勢を矯正する器具を作ったのだが、どう頑張っても正しい姿勢にならなかったんだ……。





「あーーもう!!身体中縛られて変な感じなんだけどっ!!て言うかっ、よく分からないけど何か違うって何よ!!」



 ミーシャはそれなりの時間、拘束されて操り人形のように手足を動かされていたから、我慢の限界が来ていたようだった。



「いや何か本当に……ミーシャちゃんの撃ち方って違和感しかないんだよ……。どうしてなんだろうな……。」



「理由は知らねえが言いてえことは分かる気がするんだよな。何かこう……初心者感の滲み出てるような姿勢っつーかよ。……まー、あれだ。」



ヤムチャはミーシャの肩にポンと手を置いた。



「銃が使えなくたって死ぬこたぁねえから安心しろ?」


「むしろ我らが被弾して死ぬかもしれん!今まで我の張った結界が無かったらどうなっていたことか!!」



俺はスナイパーライフルをバトンのごとくクルクルと回しながら得意気にそう言い放った。




「み、みんな酷いじゃない!!私を縛りあげた上に悪口ばかり浴びせるなんてっ!!」



ミーシャは半泣きになってその場から逃げ出そうとした。



「ちょっ!!この変なもの外してっ!!もう私は一人で練習するんだから!!」



手足を拘束されていたミーシャは抵抗して手に持っていたピストルを連射しまくった!!



「わあああっ!!みんな離れろっー!!!」



ショージがそう叫んだのを合図に全員一目散にミーシャから離れた。




「貴様ら、我に任せておけ!銃弾など結界一枚で止めてやろう!」




……一人、ミーシャの前に立ちはだかった俺を除いてな。




「おいっ!シンタロー!?てめえ死にてえのか!?!?」


「早く逃げろシンタロー!!」



ジョージは余裕ぶって結界を張り巡らしていた(つもりの)俺に向かって突進してきた。



「何だジョージ、人外の助けならいらんぞ!!」


「そんなこと言ってる場合じゃないんだよ!!」



ジョージは銃弾の嵐の中を駆け抜けて俺のことを突き飛ばしてきた!



「どわっ!?な、何をするんだ!結界をまた一から組み直さなくては……え?」




突き飛ばされた俺の横には、腹から血を流失させていたジョージが横たわっていた……。





「はっ!……あ、あっ……。」



 地面に倒れたジョージを見てしまったミーシャは発砲を止めて、ただその場で立ち尽くすことしか出来なかった。  









「出血は止まって何よりだったが……いつになったら目を覚ましやがるんだ……。」



ヤムチャの応急処置で命は落とさずに済んだが、ジョージは丸一日経っても目を覚まさなかった。



「ミーシャの方も家に籠りっぱなしだ。拗ねてるのか落ち込んでるのか、はたまたその両方なのかは分からないがな。」






 俺は銃を乱射したミーシャの前に棒立ちになったことをヤムチャに咎められて、頭を一発小突かれてしまった。


俺はそれだけで済んだんだ。



 ミーシャはヤムチャの家で12時間以上説教をされて、それから自宅に籠りっきりで出てくる気配が一切無かった。





「ふん、少しは反省させておけ!あんな野蛮な悪魔の粛清方法など聞いたことがないぞ!!」



俺は俺なりにジョージの擁護をしているつもりだった。



「そりゃまあ、もちろん反省はしてもらわなきゃ困るんだがよ……人を撃ってショックを受けてねえかも心配だな……。」


「あ、ミーシャならお前とは話したくなさそうだったぞ?」



自宅から出て行こうとするヤムチャをよしだくんが止めた。




「あー……無茶苦茶に怒っちまったからな。よしだくん、ミーシャの家に行ったばかりで悪りぃが付いて来てくれねえか?」


「仕方ない、我も付いて行ってやろう!!」



「おいおい、てめえは……いや、やっぱシンタローは俺と来てくれ。よしだくんはジョージのことを見てやっててな。」



「???あ、ああ……任せてくれよ。」



ヤムチャと俺は引きこもりのミーシャを家から引っ張り出すべく彼女の家に向かった。







「シンタロー……出来れば最初はお前が呼び掛けてくれねえか?俺が居るって分かれば間違いなく外に出て来なくなりそうだからな。」



ヤムチャはミーシャの家の前まで来た時に小声で俺にそう言った。



「お安いご用だ!……おいミーシャ、心配して我がわざわざ訪ねてきてやったぞ、感謝してここを開けるがいい!!」



俺が高らかにそう叫んだにも関わらず家の中からは物音一つしなかった。



「何だ失礼な奴め!せっかく我が足を運んでやったというのに!……もしかしたら死んでいるのではないか?」



「んな簡単にミーシャが死ぬかよ……。まあ、お前とも話したくねえんなら今は放っておくしかないみてえだな。」



「諦めるのは早いぞ?無理矢理にでも押し入ってやろうではないか!!」



俺はそう言って玄関のドアを力一杯に開けた。



「おいっ、そんな無理やr……、」


「こ、これはどういうことだ!?」



 俺がドアを開けるとその向こうにはまたドアが……いや、家具が山積みにされて出来たバリケードが俺たちの前に立ち塞がっていた。




「こりゃあ……当分はそっとしとくしかねえな……。」



ヤムチャは今度こそ自宅に引き返そうとしたが俺はまだ諦めていなかった。



「フハハハハ!愚かな奴め、出入り口はそこだけではないぞ?」



俺は窓枠に手をかけるとガラス戸の中を覗きこんだ。



「ん?窓が開いてるではないか?まあいい、お邪魔するぞミーシャ!」



俺は何のためらいもなくそこからミーシャの家に不法侵入した。



「待て待て!んなことまでしなくてもいいんだぞ!?もういいから戻って来い!!」



 大柄なヤムチャも窓から家の中に入ろうとしたようだが、隙間がそこまで大きくなかったからか通り抜けられなかったようだ。



「おいミーシャ、どこに隠れているんだ。逃げ場などないぞ、観念して早く出てくるんだな!」



俺は風呂場から家具の隙間まで彼女を探し回ったが、どこにも姿は見当たらなかった。




「ふむ……これはあれだな、神隠しと言うやつか?」



「か、神隠しだあ!?んなわけねえだろ!つーか玄関にバリケード張ってあんのに何でミーシャは家の中にいねえんだ?あいつが俺たちを中に入れねえようにあんな物作ったんじゃねえのかよ?」



ヤムチャはどういうことなのかさっぱりだという様子で考え込んでいた。



「だから言ってるだろう、悪魔による神隠しだ!ん?悪魔が神……?な、何でもないぞ!そ、それかバリケードは囮で窓から出て行ったとか……。」


「で、出て行っただと!?」



文の後半になるにつれて小声になった俺の方に向かってヤムチャが絶叫した。




「か、考えてもみるがよい!引きこもりたいならわざわざ窓を開けておく理由などなかろう?ま、まあ……我は悪魔の仕業だと思うがな!!」


「た、確かにそうだな!窓から出て行って……どこへ行きやがったんだ?」



神隠しの説を秒で切り捨てたヤムチャはミーシャの行き先について思考を巡らしていた。



「真っ先に思い付くのは……、」


「あそこしかあるまい!」



「「駄菓子屋だ!!」」



と言うわけで少々不本意だったが、俺はヤムチャと共に駄菓子屋へと急行した。





「おいミーシャ!ここにいるのか!?」



 ヤムチャは駄菓子屋の中を(18禁コーナーを除いて)慌ただしく探し回ったが、全くもってミーシャは見つからなかった。




「おい、下僕!」


「んー……zzz……。」



 俺たちがバカでかい声で叫んでいるのに、キヌタニは入り口近くのカウンターで椅子に座って居眠りを続けていた。



「起きないか、この無能が!!」



俺は売り物のショートケーキをキヌタニの顔にクラッシュさせた!




「ふえぎっ!?ん、な、な、何が起きたのー!?」



目を覚ましたキヌタニは突然の事に驚き、椅子から転げ落ちてじたばたしていた。




「ミーシャをどこに隠したのだ!早く解放しろ!!」



俺はパニックになっているキヌタニの腹を奴が座っていた椅子で殴り続けた。



「痛い痛い痛いよぉ!!今日はミーシャのこと見てないよぉ!!!!」


「だとしたらミーシャはどこへ行ったのだ!?」


「し、知らないよぉ!!」




「おいシンタロー!キヌタニなんかに構ってねえでこっちに来い!!」




何かに気がついたらしいヤムチャは俺の事を呼んできた。




「俺の記憶違いじゃねえと思うんだが……ここら辺にバカでけえバズーカ砲が売られていた気がすんだよな。」


「我も覚えているぞ!確かにそんな物が売られていたな!!」


「何で今は置いてねえんだ……?」





「………………。」


「………………。」




俺たちは顔を見合わせた。




「やべえじゃねえか!急いでミーシャを探すぞ!」


「任せておけ我の千里……あーもう!分かったぞ!!」



 俺は右目を押さえて決めポーズをしたが、ヤムチャが爆速で駄菓子屋から飛び出して行ったので仕方なく俺も後を追った。










「ゼェゼェ……ヤムチャ、少しは我がいることを考えて走らないか!追いつくのでひっs……、」


「おお、ジョージ!目が覚めてたのか!もうずっとこのまま目が覚めなかったらどうしようかと思ったぞ……。」




 ヤムチャは途中で一度立ち止まって、ミーシャの家の中を窓から覗きこんで確認してから自分の家に戻る動きをしていたが、それでも走りっぱなしの俺があいつに追い付くことはなかった。



「心配をかけちゃったみたいだな……ムシャムシャ、魔術を使えば傷の治りを早く出来るから今は頑張って食べてるところだ……はっ!」



 そう言うジョージはさっきまで意識不明だったとは思えないくらいの勢いで干し肉を貪り、そして魔術を使うということを繰り返していた。




「わ、我は心配などしてなかったぞ?悪魔が銃弾で死ぬなど聞いたことなどないからな!」


「シンタローは『意識が戻って本当によかった』って言ってるな。」


「なっ!?変な通訳をするなー!!」




よしだくんに心の内を読まれてしまった俺は腕を振り回しながら大慌てで否定した。




「しっかし……ミーシャがてっきりここを襲撃してやがると思ったんだが……。」



「はぁ!?……えっ、ミーシャなら家に閉じ籠ってるんじゃないのか?」


「それは貴様らの早とちりだ!真実を話してやるとミーシャは神かk……、」


「どうにも玄関のドアを塞いで窓から外に出て、そんで駄菓子屋のバズーカ砲を持ってどっかに行っちまったみてえなんだ……。」




「モグモグ……でも何でミーシャちゃんがここを襲撃してると思ったんだよ?」



「ミーシャはな……昔からムキになる癖があってよ……。ジョージを殺り損ねたって思われてるだろうから、今度こそトドメを刺しに来やがると思ったんだが……。もちろん、ジョージへの殺意はねえだろうがな。」



「え、ミーシャちゃん怖っ。何となくそういう性格なのは分かってたけどな……。」




自分を殺しに来るとヤムチャに言われた割には、ジョージの反応はあっさりしたものだった。





「だがここに来ていないのだとしたらミーシャは一体どこへ……?」




よしだくんが考え込もうとした時、遠くの方からバカーン!という爆発音が聞こえてきた。





「何だミーシャか!?どこから聞こえてきやがった!?!?」



ヤムチャは家の外に出た。




その後も爆発音は森の外から定期的に聞こえてきた。




「シンタロー行くぞ……ライフル持ってな!」




「えっ!み、ミーシャを粛清しろと言うのか!?」



「そうじゃねえ……ミーシャの腕を狙撃してあのバカ騒ぎを止めてくれねえか?俺の速さでもバズーカ砲相手には近づきたかねえんだ。」


「気乗りせんがやむを得まい………。我が愚か者の目を覚まさせてやるとしよう。」



「俺も行こう……ミーシャちゃんが心配だ。」




もう怪我の方は平気なのかジョージはベッドから出て立ち上がった。



「バカか!お前を見たらミーシャは真っ先にお前を消し炭にしようとなりふり構わなくなるぞ!……俺たちに任せて待ってろや。」



「ジョージ、二人に任せよう。きっと上手くやってくれるさ。」



よしだくんはジョージをベッドに連れ戻した。




「せっかく繋ぎ止めたその命、簡単に手放さないことだな!」




俺はジョージにそう言ってヤムチャの後について行った。








「しっかし……爆発音が止まねえな、あいつはどんだけ弾薬を持ってやがんだ!!」


「もう15発以上は撃ってるのではないか!?そのうち手が滑って自滅するかもな!」


「んまあ、それを防ぐ意味でもお前の出番だってことだぞ、……あれか。」





 遠目にミーシャの姿を確認した俺たちは一度立ち止まり様子を伺った。

彼女の周囲にある木は軒並み薙ぎ倒されており所々から火の手が上がっていた。




「あーーっはっはっは!!これなら誰も私をノーコンだなんて言わないわよねーー!!」



ミーシャは狂ったように笑いながら森林破壊を続けていた。



「……シンタロー、ここからあいつを腕を撃ち抜け!距離は80mってとこだが……いけるか?」


「な、何のために我をここまで来させたのだ。やるしかなかろう!!」



俺は震える手でライフルを構えた。




「あいつを守るためだ、躊躇うな!」



ヤムチャは小さな声で俺に囁いた。



この時の俺はとにかくミーシャに致命傷を与えないだろうかという恐怖に苛まれていた。




どれくらいの間、狙いをつけていたかは分からない。



銃を構えてから三度目の爆発音が鳴った瞬間……、



俺は手元が乱れたまま発砲した。






銃口から飛び出した弾丸はミーシャの脳天目掛けて飛んで行き……、



ジョージの手中に収まった。




何が起きたのかさっぱり分からなかったな……。





「……あ???」



 俺のそばで状況を見守っていたヤムチャも、発砲からワンテンポ置いて間抜けな声を発しただけだった。





「あはははは……え、ええええっ!?!?」



狂ったように笑っていたミーシャも唐突なジョージの出現に気が動転していた。




「って、ジョージ……こ、ここ、こ……殺すーっ!!!!」



 だが、ミーシャはすぐに(ある意味で)冷静になり、弾薬をバズーカ砲に詰めて、ジョージに向けてゼロ距離狙撃をしようとした!




「いやいや!ミーシャちゃん!まずは冷静になろう!!」


「黙ってて!もう私はあんたが死ぬまで止まらないんだから!!」



 ジョージは強引にもミーシャに掴みかかってバズーカ砲を奪い取ろうとした。

そしてミーシャは何が何でも殺してやるといった口調で抵抗した。




「はっ!!と、止めるならミーシャの気が逸れてる今しかねえ!!!」



ヤムチャは10秒ほど硬直していたが、何が起きたのか理解しないままミーシャに特攻を仕掛けた!



「な、何がどうなっているのだ……?」





「これを離すんだ!!俺の悪口ならその後でいくらでも聞こう!」


「私があんたに望むのは一つだけなの!死んでーーっ!!」



ミーシャはジョージの腕を無理矢理振りほどくと発射体制に入った。




「やめねえかあぁぁぁーー!!!!」



爆速で突撃してきたヤムチャがミーシャの視界の外から近づいて彼女にタックルした!!




その時のことを俺はこれから先も絶対に忘れることはできない。






無機質な鋼鉄の塊がバズーカ砲から飛び出してきて、俺の方に突進してきた。



日光を反射する砲弾の表面には俺が今まで生きてきた記憶が映し出されていた。





初めてアイスを食べた日、



ミーシャに告白して逃げられた日、



家出をしてヤムチャの兄妹たちと一緒に眠った日、



18禁コーナーを覗こうとしてキヌタニの母親にゲンコツを食らった日、



家族が突然いなくなってしまった日、



よしだくんが森にやって来た日……、




 この全てが本当に俺自身の記憶なのか……そんなことを考えている時間はなく、砲弾は俺の胸部に突っ込んで爆裂した!




爆音のせいか耳鳴りは酷かったが、痛みを感じるまでもなく俺の目の前は真っ暗になった。






「うっ……わ、我の人生はここで終わってしまったのか……?な、ならば早く転生して悪魔軍の暴走を阻止せねば!!」



 自分の身に何が起きたのか一瞬で理解した俺は、徐々に明るくなる視界の前で女神(ヴィーナス)との対面を期待した。




でも目の前に女神なんていなかった。



居たのは見覚えのある顔が三つ……それだけだった。





「やっぱ……障壁って便利だわ。シンタローも傷一つないみたいだしな!」



ジョージは俺の方を見て得意気に笑っていた。



「な、な、な……何があったというのだ……?」







「ハァハァ……ジョージ!!みんなも無事か?」



俺が放心状態で突っ立っていると、よしだくんが背後から走ってきた。



「全く!瞬きをした瞬間に姿を眩ますなんて……こっちは無茶苦茶に慌てたんだぞ??」



「悪いなよしだくん、透明化の術はみんなの前で使ったことがなかったから分からなかっただろうな。……でも行きたいって素直に言っても行かせてくれなかっただろ?……いたた!!」


「あ、当たり前じゃないか!バズーカの弾に直撃したらミンチだぞ!!」



よしだくんはジョージの頭をポカポカとゲンコツで連打した。



「ジョージ……お前、死ぬかもしれなかったんだぞ?本当に、よく来やがったな!」



 ヤムチャは、待ってろと言ったのに来たことへの怒りと、ミーシャを救ったことへの感謝が入り交じったような口調と表情をしていた。




「でも来て正解だっただろ?」








「ふざけんじゃないわよ……。」



バズーカ砲を抱えたミーシャは俯いたままフラフラとジョージに詰め寄った。




「みんな……みんな死んじゃえばいいのー!!」




視線の虚ろなミーシャは砲弾を撃つことなく、バズーカ砲を鈍器のように振り回し始めた。



「うおおっ!?ヤムチャ、ミーシャちゃんを止めてくれ!」



 体力の残りが怪しかったのか、それだけ言い残すとジョージは俺たちを見捨て、俺の真横を通過し一目散に逃げていった。



「お、おい!!この隙に貴様、どこかへ逃亡する気ではないだろうな!?そうはさせんぞ!!」



「えっ、ちょっ、ふ、二人とも!置いてかないでくれー!!!」




俺とよしだくんも続いて戦線から離脱した。

 とにもかくにもミーシャには銃撃の才能がこれっぽっちも無かったわけです。

下手の横好きと言う言葉もありますが、そこから才能を開花させたら本物ですよね。


 自分に合ったものが見つかるまで色んなことを試してみるか、それともこれと決めたら最後までやり通すか……読者の皆さんはどちらですか?


 二択で聞いてしまいましたが、どっちでもすごいと思います。

もし反射的に『こっちだ』と言えたなら、それはもうある種の才能を持ってますよ。


 つまるところ、行動力って本当に大切ですよね。

今回のミーシャのような方向性に行ってしまうと大変ですが……。


 では、次回までに暴走してしまったミーシャの行く末を予想してみましょう。

多分、ロクでもない答えにたどり着くかと思います……。

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