0-11 ヤムチャvs飛び道具
ーー前回のあらすじーー
時の選ばれしもの、シンタローは悪魔軍から世界を守るべく、敵情を視察していた。
彼が目撃しただけでも悪魔の一味と思われるジョージは魔法陣を書いて悪魔を召喚しようとしたり、灯籠に悪魔を憑依しようとさせたり、はたまたヤムチャに魔法陣を書かせたり……。
何とか悪事を阻止をしていた彼であったが、最終的にはストーカーがバレてしまい、晩飯を抜かれるという憂き目に遭ってしまったのだった……。
それでも彼は折れることなく悪魔の脅威とこれからも戦い続けるだろう……。
シンタロー先生の次回作にご期待ください!!
いや、過去編はまだまだ続きますし、シンタローにもまだまだ暴れてもらいます!!
読者の皆さんは晩御飯抜きにされたらどうしますか?
そこら辺の草でも毟って食べますか??
クモやムカデはエビとかと生物学的に近いのでもしかしたら美味しいかもしれませんね!
イナゴや蝉も食べる地域はあるそうなので、夏場なら意外と食料調達には困らないでしょう!!
あ、食べる時は自己責任でお願いします……。
「まず、これが俺たちとジョージの出会いの経緯だ。」
そこまで話すとシンタローは一度口を閉ざした。
「ふむ……そんなことがあったのか……。」
まだ話の途中だがチッダールタは目を丸くしてそう言った。
「色々あったよね……。俺は引きこもりだったけどジョージは俺の家にもよく来てくれてさ。よく一緒にエロ本を読んでたよ……。」
くじらんは遠い目をしながらこの空気をぶち壊すような発言をした。
……まあ、この重い空気はそんなことじゃ軽くならない。
「おねえちゃん、これも置いてどこにいっちゃったんだろう……。」
くーちゃんは俺たちの方に近寄り、ミーシャの機関銃を撫でた。
「そういえば……ジョージが来なければ、ミーシャが機関銃を使うことも無かったんだな……。」
俺はそんな持ち主に置いていかれた機関銃をじっと見つめる。
「えっ、ミーシャ君ってまだその頃は機関銃を使ってなかったのかい?」
フジモンは静かに、だがかなり驚愕したように聞いていた。
「まあ、今のあいつからは想像出来ないよな……でも、そうだった……俺にもまだ……これが使えんのかな?」
シンタローは機関銃を拾い上げると、玄関のドアの横に立って外に向かい、構えた。
そして……。
「いや、俺にはもう……これを撃つ資格なんてねえよな。」
機関銃を地面に置いて外の暗闇に視線を投げていた。
「シンタロー……お前、機関銃が使えたのか?お前がそれを使ってたなんて意外だな……。」
チッダールタはまた驚いている。
あいつは何でもお見通しだと思ってたんだが、いくら神通力が使えてもそこまではさすがに分からないか。
「もう昔の話だよ。そうだ……俺とミーシャが機関銃を使い始めた経緯も話しておきたいな。」
シンタローは昔話の続きを話し始めた。
ーーーーーーーーーー
あれはヤムチャが狩りから帰ってきた時だったか……俺はジョージとミーシャと一緒に駄菓子屋でアイスを食っていたんだ。
「雪も溶け始めて動物も増えてきたから、ようやく狩りも楽になってきたな……。だからと言って仕留められるかは別の話だがよ。」
その日、ヤムチャの手に握られていたのは小ぶりのリスが四頭……それだけだった。
「いや、ヤムチャ……得物がノコギリなんだから、すばしっこくて小さい動物を捕まえる方が大変なんじゃないのか?」
ジョージはいつの間にかよしだくんとミーシャ以外を呼び捨てにしていた。
本当に気づいたら呼び捨てって感じだったな。
「何でだろうな……理由が俺にも分かんねえんだ。小動物ってのは気配を消して近づくだけで捕まえられちまうんだが……。」
この頃のヤムチャは狩りが下手だったというよりは慎重に狩りをしていたという方が正確だな。
猪や鹿のように反撃してくる動物にはほとんど手を出していなかった。
ポケベルも使えない森の外で一人だったから無茶なことをしてなかったみたいだな。
「それ以上に疑問だったんだけどな……どうして飛び道具を使わないんだ?」
ジョージは武器売り場を見ながらそんなことをヤムチャに尋ねた。
「あーー……遠距離の戦法はあんまり性に合ってねえんだ……。銃を構えてる時に敵との間合いを詰めたくてウズウズしちまうんだよ。」
「分かるぞヤムチャ……我も悪魔を前にして右腕が疼き出すことが多々あるからな。」
「うん、シンタローのはただの中二病だから……ガリっ。」
食べかけの棒アイスを持っていた右手を左手で押さえていたら、ミーシャの奴が俺のアイスを齧ってきた!!
「あーーっ!!我のアイスがっ!!おのれっ……!!!」
俺はミーシャが持っていたカップアイスに顔を突っ込んでアイスの表面を舐めつくした。
「いやーっ!!!何してるのっ!?」
俺とミーシャが下らない争いをしている間にヤムチャとジョージは全く違うことを話していた。
「間合いを詰めたいならショットガンはどうだ?」
「ショットガンは肉を捌くときに弾を抜くのが大変なんだ……。別に気にすんな、俺も大物が狩れるように最大限の努力はするからよ。」
「そうは言ったってこの森の食糧事情に直結する問題だぞ……?そうだ!俺が銃で狩りの手伝いをしてやろうか?」
「おいおいジョージ、お前んなものが使えたのかよ?そうだな……んじゃあ明日にでもどの程度役に立つか見せてもらおうじゃねえか!!」
「悪いがヤムチャのその戦果は余裕で越えられる自信があるぞ?」
「こりゃ随分でかく出たじゃねえか!まあ明日になれば分かるがな!!」
ジョージとヤムチャの間にも火花を散らす戦争が起きていたらしい。
翌日……。
ジョージはヤムチャと共に……四匹の鹿を引きずって森に帰還してきた。
「シンタロー、ミーシャちゃん、たっだいまー♪見てくれ、この鹿の山を!!」
「…………。(ポカーン)」
「…………。(パクパク)」
「…………。(ピクピク)」
大猟な二人を見た俺とミーシャはただただ圧倒されて呆然としていた。
店番をしていたキヌタニに至っては衝撃が大きすぎたのか、椅子に座ったまま白目を剥いて、全身を痙攣させていた。
「ったくよ……遠くから狙撃して頭を一発でぶち抜くたあ大したもんだぜ……。俺の出る幕なんざどこにもねえじゃねえかよ。」
ヤムチャは少し拗ねたようにそう呟いた。
「そんなこと言わないでくれよな。どれだけ沢山仕留めたところで、ここまで持ち帰れなきゃ何も意味がないんだからよ。」
ジョージはヤムチャの肩をポンポンと叩いた。
「……はっ!!!な、何なんだ貴様は!?!?ま、まさか穢れた黒魔術により鹿を呪い殺したというのか!?」
「ほ、ほ、本当に困った中二病ね……。はむっ♪」
正気に戻ったミーシャは俺が食べていた棒アイスの最後の一口をかっさらっていった。
「ああーーっ!!!わ、我の……最後の一口を……き、貴様ぁー!アイスは最後の一口が至高だと知っての愚行か!?こ、こうなったらジョージよりも先に貴様を呪殺してやるぞ!」
そう言って俺はミーシャがスプーンですくったガーデンダッシュ(チョコチップ味)の最後の一口にかぶりついた!
「ええーーーっ!?せっかくチョコチップが多いとこ、とっておいたのにー!!シンタロー、あなたそれを分かってたの!?」
ミーシャはスプーンで俺の首をグスグスと突いてきた。
「お前ら……んなことで喧嘩してねえで鹿の解体を手伝えや。今夜は嫌と言うほど肉が食えるぜ?」
「「はっ!?!?」」
いがみ合っていた俺とミーシャは『肉』という単語に反応してヤムチャの方に向き直った。
「ハハハハ!!!それなら我に任せるがいい!我にかかれば鹿四頭など一瞬で捌けるからな!!」
「って言ってるシンタローは捌き方に問題があるわよね……。」
当時から俺は手先が器用だったが、それゆえ調子に乗って鹿の頭をヤムチャに被せたり、心臓を潰して中の血液をヤムチャにぶっかけたりしていた。
「んまあ、たまにふざけられるとムカつくけどよ、それでも四頭いるし手伝ってもらう方が助かるんだよな……。」
ヤムチャは複雑そうな表情をしていた。
そんなこんなで鹿肉パーティーの時間がやって来た。
「まさかシンタローだけじゃなくジョージまで鹿の内臓を投げてくるとは思わなかったわ……。」
ミーシャは鹿を解体している時のことを思い出してため息をついた。
「ふっ……さすがは魔王の手下よ、中々に素晴らしい聖戦であったぞ!!」
「いや、動物の命で遊んでおいて聖戦だなんてよく言うぞ……。」
清々しい表情をした俺に対してよしだくんは冷静にツッコミを入れてきた。
「全くだぜ!量が多いから集会所の外で解体してて正解だったぞ!!中でやられたらひとたまりもなかったな!!!」
「いやいや、ごめんよって!♪シンタローを見てたらついつい童心に帰っちゃってなー。」
いい匂いのするフライパンを持ってみんなのいるテーブルへやって来たジョージが照れくさそうに言った。
「童心に帰ったって……ジョージ、お前子供の頃にそんな遊びをしてたのか……?」
「ははは、まさか!!雪合戦みたいなもんだよ。……ほらほら、お待ちかねのステーキだぞ?」
ジョージは500g以上もあるんじゃないかってくらいに巨大なステーキをみんなの皿に一枚ずつ置いていった。
「す、すごい大きいわね!!(じゅるり……)」
「こんなでかいステーキ、最後に食ったのいつだっだか覚えてねえな!!(じゅるじゅる……)」
「ふっ、これこそ祝宴に相応しい晩餐と言えようぞ!!(だらだら……)」
「シンタロー……涎垂らしながらそんな台詞いってもカッコつかないぞ。(たらーー……)」
「おいおい、シンタローだけじゃなくみんな涎垂れてるぞ!!……おや、キヌタニ?」
ステーキを見ても唯一涎を垂らしていないキヌタニはどこか不安そうな表情をしていた。
「こんなにたくさん食べられるかなあ……何だか胸焼けしそうだよ……。」
「何だ、そんなことか。残ったら俺が全部食っちまうからよ、心配すんな。」
「そっか、ヤムチャなら食べてくれるよね。」
ヤムチャが軽くキヌタニの不安を払いのけたところでジョージが今度は大きな鍋を持ってきた。
「ステーキだけじゃないぜ?ほら、カレーも作っといたんだぞ!」
「ほあーー!!もう私が料理なんてする必要ないじゃない!!」
この時のミーシャはカレーよりも、日々の料理という仕事から解放されるかもしれないことに歓喜していたみたいだな。
「後でボールのところにも持って行ってやらないとな。まあ、みんなもう我慢出来ないようだし早く食べようか……それじゃあ?」
「「「「「「いただきまーーす!!!」」」」」」
そこからはみんなとにかく食べまくった。
日の入りくらいから始めて、何だかんだヤムチャなんて日付が変わるくらいまで肉にがっついてた記憶がある。
早々にお腹一杯になったキヌタニは駄菓子屋から飲み物をたくさん持ってこさせられてて大変そうだったな。
キヌタニ以外はみんな驚くほど食べてたし、ヤムチャに至ってはステーキを20枚くらい食べていたような気がする……。
まあ、みんな死ぬほど食いまくって後片付けをしていた時のことだ。
「これほど腹が膨れたのは子供の時以来じゃねえか?うっぷ……とにかくめちゃめちゃ満足だぞ!!」
「ヤムチャ……さすがに食べ過ぎよ。毎日これだけ食べられたら私の一日は料理だけで終わっちゃうわ……。」
「それ以前にこの森は深刻な食糧危機に陥るだろうな……。ああ、よく食べた。」
よしだくんもステーキを七枚くらい食べていた気がする。
「食糧がないのなら捕まえてくればよいではないか!!……うっ、苦しい……。」
俺はそう叫びながら突然立ち上がったために、腹を抱えてうずくまる羽目になった。
「何言ってるの……こんなに大猟な日、そうそうないわよ??あーー、本当に食べ過ぎたわ~。」
ステーキを九枚食べたミーシャはテーブルに突っ伏していた。
「いーや?そうとも限らないぞ?今日はたまたま群れを見つけて俺一人で鹿を四頭仕留めたが、数人で行けば動物を見つけられる可能性はぐっと上がると思うよ?まあ、今日みんなで食べた肉だって大きめの鹿一頭分くらいの量だし、四頭も仕留める必要はないんだけどな。」
皿洗いをしていたジョージはこちらに背を向けたままそんなことを言った。
で、俺とミーシャは内心こう思ったわけだ。
『一狩り行くか……!!』ってな。
ヤムチャにも小動物しか捕まえられない可愛い時期があったんですね!(可愛くない……)
リスくらいなら彼は素手で握り潰してしまいそうですが……その辺りは力の制御が出来たようです。
移動式動物園が虐待だのなんだので問題になっている今日この頃ですが、読者の皆さんは動物と触れ合う時は優しく触ってあげてください。
人に振り回され続けるのもストレスなようなので……。
会社で上司に仕事を押し付け続けられるのを想像すれば共感できると思います。
ステーキ七枚って一枚500gだとすると3.5kgなんですが……よしだくんは普通の人間にしては食べ過ぎですね!
だとしたら彼は次の日お腹を壊したに違いありません。
大食いのテレビ番組を見ていると『5kg……ふーん。』って流しがちですが、ステーキの500gだって結構きついですよね!?
普通に規格が違い過ぎて感覚がマヒしてしまうので、フードファイター一人と凡人多数とかで競わせて、『何人分食べました!!』みたいな指標があると分かりやすいかな?
そしてリバースしないかな……などと言う要らぬ心配を毎度してしまうので大食い番組は見るのに神経を使います……。
次回はミーシャとシンタローが銃を持ちます!!
さあ、何人殺しちゃうのかな??