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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第3章 闇鍋注意報!!!!
70/162

0-4 兄弟

ーー前回のあらすじーー


 100エーカーの森での晩餐ではピーマンの肉詰めが出された。

シンタローはそれにがっついて、そして『サキュバスの餌』などと酷評し、それ以上は手を付けようとしなかった。


 よしだくんはどういうわけかその『サキュバスの餌』を泣きながら完食してしまった……。

これには作ったミーシャも驚きであった。


 もしかしたらよしだくんには一切の好き嫌いがないのかもしれないという疑念を抱かせるような回であったが、真相は闇の中である……。



でもピーマンの肉詰めが嫌いな人なんていないでしょう!!(超偏見)


 ちなみに読者の皆さんはピーマンと中のハンバーグは一緒に食べますか?

それともバラして別々に食べますか?


 ちなみに作者はハンバーグのソースを白米に塗ってソースを除去してから一緒に食べる派です。

これに共感できる方は本編へ進んでください。


 邪道だと感じた方は一回やってみてください。

多分、「やれ」と言われて本当にしてくれる人はいないでしょう……。

村全体に電気は行き渡っているのに街灯が一つもない、真っ暗な砂利道を歩いて進んだ。




「あの……こんなに真っ暗で前が見えるんですか?」


「あ?別に見える必要なんてねえよ。真っ暗でも大体どのあたりを歩いてるかなんて長年住んでると分かるもんだからな。」




 野生動物とかがいたらどうするのか、とは聞かなかった。

きっと気配で分かるんだろう、俺が来た時もそんなことを言っていたし、って思ったからな。




 だが、土地勘が全くなかった俺は道が何も分からなかったので、はぐれないようヤムチャの腕に引っ付いていた。







「おい、着いたぞ。家の電気を点けてくるから腕を離してくれ?」



 俺はそう言われて素直に彼の腕を離した。

ガチャとドアの開く音がして彼は家の中に入っていったようだ。




 昔のヤムチャの家は畑の隣ではなく、この時はまだスタークの家が少し前まで建っていた森のど真ん中にあった。



何だか森のリーダーって感じだよな。





ふと、俺は上を見上げた。



 その日の夜は雲一つない晴天で、星がすごく綺麗に見えたのを覚えている。

ここには街灯りがないからだろうか、俺はここまで美しいケンタウルス座を見たことがなかった。



 しかも俺はこの時までケンタウルス座の上半分しか見たことがなかった。

ここへ来て初めて全体像を拝むことができたんだ。





 そして空に浮かぶ星座を眺めていたら目の前が眩しくなった。

五分ぶりの電気だった。




「どうだ、明るくなっただろ?さあ、虫が光に寄って来ちまうからさっさと中に入れや。」


「あ、はい。お邪魔します。」



俺は視線を星空から正面に戻して家に入った。











「男の独り暮らしだからな、あんまり物は置いてねえんだ。ま、スペースの余裕は心の余裕だって言うだろ?」



 そう言うヤムチャの家は広さが確か30帖程度、生活するのに最低限の物だけが置かれていて、部屋の真ん中には昔ながらの暖炉があった。



「そ、そうなんですか?……それにしても暖炉が部屋の真ん中にあるって珍しいですね。」



「確かにそうかもな、昔は家族みんなで暖炉を取り囲んで飯を食ったもんだぜ……。」




「家族ですか……あれ?でも独り暮らしって……?」



俺はふと疑問に思って、軽い気持ちで尋ねてしまった。





「ああ、そう言ったな……。実は、去年の春までは俺にも親兄弟がいたんだ。だが、ある日突然……失踪しちまったんだよ。」



「え……?し、失踪……!?」





きっと唖然とした表情をしていただろう俺を横目にヤムチャは続けた。





「俺だけじゃねえ、ミーシャも、シンタローも、キヌタニだって家族を失っちまった……。他にも家族揃っていなくなった奴も沢山いたぞ。でもそいつらの家は……失踪した朝には綺麗に消えていてな、まるで最初からこの森に住んでなかったみてえな気にさえなった……。」





ヤムチャはすごく苦しそうな顔をしていた。





 彼らはその時、大切な人が急にいなくなってしまったことで、自分の生きていた、知っていた世界を否定されてしまったのだろう。



 俺はそれを聞いて博士がもしある日、自分の前から突然いなくなっていたらと思うといたたまれなくなった。



そして彼はさらに続けた。





「みんなそのことにショックを受けたぜ……。ミーシャは今でも元気によくやってくれているがキヌタニからは笑顔が消えちまったし、シンタローも昔はあそこまでおかしな奴じゃなかった……、あいつは家族を失ってからああなっちまったんだ……。シンタローは明るく振る舞ってるからまだいい。晩飯を食う前に、この森には引きこもりがいるって話をしたな。くじらんって呼んでる奴なんだが、あいつはたった一人の家族……とても優しかった母親を失ったショックがでかすぎて、毎日のように暴飲暴食をするようになってよ……激太りして動けなくなったことで家から出られなくなっちまった……。マヌケな話だろ?」






 太ったことで引きこもりになったのは本当にマヌケだとも思ったが……それはそうとして、大切なものを失った彼らの苦痛はどれほどのものなのか、俺には想像も及ばなかった。



 もしかしたらこの村の住人は現在も絶望に苛まれてるんじゃないか、幼いながらも俺はそんなことを感じ取った。





「……すみません、こんな……辛い話させてしまって。」


「うんにゃ、こんな重い話なのに耳を塞がず最後までヨシダに聞いてもらえて俺は嬉しかったぞ、ありがとな。」



 ヤムチャは照れ臭そうにしながらも笑顔になっていた。

普段は強面で、森の絶対的リーダーとして振る舞っているそんな彼の優しい笑顔は滅多に見れなかった。



 無理して笑っていたのかもしれないと今ならそうも考えられるが……それでも気も緩み切ったこいつの笑顔を次に見たのはいつのことだったか……。







「よし、飯も食ったことだし風呂にでも入るか。湯船を沸かさなきゃならねえからちょっと手伝ってくれや。」


「は、はい。え……?ここのお風呂、沸かすの大変なんですか?」



「んまあ、俺の家の風呂は四人くらい一緒に入っても窮屈じゃねえくれえには広いからな。どうする、俺と一緒に入るか?」





 俺はこの時、何を言われているか分からなかった。

風呂に誰かと入ると言う概念がそもそも俺にはなかったからだ。



「どうにも……不思議そうな顔をしてんな。まあいい、だったら一緒に入るぞ!」







お風呂を沸かすのは意外と大変だった。



 ヤムチャは自分が大柄だから四人だと言ったんだろうが、体格が普通の人間からしたら六人入っても全然広いくらいだったよ。



 そんな浴槽に外の井戸からいちいちバケツで水を汲んで入れていくんだ。

何十往復もしなきゃならなかった……!




 しかもそこから給湯器ではなく、薪と火を使って焼き石を作り、浴槽に投げ込む古典的な沸かし方をしていたからかなり時間がかかった。








「どうだ?ここまで広い風呂もなかなか無いだろ?」



ヤムチャは浴槽の縁に寄りかかり、目を閉じてリラックスしていた。




「と、言いますか……僕、誰かとお風呂に入るの初めてなんですけど……。」


「おお、そうだったのか!誰かと風呂に入るってのはいいもんだぞ!裸の付き合いは心まで裸になるってもんだ!!」




そんなことをヤムチャは言っていたが、俺はまだ緊張しぱなっしだった。


 男同士だからそんな意識することもないのだが、自分以外の誰かが同じ浴槽に浸かってるのが落ち着かなかった。




「昔はなあ、兄弟みんなで入ってたんだ。俺は六人兄妹の一番上でな、よく弟や妹の面倒見たりしたもんだ……。」


「ろ、六人!?大家族だったんですね……。」


「んまあ、確かに六人兄妹はこの森でも珍しかったな……なあヨシダ、三男が丁度お前くらいの年だったんだ……よっと!」




ヤムチャは急に俺の横へ来て肩を組んできた。




「二人してこうやって肩組んで入ってたな……懐かしいぜ。」


「お兄ちゃんだったんですね……何か、そんな感じはしますけど。」




肩を組まれてから、さっきまでの緊張が嘘のように消えていった。


 この時のヤムチャからは森のリーダーとしての威厳は感じられず、ただの兄のような優しさだけを感じた。



「ヨシダも本当に俺のおと……、」



「やっと見つけたぞ!!サタンの手下め!!今度こそ我が始末してやろうではないか!!」




ヤムチャが何か言いかけた時に突然、勢いよく風呂場の入り口が開いた。



そこには眼帯と腕の包帯をしたまま、さらには腰にも包帯を巻いたシンタローが立っていた。





「あっ、どうも……さっきぶりです。」



俺は驚きが十周くらい回って、ごくごく普通の反応しか出来なかった。



「なっ!?驚いてない……よ、余裕か!?ふっ……だが、そんな反応をしていられるのも今のうちだけだ!!食らえ……我が必殺技、ウォータースプラッシュー!!!」




シンタローはそう叫ぶと、かけ湯もせずに湯船へ飛び込んできた!



ドッパーン!という音と共に湯飛沫が上がった。





「ゲホッゲホッ……、」


「フハハハハ!参ったk……うあっ!?ガボゴボブボッ……!!」



 鼻にお湯が入った俺がむせていると、高笑いをしているシンタローの頭をヤムチャが掴んで湯船の中に沈めた!




「おーいシンタロー、風呂に入る時はちゃんと体を洗ってからって言ってるだろ?」


「◆※○■】∀∪>⊇¶♭◇♡∈〉…………!!」



シンタローは呼吸が出来ずに湯船の中で藻掻いていた。







二分後……。







「さて、そろそろ限界かもな?」



ヤムチャはシンタローの頭から手を離した。




「ぶはあっ!!!!ハアハア……や、ヤムチャめ!!……はっ!!まさか貴様、サタンの手下に取り込まれたのか!?」


「バカなことばっか言いやがって、早く体を洗ってこい。」



ヤムチャは再びシンタローの頭を掴んだ。




「ひっ!?てっ、撤退だ!逃げるわけじゃないぞ、これは戦略的撤退だからな!!」




シンタローは慌てて洗い場に逃げていった。




「やれやれ……シンタローは風呂場でもこんな感じだ、気にすんなよ。」


「毎晩賑やかですね……。」





ちなみにその後、ヤムチャが奴を湯船に何度も沈めたのは言うまでもない。





 あ、はっきりとは覚えてないが、確かキヌタニは俺たち三人が風呂から上がった時に入れ替わりでコソコソと入りに行ってたような気がする……。

 こうやってみんなでお風呂に入ろうと思ったら湯船の温度で喧嘩になるのではないでしょうか?

熱いお湯が好きな人、苦手な人……様々ですからね。


 夏場のクーラーの温度設定も然り、みんなが納得できる温度選択をしましょう。

それがとても難しいのは百も承知ですが……。



ちなみに作者は熱いお湯が苦手です、40℃超えたら冗談抜きで湯船に入れません!!


 家族からはよく『お前が入った後の湯船はぬるいんじゃなく冷たい』なんて言われてました。

熱いよりもぬるいお湯にゆっくり浸かった方が健康的らしいですよ!(冷たいのはダメだろ)

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