1-6 集会所
ーー前回のあらすじーー
エリスに追い回されてピンチに陥っていたスタークは自宅に閉じ籠ることで一命を取り留めてしまった。
一方、日が暮れ始めて空腹を感じた森の住人たちはキヌタニの助けを無視して集会場へと向かった。
ミーシャが作る料理は更なる面倒ごとを引き寄せてしまうのか?
読者の皆さんは恋人の作ってくれた料理が死ぬほど不味かったらどうしますか?
……良心なんていらないんですよ!
頭の中で「こんなもん食えるかー!」とちゃぶ台返ししちゃいましょう!
続いてひっくり返ったちゃぶ台の足を全てへし折ったら本編に行ってみましょう!!
この森の入り口近く、つまり南側には集会所がある。
ここでは1ヶ月に1度の報告会を開いたり、みんなでご飯を食べたりしていた。
と言うか、調理器具は集会所にしかないので、料理をしようと思ったらここまで来るしかない。
しかも食材は干し肉しか置いてないし、ガスも通ってないので薪も持参しなければならず、炊事をするにあたっては非常に面倒くさい場所だ。
その集会所に良い匂いが漂っていた。
「今日の献立はシマリスの串焼きと、それから猪肉、パプリカ、ズッキーニのバターソテーよ♪」
料理をする時だけはミーシャも機関銃を背負うことがなかった。
口調も幾分か穏やかでこの時だけは可愛らしい一面を見せていた。
「うまそーだなーwwいただきまーす……ガブガブ!」
シンタローは料理にがっついた。
「はぁ……なんで毎日私が料理を作らなきゃいけないのよ。」
「ま、まあ、みんな感謝してるんだぞ?料理は難しいんだ……。」
ミーシャはため息をつくが、ヤムチャをはじめ、他に誰も料理ができる者がいないのだ。
この森ではそれぞれが仕事を分担して暮らしているから、それでもいいとみんなが思っていた……ミーシャ以外は。
ヤムチャの仕事は畑仕事と狩猟、つまりは食料の調達であった。
それから時々森を見回って、不審者や野生の獣がいないかの確認もしていた。
よしだくんはパソコンやポケベル、電波塔などの機械の修理やメンテナンスを一人で全て行っていて彼が次に何を発明するか、みんな楽しみにしていた。
ミーシャは炊事に加えて裁縫系の仕事も担っていた。
何だかんだで彼女は暇なので、機関銃を持って遠出し森から離れた場所の探索に赴くこともあった。
ついでにヤムチャの狩猟にもついて来ようとするが、彼が被弾したくないからと言って毎回追い払っていた。
そして、そんなミーシャが自分しか料理をしないことを不満に思うのはいささかワガママだとみんな思っていたようだ。
シンタローは自称芸術家と名乗っていた。
昼間は薪割りをしているが、それ以外は絵を描いたり木でアンティーク作品や家具を作っていた。
ちなみに割った薪の保管場所は集会所ではなく、よしだくんの家の脇が定位置だった。
物を熱する必要があるときに薪が必要らしいのだ。
よしだくんは新しい電化製品を作ろうとした時もシンタローの創造性は結構当てにしていた。
もうお分かりだろうがキヌタニは駄菓子屋の経営をしていた。
一体どうやって商品を入荷しているのか、それは彼だけの秘密であった。
そしてみんなから万引きをされまくっているがそのほぼ全てがスタークの仕業だと勝手に勘違いしていたようだ。
みんなが盗んだアイスの合計金額がきっと500-600万くらいなのだろう。
ボールとスターク??
二人はどう見てもニートだろう。
本当にこの森のお荷物と化していた。
「それにしてもエリスは料理出来るのかしら?そうなら是非とも手伝ってほしいものだわー。」
ミーシャは相変わらずため息をついた。
「そういえば一人分余計に料理がテーブルに乗ってるけど、僕が食べて良いの?」
「こら!!つまみ食い禁止!!!」
キヌタニが余った料理に手を出そうとしたところでミーシャは彼の手に箸を突き刺して貫通させた。
「痛い痛い痛いよおーー!!」
キヌタニは痛みで床を転がり回った。
「あんたバカなの?……エリスをおびき寄せるために決まってんでしょ。」
「まあ、そろそろお腹減らしてそうだし、旨い料理の匂いを嗅ぎ付けたら釣られてここに来そうだよなー♪てか、ボールが昼間の光景見たら鼻血吹き出して倒れそうwwいや、転がってっちゃうかwww」
ボールは集会所で「止まる」ことができない、そしてわざわざ彼の家まで誰かがご飯を届けにいくのも面倒なので駄菓子屋で何か食べていた。
ボールの体は駄菓子屋の入り口に丁度「はまる」大きさなので、いつも安心して駄菓子屋に突っ込んでいた。
ただし駄菓子屋の入り口は引き戸になっているため、ボールの来る時間だと思ったらキヌタニが前もって入口を開けておかないと悲惨なことになってしまっていた。
スタークの分?
そんなものはもちろん存在しない。
「まあ、来たら服を着るように説得するか。……キヌタニが。」
ヤムチャは真顔でそんなことを言い出した。
「痛いーーーっ!!えっ?なんで僕??……!!痛ーい!!」
「いや、あんなのをまともに相手したら精神的に良くねえから盾になれや。別にいいだろ、キヌタニだしな。」
「い、痛いー!!じゃなくて、嫌だっーーーー!!!!」
キヌタニは箸が手に刺さったまま集会所から逃げ出そうとした。
「おいおい、まだごちそうさまを言ってないだろ?」
「嫌だよー!痛いよー!」
ヤムチャはキヌタニの首根っこをつまみ上げて逃げられないようにした。
キヌタニは空中でじたばたしていたが、ヤムチャの圧倒的な力の前では為す術もなかった。
と、その時いきなり集会所のドアが開いた。
「お腹すいた~ぁ、お邪魔しまーす、誰かいませんかぁー?何か恵んでくださーーい。」
なんとびっくり、狙い通りにエリスが現れた。
彼女は元気が無さげで、疲れていたのかフラフラ歩きで集会所に入ってきた。
「あ、噂をしてたら本当に来たww」
「って、あれ?服を着てるよ?」
「失礼ね!私を裸族みたいな言い方して!」
そう言ってエリスはキヌタニの顔を思いっきりビンタした。
「ぶおっ!痛いよぉ!!みんな酷いよーー!!!」
キヌタニは相変わらずヤムチャに宙づりにされて暴れていた。
「というかその服……まさかスタークのじゃないわよね?」
「ん?ああ、あの子スタークっていうのね。彼を家まで追いかけ回したんだけど家の中から鍵をかけられちゃってさー、どうしようもなくなっちゃったのよ。裸のままなのも日焼けしそうだったから外に干してあった洗濯物だけもらって退散したってわけ。」
そう説明するエリスにスタークの服はちょっと大きいようだった。
「まあ、あれだ。お前が俺たちに危害を加えるつもりが無さそうなことは分かった。とりあえず服はちゃんと着てくれよ……。ところで、どうやってここに来たか分からないって言ってたな。不審者だと思ってさっきはあんな態度を取っちまったが、俺たちはニートと泥棒と露出狂以外なら大歓迎するぜ。」
ヤムチャの後ろでよしだくんも縦に首を振った。
恐らく二人にはアイスの食い逃げをしているという自覚が無かったらしい。
「ニートなら二人ほどいるけどね……。」
「アイスの万引き犯もいるけどね……。」
そのそばでミーシャとキヌタニは遠い目をしていた。
「……そ、そのだな、俺たちは他の集落がどこにあるのかなんて知らねえけど、服さえ着てくれるなら帰り方が分かるまで好きなだけ泊ってくれ。」
「(三つとも少なからず当てはまっている気がするんだけど……。)やったー!さっきまでこの村をぐるっと見て回ってたんだけど、こんな森の奥から家までの帰り方なんて半永久的に分からなさそうだし困ってたのよ~。この森で運命の・ひ・と❤、を見つけちゃったし!……で、この建物に泊まればいいの?」
ミーシャがエリスに食事を差し出すと、掃除機がゴミを吸う勢いで料理が彼女の口の中に消えていった。
「いや、ここには寝具がねえんだ。キヌタニの駄菓子屋は割と広い建物だから一人くらい増えても問題ないだろ。」
「ムシャムシャ……えー、こんな人間性が地味そうな奴の家に、モグモグ……泊まりたくなーい!」
エリスは食べながらキヌタニに軽蔑の視線を送って駄々をこねる。
「それが嫌ならここの床で寝るしかないなー、もしくは猪と野宿?wwwww」
シンタローはどさくさに紛れて横からエリスの食事をつまみ食いしようとした。
が、ミーシャが持っていたフォークで手を突き刺されてやめた。
「僕だってこんな変人泊めたくないy」
「もう、しょうがないわね。駄菓子屋で勘弁してあげるわ♪」
「よし、決まりだな。じゃあキヌタニ、後のことは頼んだからな!!」
キヌタニの意見など聞かずにヤムチャの一言により、全会一致(?)でエリスの滞在先が決まってしまった。
「嘘でしょ!?僕は嫌だあー!!」
キヌタニの叫び声が虫たちの鳴き声と共鳴し、森中に響き渡って夜は更けていった……。
南米とかではモルモットも食用なんだとか……。
あんなかわいい見た目のリスなんて生きている姿見たら料理なんてできないですよ!!
でもミーシャはそんなこと気にしない、なぜならサイコパスなので(関係ないだろ)
こんな人の少ない森でニートが二人いるってその割合を現代社会にあてはめたら間違いなく世界は崩壊します(高齢化社会と変わらんって)
100エーカーの森では炊事をするだけでニートではなくなるので働きたくない人にはおススメかも?
ただし、命の保証はありません。
変な料理を作った日には自分が料理になることでしょう……。