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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第3章 闇鍋注意報!!!!
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0-2 入国審査

ーー前回のあらすじーー


 捨て子だったよしだくんは博士と呼んでいた男性に育てられ、後にとある研究所で神童と言われるまでに成長を遂げた。


 しかし、人間とは汚いもので自分より優れた人間に対して良からぬ感情を持つ者も少なからずいる。

そんな者たちから僻まれた彼は100エーカーの森へと逃亡することになったのだ……。


 森の外から来たよしだくんと森の住人たち、二つの世界が混ざり合う時……生まれた物語はどのようなものだったのか?



 どうしても自分と分かり合えない人なんて世の中には沢山います。

むしろ自分のことを分かって欲しくないと思ってしまう人も私はたくさんいます。

そんな二つの世界は重なり合えど、決して交わることは無いのです。


この小説を読んでも大半の人は全く理解できず離れていくでしょう。


でも、それでいいと思うのです。


自分には自分の世界が、他人には他人の世界があります。


カオスな100エーカーの森の住人たちが暮らす世界と皆さんの世界は本編で交わるのでしょうか?

そして……門を潜り、三歩目を踏み出したその時……。



ガチーン!という音が足元で響いた!





「……!?」



俺の足先から僅か20cmほど奥にはノコギリがガッチリと地面に刺さっていたではないか!!





「近くで変な気配を感じたんだ。気になって待ち伏せしてりゃガキが一人か……。おい、子供でも入国審査は受けてもらわなきゃ困るぜ?」



さらには突然、頭上から声が聞こえてきた!






ドシーン!!!



 状況の把握が出来ていなかった俺の目の前に何かが降ってきた!!

すぐには、それが人だということすら理解できなかった。



 背丈は2mを越えた、見たこともないようなゴリマッチョ……だが顔つきは高校生くらいだっただろうか……?



門を潜った時には気が付かなかったが、どうやら門の上にひっそりと姿を隠していたらしい。




「ふん、間近で見たら尚更弱そうな子供のようだな!!さて、急だが単刀直入に聞かせてもらおう。お前は誰だ?どこから、何のために来た?」




彼は威圧するかのように背の低い俺を見下ろしてそう聞いてきた。




そう、これが俺とヤムチャの出会いの瞬間だった。








 少しの間だけ俺は急なことに動揺して黙っていたが、落ち着きを取り戻してから思考を巡らせ、一つずつ質問に答えていった。



「僕の名前は……ヨシダっていいます。」



そう、博士が俺に名前をつけてくれた。


 名前を聞かれたら『ヨシダ』と名乗りなさいと、そう言われていた。

何でも彼の古い知り合いでそんな名前の人物がいたらしい。




「僕は研究所から抜け出してきて、ヘリコプターとジープでここまで来ました。」



「研究所?そりゃ何て言う名前の研究所だ?」


「えっと、それは……。」



 俺はこの質問に答えることができなかった。

別に博士から口止めされていたとかいうことでない。



 今まで自分が研究をしていた研究所の名前を純粋に知らなかったのだ。

名前など知らなくとも、そこだけが俺の居場所だったから疑問にも思わなかった。



「名前は……分かりません、知らないんです。」



「分からない……?おいおい、嘘を思い付かなかった、ってとこか?」




彼は睨み付ける目力をぐっと強めてさらに続けた。




「まあ一応聞いてやるか……どうしてここに来た?」



その時していた彼の表情は鬼のような怖さだった……今でもはっきりと覚えている。




 『どうしてここへ来た?』と言うよりは、『ここへどんな悪さをしに来た?』と聞いているかのような態度だった。




「うっ……!?こ、ここには……この村にとって有益な物を開発するために……。」


「有益だあ?じゃあ具体例挙げてみやがれ!」



 彼はもうここで俺が観念するだろうとばかりに余裕ぶっていた。

しかし、俺にも博士から貰った案があった。



「えっと……これを知っていますか?」



俺は引いてきたリヤカーからポケベルを取り出した。




「あ?何だそれは??ゲーム機か?そんな役に立たねえ物なら必要ねえぞ。」


「違います、ポケベルっていう機械です。離れている人とメッセージを送り合えるものです。」




「ポケベル……ああ、テレビでたまに見かけるあれか!!実物を見たのは初めてだが、こんなにコンパクトなんだな。つまり、これをくれるってのか?確かにそりゃ便利だがよ……それを開発とは言わねえぞ。」



 彼は俺が持っているポケベルを物珍しそうに見ていたが、まだ俺のことを信用してはくれなさそうだった。




「もちろんポケベルはここに住む皆さんに進呈します。でもこの機械があるだけではまだ使えません。情報を送るために電波でのやりとりが必要なんです。なので、僕がその電波の動きを中継する設備をこの村に作ります。」



「つまりは……あーー、その設備がありゃポケベルが使えるようになるってことか?」



「そういうことです。どうやらこの村には送電塔があるそうですね。できるだけ高い場所に作りたいので送電塔を改造するつもりです。急な話ですがそこまで案内してもらえませんか?」



そこまで言うと彼は難しそうな顔をした。



「おいおい、送電塔を改造するだあ?じゃあ俺たちは電気が使えなくなるってことだろ?電気と引き換えにポケベルが使えるようになってもそれは割に合わねえな……。」



「いえ、そんなことにはなりません。あくまで電波のやりとりができる設備を付け加えるだけですので電気も今まで通り使えますよ。」



「うーむ……聞いてるだけじゃ正直さっぱり分からねえや。まあいい、とりあえず案内してやろうじゃねえか、ついて来い。」



 彼は俺に背を向けて歩き出した。

俺は彼と距離を詰めすぎないよう、気を付けてついて行った。








「おい、着いたぞ。お前の言う送電塔はこれで合ってるか?」



彼は首をしゃくって目の前にある鉄塔の方を向いた。



「……ったくよ、本当は早く何を企んでいるのか白状して欲しいもんだぜ!そしたらどうしてやろうか……逆さ吊りにして野生動物の餌にしてやるのが良さそうだな??」



 明らかに俺のことを疑っていたようだったが、別にやましいことなんて何もなかったのでとても怖かったが気にしないことにした。

 



 そして、その送電塔は……見事なまでにボロボロであちこちが錆びつき、いつ倒壊してもおかしくない、時代を感じさせる建造物だった。




「えっと……これで合ってますけど、これはいつからメンテナンスしてないんですか?」


「ああ??メンテナンスぅ??んなもんしたことねえよ。」


「そ、そうですか(でしょうね……。)……ではこの送電塔の修理から始めないといけませんね。まずは上に登るための足場を組みます。使ってない鉄骨やネジはありませんか?」



「んあ??足場だあ?も、もう、何が何だかさっぱりだぜ……。」




 そんなことを言っていたが、彼はどこかへ行ったかと思うと足場を組むための材料をどっさりと持ってきてくれた。




「ありがとうございます。では、力仕事になるので手伝ってくれませんか?」


「ああ!?俺も手伝うのか?……まあ、力仕事ならお手のもんだがよ……。」






そしてブツクサと始終文句を言っていたが、彼は投げ出すことなく俺の作業に協力してくれた。



いや俺もよく物怖じせず、あのヤムチャに手伝ってなんて直球で言えたものだとは思うさ。


 でもそれはヤムチャが素直に建材を用意してくれて、本当は優しい人間なんじゃないかって思えたからだと、今になって分かるんだ。




そして……あっという間に夕方になった。




「簡易的なものですが、何とか今日中に足場を組み終えられましたね!手伝ってくれてありがとうございます。」



「あ、ああ……お前、弱っちそうなのに元気だな……。俺はいつも力仕事だの狩猟だのしてるが、ここまで疲れんぞ?」



彼は疲労からか地面に突っ伏していた。



「……さて、へばってる場合じゃねえな。もう今日は終いにするぞ、ちょっとついて来い。」



ヤムチャは起き上がると、スタスタとどこかへ歩き出したので俺はまた彼の背中を追いかけた。

 ヤムチャは昔から化け物でした……。

そしてとても素直でもありました。


どうしてこう育っちゃったの……?(←※言ってみたかっただけで今も大して変わってないです!)


 まだ幼いよしだくんはあどけなさが残っていました。

今の彼に『あどけなさが残ってるね』などと言ったら間違いなく怒られるのでお気をつけて!



 作者は雰囲気が若いとたまに言われますが、それは子供っぽいの裏返しだった……!?

いや、そんなことはない……読者の皆さんはこの小説を子供が書いてるとお思いで?



次回はヒロイン(らしくない行動ばかりとるあいつ)の五年前を紹介します!!

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