2-25 謎の会話
ーー前回のあらすじーー
フジモンの歓迎会というめでたい場で、シンタローとエリスの中身が入れ替わってしまったという衝撃の事実をヤムチャは報告するも、ミーシャは至ってドライな反応を示していた……最初だけは。
エリスがシンタローの体で露出狂になる可能性があると知った彼女はチッダールタに二人を元に戻すよう懇願した。
だが、そんな方法はチッダールタも知らないという……。
ヤムチャがチッダールタを介して二人に強い衝撃を与えればいいと発言すると、命の危険を察したのかチッダールタは姿をくらませてしまった。
ヤムチャに対して怒り心頭な住人たち、結局いつもの乱闘騒ぎになってしまうのであった……。
森の住人たちはリアルスマ〇ラでもしているのでしょうか?
だとしたらヤムチャは攻撃力が半端ない、体重が重いから吹っ飛びにくい、ジャンプ力もあるから復帰もできる……彼に勝てるキャラクターなんていないと思います。
我こそは最強のファイターだという方は是非ヤムチャに勝負を挑んてみてはいかかでしょうか?
もちろん森の外まで飛ばされようとも救助は致しません。
「危ない危ない、後少しでまた酷い目に合うところだった……久々に英気を養おうと休日モードになってみたがロクなことにならないな。」
ヤムチャにビールをかけられてパジャマが濡れてしまったので、いつものイルミネーションが付いた服に着替えたチッダールタは洞窟で一休みしていた。
そこに、ヤムチャがエリスとシンタローを両脇に抱えて洞窟にやって来たので、慌てて姿を消して洞窟から抜け出した。
そして彼は散歩がてら森の夜道をフワフワと漂っていた。
「確かスタークは廃寺に寝かされてると言っていたな……様子を見に行くか。」
チッダールタは廃寺の入り口まで来ると、念のために姿を消してから建物の中に入った。
そこには雑に敷かれたござの上で仰向けに寝ているスタークだけが異常に存在感を放っていた。
「スターク……息はしてるな?と言うか……いや、まあこいつなら平気だろう。」
「おい……。てめえ……そこにいるんだろ?」
スタークの弱々しい声が広く殺風景な建物の中に響いた。
「おっと、もう意識が戻っているのか。これだからスタークは。」
「そこは……さ、さすが……スターク様……!だろ?」
スタークは目も開けず、体も動かさず、口だけを開いていつもの傲慢さをさらけ出した。
「やれやれ、これほど瀕死になっても口だけは達者だな……。何が起きたかさっぱり分かっていないだろうから説明してやろう。お前は宇宙船の一部が空から降ってきたことによって手足がバラバラになり体もぺちゃんこに潰れたんだ。」
「ば、……バカか?そ、そんなこと……で、俺がこんなにも……大ケガを負うかよ……!」
スタークは四肢を震わせていて動かそうとしているのだろうがそれは叶わなかった。
「しばらくはお前の命を救ってくれた担当医の言うことを聞いて安静にしてろ。その間、自分が超人ではない、普通の人間であることをちゃんと自覚するんだ、これだからスタークは。」
チッダールタはそれだけ言うと、さっさと廃寺から出て行ってしまった。
「クソ……俺が、普通の……人間だと……!?何も……知らねえ……くせに!!!」
そしてチッダールタは次に駄菓子屋へ入ろうとしていた。
「晩飯も食い損ねてしまったし、駄菓子屋で何か拝借していくとしよう。……さっき少し見た時は屋根が無くなっていたが建物の内部は平気だろうか?」
「ん?(何やら足音と話し声が聞こえるぞ?)」
彼はイルミネーションの明かりと姿を消して、照明の点いている駄菓子屋の中を覗きこんだ。
「……ねえねえ、これは随分と酷くやられたのね。飛翔体が落ちてきたっていう報告が監視班から入って様子を見に来てみれば、もう駄菓子屋がめちゃめちゃなことになってるし!それで?君の方はそばに脱け殻が落ちてるけど脱皮でもしたわけ?それからさーあ、今の君は結構無様な状態だけど一皮剥けてMにでも目覚めたのかしら?」
「(これは……ミーシャでもエリスでもない女の声??いつか聞いたような……??)」
「ち、違うよコルク!隣で気絶してるのはこの時代の僕だよ。で、僕自身は未来からコルクが送ってきた僕なんだ!まあ、どうして縛られてるのかは僕にも分からないや……。」
「私が?ああ、今開発中のタイムマシンのことね。それで、未来の私は何のために君をこの時代に送ったわけ??」
「コルク……きっと君はあの作戦が失敗するなんて思いもしてないだろうね……。」
「(未来から……そしてあの作戦?もしかして!?……いや、ここは話の続きを聞くべきだな。)」
「今計画を立てている途中のあの作戦かしら?あれに失敗する要素なんてないわよ?」
「そう、僕のいた世界では確かにターゲットの生け捕りには成功した……。だけど、どうしても懐柔出来なかったんだよ。結果的にこの森は焦土になっちゃった……。あれは、僕たちの手に負えるものじゃなかったんだよ!!」
「(!!!!!!これは……!)」
「!?!?……つまり、私にターゲットを始末しろと?未来の私がそう言ってたの?」
「うん……これは未来の君の命令だ。この計画は僕たちの世代で達成するのは無理だってね。」
「そんな……せっかく現れた彼を消せと……。でも未来の私が言うんだもの、間違いない、か。……分かったわ、計画は変更する。だから用が済んだならこれ以上は計画に干渉せず、早く元の時代に帰りなさい、きっと未来は変わってるはずだから。」
「……いやねえ、コルク?僕を飛ばしたタイムマシンは片道切符なんだよ。と言うか、開発中の自分ならそうなりそうなことは分かってるよね??未来の君は『帰るんならそっちの時代の私にタイムマシンを作るのを急がせればいいじゃない』って言ってたんだよ?」
「……ふーん、知らないけど。じゃあタイムマシンが出来たら呼んであげるから、それまではここで待ってなさい。」
「えっ!?……そ、そんなあ……あんまりだよ……!」
コルクと呼ばれていた女性は足音だけを残して気配を消してしまった。
「ふん、随分と薄情なお仲間だな。」
チッダールタはイルミネーションを点け、姿も現してキヌタニの前に出てきた。
「ひ、久しぶりだね、チッダールタ!って、それは僕にとってだけか……。もしかしなくても、全部聞いてたのかな?それは困るんだけど……。」
「ああ、聞いてたとも。しかし、未来から来たお前がこのタイミングを狙って飛んできたのは私からすると少し妙だな。」
「へえ、そうなんだ……。実を言うと、僕もこうやって過去に駄菓子屋で縛られていた記憶なんてないんだよ。分かっていたならこの時代には飛んでこなかったのに……どうにも変なんだ。」
「……ほう、しかし未来から来たとはいえ、所詮お前はキヌタニだ。きっと記憶が抜け落ちてるのだろう?」
「そんな……。みんなね、同じようなことを言うんだ。……ねえ、チッダールタ?それはともかくコルクとの会話を聞いていたって言ったよね?だったら……君はもう僕らにとって危険因子だよ、消えてもらわなきゃ!」
キヌタニは腰からピストルを抜いた!
「ふん、いくら私でもお前相手に後れを取るほど老いぼれてはいないさ。」
しかしチッダールタはすぐさま間合いを詰めてピストルをキヌタニから奪った!
「お前も未来から来たと言っていたな?なら、私にとってもお前は非常に大きな危険因子だ。」
そしてそのピストルの銃口をキヌタニに向けた。
「あ……!やっぱり……僕を殺す気?」
「当然だ、下手な動きをされては困るのでな。」
「そっか……。でも無駄だね、もうこの時代での用は済んだんだ。コルクに僕が未来で見てきたことを告げた時点で僕の役目はとっくに終わってるよ。……僕を殺したってもう何も変わらない。」
「そうか、何にせよお前の言うことなど信用ならんな。……ではさらばだ、未来からのスパイよ。」
ドーーーン!!という音が闇夜に鳴り響いた。
それっきり、駄菓子屋から物音が聞こえてくることはなかった……。
第2章 名医、隕石になるってよ
END
衝撃の展開を迎えたところで二章は完結です。
何故、チッダールタは未来のキヌタニを殺害する必要があったのか?
そもそもチッダールタの正体とは?
コルクと呼ばれた女性は何者なのか?
本当にキヌタニは森の住人たちを救おうとしていたのか?
そんな疑問を抱えたまま物語は三章に進むわけですが、次章はほぼ茶番です……。
肩の力を抜いて読んで頂けたらと思います!!
読者の皆さんがこのカオスな世界に来てから随分と経ちますがメンタルの方はいかがでしょうか?
良い感じに病んでいるようならとても嬉しいです!!
全然平気と言う方にはもう少し刺激を強くする必要がありますね……。
まだまだ先の四章で覚悟していて下さい!!!