2-24 手荒な歓迎会
ーー前回のあらすじーー
スタークの蘇生を試みた三人のもとにヤムチャとミーシャが戻ってくると、何とびっくりスタークは見事に生き返っていた!!
彼の入院先が森には存在しなかったので応急措置として彼は廃寺で療養することになった。
その後、集会所でフジモンの歓迎会をするために移動しようとした時、彼は遠くの方に新たなる怪我人を見つけてしまった。
それは洞窟でヤムチャに逆転サヨナラスリーランホームランを打たれたチッダールタ、エリス、シンタローのおバカトリオであった。
しかし、彼らがただ怪我をしていただけならどれほど良かっただろうか……?
エリスは自らを銀河一の芸術家、シンタローは宇宙一の美女と名乗っており……すなわち彼らは中身が入れ替わってしまっていた。
そしてその事実に気が付いたのはエリスとシンタローがお互いの姿を見合わせた時であり、そうでもしなければ例え中身の魂が入れ替わろうとも意外と分からないものだな……と物語を書いた作者は思ったのであった……。
人に言われないと気が付かないことってありますよね。
貧乏ゆすりとか、シャツのボタンの掛け違えとか、パンツの履き忘れとか……。
作者はズボンのチャックがよく全開になっています。
でもそれって他人に指摘しづらいじゃないですか、だから一日中開けっ放しになっていたり……。
誰か「ズボンのチャック全開ですよ!!」って私に教えてください……。
そして日が暮れて……。
「よーしお前ら、飲み物は行き渡ったか?それじゃあ、隕石騒動お疲れ!兼、ようこそフジモン、100エーカーの森へ!乾杯!!!」
「「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」」
読者のみんなともカンパーイ!byよしだくんだ!!
俺のナレーションが随分と多い気がするが……酒を飲む奴がやるとこういう時は酔っぱらってナレーションどころじゃなくなってしまうから俺がやるしかないな。
さて、俺の目の前には飲み物、奥にはミーシャのご馳走、その奥はスナック菓子、そしてさらに奥にはメイド服を着たシンタローとタキシードを着たエリスが二人とも頭に包帯を巻いて座ってるんだが……どういうことだ??
「あ、そうそう!お前らに一つお知らせだ!もう気づいていると思うが、お前らと同じテーブルにタキシードとメイド服を着た、明らかに目障りな二人が席に着いてるな?」
「ああ、それは分かるんだが……。」
ずっと疑問に思っていたのでついつい口に出してしまう。
「え?そんな奴どこにいるのよ?見当たらないけど??」
シンタローがふざけてエリスの口調を真似る。
全く……お前がメイド服なんて誰得だ??
「ああ、そうだな。自分で自分の姿は見えないもんな!!……それでだな、実はこの二人……、」
「コスプレに目覚めたの?」
「違うってくじらん、コスプレじゃなく下僕に目覚めたんだよ。」
くじらんが口を挟んで、さらにチッダールタが訂正する。
チッダールタ……?
お前も頭に包帯巻いてるし、口調も違うし、服がハート柄のパジャマって……。
本当に俺の知らないところで何があったんだ?
「違う違う!!そうじゃなくてこの二人だな……、」
「SとMに目覚めたとか?」
今度はミーシャが口を挟んできた。
それは目覚めたって言うより……、
「それは元々じゃねえか?……って、別にクイズを出してるわけじゃねえんだよ!!お前らの予想はどうでもいいんだ!!!」
「俺達は一体何に目覚めたって言うんだ?」
「うーん、全然身に覚えがないわよね~。」
今度はエリスとシンタローが口調を交換して割り込む。
「おい、お前ら。」
ヤムチャが二人の肩に手を置いた。
ああ……このパターンは……。
「もう、この服お気に入りなのに……。」
「私もパジャマを一着しか持ってないんだけど……。」
「俺も……いや、俺は別に困らないや。」
「ヤムチャ君、そんな手荒なことしなくてもいいじゃないか……。」
「フジモン、この森じゃあこれが日常なんだ。この森で暮らすからにはこの森の流儀は守ってもらうぞ。……いいかお前ら、口を挟まずによーく聞け?」
結局エリスとシンタロー、さらにミーシャ、くじらん、チッダールタも巻き添えにされ一人一本、ビールを頭から注がれてしまって五人はびしょ濡れになっている。
ヤムチャ、随分と勿体ぶるがこういう時は決まってどうでもいいことばっかり言うんだよな……。
「んまあ、流儀も日常もヤムチャの独断と偏見に基づいてるけどなwwww」
ジャバジャバ……シュワシュワ……。
これはシンタローとエリスの真後ろに立って話していたヤムチャが、二人の頭にもう一本ずつビールを注いでいる音だ。
「えっ、何で私まで……。」
メイド服姿のシンタローが振り返って不服そうに口を尖らす。
「うるせえな、めんどくせえんだよ!もうお前らは連帯責任だ!!はい!で、実はこの二人!中身が入れ替わってます!!!!」
ああ、何だよ……。
それだけ溜めといて言いたかったのはそんな下らないことか。
「あれ!?よーく見たらこの二人、エリスがタキシードでシンタローがメイド服だ!」
「えっ??……本当じゃない!!てっきり逆だと思ってたわ!それなら何の違和感もないもの。……てことは本当に入れ替わってるの!?」
「違和感ないってww普段の俺たちはお前らからどう見えてるんだwww」
くじらんとミーシャの発言にエリスが笑いながら言い返す。
どう見えてるって……日常的にそんなふざけたコスプレしてるように見えてるんだよ!!
「そうだわ、予知夢よ!!私とシンタローが入れ替わったんじゃなく、エリスとシンタローが入れ替わったんだわ!!あーー私が巻き込まれなくて良かったー!」
「あっ!!!そうだ!wwそういえばそんなこともあったなwwすっかり忘れてた!www」
ん?ミーシャ達は一体何の話を……?
と言うかヤムチャもヤムチャだ、二人の中身が入れ替わったくらいで大袈裟な!
ん?入れ替わったくらいで……??
「ええええええ!?!?お前らが入れ替わってるーーー!?!?!?」
俺はあまりの衝撃で手に持っていたお子さまビールの瓶をうっかりぶん投げてしまった!
「ちょっと!?何でよしだくんまでビールをかけてくるのよ!?」
そして中身がシンタローの……いや、エリスの?顔面にクラッシュしてしまった。
「い、いやすまない……。ヤムチャの言うことだからどうせまたしょうもない内容だろうと思ってたんだが……、ちょっと時間差でビックリしてしまった。」
「おいおい、随分と信用がねえな!あ、エリス……じゃなくてシンタロー、連帯責任な。」
ヤムチャはエリスの殻を被ったシンタローの頭に三本目のビールを注ぐ。
もう二人はビールまみれになっていて、多分これから三日間はビールの匂いが体に染み付いてとれなさそうだ。
「いや、これはあまりにも理不尽すぎるwwww」
エリスはこんな間抜けな笑い方しないもんな、やっと謎が解けたぞ……。
「それで、どうして二人は入れ替わったの?」
「それなんだよ、くじらん。ヤムチャのせいで私の神通力が暴走しちゃったんだよねー。」
ん?ヤムチャのせい??
おいヤムチャ!?お前も何か関係あるのか?
他の奴らもみんな一斉にヤムチャの方に視線を向ける。
「ちょっと、どういうことよ……?洗いざらい話すか洗いざらい魂を抜かれるかどっちがいい!?」
ミーシャは機関銃を構えようとする。
洗いざらい魂を抜かれるって何だよ、魂って半分残ったりするのか?
「魂を抜くまではしなくてもきっちりと一から十まで話してほしいところだな。」
俺もミーシャに加勢する。
「い、いやいや!!違うんだ!お、俺はバカトリオに天誅を与えただけだぞ!!」
「仙人とエリスの首をテレビ画面の中に突っ込んで、そのテレビの側面に俺の顔面をクリーンヒットさせるとかwもう天誅どころかいじめだよな☆wwww」
「おい!!そんな詳細に説明しなくていいぞ!!」
「へー……本当に限度の知らないバカね!とりあえず銃弾100発埋め込まれて反省しなさい!!」
ミーシャが機関銃を構えたと思うと、次の瞬間からドドドドド!!!という毎回お馴染みの機関銃乱射が始まった!!
「ここで撃つなーー!!集会所まで壊れちまうーーー!!」
「ぎゃああああっーー!!!!止めてくれー!!!殺さないでくれたまえーー!!」
この騒動に慣れていないフジモンは涙目でテーブルの下に潜って伏せている。
「あーーー、いつも通りだね。」
「そうだなwwww」
「やっぱりそうなんだ。ふーーん。」
それに対してくじらんもエリ……シンタローもチッダールタも自分が鎖線から外れてるので平然とその光景を見守っていた。
「ウィー、ヒック……もーー飲めなあい……。」
で、エリスは何故か一人で酔っぱらっている。
みんなが気づかないうちにこいつはずっと飲んでたな……?
「ちっ、弾切れか!今日はここまでにしといてやるわ!!」
一番限度というものを知らなそうなミーシャは機関銃を下ろす。
「ハァ、ハァ……何とか一発も当たらずに済んだな……!」
「ひぃぃぃ……!!!い、一体何だっていうんだ!?み、ミーシャ君!そんな危険なことをするんじゃない!!もっと平和的に解決しよう!!!」
フジモンが目を真っ赤にしてテーブルの下から這い出てくる。
「全くフジモンの言う通りだ!そんな手荒な真似をするもんじゃねえよ!!」
お前……さっきと言ってることが真逆だが……?
相変わらずヤムチャときたら昼間と同じように銃弾を全部避けて無傷なんだからとんでもない奴だ。
それにしてもだ、エリスの歓迎会をやった時に壁や天井に凹みが出来て、リアルRPGをやったあたりから何故か天井に一箇所穴が空いていて、そんでもって今の銃撃で至るところ弾痕だらけ。
この集会所もいい加減改修しないといつか崩落しそうだ……。
「それで、どうやったら二人は元に戻るんだ?」
俺はとりあえずチッダールタに聞いてみる。
「えーー、私に聞かれてもなあ……、本来魂を入れ替える神通力なんて使えないし……。」
「えっ!?じゃ、じゃあ元に戻らないの!?」
くじらんがエリスとシンタローを哀れみの目で見る。
「んー……て言うかさあ、マジレスしていい??」
ミーシャが真顔でみんなのことを見渡す。
「この二人、元に戻らなかったところで何か困ることある?」
え?お前は一体何を言ってるんだ???
さらにミーシャは続ける。
「だってこの二人はどっちもバカじゃない。バカとバカが入れ替わったところで何か変わるの?」
……と言うのがバカの意見だな。
さすがにそれは色々と困りそうだぞ……??
「シンタローに薪を切って貰っているが、エリスの身体能力でそれが出来るのか疑問だな……。」
俺は一つ具体例を挙げた。
「そんなこと、シンタローの体に入ったエリスがやればいいだけじゃないの?」
うーん、あっさり言い返されるか……、本当にそれで何とかなるのか怪しいけどな。
まずもって、エリスがまともに仕事をするとも考えにくいんだが……。
「て言うかシンタローの体でメイド服を着られるとかなり目の毒だよね。」
今度はくじらんが具体例を提示する。
「そうだよなwwwそれにエリスが服を脱いだら、こいつじゃなくて俺の裸がみんなの前に晒されることになるじゃねえか!!wwww」
シンタローはエリスの顔を赤らめる。
そして彼女が、いや彼がそう言った瞬間ミーシャの表情が凍りついた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!お願いしますお願いします!どうにかしてあの二人を元に戻してあげてくださいー!!!」
彼女は爆速で椅子から飛び降り、チッダールタの前で土下座までしている。
「うーーん……さっきは大きな衝撃が加わってこんなことが起きたんだから、もう一回二人の体を思いっきり衝突させるとか……、」
「ふぇ……痛ーい!……ヒック!」
「いだあー!!!wwww」
チッダールタがそう言い終わらないうちに、ミーシャはエリスとシンタローの頭を掴んで思いっきりぶつけ合わせた!
ガッツーン!!という鈍い音が集会所に鳴り響く!
めっちゃ痛そうだが……どうだ、元に戻ったか?
「いやいや!!神通力でどうにかなったんなら仙人を間に挟まなきゃダメだろ!」
ヤムチャがそう叫んでチッダールタの方を見る。
「あら?いないけど……?」
ミーシャが二人の頭から手を離して辺りを見渡す。
「まさか……逃げたの!?」
確かに、集会所のドアがいつの間にか開いている。
「ええー!?じゃあ俺、ずっとエリスのまま!?wwww」
「うーーん……!?私もこんなヒョロヒョロの貧相なシンタローのままなんて嫌よ……!!」
エリスはさっきの衝撃で酔いを醒ましたようだ!
そして再び、ヤムチャの方にみんなの視線が向いた。
「おい!俺の体を返せ!!www」
「そうよ!!返しなさい!!」
そして突然エリスとシンタローが彼に殴りかかった!
「全く!どうして私がシンタローの裸を見ることになるのよ!!」
さらにミーシャも蹴りかかった!
……お前ら落ち着けって。そんなことをしたって二人は元に戻らないぞ。
「き、君達!暴力は止めるんだ!!」
「そ、そうだよ、こんなことしたって……うわっ、ミーシャ何を!?」
「うっさいわね、体格が似てるからあんたらも同罪!!」
理不尽なことに、止めに入ったくじらんとフジモンも巻き込まれて三人からリンチされる!!
もう俺はこの状況に何の手出しをする気にもなれない。
「ちょっ!?何で僕までこんな目に遭うんだい!?僕は何も悪くないのに!」
「俺も無実だよー!?!?」
「何なら俺だって無実だぞ!!」
「「「お、お前が言うなーー!!」」wwww」
ヤムチャが悪ノリをしたせいで彼らの暴力はさらにエスカレートしていく!
ミーシャは機関銃を振り回し、シンタローはビール瓶を投げつける!!
俺が今、この状況を見て望むのは、集会所が倒壊しないことくらいだな……やれやれ。
チッダールタが逃走したのでエリスとシンタローは元に戻れなくなってしまいました……。
で、その状態で次回、二章の最終話を迎えることとなってしまいました……。
彼らは元に戻れるのか!?
どうでもいいという意見を除けば、きっと戻って欲しくない読者の方が多いのではないでしょうか?
その方が面白いですからね!!(酷いなあ。)
さてさて、チッダールタはどこに行ってしまったのか?
行先は彼にお任せしましょう、読者や作者があれこれと口を出すものではありません。
彼の逃亡先を予想するとこの先の展開が読めてしまいそうので、次回を読むまでは座禅を組んで心を「無」にしておいてください!!