2-17 荒廃した森
ーー前回のあらすじーー
100エーカーの森では第一回しりとり大会が開催されていた。
第一回戦:初手でミーシャが「キムチ乗せ激辛豚キムチ丼」を繰り出して敗北。
第二回戦:127手目でミーシャが頭文字を無視して敗北。
と、ミーシャの完封負けであった。
ついでに隕石も降ってきました、以上。
隕石のことはどうでもいいのかって?
そりゃ、隕石としりとりならしりとりの方が大事ですよ!!
はい、読者の皆さん!!
しりとりの重要性についてしっかり熟慮してから本編に進むように!!
じゃあここからは俺、よしだくんが森の様子を解説していくことにしよう。
「こ、これは……。」
「本当にここは、100エーカーの森なのかしら……?」
みんな洞窟から出た瞬間、唖然とした表情になった。
こんな光景を見たら無理もないさ……。
俺だってこんなの信じたくない……。
まず、この森の砂利道の両側に生えていたはずの低木や雑草は全てなぎ倒され、土壌が丸見えになってしまっている……。
そして遠くを見れば森の外、すなわち密林の、幹が太くない木は軒並み折れてしまっている。
普段の森は鳥や虫たちの鳴き声で溢れていた。
でも今は信じられないくらい静かだ……まるでみんな死んでしまったかのように。
そんな光景が見渡す限り360度広がってるんだ、これじゃあ家や電波塔がどうなってしまっているのかなんて想像したくもない……。
「あ……駄菓子屋が……。」
くじらんの声に反応して俺達も右にある駄菓子屋の方を向く。
「マジかよ……www」
「嘘だよな……。」
俺達の目に映る駄菓子屋には屋根が存在しなかった。
壁には砂利が何十箇所も突き刺さり、入り口にあった古めかしい曇りガラスの引き戸はひしゃげて店内へとめり込んでしまっている。
もはやあれを建物と呼ぶことが果たして正しいのだろうか……。
「お前ら、見に行きたい気持ちも分かる。だが、今は落下地点を調べる方が先だ。木の倒れてる向きからして駄菓子屋とは逆方向みたいだな……。」
ヤムチャは駄菓子屋から目を離せないくじらんの背中を押して北三叉路の方へと歩かせる。
「……なあ、遠くに見えるの……あれ、煙出てないか?www」
シンタローが丁度その北三叉路の辺りを笑って指差した。
確かに白く漂っているようなものがここからでもうっすらと見える。
「ここからじゃよく分からないからもう少し近づきましょう。」
ミーシャに言われて一同、そこへ近づいていく。
今更だが、まさか本当に隕石が降ってきたなんて、悪い夢ならいいのにな……。
そして近づくにつれて、少しずつ気温が下がっていくのを感じる……。
「な、何だかめっちゃ寒くない??wwww」
そう笑うシンタローの腕には鳥肌が立っている。
実際もう冬が来たんじゃないかと思うくらい不思議と寒い、一体どうして……?
「ねえ……俺の家があったあの場所に窪みがあるんだけど……。」
ん?本当だ、確かにくじらんの家に至る道のりはどの方向からでも坂道になっていて、山の頂上みたいになっていたはずなんだ。
(※その理由を忘れた人は1-7話をもう一回チェックしよう、解説が載っているぞ!!)
でも今は何やら頂上が抉れて、煙まで出ているからまるで火山みたいになっている。
「てことは、落下地点はあそこで決まりだな。にしたって何でこんなに寒いんだよ??」
「急に寒くなるって……まさか……幽霊??」
くじらんがそんなことを言った瞬間、人影が一瞬にして一人分減った。
「……あれ?ミーシャはどこに行ったんだ??www」
俺達はあたりを見回す。
確かにミーシャが一瞬にしてどこかに消えてしまったぞ!?か、神隠しか???
いや、こんな昼間からそんなバカな……。
「悪霊退散悪霊退散悪霊退散……、」
と、その時足元からそんな呪いのような声がした。
みんなは一斉に声のした足元を見る。
そこではミーシャが地面に腹這いになり、頭の上に機関銃を乗せてずっと悪霊退散って唱えてるじゃないか……。
「ミーシャ……?急に何をやりだすかと思えば……そんなことしてる暇はねえんだ、早く立t……」
「いぎゃあああっ!!!!あーくりょーうたーいさーんっっ!!!!!!」
ヤムチャがミーシャを起こそうと首根っこを掴んだ瞬間、彼女は飛び上がって機関銃をぶっ放したじゃないか!!
「だああああっ!!!撃つな撃つな!俺だよ!!つか、幽霊にそれは効かねえだろ!!」
ヤムチャは大慌てでミーシャを遠くへ放り投げた!
みんなびっくりして飛び退いたが、幸いにも機関銃の鎖線上にはヤムチャしかいなかったので誰も怪我をせずに済んだ。
ヤムチャ?あいつはちゃんと弾丸を全部避けたさ、まあ普段通りだな。
「げっ!!!窪みのとこにミーシャ投げ入れちm……、」
「いやああっ!!寒い寒い寒い!!寒すぎるー!!!」
ヤムチャが言い終わらないうちにミーシャは悲鳴をあげて火山の噴火口……いや、窪みから転がり出てきた。
「ちちちちょっとととぉ……なななにするるのよよぉ……!!ゆゆゆゆうれいかとおおももったじゃないっ……!!!」
そのまま転がって俺達のもとに戻ってきた彼女はガタガタと震えながらヤムチャに訴える。
「ミーシャの腕に霜が降りてんだけどあそこどんだけ寒いの?wwww」
本当だ……あんな一瞬で霜がつくなんて……一体どんな隕石なんだ……?
「とにもかくにもあの煙の正体を確かめなくちゃならねえ。お前ら、行くぞ。」
「わ、私をあそこに投げ入れたことはスルーなのね……ガリガリ!!!」
ミーシャに首を噛まれているヤムチャを先頭に、俺達は隕石の正体を確かめに近づいた。
いや、本当に寒い!特に足元が!
白い煙が足元の坂道を下って行ってるんだがどうしてこの煙、こんなに冷たいんだ??
「本当に寒いな……。落下地点まで来たが、煙で窪みが埋め尽くされて何も見えやしねえ……。」
もう全員この寒さで震え上がっている。
吐く息も真っ白だしさすがに限界だ……!
目を開けるのもしんどくなってきた……。
「…………※●◎@∈……。」
……ん?何か今、天から声が降ってきたような?
またチッダールタか?いやいや、あいつは今洞窟の中だし、こんな声じゃなかった。
てことは……寒すぎてヤバイ幻聴が聞こえてるのか……?
「……♡◆┗¶!△◇【♭ー!!」
さっきより声が大きく聞こえる……まさか凍死しかけててお迎えが近づいてるのか……!?
「あ!何かが空を飛んでるよ……!!」
くじらんが頭上を指差す。
おい、それは死神か天使だろ……、天使だといいんだがな……。
「あれは……人間がパラシュートで舞い降りてきてるのか?wwwww」
え???
人間????
パラシュート?????
俺の頭はこの寒さのせいもあって思考が完全に止まっている。
俺は極寒の中、力なく空を見上げる。
「君たちー!聞こえるかーい!?」
これは……確かに人間の、おそらく男の声だ!!
ミーシャやヤムチャもそれに反応して上を見上げる。
そしてあそこは上空30mくらいだろうか……確かに何か変な服をを着て……るのか?人間がパラシュートで地上に降りようとしている!
俺の脳味噌はこの衝撃で息を吹き返した。
「言葉が通じてるなら危ないからそこから離れなさーーい!!」
「り、理由は分からないがとりあえずあの人が言うようにここから離れよう!」
俺はみんなにそう言って足早に極寒の火山を降りていく。
「うあーあ!!パラシュートのバランスを崩したあー!助けてくれーー!!!」
しかし間髪入れず、上空で彼のパラシュートがフラフラとした軌道を描き、じたばたと暴れながら叫びだした。
いや、助けてって……どうやって??
空を飛べってか????
「私に任せなさい!今助けてあげるわ!」
って、ミーシャは言うが何故かその手には機関銃が握られている。
何のつもりだ?なんて聞く猶予もなかった。
あいつはパラシュートを必死に操る彼を目掛けて発砲しまくる!!
「わーーーー!?!?な、何をするんだい!このままだと……落ちるー!!!」
「おいー!?お前はどうして機関銃撃つしか能がねーんだよ!!バカか?バカなのか?」
いや、バカなんだろ!!
ヤムチャはミーシャから機関銃を取り上げて肩を揺さぶる。
そしてパラシュートには弾丸が命中してしまったらしく、心なしかあの人が降下するスピードも上がっている気がする……。
「機関銃返してー!!だってパラシュートのせいで大変なことになってるならパラシュートを壊せばいいじゃない!?」
「それってお前がバカなのはその腐った脳ミソのせいだから脳ミソぶち抜くか、って言うようなもんだけどなwwww」
シンタローはミーシャの脳天をピシピシと指で弾く。
「うわああっ!だ、ダメだぁー!落下点に突っ込んじゃうじゃないかー!ああああーーっ!!」
俺達が茶番のようなドンパチを繰り広げている間に、彼は悲鳴をあげながら噴火口の中心にドシン!と言う音を立てて不時着した!!
あまりにも雑な展開ですが、満を持して二章では二人目の新キャラが登場です!!
登場の仕方があまりにもマヌケなので、きっとまともなキャラではないでしょうね!!
彼の見た目や声質を想像しておくと次回からのストーリーが頭に入りやすくなるかもしれません。
全く想像できないよ、って方はリアルで次に見た男性を新キャラだと思ってください(適当)。
どうやらミーシャは幽霊が苦手なようです。
銃殺できないんだとしたら……銃身で撲殺するしかありませんね!!
ミーシャならできますよ、多分……。
ちなみに作者も幽霊は苦手ですが、遭遇した際には包丁で斬殺してます!(幽霊を殺す、とは?)
揺るがぬ意思を持って斬れば、幽霊でも真っ二つになります!!
ただ、斬ってもまたくっついたりするので、斬る以外の退治方法があれば教えてください!