2-16 運命の時
ーー前回のあらすじーー
手持ちのアイスが溶け切ってしまったスタークは食料の補充をするために駄菓子屋へと向かった。
だが、彼の作った抜け穴は森の住人たちによる余計な行為によってコンクリートで塞がれていた……。
彼は殴る蹴るの暴行でコンクリートを破壊しようとしたが、どうにもならず惨めに寝ぐらへと引き返すのであった。
一方、洞窟で大食い大会をしていた森の住人達……。
そこではヤムチャによる職権濫用が暴かれようとしていた!!
シンタロー、ミーシャ、くじらんの三人はヤムチャを問い詰め、紆余曲折を経ることなく最終的には機関銃乱射で彼らの大食い大会は終幕を迎えたのであった……。
人の上に立つ者ならそれ相応の人格であってほしいものです。
我こそは人の上に立つ資格がある!と思った読者の皆さん……。
100エーカーの森ではあの住人たちを取りまとめることが出来るレベルでないと、それは言わない方がいいですよ……。
そう言えるようになってから本編へお進みください……。
翌朝…………
「ううっ……こ、ここは……確か花火として打ち上げられて……そのまま……?……何だか眩しいぞ??」
よしだくんが長い眠りから覚め、起き上がった。
すると彼の目の前にはあぐらをかいて宙に浮いているチッダールタがいた。
彼が眩しいと思ったのはもちろんチッダールタが着ている服のイルミネーションのせいだった。
「おお、やっと起きたか。どうだ、体の調子は?」
「チッダールタ……つまりここは洞窟の中か。特にどこかが痛いとかはないが……ま、まだ体がフワフワするぞ……。」
「まあ、それくらいなら大丈夫だと思うがな。とりあえず服を着たらどうだ?ミーシャが起きてきたら面倒だぞ。」
「ん……?……!!なっ!?」
よしだくんは自分の格好を見て驚愕した。
「と、とりあえず服を着てくる!!」
「それにしてもだチッダールタ、」
よしだくんは服を着ながら言った。
「あいつらはどうして傷だらけなんだ??」
あいつらとは二人から少し離れた地面で眠る包帯まみれのヤムチャ、シンタロー、くじらんのことであった。
「にしてもくじらんの奴、ちゃんとヤムチャの言うことを聞いて防弾チョッキを着てたのか、まあ俺も外を出歩く時にはもちろん着てるけどな……。」
ちなみにミーシャは自分の家から持ち出してきたベッドの上で熟睡していた。
「お前が寝ている間に一騒ぎあってな……。でもいつものことだろう?」
「まあ、慣れっこではあるんだがな。で、エリスはあそこで罰を受けてるのか。幽閉と言うよりかは単純に拘束されているみたいだが……。」
エリスは腰を鎖で縛られているだけなので、四肢は自由に動くし横になって爆睡できているが、端から見ればその場からずっと動くことが出来ないので何だか残酷にも思えた。
「……なあチッダールタ、お前はどうしてここで修行なんてしているんだ?まあ、人里からは離れてるんだ、ここは修行するにはもってこいだが……。」
「……急にどうしたんだ?」
チッダールタは少し驚いたような素振りを見せ、よしだくんの方に向き直った。
「何と言うか……ちょっと気になった。いや、そうじゃないのかもしれないが……何かお前に惹かれる、懐かしさのようなものを感じるんだ。もしかして昔にどこかで会ってたりしてないか?」
チッダールタは口を半開きにして黙ったまま、何かに思いを巡らせていた。
「あっ……いや、変なことを聞いたな。きっと俺の記憶違いだ、すまん忘れてくれ。」
よしだくんはそれだけ言うと慌てて食料の詰まった段ボールの方に駆け寄っていった。
チッダールタはそれからしばらく彼の背中を見つめていた。
「……そうだな、人間の記憶は不完全だ。きっと記憶違いだろう……。」
「さて……全員起きたか。じゃあこれからの流れを説明するぞ!」
「えー……まだ眠いわよぉ。」
シンタローに叩き起こされたミーシャはまだパジャマ姿のまま、枕を抱いて目を擦っていた。
「もう昼の11時だぞwwまあ、あそこでまだグースカ寝てる奴もいるけどなwwwww」
笑っているシンタローと呆れる一同の視線の先では、エリスが先ほどとは体勢を変えて大の字でいびきをかいて寝ていた。
「本当に、よくあんな状態で寝られるもんだ……。」
「早くも幽閉生活に順応してるじゃねえか……。全くもって面倒な奴だぜ……。」
よしだくんとヤムチャもため息をついた。
「……エリスは置いといてだ。これからの流れだが、まずは降ってくるであろう隕石が近づいてきたら仙人の神通力で洞窟が崩れないようにする。……頼むぞ、仙人!!」
「任せておけ、何としてもこの洞窟とお前たちを守ってみせるさ。」
チッダールタの着ている服のイルミネーションが一段と強く光った。
「そして無事やり過ごせたらまずは隕石がどこに落ちたかを確認するぞ。それから周りの建物に被害が出てないか調査しよう。分かったか?」
「ああ、了解だ!」
「そのくらい俺に任せりゃ楽勝だなww」
「俺も頑張るよ!」
「私はみんなに任せたいわ~。」
一同はそれぞれ返事をした。
「そういえばこれを言うのを忘れていたな。私は本来、今日は修行が休みの日なんだ。だから隕石をやり過ごしたら後は任せてもいいかな?」
「毎日修行してるわけじゃないのね、それで仙人になれるわけ??」
ミーシャは機関銃の銃身でチッダールタの肩を叩いた。
「別に構わねえが……それとは別件で提案があるんだ。洞窟から出ずとももう少し入り口に近い所に住まねえか?晩飯もみんなで食った方が旨いし用事があった時に何かと便利だろ、お互いにな。」
「あんたも!それ、晩御飯作る側の配慮してるの?……別に一人分増えたところで、って感じだからいいけどね……。」
ミーシャが今度はヤムチャの首裏を指でグリグリとつついた。
「確かにその方がいいかもしれないな。じゃあお前たちが外に出て調査をしている間に、荷物をまとめてからエリスを連れて、もう少し手前の方に引っ越すとしよう。」
「よーし、決まりだなwじゃあ暇潰しにしりとりでもするかwwwまずは隕石の「き」からで、ミーシャからスタートなwww」
シンタローはいきなりよく分からない提案をした。
そしてもちろん、名指しされたミーシャも慌てた。
「えっ??し、しりとり!?……そりゃ暇潰しにはなるだろうけど……「き」ねぇ、えと、えっと……金柑……じゃなくて……金星人……じゃないじゃない!!えっと、えと……キムチ乗せ激辛豚キムチ丼!!」
「金星でよかったじゃんwwそれめっちゃ辛そうだしwwつか、もうしりとり終わってるけどwww」
30分後……
森の住人によるしりとりは少しばかりエスカレートしていた。
「か、か……核融合炉!!(よしだくん)」
「ろ、ろ……ロールプレイングゲーム ~yamucha kingdom~!!(ヤムチャ)」
「む、む……麦わら帽子を被った女子中学生!!(くじらん)」
「い、い……インクを頭から被ってしまった売れない作家!!ww (シンタロー)」
……という調子でもはや何でもアリになっていた。
「か……カルデラ湖でマグロの一本釣り。(チッダールタ)」
「り……リンゴが木から落ちて重力を発見したニュートンすごいー!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴー!!!!
ミーシャがそう答えた途端、ものすごい地震が来て洞窟の壁も所々崩れてきた!
「い、い、い……隕石が落ちてくるー!!チッダールター!!!」
「分かっているさ、はぁっ!!!」
よしだくんがそう叫び、チッダールタが息を強く吐き出して両手を上に掲げると、今までで一番強くイルミネーションが光輝いた!!
そして洞窟の壁もキラキラと光りだして、地面の揺れこそそのままだが洞窟の崩落が止まった!
「た、た……助けてくれたのか?チッダールタ!」
「た、た……助かったよ、チッダールタ!」
「た、た……頼りになるな、チッダールタ!ww」
「た、た……ただのおじいちゃんだぞ、私は。」
「もういい加減にしなさいよあんたたち!!いつまでしりとり続けるつもりなのよ!!」
そしてついに、ドカーン!!!という音が頭上から鳴り響き、全員がとんでもない衝撃により宙を舞い、さらには地面に叩きつけられた!!
「ぐっ……痛てえ……、だが本当に命拾いしたみてえだな……。」
「そう……みたいだね。みんな無事かな……?」
「わ、私と機関銃は平気よ。すごく痛かったけどね……。」
「俺も大丈夫だ……ん、シンタローどうした?」
「お、俺の……俺の作品がまた壊れたーー!!www」
シンタローは涙と鼻水を濁流のようにドバドバと流した。
確かに、彼の目の前の綺麗な岩盤に書かれた油絵が真っ二つに割れてしまっていた。
「一体全体どんな絵だったんだ……?ん、こいつは……。」
ヤムチャを始め、一同は割れてしまった絵画を見て怪訝な顔をした。
それはついこの前までボールだったくじらんが油を体から吹き出しながら空を舞い、その様子を地上からヤムチャとミーシャが眺めているものであった。
「……なあ、シンタロー。」
ヤムチャはお決まりでシンタローの肩をポンと叩いた。
「いや、そのリアクション!もう嫌な予感しかしねえんだけどwww」
「実は最近、俺も森のリーダーとして印象に残るような出来事をまとめておいて、後で記録として歴史書に残そうと思ってんだ。一応ご先祖様もみんなやってきたことだからな。……その挿し絵としてこれと同じ物を書いてくれねえか?」
「え……?www」
シンタローはあまりに予想外なヤムチャの返答にしばし硬直してしまった。
「それって……俺の黒歴史を書物として残すってこと?」
くじらんは顔色を悪くした。
「歴史上そうそうないような事件だったしな。お前は不服だろうが、しばらくすればこんなこともあったと笑い話になるさ。」
「よぉーし!何枚でも書いてやるぜ!!wwww」
硬直が解けたシンタローは雄叫びをあげた!
「本当かなあ……未だに思い出すだけで恐ろしいんだけど……?」
「なあ、お前たち……、そろそろ調査に行かなくていいのか?結構な衝撃だったし被害の確認を森中でやるとすると時間もかかるのでないか?」
チッダールタがこのままだとまずいと思ったのか話に割って入った。
「そ、そう言えばそうだったな!よし、お前ら!地上がどうなっているかは分からねえ、くれぐれも怪我するんじゃねえぞ!!」
「では、地上までお前たちを送るとしよう。」
一同はチッダールタの体にしがみつき、彼は服のイルミネーションを光らせると、エリスに巻かれた鎖は粉々に砕け散って、彼女を自分の元へと浮かせて引き寄せた。
「それにしても、このエリス……、」
「zzzzz……ん~ムニュムニュ……。」
「よく寝てられるわね、これはもうバカを通り越して才能じゃないの?」
ミーシャは未だに爆睡しているエリスを見て疲れた顔をした。
「放っておけ、起きてても解放しろってうるせえだけだからな。」
「では、行くとしよう……ふんっ!!!」
90秒後…………
「や、やっぱり……この爆速ジェットは何回経験しても慣れそうもないな……。」
よしだくんの目は今回も死んでいた。
「そうだよな、毎回慣れることなく楽しませてもらってるぜwwww」
それに対してシンタローは平然とピョンピョン跳び回っていた。
「では気を付けていってこいよ。エリスの方は私に任せろ。」
未だに寝たままのエリスを脇に抱えたチッダールタは洞窟の入り口で五人を見送った。
「さあ、行くぞ……。」
ヤムチャの合図で森の住人たちは外の世界へと飛び出した……。
一度寝たら起きない人っていますよね、どこまでやったら起きるんでしょうか……(意味深)
エリスの脳天に隕石を直撃させたら起きるかもしれない……!!(二度と起きてこないぞ)
余談ですが、しりとりの流れを最初にぶった切ったのはミーシャではなくチッダールタ……のように見えてやっぱりミーシャです。
「い、い、い……隕石が落ちてくるー!!チッダールター!!!」→次は「た」
→「分かっているさ、はぁっ!!!」
……とは言っていますがそもそもよしだくんの次は順番的にチッダールタではなくヤムチャなのでノーカンです。
↑その後でヤムチャが「た」から「助けてくれたのか?チッダールタ!」って言っていました。
→くじらん、シンタロー、チッダールタと続いて……
「た、た……ただのおじいちゃんだぞ、私は。」→次は「は」
→「もういい加減にしなさいよあんたたち!!いつまでしりとり続けるつもりなのよ!!」
よってこの勝負はミーシャの負けですかね。特に罰ゲームはなさそうですが。
しりとりは意味が無ければ勝ち負けもないのに何だか楽しいですよね。
あれってどうしてなのですかね?
人間がしりとりをしてしまう本能的な理由をご存じの方は教えて下さい!