2-15 森のリーダー
ーー前回のあらすじーー
被告人エリスはチッダールタによって洞窟に幽閉されてしまい、一週間の食事抜きが決定した。
森の住人たちはこれ見よがしにエリスの目の前で大食い大会を開催するというとてつもない嫌がらせを決行し、彼女の周囲は涎まみれになって誰も近づけなくなってしまった。
ローストビーフ200gを丸飲みにしたヤムチャは同然のことながら窒息してしまい仲間たちに助けを求めたが、彼のSOSが届くことは無かった……。
↑余談ですがこのシーンを疑問に思った方はいらっしゃいますか?
ヤムチャは1.5-12話でニジマスのムニエルを(恐らく丸ごと一匹)丸飲みにしています。
だったらローストビーフごときで詰まらせるわけ……となるかもしれません。
しかし、ニジマスは細長いので……。
鳥たちもよく魚を丸飲みにしていますから!
ローストビーフは丸いので……。
あんな物を丸飲みにできるのは蛇くらいものですよ!!
本当かと思う方はご自身で実践してみてください。
もちろん、医師の指導の下で行ってくださいね!!
同じ頃、手持ちの食料、もといアイスが尽きて地下での引きこもり生活を中断せざるを得なくなったスタークが地中を移動していた。
「あーあ、せっかくアイスをたくさんゲットしたところでいくら地下が涼しいっつても、この気候じゃすぐに溶けちまうぜ!!何でこんなに暑いんだよ、犯人はぶっ殺してやるぜ!!!」
スタークの大声は地下中に響いたが、それに返す者はいなかった。
「ったく、今度はアイスだけと言わずワゴンごと盗んでやろうか。そうすりゃここでもアイスを冷やし続けられるしな!!」
冷凍するには電気が必要なのが分かっていなかったスタークは、そんな愚かなことを言いながら駄菓子屋の手前で衝撃の光景を目の当たりにしてしまった。
「おかしいな……??どうしてこの俺が丹精込めて掘った抜け穴の部分がコンクリートで埋められてやがるんだ??もしかして俺、働きすぎて疲れてんのか?」
微塵にも働いていないスタークは幻覚だと思ったのか、目の前に見えるコンクリートの壁へ向かって試しに全力の左ストレートをお見舞いした!
するとグジャリ!という嫌な音がして、スタークの左手の骨が深刻なダメージを受けた……。
「うがああっーー!?何だってやがる!!これは幻覚じゃねえってのか!?ふざけてるな!!」
スタークはこの状況に怒りを覚えてコンクリートを右足で蹴り飛ばした!
と、今度はグギッ!という音と共にスタークの足が捻れてしまった……。
「うぐぐっ……俺はどうやら働きすぎたみてえだな、手も足もボロボロじゃねえか!当分引きこもらねえと過労で体が持たねえや。」
彼はコンクリートの壁に敗北し、惨めにも引き返していった。
「……あーあ、さすがにこりゃ労災保険を駄菓子屋に請求してやる必要があるな!!」
地面に寝転んでスタークはそんなことを呟いた。
「治療費は何で払ってもらうか……アイス一年分?いや、そんなもんどうせ万引きすりゃいいだけだ。そうだな……?駄菓子屋の経営権とかどうだ??そうすりゃ好きなもん食い放題だろ!!!」
スタークは誰もいないのをいいことに、にやついた顔をした。
「俺が店長になったら、あのバカ達が使いそうな日用品は売るのをやめて俺の好物だけで埋め尽くしてやる!!いやー、そうすりゃ天国だぞー!!フフフフ……。」
彼は想像を膨らませていき、遂には笑い声まで漏らしていた。
「こんな森のバカな住人達め、今に見てろよ……zzzzz」
そしてそんな妄想の海に溺れ、スタークは眠りの底に沈んでしまった……。
………………。
…………………………。
……あ……ここは……天国か?
何か後光に照らされた天使みたいなのが見えるぞ。
てことはやっぱり俺、死んじまったのか……短けえ人生だったな……。
まあ、地獄に落ちなかっただけよしとすっか……。
「……え、…………チャ…………る?」
ん……?どうにも聞き覚えのある声が……?
「ねえ、ヤムチャってば!!聞こえる!?平気!?と言うか、生きてる!?」
あ、くじらんもいるのか……。
いや、生きてる?って言われてもなあ……ん、待てよ!?
「おい!?何でお前まで死んでるんだよ!!」
俺はくじらんの肩を揺さぶる!
俺の死後に一体何があったって言うんだ!!
「うええああっ!?!?お、俺は死んでないよ!!」
おい……あの天使、よーく見たら仙人じゃねえか!!
「生きてるぜ!!ああ、生きてるとも!ってか、仙人!お前、紛らわしいんだよ!!」
俺はくじらんの巨体を仙人に投げつける!
くそっ、寝起きであんまり腕に力が入らねえ……。
「やれやれ……まさかローストビーフを丸飲みして喉に詰まらせるなんてね……。」
「勝負は大食いであって早食いじゃねえのによwwww」
「あんたバカ?」
「バカなんじゃね?wwwww」
ミーシャもシンタローも好き放題言いやがって……いや、俺が悪いんだ。
それは分かってらあ!
「そうよ、バーカバーカ!!!この鎖外しなさいよバーーーカ!!!」
「そこ、うるせえぞ!!幽閉期間を二週間に伸ばしてやろうか!?!?」
「ヽ(´Д`ヽ)ヒエッ!?う、嘘です!な、何でもありません……。」
さすがにあの大バカエリスに言われるとムカつくがな!!
「いててっ!ヤムチャ……いきなり、どうしたの?」
「全く、一命を救ってやったというのに……本当、唐突に何をするんだ。よしだくんとシンタローの治療だけだと思ったら急病人が一人増えるなんて予想外だぞ。」
「うっ……みんな、悪かった。申し訳もねえ、この通りだ……。」
俺もさすがにここは素直に頭を下げて謝罪する。
「はーーぁ、この森のリーダーが万が一死んだらさすがに困るんだっつーの!例えば……例えば……ちょっと思い付かないけど……と、とにかくしっかりしなさいよ!!」
「ミーシャ、思い付かないのかよwwwじゃあ死んでも困らねえじゃねえかwwwww」
「え??あっ……本当だわ!アハハハハ!!!」
そんな床を転げて爆笑しているシンタローとミーシャの頭を俺はがっしりと掴む。
「いいか、よーく聞けお前ら!!この森のバカ共を取りまとめるのはな……てめえらが思ってるよりもめちゃめちゃ大変なんだよ!!!」
そしてシンタローとミーシャの頭を軽くごっつんこさせる。
「あだっ!!」
「痛っ☆」
二人は頭をおさえている。
「ま、まあ、でもヤムチャのいない森なんて考えられないからね!!」
「それは……そっか。」
「まあ、そういうことにしておくかwwww」
「ほう、色々と丸く収まったみたいだな。ではリーダー、ここは上手く話をまとめてくれ。」
え?今??ここでか???わ、分かったよ……やってやろうじゃねえか。
「あーー……明日、この森には隕石が降ってくる可能性が高い。正直どんな被害が出るかも分からねえ!だがな、俺たちは今までも様々な困難も乗り越えてきたんだ、だから今回も何が来ようと平気にきまってらあ!みんなで明日を誰一人欠けることなく無事に乗り越えるぞ!!!」
「さすが、ヤムチャ!俺たちのリーダーだね!」
「……それから、これからはこの森での大食い大会は禁止とするぞ、危ないからな。」
「うんうん……うんっ???」
ミーシャが首をかしげる。
俺、何か変なことでも言っちまったか?
「ちょーっと待って?危ないって言ってるけどそれはどうして??」
「どうしてって……そりゃさっきみたいな事故があったら命に関わるだろ……。」
「それ、お前だけだよwあんな危険な食い方する奴、他にどこにいるんだってwwww」
お、おや……?
もしかして、まとめるのに失敗したのか……??
「ヤムチャ……それってもしかして……自分の都合でこの森のルールを変えてるの?」
おいーー!!!くじらん!?
どうしてこんな時だけまともに聞こえることを言うんだよ!!!
俺は断じて自分の都合でそんなこと言ったわけじゃねえぞ!!!!
「うーん、これって職権濫用よねー??」
「あーー、これはマズイよなーwww」
おいおい!!いつの間にかヤバイことになってんじゃねえか!!!
「い、いや、こ、これはだな……お前達を守る俺を守るためのルールd……、」
「言い訳にしか聞こえねー!wwww」
「ヤムチャ見損なったよ!!」
待て待て!!痛い!!シンタローもくじらんも俺を足蹴にするんじゃねえ!!
「バーカバーカ!!ざまあみなさい!私をこんな目に遭わすからよ!!」
絶対関係ねえーーー!!!!
あのエリス、いつかこの借りは返すからな!!!!
「はい、二人ともそのままねー。じゃあいっくわよー!!!!♪」
なんだなんだ!!ミーシャの奴、機関銃を構えて……!?
「バカバカバカバカ!!ちょっとタイムだ!!!」
「うっさいわね!あんたほどバカじゃないわ!!」
「ん……?いや、それ俺たちも巻き添え……www」
「巻き添え……?ええええっ!ちょっと待っt……」
そしてドドドド!!という爆音と共に悪夢の機関銃乱射が始まった……。
「「「あああああああーーっ!!!」」www」
スタークが駄菓子屋を経営する→キヌタニと違って素早いので誰も万引きができなくなる→日用品も売らないので住人たちのヘイトを買う→駄菓子屋から追い出される……までは予想が付きますね!
そもそも、スタークが経営する駄菓子屋は誰も近づかないから売り上げはゼロ……おっと、それは今までと変わらないですね。
いずれにせよ、駄菓子屋の経営権を巡ってトラブルになることは間違いないでしょう。
職権濫用、ダメですよ。
会社の上司だからって内部規範を勝手に作り変えていいわけではありません。
ヤバい上司が居たら早めに信用できる機関に相談しましょう。
もしくはこの小説を勧めてみるとか……病んで居なくなるかもしれません。
いや待って、そんなことをされたら作者の責任問題に……!
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