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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第2章 名医、隕石になるってよ
52/162

2-14 被告人エリス

ーー前回のあらすじーー


 綺麗な星空、月明りを浴びてギラリと光る樽、椅子に括り付けられたシンタロー……。

この場には何かが足りなかった。


そう、夏の風物詩である花火だ!!


 花火を打ち上げてしまうのは誰なのか……。

ほんのりと暑い夏の夜に線香花火、いや導火線に火を点ける戦いが繰り広げられた!



 シンタローの日頃の行いが良かったせいか花火は不発に終わったかと思ったその時……。

ミーシャがルールを無視して確定演出を出してしまった!!


その結果、花火は空中で二倍に分裂し夜空に儚くも散っていった……。



 花火って音が凄いからあまり和やかな雰囲気って似合わない気がするのですよ。

ロマンチックになれる人はいい意味ですごいと思います!!


 昔は手持ちの花火でよく遊んだりしましたが、大人になってからはやらなくなりましたね。

あれではしゃいでいいのは子供の特権……ああ、悲しいなあ。


大人は厳かに線香花火をどれだけ長持ちさせられるかを競うべきでしょう!(それもどうなの?)

さて、消し炭になっちまったシンタローとよしだくんを肩に担いで俺達は洞窟へとやって来た。



「ねえ……一つ質問があるんだけど……。」



と、俺に聞いてくるのはエリスだ。



「みんな何のために頑張って洞窟の中に荷物を運んでるのよ?引っ越しでもするわけ??」








……あーーー……?




俺、その説明をした時にこいつのことハブってたか?



いや、みんな「何言ってんだこいつ!?」って顔してるしそんなことはねえよな??



「うん、よく今まで何にも疑問に思わなかったわね。て言うか昨日の朝にヤムチャがした説明、聞いてなかったの?」



「えっと……昨日の朝……?私が起きたら集会所でキヌタニの死骸にビックリしてて……」


「それは今日の朝!!わざとボケてんの!?それともバカなだけ?いや、あんたがバカなのは当たり前なんだけど!!」




ミーシャは機関銃の銃身でエリスの頭を殴り飛ばす!



「ちょっとっ……!痛いんだけど……!!わ、私は過去を振り返らずに生きてるから昨日の朝のことなんて忘れたわよ……えーと……?もしかして私が起きた時に何かの話し合いをして、その後ヤムチャと荷物を運んだ時のこと??」



「ああ、そのことだ。ちゃんと集会所で話したはずだが?」


「あーー……確かあの時は眠すぎて、言われてた内容が全然頭に入ってこなかったのよね~♪」




やれやれ……エリス、勘弁してくれよ。



「なーにが過去を振り返らないよ!!ただ単に聞いてなかっただけじゃない!!!このおバカ!過去を振り返らずに生きてる人に謝りなさいよ!!!」



ミーシャは機関銃の銃口でエリスの頬を往復ビンタする。


 ……マジでミーシャは機関銃で何かするの止めて欲しいんだよな、特に!!尻に銃口を挿されたら後が大変なんだぞ……。



「仕方ねえ、もう一度説明してやるから今度は鼓膜破れるくらい耳の穴広げとけ!」


「うん、鼓膜が破れたら何も聞こえないよ?」



くじらん、余計なツッコミを入れるんじゃない……。








「えええ↑えええ↓えーーー→ーーーっ↑っ!!!!!じゃあ明日、隕石が降ってくるってこと!?う、嘘でしょ、わ、私まだ遺書とか書いてないんだけどー!!!!!」


「いや、だから死なないようにこうやってここに避難したんだが……。」



 エリスは驚きすぎて絶叫のアクセントが少しおかしくなっている。

しかし本当に何も聞いてなかったのかよ……、どうしようもねえ奴だな。



 それにお前の遺書を読む奴なんているのか??

書いたところで隕石が落ちて燃えカスになっちまうぞ!




「それで……このおじいちゃんがチッダールタ??昨日会った時にも、何だか変な格好してるヤバいおじいちゃんがいるなあ、って思ったら今日はみんなと親しげに話して、集会場で晩御飯まで一緒に食べてるし!!」


「だから何でそれも疑問に思わないのかな……??」



ほらほら、くじらんも呆れてるぞ?




「まあ疑問が解消されたのならよかったではないか。ではエリス、改めてよろしく頼むぞ。私のことは気軽に仙人とでも呼んでくれ。」


「仙人でもないくせに、相変わらず他人にはそう呼ばせるのね……。」




 あーあ、随分時間を使っちまったぞ。

バカに構ってたらやっぱり時間の無駄だな、全くよぉ……。









「では改めて、まとめてもう一度説明するぞ……。いいかお前ら!隕石が落ちてくるのは明日の昼だ!!……本当に残念なことだが、この中には日常的に昼近くまでグースカ寝てるような奴もいる!そいつは明らかに逃げ遅れるだろうな。……そこでだ!!今夜のうちにここへ避難しておけば、みんな逃げ遅れずに済む!」



「えっ!!昼までいつも寝てるやつがいるの!?誰よ、そんなろくでなしの昼夜逆転引きこもり野郎は!!私がその腐った根性を叩き直してやるわ!!」




 いつも午後になる直前まで寝てるろくでなし……それはミーシャ!お前自身だよ!!

自分でそこまでボロカスに言ってて悲しくなんねえのか??




「なるほどね!そのろくでなしはともかく、みんなで集まって避難しておく方が安心だよね!!」


「ええー、洞窟で寝るの~!?それは落ち着かないんだけど~!!」



エリスが文句を言うが無視だ、無視!!




「そんで……仙人、よしだくんとシンタローの様子はどうだ?」


「ああ、私の回復術で治療しているからもう大分良くなっているぞ。……さすがに服までは復活させられないがな。」


「仙人じゃないって言うけどそれでも大したものよねえ……。」



ミーシャは頭をポリポリと掻きながら呟く。



「やだあ……♥服の無い男二人と同じ洞窟で暮らせなんて……、」


「おいエリス。」





俺は顔を赤らめるエリスの肩に手を置く。





「どうやらお前はすっかり忘れてるみてえだな。さっきはシンタローへの刑罰を執行したが、今度はお前の番だぞ。」


「!!……そうだった、すっかり忘れてたあー……!!ねーお願い!もうみんな私の罰のことは忘れてよぉー!!」




 エリスはその場でおもちゃを買ってもらいたい五歳児のごとくじたばたしてるがこいつは20歳、見苦しいにも程があらあ!!




「いや、さすがにそんなすぐに忘れるほど俺たちボケてないよ……。」


「ここに居るのはツッコミよりボケの方が得意な奴ばかりだがな……。ではこれより被告人エリスに洞窟幽閉一週間の刑を執行する!!仙人、お願いできるか?」


「よし分かった!はあっ!!!」



チッダールタが着ている服のイルミネーションが赤色に変わった!



「……え!?えっ!?!?何よこれー!!??」



 エリスの腰を赤い光が覆い始め、その光は真紅の鎖へと変貌してエリスの腰を縛り付け、鎖の両端は彼女の足元の地面にグッサリと食い込んだ!




「うむ、これでエリスもそうそう動くこともできまい。」


「ありがとう仙人。じゃあエリス、そこで一週間みっちり反省しやがれ!!」


「そうね、今までの自分がしてきた悪事を思い返しなさい!!」



「そんなあー!?放置プレイしないでぇ~!( ;∀;)て言うかっ、仙人の術で幽閉する計画なんていつ打ち合わせしたのよー!?」





 さて、一番めんどくせえ奴の動きも封じることができたわけだし……夜食タイムといくか!!

昨日と今日でかなり駄菓子屋から食い物を持ち出してきたから十分な量の夜食があるはずだな。


俺は酒の入った段ボールに手を伸ばす。





「あーー!!ヤムチャ盗み食いはダメだよ!!」



 くじらんがこっちに駆け寄って来る。

その言い方だと何やら俺が悪いことでも企んでるみてえじゃねえか!



「何で一人だけ美味しい物食べようとしてるのよ!」



ああ、ミーシャまで来やがった……。



「別に盗み食いなんてよ……食料はたくさんあるんだ、お前らも好きな時に何か食えばいいだろ。」


「マジ?wwwじゃあ俺、ベビームーンラーメン頂きだぜ!www」





突然俺らの背後から全裸で真っ黒焦げ、アフロ髪のシンタローが飛んできやがった!!



「いやああああっ!!!何て格好してるのよー!!!!」



ミーシャは条件反射で機関銃を構えてそのまま乱射しちまった!!



「バカぁー!!荷物がぶっ壊れる!抑えろ抑えろ!!」



俺は慌ててミーシャの機関銃を封じた!



「シンタローもちゃんと服着なよ!よく恥ずかしくないね……。」


「何で撃つのー!?……って何で服着てないのー!?!?wwww」



 シンタローは笑いながら顔を真っ赤にして、俺たちに背中を向け、慌てて自分の荷物から服を取り出して着始めた。







「も、もう……あんなの見せられたらトラウマだわ。絶対夢に出てくる……。」



ミーシャはその場にへたれこむ。



「俺も誰かに服を脱がされたなんてトラウマだわ……wwもうお嫁に行けないww」


「シンタロー、お嫁さんになりたいの?」



 勘違いをしている服を着たシンタローも笑いながらそんなことを言い、くじらんは奴が言ったことを真に受けるがめんどいからスルーだ。



「にしたって夜食を食おうって時に意識を戻しやがって、食い意地の張った奴だぜ!」



 俺は呆れてそんなことを言う。

シンタローの脳には夜食センサーでもついてやがるのか?



「まあいいではないか。腹が減っては眠れぬことだし、ここは明日に備えてしっかり食べておこう。ムシャムシャ……。」



 仙人はいつの間にか服のイルミネーションを茶色に光らせてエクレアを食ってるしよ……。

そのイルミネーション、いったい何種類の色に光るんだ??






「よし、じゃあ大食い大会でもするか?wwww」


「いきなり何を言い出すかと思えば……ちゃんと晩御飯食べたわよね?」



 シンタロー……お前本当に元気だな。

まあいい、夜食をみんなで食うのもあまりねえ機会だ!




「よし、シンタロー!その勝負、受けて立つぞ!!」


「え!?……お、俺もやるぞー!!!」


「ち、ちょっとあんたたち!?わ、私も混ぜなさいよ!!」


「ほう、面白そうだな。私は胃もたれしそうだから参加しないが審判をやらせてもらおう。」




決まりだな、さてルールはどうしたもんか……。








「では、改めてルールの確認だ。制限時間は50分、食材はミーシャの選んだロールケーキが三本、ヤムチャの選んだローストビーフが400g、くじらんの選んだポテトチップスが二袋、シンタローの選んだチェダーチーズが300g……これを一つのセットとして完食したら次のセットを食べ始めること……これでいいかな?」




今チッダールタが言った四種類の食べ物が乗ったお盆が俺たち四人の前にそれぞれ置かれている。



「結構ボリュームあるわね……ま、私は私のペースで食べさせてもらうわよ。」



 ミーシャの奴……始まる前から戦線離脱宣言かよ……。

まあいい、別に無理して食う必要なんてどこにもねえんだ。



「あーー私も食べた~い!!ねぇ、ちょっとだけ、ちーょっとだけ!この鎖外して??」



拘束されているエリスが涎を垂らして暴れているが、もちろん外してやるつもりはねえ。



「お前……罰を受けてる最中なんだぞ。言っておくが幽閉中の一週間は食事もさせねえからな、水だけはお情けで時々飲ませてやるから安心しろ。」



「……え。……え!?ご飯抜きなの!?嘘よね!!ねえ!!」


「落ち着きなさいエリス、人間は水さえあれば三週間は生きられるから余裕よ。……やったことはないけど。」



ミーシャが全く信用ならねえ口調で信用ならねえことを言った。



「絶対嘘よね!!お願いします、この鎖を外してください!!」



エリスは縛られたまま土下座をする。






「よし、じゃあ始めるとすっか!wwww」



シンタローの奴、綺麗にエリスをかわしたな……。



「では、構えて……よーい、スタートだ!」




「うおおおおお!!!ガブガブ……!」


「ぐああああっ!!モグモグモグモグモグモグ!」


「うわあおおおおおお!♪ムシャムシャムシャムシャwwww」


「うーん♪このロールケーキおいしー!……ってシンタロー!!笑いながら食べるの行儀悪いから止めてちょうだい!!」




 四人は、いや三人は一斉に戦闘モードへと突入し、ミーシャは一人ロールケーキを味わっている。

悪いが受けた勝負だ、負けるわけにはいかねえな!!



「俺はな!昔っからめちゃめちゃ早食いで大食いなんだよ!!ガツガツガツガツ……!」



俺は一分も経たないうちにローストビーフとチーズを胃袋に収めた!



「お、俺だって……この身体能力は大量の食いもんから来るエネルギーで維持してんだぞwww」



 微妙に分からんことを言うもんだからチラッと右を見ると、シンタローのお盆からもチーズとロールケーキが既に消えていた!



「俺なんてちょっと前まで体重はこの森で一番多かったんだからね!」



で、今度は左を見ればくじらんのお盆には空のポテトチップスの袋が10袋も乗って……あ???



「おい!!こいつポテチばっか食ってるじゃねえか!!こんなの反則だぞ!!」


「くじらん……いつの間に……。これはルールに則ってないから失格だな。」




「ええええええ!!!!!……そんなあ……。」








 てなわけでくじらんが脱落して俺とシンタローの一騎打ちになった。

奴はどうやらポテチを懐に隠し持ってたらしいな……。



「はあ……正直ポテチ以外で大食いとかやってられないよ。」



くじらんはミーシャのお盆の上のポテチ食ってるしよ……よく飽きねえもんだ。



「くじらん……あなたどうしてポテチばっか食べ続けられるの???私だったら同じものなんてずっと食べてらんないわ。」



と、くじらんのお盆の上のロールケーキを三本とも食べ終えそうなミーシャが言ってやがる……。



「でも好きなものなら私もずっと食べ続けられるぞ。現に毎日駄菓子屋の青汁をずっと飲み続けているしな。」


「いや、青汁が好きってさすがおじいちゃん、嗜好が地味ね!!!」



そりゃ俺らもアイスは毎日食ってるがな……一食で同じものばっかっつーのは訳が違うぜ!!



 そしてチッダールタは二人が食べなかったローストビーフとチーズを消化している。

……胃もたれするとか言ってなかったか?もうくじらんのお盆は空っぽになってるんだが??








 おっと、考え事をしている暇はねえ。

勝負開始から十分が経って二人とも二セットを同時に平らげた。



「なかなかやるなシンタロー……だがいつまで俺のペースに付いて来れるんだ?」



俺は威嚇のためにローストビーフの塊を真っ二つに引き裂いてその片方をそのまま口に放り込む!




「あんなに一気に……!?さすがヤムチャだね!」


「うわーー、壮観ね。」



ふん、これを見せつけられればシンタローだって多少は戦意を喪失するだろ!!





…………。





………………!?






 おかしいな、どうにも……息がしづらいぞ??

おいおい!……これは、まさか……!!




「ぐっ……!?うっ、ううっー!!」






喉に詰まったぁー!!


水だー!!水をくれー!!!



 俺はもがきながらも片手で喉を叩いて、もう片方の手で水を飲む真似をして、何とかこいつらに俺の状況を伝える!



「ん??どうしたのヤムチャ?そんな踊っちゃうほどそのローストビーフがおいしいの?」


「違うわよ、早食いしすぎて頭がおかしくなったのよ。」




ダメだ……このバカ共にこんなアクションで伝わるわけがねえや……。





ああ、意識が遠のいてくぞ……誰か、助けてくれ……。

 ヤムチャ大ピーーーンチ!!!!

彼はこのまま息絶えて大食い勝負に負けてしまうのか??(そこかい)


 無敵とも思えた彼もローストビーフには勝てなかったのでしょうか……。

どうしても喧嘩で勝てない相手が居たら、ローストビーフの塊を献上すれば喉に詰まらせて攻略できるかもしれません。



 チェダーチーズ300gって結構重くないですか? 

まあ、ヤムチャからしたら一口なのかもしれないですが……?(また詰まるぞ)


 チーズは溶けるので熱々で飲めば詰まらずに飲み込めますね!(拷問かな?)

エリスに限らず、どうしてもお腹が減ったと訴えてきて鬱陶しい人間がいるなら熱々のチーズを飲ませてあげましょう。

きっともう二度と空腹を訴えてこなくなります……。

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