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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第2章 名医、隕石になるってよ
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2-11 判決、そして強襲……

ーー前回のあらすじーー


 キヌタニは究極の二択を迫られていた。



 この場でエリスを殺して生き延びるか。

それとも自ら潔く散っていくか……。



 結果として、彼は両方の選択肢を選ぶことになった。

だがその二つとも、彼の決断は誰にも受け入れられることはなかったのだ。



 殺り損ない、そして死に損ないのキヌタニは裁判にかけられた。

もはや、全てを諦めてしまった彼は何も恐れることなく、ただ淡々と事実と自らの主張を並べた。



 ただ、分かって欲しかった。

自分がとても辛かったこと……。


その思いはヤムチャたち裁判員に届いたのだろうか?



 ヤムチャに裁かれてみたい方はいらっしゃいませんか?

裁かれるには罪を犯さないといけませんね、アイスの食い逃げ当たりが手頃かもしれません。


ヤムチャ「(俺もやってるな……。)うーーん、無罪!!」


さて、本編ではどんな判決が下るのでしょうか?

40分後……



ガチャリ、と集会所のドアをヤムチャが開けた。





「すまねえ、なかなか意見がまとまらなくてな……。」




 ミーシャ他三人、ただいま戻りました。

判決もちゃんと四人で話し合って決めたのよ。




「おっ、やっと戻ってきたかwもうここの空気重すぎてただ居るだけでも随分疲れちまったぜwww」



 って、シンタローが疲れゼロの口調で言う。

いくらここの空気が重くてもあなたは疲れないでしょうに……。



「いやいや、俺だって疲れるんだぞ?www」



ねえ!!だから心の中を読まないでくれる!?




「では、全員席につけ。判決を言い渡すぞ。」



……そうヤムチャが指示したので私たちは大人しく席に着いた。








「主文:被告人を1ヶ月の保護観察処分とする。」








「……は?ほ、保護観察……???」


「え??俺の主張よりも刑が軽くなってるんだけど、めっちゃウケるwwwwww」



 よしだくんはありえないという表情で唖然としていて、シンタローはいつも通り爆笑している。

本当にシンタローって笑い以外の感情がないわね……。




ーーーーーーーーーー


ヤムチャの家での話し合いはしばらく平行線が続いたわ。



 ヤムチャは、キヌタニの最後の言葉が響いたのか、はたまたエリスの最近の暴力がやりすぎだと思ったのか追放処分に留めようとする立場。



 くじらんはキヌタニって衝動的に人を殺す人間なんじゃないのかっていう恐怖から、また他の誰かを殺そうとしないうちにさっさと死刑にしてしまおうという立場。



 私?私もエリスの暴力はやりすぎだとはキヌタニの言葉を聞いて思ったんだけど……とりあえずエリスとキヌタニを近づけなければ何も問題はないんだから、死刑にしなくてもこの森からうんと遠くに幽閉すればいいんじゃないかっていう立場だったの。



チッダールタは二人のことを詳しくまで知らなかったからあまり口出しはしないって言ってたわ。





 その上で話し合いをしたんだけど、なかなか判決を決めることが出来なかったところでチッダールタが口を開いたの。



「私はエリスが悪い、キヌタニが悪いということにあまり言及するつもりはないが、もしキヌタニがこの森からいなくなったら……ということを考えてみて欲しい。」


「キヌタニがいなくなったら……?」



「そうだ、お前たちはいつも朝に……もしくは昼に起きて、そこから普段何をしているかをそれとなく思い出してくれ。」



そんなことを言われて、私たちは少し時間を取って考えてみた。




「えーっと、私はいつも昼前に起きてそこから駄菓子屋に行って……あ。」


「そうだろう?ヤムチャやくじらんも一日に一回は間違いなく駄菓子屋に行っているはずだ。」





 そうチッダールタに言われてハッとしてしまったわ。

キヌタニをこの森から追い出すことは私たちにとって大きな不利益になるってこと、もう死刑や追放なんていう重い判決を下す選択肢は私たちに無かった。


そんなことをしてしまったらとてもじゃないけど私たちは生活できない……!!




「判決をどうするかはお前たちが決めることだ。だが、キヌタニがこの森から去るとなるとそういうデメリットがついて回るということを心に留めておくんだな。」


ーーーーーーーーーー




「とまあ、そんないきさつがあってだな……。被害者側は不服かもしれねえが、この事件とは直接関係のない事情が絡んでいてこんな軽い罪になってしまったことを理解してくれ。」




「随分といい加減な評議をしたものだな!俺としては到底納得のいかない判決だ!!」


「どうして僕は…………有罪なの?」



よしだくんは立ち上がって抗議し、キヌタニは俯いたまま無表情でロボットのように呟く。




「駄菓子屋が潰れたら食事は俺たちがどうにかすればいい、日用品は自分達で作ればいい。外界と交流のない森なんだ、そのくらいは本来自給自足でやって当たり前じゃないのか?」




よしだくんはそれだけ言うと集会所から出ていってしまった。




正直……自給自足なんてめんどくさすぎるってば!!





「うむ……もう今日は遅いな、明日もまだ荷物運びがあるしそろそろお開きにしたらどうだ?」



 チッダールタが束の間の沈黙を破った。

集会所の時計の針はいつの間にか午後10時過ぎを指しているわ。



「まあ、それもそうだな……。キヌタニはとりあえず俺の家で預かろう。お前らは明日、昼の12時までにはここに集まれよ?荷物運びを終わらせたら明後日とは言わず、明日のうちに洞窟へみんなで避難しよう。それでは閉廷!!!」







「どうして……どうして僕はこんな目に……、僕の味方は誰もいないんだね……。」



 ヤムチャは小声でブツブツとうわ言を言っているキヌタニを、縛られている椅子ごと担いで集会所を後にした。





「それでは私も今日は洞窟に戻るとしよう。」



続いてチッダールタも集会所から出ていった。



「……私たちも帰りましょうか。」


「そうしようか……。」


「だなwwww」




私たちも家路に着くことにするわ、おやすみなさい……また明日ね。










5時間後……







「んーー……ここは……?確か私は……キヌタニに吐かれて……!!キヌタニ!どこ行ったのよ!!て言うか私、めちゃくちゃ臭いっ!!」



 エリスは真っ暗な集会所の中を洞窟だと思い込んでキョロキョロとした。

しかし、そのうちに彼女の目も暗闇に慣れてきて辺りの状況が分かってきたようだ。




「ん……、そばにテーブルとか椅子が見えるんだけど……?さっきまで洞窟にいたのよ、私は夢でも見てるのかしらね……?」



 エリスは自分が集会所にいることが信じられなかったのか、電気のスイッチを入れて周りの状況を確かめてみた。

いつも通りの場所にテーブルや椅子があり、キッチンや食器棚にも特に変わった場所はなかった。



「うーん……もしかして誰かがあの後で助けてくれたのかしらねー?」



ワークデスクもいつも通り、そして寝ていたベッドは……やはりいつも通りだった。








「エリス……丁度起きてきたんだね。」



 次の瞬間、集会所のドアがゆっくり開くと、ノコギリを引きずって気味悪く笑っているキヌタニが現れた!



「うええああっ!!……き、キヌタニ!?幽霊かと思ったじゃない!て言うかっ!!この私に吐いておいてただで済むと思ってるの!?」



キヌタニが凶器を構えているにも関わらず、エリスは何の躊躇いもなくズカズカと彼に近づいた。



「それ以上近づくと斬るよ……。うああああーーっ!!!」



キヌタニは何の前触れもなく、ゆっくりとキレのない動きでノコギリを横に振り回した!




「えええーっ!!ちょっと何するのよ!!当たってたら怪我するところだったじゃない!……当たりそうもなかったけど。」



エリスは突然のことに驚き慌てて、キヌタニと距離をとって攻撃をかわした。



 いくら武器の使い手がキヌタニとはいえ、持っていたのはノコギリだ。

もしヒットしたらさすがに無事では済まなかっただろう。



「さっきは殺し損ねたけど今度こそ誰にも邪魔されないんだからね……?」



するとキヌタニは歩き出し、エリスとの距離をじりじりと詰めていった。




「殺し損ねたってどういうことよ!?とりあえずノコギリなんてあんたが持っても危ないだけから置きなさい!いや、そもそもあんたそのものが気持ち悪いから来ないで!!」



エリスはそう吠えて手が届く範囲にある椅子や食器を投げ始めた!



「今日の僕はそんなんじゃひるまないy……ゴフッ!!」



 そんなことを言おうとした彼の額に椅子の足が直撃し、キヌタニはその場にひっくり返って後頭部を強打してしまった……。



「もう、キヌカスの分際で私に立てつこうとするんじゃないw……、」


「ぐうっ……僕は、何があってもエリスを殺すんだ……。」



 キヌタニはいつもならとっくに気絶しているところだが、この日は彼なりに闘志を燃やしていたらしく何とか立ち上がった。



「やかましいわね、私をあんたが殺そうなんて5000兆年早いのよ!!」



キヌタニが立ち上がった瞬間、エリスはノコギリを奪って彼の腹を蹴り飛ばした!



「ぐほぉっっ……!!ま、まだ、僕は諦めないよ……。」



 彼は後ろに吹っ飛ばされたが、それでもまだゾンビのようにしぶとく、四つん這いで地面に張り付きながらでもエリスに近づこうとした!



「もー何なのよー!!今日のこいつ、しつこくて気持ち悪すぎるんだけどー!!!ちょっと誰か助けてーー!?!?」







さらに7時間後……







「どういうことなのよ!ちゃんと逃げられないようにしてたんじゃないの!?」


「お前に任せた俺が間違いだったな!!この事に関してはお前にも責任があるんじゃないのか??」


「もしかしたらエリスは、もう……。」


「いやー、さすがに笑えねえよなーwwwww」





 おはようございます、再びミーシャよ。

朝から大変なことになってしまいました……。




「ああ、ちゃんと椅子に縛り付けたままにしておいたんだが……俺が寝てる間にそばにあったノコギリでロープを上手く切られちまったらしいな。そのノコギリも持ち出されちまったらしい……。」



 ヤムチャが拘束していたはずのキヌタニが武器を持って逃走したらしいです……。

ってそんな解説をしてたらもう集会所に着いちゃった。



 まだ朝の10時だっていうのに……ポケベルの一斉通話で起こされちゃったわ!!

キヌタニがいなくなったって聞いたらさすがに一瞬で目が覚めたけどね……。




「何だか……中は静かだね。」


「もう犯行は終わってるとか……?wwww」



 ガーン!!という音が突然周囲一帯に響く!

まあ、私がシンタローの頭を機関銃でぶん殴った音なんだけど……。



「物騒なこと言わないでちょうだい!そんなことになったら本当に駄菓子屋を潰さざるを得ないわよ!!」


「あ、心配なのはそっちなのねw……イタタ☆」


「そうでなくても俺はキヌタニと駄菓子屋を終わりにするべきだと思うんだがな!」




よしだくんは昨晩から本当に手厳しいわね……そんなことをしたら私たちは死活問題よ!!




「と、とにかく集会所の様子を確認するぞ。家の外に逃げただけでまだあいつがここに来たって決まったわけでもねえんだ。」



ヤムチャが集会所のドアを開ける。







お願い!何事も起きてませんように!!

 ノコギリも何だかんだで結構重たいですからね……。

キヌタニでなくとも凡人が振り回すのはかなり大変だと思います。


 読者の皆さんはまさかキヌタニがここまでやるとは思わなかったでしょう。

椅子を投げつけられ、腹を蹴り飛ばされても気絶しないキヌタニなんて本来なら劇場版でしか見れないレベルです!!


 ビジュアルにも補正がかかって、瞼は三重になり、鼻も5cmほど高くなっていることでしょう。

それでもやられっぱなしなのはどうして……?(A:戦闘力が水増しされてないから)


さて……彼の快進撃はどこまで続くのやら、そしてエリス vs キヌタニの決着は次回のお楽しみ!!

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