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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第2章 名医、隕石になるってよ
48/162

2-10 100エーカーの森裁判、開廷!!

ーー前回のあらすじーー


 隕石の脅威から逃れるために彼らは様々な荷物を洞窟の奥へと輸送していた。

駄菓子屋の食糧、よしだくんの発明品、シンタローの作った石像、そしてエリス……。


 しかし、様々な事故が起きてミーシャ、くじらん、(一応怪我をした)シンタロー……そしてくじらんのお気に入りとされるエロ本のヒロインが犠牲となってしまった。


 どうしてこんなに犠牲者が出るのかとよしだくんが呆れていられたのも束の間、チッダールタと言う名のジェットコースターで彼はトラウマを植え付けられてしまったのだった……。



 一方、暗い洞窟に置いてけぼりとなったエリスは運良く荷物からナイフを探り当て、キヌタニと縛られているロープを切ろうと試みた。


 しかし、彼女はキヌタニの雑魚さを忘れていたようで、ロープを切る振動により酔ってしまったキヌタニに自分の真上で吐かれてしまった……。


チッダールタはその洞窟から嫌な予感を感じ取ったというが、果たして二人は無事なのだろうか?



 乗り物酔いとは厄介なものですよね!

本やスマホを見ないとか対策もありますが酔う時は数分でダウンしてしまうのが本当に辛い……。


 その点、鉄道は酔わなくていいですよね!

満員電車と言う別の問題はありますが……。


 私は乗り物酔いなんてしない!という方は知りません、バスの中でも本編へお進みください。

でも飛行機の中では電波を切りましょう!(←作者はこの決まりをつい最近知りました……。)


 飛行機の中でも読んでやるぜという強気な読者の方は、せめてこの小説を読むためにスマホを使ってたとは供述しないでください……、低評価をつけるためという理由なら許します(???)。

滝からは水の流れる音がしていた。




 キヌタニの目の前は、切り立った崖になっていた。

彼は数歩前に出れば滝壺へと真っ逆さまに落ちてしまう場所に立っていた。




「もう……僕は……限界だよ。」




そして彼の横ではキヌタニのブツを大量に被ってしまった、失神したエリスが横たわっていた。






 彼は胃の中を空っぽにしてスッキリした後、仕返しとしてエリスが失神しているうちに遠くまで連れて行き、置き去りにしてやろうという軽い気持ちで彼女の体を引きずってきた。



 少し歩くと何やら水の落ちる音が聞こえてきて、さらに音のする方へ奥に進むと四人が昨日墜落した滝壺より20mほど上にある崖にたどり着いた。



そこで彼は唐突に芽生えたよからぬ考えを実行に移そうとしていた。





「エリスさえ……いなくなれば……昔みたいに僕の扱いも、もう少しマシになるよね……?」



 キヌタニはゆっくりと後ろから彼女を崖から押し出そうとした。

その手には一切の躊躇いが無かった。




「もう、エリスがいる森で僕が生きても……殺される最期しか想像できないよ……。僕のやることは……許されるよね……だって、そうしなきゃ僕は……。」




彼は自分の両腕に今一度力を込めた。





そして……………




「エリスー!!お前は……この世界に必要なーい!!!うああああああーっ!!!」



 キヌタニは渾身の力を込めて叫びながらエリスを崖から突き落とした。

彼女の体は世界から何の抵抗も受けずに自由落下して滝壺へと飲み込まれようとしていた……。







そして水面スレスレで宙に浮いた。



「…………。あれ?もしかして、時間が止まっちゃった?どうして……。」



キヌタニはこの状況が理解出来ずに唖然としていた。





「いや、止まったのはエリスとお前の思考だけだ。」



と、キヌタニの背後から声がした。



 彼が振り返ると、そこにはイルミネーションを白色に光らせているチッダールタ、そしてヤムチャとシンタローがいた。



「あ……さっきの死神……どうしてヤムチャとシンタローがそばに……??それで何でエリスは浮いてるの??やっぱりエリスだから重力に嫌われてるのかな……??」




不思議そうにはしていたが特に感情が籠ってない口調でキヌタニは意味不明なことを言った。




「一体お前は何を言ってるんだ?私は命を狩り取りに来たのではなく命を救いに来たのだがな。」



そうチッダールタが言うとエリスの体が上昇して三人がいる正面の地べたに横たえられた。




「うわっ!エリスくさっ!!wwww一体何されたんだ!?ww」



そう言ったシンタローはもちろん、チッダールタとヤムチャの鼻も曲がった。





「にしてもキヌタニ、お前の存在をすっかり忘れていたが、一体こりゃどういうことだ……??ロープが外れてることは置いといてだ、お前がついさっきやっていたことを俺達は見てたからな!!」



ヤムチャが泣く子も気絶する形相でキヌタニに近寄ろうとした。






「……して?……どうして?せっかく……勇気を出して、僕が……僕が明るい未来を掴もうと思ったのに!!!」



だがそれに臆することもなく、キヌタニはいきなりヤムチャを本気で怒鳴りつけた。





「な、なっ!?き、キヌタニ……?」



とても珍しいことだったのでヤムチャですら狼狽えてしまった。





「も、もう……僕はこの森で生きてくなんて無理だよ!!ああああーーーっ!!!」



そして次の瞬間、キヌタニは迷いなく自ら崖から滝壺へと飛び降りた!!




「お、おい!?ち、チッダールタ!!!」


「分かった!!はっ!!」



チッダールタが息を強く吐き出すと同時にキヌタニがその場で浮遊した。





「え……僕も浮いた……、そんな……死ぬことすら、許されないの……?」



そして四人の元へと戻ってきた。





「じゃあ集会所で改めて事情を聞こうじゃねえか。……覚悟しろよ!」



ヤムチャはスタークにすら向けないような表情でキヌタニを睨み付けた!






「……もう、どうだっていいよ。」












 さてさて、大変なことになってしまいました。

みなさんこんばんは、さっきまで気絶してたミーシャです。



それにしても頬がじんじんするわ……。







 確かさっきまでは洞窟にいたはずなのに、ヤムチャに投げ飛ばされて気絶しちゃったらしいじゃない、もうお外は真っ暗だし……。



 それで集会所のベッドでさっきまで寝かされてたみたいなんだけど……くじらんと一緒にヤムチャから往復ビンタを食らって無理矢理目覚めさせられたのよね……。


くじらんの頬が真っ赤になって痛々しいからきっと私もそうなっているのね……やれやれ。







 そして今、森の住人にチッダールタを加えたメンバーが集会所の席についてとてもシリアル……?なことになっちゃってるのよ。



「うん、シリアルって美味しそうだなwシリアスだよwwww」



 どういうわけか周りには聞こえてないナレーションにシンタローが突っ込んできたけど、このアホが空気読めないだけで全然そんな雰囲気じゃないのよ!






「……では、被告人。自分のやった罪を述べなさい。」



お誕生日席に座っている裁判長のヤムチャが言う。



「僕は……罪に問われることなんて……。」


「被告人!!正直に話せ!」



 ヤムチャの向かいで椅子の背に腕を回されて拘束されているキヌタニは俯いたまま、そんな彼をヤムチャはテーブルを叩いて恫喝する。

その衝撃で…………ちょっと!!私のミルクティーの入ったカップが倒れたじゃない!!!!


ここまでヤムチャが言うなんて一体全体キヌタニは何をしたのよ……?




「どうせ僕なんか……正直に話したって……。」


「えー裁判長、ちょっといいか?被告人からの供述を聞くだけじゃなく、ここは被害者の話も聞くべきじゃないか?」



エリスの弁護人、よしだくんが手を挙げて提案する。


ちなみにキヌタニの弁護人はシンタローで、残りの私、くじらん、チッダールタは裁判員よ。




「そうだよ!その場にいた人たちにしか何があったのか分からないから、ちゃんと俺たちにも状況を教えて欲しいよ!!」


「そうね、一体何でこんな裁判を開いてるのかも私たちにはさっぱりなんだけど??」



くじらんと私もそこに加勢するわ。



「ああ……確かにそれもそうだな。では被害者のエリス、被告人に何をされたのか出来るだけ詳細に説明してくれ。」




「………………。」




 そうヤムチャは指示を出すけど座っているエリスは黙ったまま……って白目剥いてるし、何故か異臭を放ってるし、どう見てもエリス気絶してない??



「いやー、何発ビンタしてもエリスの奴、目を覚まさねーんだわwwww」



 シンタローはそう言いつつも諦めないでエリスの頬をビンタしまくる。

ああ、エリスの頬が痛々しいわ……。



「困ったな……加害者も被害者も状況を説明しないんじゃ裁判が成り立たんぞ……。とりあえずここは俺たち三人が目撃者として見たままのことを話すしかないみてえだな。」



そして三人は洞窟の中で目撃した状況を私達に説明した……。









「え?それって……、」


「つまりはキヌタニが……、」


「エリスを殺そうとしたってことか??」




 説明を聞いたよしだくんとくじらんは、にわかには信じられないって顔をしている。

多分私もそんな顔をしてるんじゃないかしら……?




いや、だってキヌタニよ?あのキヌタニが……殺人!?




「「「いやいやいやいや、ないないない!!」」」



私たち三人は口を揃えて説明された状況を全否定するわ!



「うーん、でもなーwwwそもそも気絶してるのがキヌタニじゃなく、エリスだって時点で普通じゃないことが起きてるしなーwww」



一応キヌタニの弁護人であるシンタローはヘラヘラと笑いながらそんなことを抜かしている。








「……そう、だよ……殺そうとしたよ。」



キヌタニは俯いたまま、ギリギリみんなが聞き取れるくらいの小さな声でボソリと呟いた。



その場がしんと静かになる。








えーと、今こいつ何て言った??……聞き間違えちゃったみたいなんだけど……。



「ふむ……皆呆然としているが……キヌタニはこう言ってたな。『殺そうとした』と。」



チッダールタがそう言うと、再び集会所には静寂だけが広がる。









「「「「え……、ええええええええーーーーっ!!!!!」」」」


「ヤムチャ……何でお前まで一緒に叫んでんだよwwww俺たちと一緒に事件現場に居てこいつを問い詰めてただろwwww」



 いやいやいや、え、え??キヌタニが、このキヌタニよ、あのキヌタニだってば!!!

現場を見ていたとは言え、何でシンタローはこれを聞いて平然と笑ってられるのかしら……!




「あ、あー……えーと、せ、静粛に!!!失礼、俺まで取り乱しちまった……。つ、つまり犯行を認めるってことでいいんだな?」


「うん…………、でも僕は無罪だよ??」



 キヌタニは裁判が始まってから初めてヤムチャと目を合わせた。

その視線は決して力強いものじゃないけれど、いつものキヌタニと違って何か恐怖を感じさせる……何かしらこの感じ……?




「ふざけたことを言うんじゃない!!人を殺そうとしておいて無罪だなんて何のつもりだ!!」



 よしだくんはいきなり立ち上がり、キヌタニをギロッと睨む。

滅多に怒らない彼がここまで怒鳴るなんて……相当怒ってるわね、あれは……。




「まー、これは完全に有罪だよなーw本来は死者の奈落に行ってもらうところを、仲間のよしみとして森から追放処分くらいに減刑を求めるぜwwww」



 シンタローはあれで弁護してるつもりなのかしら……?

確かに今の流れを聞いてたら、腹が立って私もキヌタニを死者の奈落送りにしたくなったけども!



「いや、いくら未遂とはいえ反省の欠片もなければ罪の意識もないんだ。再犯する可能性が高いからここは速攻で死刑の判決を……いや、今ここで死刑を執行するべきだ!!」



よしだくんはエリスの弁護士としてかなり本気で争うみたいね……。




「何だか本当に裁判っぽくなってきたね……。」



裁判員のくじらんは白熱した展開に少し興奮してるみたい。



「なるほど、事実の認識は一致しているが、双方の意見は一応食い違うわけだ。なら被告人、評議に入る前に最後に言うことはないか?」




ヤムチャは何とか平静を保ったままキヌタニに確認した。



 全員からの視線を集めたキヌタニは、顔を上げると一度私たちの顔を順番に見てからもう一度俯いて、それからゆっくりと口を開いた。







「僕が……どんな思いで今まで過ごしてきたか分かる?僕が……どれだけ今までエリスに酷いことをされてきたか分かる?僕が……これからもどれだけ苦しい目に遭うんだろうって、少しでも考えたことはある?僕は……自分の未来を守るためにこんなことをしたんだよ……、いやこうせざるを得なかったんだよ……。」



「自分がそんなに可愛いのか……自分勝手な奴だな……。」



 よしだくんは舌打ちをしてそう言いキヌタニに軽蔑の視線を送るけど、他のみんなはキヌタニの言葉が少し心に引っ掛かったのか黙り込んでしまう。




私も……ちょーーっと……最近のエリスの暴力を思い返すとさ……、ねえ……??





「……では、評議に入る。裁判員の三人は俺の家までついてこい。残りの四人はここで待機だ。その間、くれぐれも暴力沙汰はよしてくれよ?」




……ヒョウギ??何それ?よく分からないけどちょっと行ってきます、また後でねー。










「全く……お前もここまでだ。正直お前の弁護人を命じられたら断ろうとまで思ってたさ!」



 よしだくんはキヌタニの座っている椅子の足を蹴り飛ばした。

人ではなく物に当たることでも実に彼らしくない行動であった。





「別に……もういいよ。どうせ僕の気持ちなんて誰にも分からないんだから……。」


「て言うかよしだくん、さっきからどうしたの?ww何かめっちゃ厳しい当たり方してるけどww」



シンタローはそれに比べると異常なくらいに平常運転であった。






「お前は無能で他人に対する思いやりも無ければ機転も効かないが、人の道だけは踏み外さないと思ってたんだ!!だが、違ったようだな……。今のお前には人間として生きていく資格はない!!」



よしだくんはキヌタニの顔の前にビシッと指を突きつけた。





「そう……僕には自分の身を守る権利すらないんだ……。」



キヌタニは目に涙を浮かべて俯いたまま喋った。



「いや……wwそんなに酷い言葉ばっかり浴びせてると、今度は俺がよしだくんをキヌタニの名誉毀損で訴えちゃうぞ★」



「勝手にしろよ?訴えられたところでどうせ死刑や追放なんかにはならないんだ。俺はある程度の罰を受けようともキヌタニを懲らしめるさ……。」



 よしだくんの放つ目力がいつもとは比べ物にならないほど強かったので、シンタローもさすがに黙ってしまった。




それから裁判員たちが帰ってくるまで集会所で口を開くものはいなかった……。

実際の裁判を傍聴したことが無いので詳しくは分からないですが……。


 ニュースで見る限りは被告人に退廷を命じたり、裁判長がその場を諫めたり、色々とあるようですがそんな中、バイアスのかかってない目で人を裁くというのはとても難しいことだと思います。



 そんな責任重大な職務をヤムチャは遂行できるのでしょうか……?

もちろん彼は裁判長の経歴などありません、ただの素人です。

次回、そんなガバガバ裁判で下されるキヌタニの運命やいかに!?!?



 そしてミーシャのミルクティーはチッダールタの神通力でコップの中に戻るのか!?!?

(戻せるだろうけど神通力の無駄遣いなので戻りません……。)

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