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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第2章 名医、隕石になるってよ
47/162

2-9 三段重ねのたんこぶ

ーー前回のあらすじーー


 長らく姿が見えなかったミーシャは誰も予想できなかった行動に出ていた。

彼女は自宅を洞窟に運ぼうとしていたのだ。


 もちろんその計画は失敗に終わり、ちょうどいいタイミングでチッダールタが森の住人たちの前に銀のスパンコールで真夏の日光を反射しながら出現した!



 チッダールタは神通力によって荷物を浮かせ、洞窟内に気流を発生させることで荷物の運搬を楽にできるようセッティングしてから洞窟へと帰っていった。


 そんな中、ようやくエリスとキヌタニは荷物の山から発見されたものの、相変わらずのお荷物扱いでやはり洞窟の奥へと投げ飛ばされてしまうのであった……。



 ……え?何だかあらすじがつまらない??

そういう日もあります!!


 むしろ作者が前回の内容に忠実なあらすじを書くことが珍しいので有り難がるといいです。

(どこから目線???)



 あんまりスパンコールが付いた服って日常生活じゃ見かけませんね。

もしかしてあれは本来服に付けるものじゃなく別の使い方でもあるのでしょうか?


 お皿に貼り付けておけば料理が輝いて見えますからよさげな使い方だと思うのですが、これに共感できた読者の方は是非やってみてください、チッダールタの気持ちが理解できるかもしれません。

 そんなことがありながらも荷物を全部送ってから五人は洞窟の奥まで来た。

洞窟の壁に沿ってぎっしりと森の住人たちの荷物が並べられていた。



「うむ、これで全部のようだな。では今度は私が下に降りて荷物を順番に受け止めていこう。」




そう言うとチッダールタは穴の中へと飛び降りた。




「え、……えーっ!!チッダールタ早まるなあー!!?」



よしだくんはチッダールタがただの飛び降り自殺でもしたのかと思ったらしい。




「いやいやww神通力の使い手だぞ、ここから飛び降りたくらいじゃ死なねえよwww」


「あ、ああそうかそうか、そうだっt……」



と、シンタローとよしだくんが笑い合っていると下からドシャリ!という嫌な音が聞こえた。





「……あれ?仙人、生きてる?wwww」


「イタタタ……ああ、平気だ。ちょっと、着地に失敗してな……。」



穴の底からは呻き声混じりの返答が聞こえてきた。




「いや、荷物を浮かせたんだから自分も浮けるでしょうよ!昨日私達を送った時もバリバリ浮いてたわよね!?」


「と言われてもな……、何かこう……着地した方がカッコいいだろ?」


「その位置からは誰にも見られてないけどね!?」



ミーシャとくじらんは穴に向かって吠えた。



「仙人たるもの見られてない所でもちゃんと徳を積むものだ。さあ、荷物を投げてくれ。」

「な、何だか……すごく納得いかないわ。」





 そんなこんなでまずはヤムチャの荷物を、次に駄菓子屋の売り物を、そしてよしだくんの荷物を順に下へと投下していった。





「ねえ……これは何の真似よ?」



ヤムチャが縛られているキヌタニとエリスを抱えた。



「いや、だって『お荷物』だからな……。」


「そうよ!あんたらはお荷物だわ!」



ヤムチャはやれやれといった感じで言っていたが、ミーシャは嫌味たっぷりにそう叫んだ。



「何か地面に降りたと思ったらまた浮いたね……?」



 こんなこと呟いたのは当然キヌタニだった。

彼はもうどうでもいいという風に穴の底を視点の合わない目で見つめていた。



「えーーっと……??てことは他の荷物と同じようにするの?」



くじらんがまさか!?と言った口調で聞いてきた。




「いや!?それって私、ここから落とされるの……?」


「まあ、いいんじゃないか??」


「えっ!!???!!!??!?」



よしだくんは心底どうでもいいといった感じに返答した。






「そーそー、……こーするのよ!(><)☆○(゜ο゜)oエイッ」



と、何の前触れもなくミーシャはヤムチャの背中を突き飛ばした!






「いや!!それは、俺ーーー!!!!!!」


「いやあー!!!死にたくないーー!!??」


「何だか重力が強いなあ……。」




ヤムチャはバランスを崩し、エリスとキヌタニを巻き添えに穴の底へまっ逆さまに落ちていった。




「「えええーーーっ……。」」


「ミーシャ最高かよwwwww」



よしだくんとくじらんは唖然としていて、シンタローは地面を転げ回って笑っていた。





「……おいミーシャ!!!お前、何のつもりだ!!?」



穴の底から怒鳴り声が聞こえてきた。







「ええと……??あなたはどちら様ですか??」


「多分死神が僕たちの魂を奪いに来たんだよ……。」



 そんなエリスの戸惑う声とキヌタニの無気力な呟きも聞こえたので、どうやら二人と共にヤムチャもチッダールタに受け止めてもらったのか無事そうだ。




「いや、だって慌ててるヤムチャが面白いんだもーんww」



ミーシャがヘラヘラと笑っていると突然ヤムチャが深さ80mもある穴から飛び出てきた!




「天誅ーーーー!!!!!」



そう叫ぶとミーシャの両肩を鷲掴みにしてバク転し、穴の中へすごい勢いでぶん投げた!!



「いぎゃああああああーーーっ!!!」



そしてすぐにゴスッ!!という音が穴の底から響いてきた。




「イタタ……急にミーシャが私の頭に向かって突っ込んできたんだが、一体何が起きたんだ?とっさに術をかけなければ二人とも即死だったぞ。」



穴の底からはチッダールタの苦しんでいる声が聞こえた。



「えっ、頭ごっつんこしたのかwめっちゃ面白いなwwwwww」



シンタローは呼吸もまともにできないくらい爆笑していた。




「ふん、天誅を下しただけの俺は悪くねえぞ。」



ヤムチャはそっぽを向いてしまった。



「とにかく荷物運びを再開しよう、このままでは日が暮れてしまうぞ。」



チッダールタがそう言うと一同は時間がないのを思い出し、再びせかせかと作業を再開した。










「俺の作品を壊さないでくれよ、慎重に扱ってくれよなwwww」



 シンタローは笑いながら三人の後ろで現場監督をしていた。

ちなみにミーシャは頭ごっつんこの衝撃が大きかったのか穴の底でノビてしまった。




「全く、うるせえ奴だな。なら自分でやればいいのによ。」


「いやー、自分の作品を自分でうっかり壊したらショックじゃん?wwww」


「それを言うなら自分で作ったものには自分で責任を持って欲しいものだがな……。」




 そう言うよしだくんが抱えていたのはキヌタニが目隠しをされて縛られ、エリスに鞭打ちをされている石像であった。





「えぇ……シンタローの言う名作ってこれ……?」



くじらんは思わず後ずさりをした。



「これはすげー芸術的だろ?wwwやっぱ俺のセンスってやべえよなwww」


「一体どっちの意味で言ってるんだろう……?」


「そんなに深く考えちゃダメだぞ……。おーいチッダールタ、次の物を落とすぞー。」



よしだくんは石像から手を離した。





「あ、ラムネを飲んでいたらトイレに行きたくなってしまった。今から洞窟の奥で用を足して来るから少しだけ待っててくれ。」



それとチッダールタがそう言うのが同時だった。




数秒後、穴の底からはガッシャーン!!という音が鳴り響いた。





「え、ちょっと……??www」



シンタローの額から嫌な汗がダラダラと吹き出てきた。



「ねーえー!?何かが上から降ってきて地面に激突したわよ!?」



そんなエリスの声が穴の底から聞こえた。





「え……まさかまさか……??wwww」



シンタローは顔だけでなく全身からも汗を産出していた。







「ふう、待たせたな。……ん?もしかして私がいない間に荷物を下に落としてしまったのか?もう元が何か分からないくらいメチャメチャになってしまっているぞ。」


「嘘だあーー!wwww」




シンタローは笑顔で目から涙を飛び散らせた。



「まあいいんじゃねえのか?誰も損はしねえしな。」


「そうだね、誰も困らないよ。」



それとは対照的にヤムチャもくじらんも真顔で平然と言葉を返した。



「まあ、石像一つや二つくらい壊れても死にやしないだろう?気を取り直して次の作品を頼む。」


「いや仙人、一つや二つって……まだまだ壊す気満々かよ!www」



シンタローは穴の底に笑い混じりで吠え返した!





「次はこれだな……っと、これもまた……。」



 よしだくんが次に持ち上げたのは、確かくじらんが持っているエロ本に出てきたヒロインのガラスの彫刻だった。




「シンタロー……何ていいセンスしてるの!?!?」



鼻血垂れ流しのくじらんが彫刻に飛び付こうとするのをシンタローは慌てて止めた。



「待て待て、それはとてもデリケートな作品なんだwwww下手に衝撃が加わえると……。」


「壊れるの??」




「いや、服の部分のガラスだけキレイに割れるwwww」



それを聞いたくじらんは無言のまま、素早くシンタローを投げ飛ばしてよしだくんからその彫刻を奪い取った!!



「な、何をするんだ、くじらん!!!」


「うげえっ!痛いんだけどwwwwちょっとヤムチャ止めてー!ww」



壁に叩きつけられたシンタローはヤムチャに助けを求めた。



「全く……手の掛かる変態だぜ……!!」



ヤムチャはくじらんを軽々と捕まえると彫刻を奪い返し、くじらんを穴に勢いよく投げ込んだ!!





「あ、彫刻と間違えてくじらんを投げちまった……。」


「ああーー!!俺のかのz……!」



落下していくくじらんがそう言い終わらないうちにガツーン!!という音が洞窟に響いた!



「うおおっ……今度はくじらんが降ってきて私の頭を直撃したんだが……。私の術が無かったら本当にどうする気なんだ……。」



どうやらチッダールタときたら今度はくじらんと頭ごっつんこしてしまったようだ。



「いやーwwチッダールタとくじらんが激突して俺の作品が守られたならめっちゃ儲け物だなwww」



シンタローはめでたしめでたしと言ったように笑っていた。






「おいシンタロー。」



ヤムチャはそんなシンタローの肩を掴んだ。



「ん?どうs……」


「こんなことに才能の無駄遣いをしてるんじゃねーえ!!!!」



そう叫んでシンタローの頭と彫刻の頭部をフルパワーでごっつんこさせた!



「ぎゃああああああ!?!?!?wwwwww」









「まあ……犠牲者は出ちまったが、とりあえず今日まとめた分の荷物は全部運び終わって何よりだぜ……。」



キレイに並べられた荷物の山を見て満足そうにヤムチャは頷いた。




「明日もこの調子で頑張れば何とかなりそうだなwwwはあ……さよなら、俺の作品……w」



そう言うのはガラスの破片と血でまみれたシンタロー。



「にしてもどうやったらこんな単純な作業で怪我人がこんなに出るんだよ……。」



よしだくんは溜め息をついた。



「仕方ないだろう、皆ヤンチャが過ぎるからな。……では、私もお前達と一緒に駄菓子屋まで戻るとしよう。」



 三段重ねのたんこぶを頭に乗せたチッダールタは気絶したくじらんとミーシャを肩に担ぐとフワリと浮き出した。



「おっ、昨日と同じようにするか?wwww」



返答も待たずシンタローはチッダールタにしがみついた。



「そもそもそうしねえと俺達が帰れねえんだかな……。」



続いてヤムチャもしがみついた。



「おい……二人とも、そんなことしたらチッダールタの骨が折れるんじゃないのか……?」



よしだくんは引き気味に三人のことを見た。



「私をそんな軟弱な老人と一緒にするんじゃない。よしだくんも早く私の体に掴まれ。」


「そうだよ、めっちゃ楽しいぜwwwww」




「???????」



よしだくんは何が何だか分からないままチッダールタの背中にしがみついた。




「ならば……行くとしよう。ふんっ!!!」



 チッダールタのイルミネーションが緑に変わり、六人はまたしても戦闘機のごとく洞窟の中を突っ切って行くのであった。





「うえああああっーーー!!!???助けてくれーー!!!」









 そんな泣き声混じりのよしだくんの悲鳴を聞きながらエリスとキヌタニは呆然と六人の小さくなる背中を見送っていた。





「えーー……っと、もしかしなくても私たち……置いてかれた???」


「僕たちは永遠に荷物扱いになったのかな……?」


「だからお荷物はあんただけよ!!!」



エリスはお決まりの肘突きをキヌタニに連続で浴びせた。



「痛いよ……痛いよ……痛いよぉ…………。」



キヌタニはもはや叫び声をあげることすらしなくなっていた。



「あーあ、お腹減った!!確かここの段ボールに色々入ってるのよね!」



エリスは共に縛られているキヌタニを引きずって段ボールの近くまで移動した。



「さてさて、何を食べようかしらね~?」



エリスは足で封のされてない段ボールの蓋を開けた。


すると中には工具一式が入っていた。



「ちぇっ、食べ物じゃなかったあ。……ってダガーナイフ!!!」



エリスはそれを見つけるとナイフの柄を足の指で器用に掴んで自分の前に置いた。



「これでうまく切れるかしらね……?」



彼女はナイフの上に腹這いになると体を小刻みに動かして二人を縛るロープを切ろうとした。





「何だかこの揺れ方、酔いそうなんだけど……。」



キヌタニはエリスの上で仰向けになりながら顔色を悪くしていた。



「ちょっとー!?私の上で吐かないでよ!?」



そう言いながらもエリスはロープを切る動きを止めることはなかった。







15分後……





「あと少し……あと少しでこのゴミと離れられる!!」


「うっぷ……もう、もたないよぉ……。」



 ロープは今にも千切れそうになっていて、キヌタニも白目を剥いて今にも吐きそうになっていた。

と、プチッという軽い音がした。


それはロープが切れた音ではなく、エリスが傍にいたカミキリ虫を体で潰してしまった音だった。



「ひいっ!?虫ぃ!!虫はいやぁーっ!!!」



 エリスは驚いて足と背筋だけの力で恐怖のあまりに思いっきり飛び退いた。

と、その衝撃で今度こそ本当にロープが千切れた!




「ふげっ!?うっ……ヴオオ●○┛※┳■】〉─≧◇……!!!」



だが、その反動が決定打となってキヌタニは胃の中のものを外の世界へと解放してしまった。




「ぎいやあああっ!!!!誰か助けてー!!!!」




==========




一方、駄菓子屋に売られている常温の食料を洞窟にほとんど運んでしまった森の住人達は……。



 ミーシャが気絶してしまったので、料理の出来ない四人は仕方なく集会所で非常食として作っておいた干し肉を齧って腹を満たし、それからはのんびりしていた。





「……何か……嫌な予感を感じるな……。」



突然、チッダールタが口を開いた。



「うん?どうした??w食った干し肉が腐ってたとか?wwww」



 シンタローは爪楊枝を咥えて、くじらんとミーシャが寝ているエリスのベッドの上で一緒にゴロゴロしていた。





「いや、どうせ誰かがまた面倒事を起こしたとかじゃねえのか??例えばエリスとかな。……エリス?なっ……!!エリスを忘れてきたじゃねえか!!」



ヤムチャは自分で言ったことにビックリして、座っていた椅子からひっくり返った!



「でも縛られてるから下手に悪さなんて出来ないと思うんだがな……?」



よしだくんは冷静に、淡々と喋っていた。




「エリスが関わっていると決まったわけではないが……しかし洞窟の中から異様な雰囲気を感じるんだ……。ちょっと様子を見に行きたいな、お前たちさえよければついてきてくれないか?」



チッダールタは椅子から立ち上がり集会所から出ていこうとした。




「それって……またあの暴走ジェットで飛ぶのか……??」



よしだくんは心底嫌そうな顔をした。




「その暴走ジェットが楽しいんだよなー、だから俺は行くぜwww」



シンタローは起き上がると早くもチッダールタにしがみついた。



「んじゃあ、よしだくんは二人の様子を見ておいてくれ。俺達は洞窟の中の状況を見るついでにエリスのことを迎えに行ってくるからな。」





三人は集会所から爆速で出ていった。



「……本当に恐ろしいおじいちゃんだ。……エリス、何もやらかしてないといいんだが。」

 衝撃を与えるとガラス細工がフォルムチェンジ(意味深)する……。

うーん、本当にそんなことが可能なのでしょうか?

でも職人さん達の技術って凡人の作者には分からないことだらけですし出来てもおかしくない……?



人間が80mも飛び上がるためにはどれだけのパワーが必要なんでしょうか……?


 もしかしたらマ〇オみたいに壁キックをして登って来たのかもしれませんが……。

いや、壁キックで上に登る方が大変な気もします。


 前回の後書きでは物理の問題を読者の皆さんに出しました。

今回はもう少しシンプルに出題しようと思います!



『体重110kgのヤムチャが80mを壁キック無しで飛び上がるためには、駄菓子屋のアイスいくつ分のエネルギーが必要でしょう?』


 アイス一個のカロリーは……読者の皆さんが好きなアイスで計算してください。

また模範解答をお待ちしておりますね!

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