2-4 スターク vs エリス vs よしだくん
ーー前回のあらすじーー
世界中の隠されたお宝を掠め取って飛び回るトレジャーハンターのYamucha隊……彼らの次の目的地は世界のどこかにあると言われている何の変哲もない洞窟だった。
ここには何かある……、隊長の嗅覚はお宝の気配を見逃さなかった。
しかし、一流のハンターに立ちはだかるのはこれまた一流のトラップだった!
ヤムチャ隊長の頭上から降って来たのは一匹のムカデ!!
彼はムカデに夢中になるあまり、崖から足を滑らせてしまった!!
ロープで体を繋がれていた隊員たちも一緒に滝壺へと落ちていった……。
さあ、彼らの運命やいかに!?
滝壺に落ちると危険とは言ったものですが、あれは特殊な水の流れに巻き込まれて水面に浮いたままでいられなくなるから危ないらしいですね。
本当かなと思った方は試してみればいいです、ですがきっと本編に進む前に溺れて終了すると思います。
さてさてこんばんは、再び俺だ、よしだくんだ。
外も大分暗くなってきて駄菓子屋の時計は午後七時を回ったところだ。
しかしあの四人、一向に帰ってくる気配がない。
ポケベルも持ってはいるのだろうが、8kmも離れた地底洞窟なんて電波も届かないしな……。
まあ探索に夢中になって洞窟の中だから、時間が分からなくなっているだけだと思うが……。
「あーあ、お腹減っちゃったあ……モグモグ。」
エリスは呑気に駄菓子屋で売られているロールケーキを食べている。
食事前だというのに……いや、今日はミーシャの食事にありつけるとも限らないのか。
ここは目を瞑る……と言うかむしろ、俺も何か食べた方がよさそうだな。
「はい、あーん❤」
「んあ!?やめろ、気持ち悪いな!!お前の触ったもんなんて食いたくねえんだよ!!」
だがな……
「そんなこと言わないでよぉ~❤せっかく私が真心込めてフォークを刺したのにぃ~♪」
「気持ち悪いゴミが気持ち悪いフォークで気持ち悪い刺し方をしやがってよ!よくそんなことが言えんな!!!!」
何故……スタークまでここにいるんだ……!?
家の中の片付けに追われていて、気がついた時にはもう日が暮れていた。
そこから集会所に寄ったがエリスは居なくてな……その後に駄菓子屋に入ったらこの様だ。
「もう、これはフリかしら?……ムシャムシャ……んー❤」
「うおおえぇああっ!?口移しなんて俺様を殺す気か!?死ね死ね死ねーーぇっ!!!」
「いやあんっ!痛いわよぉ♪」
バカなことをしているエリスをバカなスタークがこれでもかとぶっ叩く。
しかもエリスは喜ぶし……もう目も当てられない光景だな。
「全く……そんなに嫌ならスタークはここから出ていったらどうなんだ?」
俺も我慢の限界で口を挟んだ。
「あん!?やかましいな!ここはな、商品棚の冷蔵機能のお陰で涼しいんだよ!!あのバカ共が宝探しごっこしてる間に俺はここでダラダラしてえんだ!!そんなに俺がうざいなら貴様が地下で暮らしてこいよ!おらあっ!」
スタークはそう吠えるとエリスの首を掴んで俺の足元に投げ飛ばしてきた。
お前はいつもダラダラしてるだろ……少しは働いたらどうなんだ……!?
いや、そもそも……何で昼間に駄菓子屋で話していた宝探しのことを知ってるんだ?こいつは??
「きゃああっん❤ダメよお、恋人にDVなんてしちゃあっ!!」
そんなことを言ってるエリスはやっぱり喜んでいるようにしか見えない……今さらだがとんだド変態が来たものだ。
「ああ、何だか興奮して脱ぎたくなっちゃった……ハアハア❤」
「おいおい、やめろって……。」
エリスは喘ぎながら服の袖に手をかけた。
本当、申し訳ないが生理的に無理だ……。
俺は堪らずに後ずさりをする。
「よしだくんびびってんじゃねえよ!!あーもうじれってえな!俺が殺ってやらあ!!」
俺が恐怖に慄いていると先にスタークが動いた。
「てめえなんてそこにいるだけで目の毒だ!!」
奴は売り物のガムテープを手に取るとエリスに素早く詰め寄り、首根っこを掴んで乱暴に抱き抱えた!
「お姫様だっこなんて(*ノ▽ノ)ヤァン❤」
「うるせえ、ここで凍死しやがれ!!」
スタークはエリスをアイス売り場のワゴンに無理矢理投げ込んだ!!
なるほどな、ガムテープでワゴンを密閉しようって訳か。
それにしたって俺もただ見てるだけというのはどうにも癪だな、悪いが少し暴れてやるか!!
「おいスターク。」
俺はスタークに駆け寄った。
「あん!?今忙しいんだよ見て分か……おっ!?」
背後からスタークの腰を押さえつけて持ち上げ、そのままこいつの体をワゴンに投げ込んでガムテープをひったくった!
俺だってこの森の住人だ……もちろんヤムチャとかに比べれば戦闘力は段違いに低いが、それでもあんな化け物たちと暮らしてるんだ、電波塔の管理とかも運動になるから結構鍛えられてるんだぞ?
「い、いきなり何しやがる!!俺はこいつを閉じ込めようと……」
「スタークいらっしゃーい❤」
スタークは慌ててワゴンから出ようとしているが、エリスに後ろから羽交い締めにされてそれを妨げられている。
その間に俺はガムテープでワゴンの引き戸を密閉した!
……そして一応、武器売り場のロケットランチャーを重石の代わりにとワゴンの上に置いた。
「おい!!ここから出しやがれ!!」
「ダメよぉ、せっかく二人きりなんだからぁ!ああもうダメぇ、興奮止まんないのぉー!!❤」
「やめろ!!脱ぐな、動くな、呼吸すんな!!」
……もうこれ以上二人の下劣な会話を聞きたくないから手早くおつまみとジュースを売り物の棚から掠め取ってさっさと退散しよう。
それじゃあ、お休みなさいだな。また今度!!
「ううっ……スターク許さないぞ……!」
そんな弱々しい声を上げたのは、レジをぶっ壊されてノビてしまっていたキヌタニであった。
カウンター下の死角で倒れていたので、よしだくんにもエリスにもその存在を認知されていなかったようだ。
「……おい、やめろ!!抱きつくな!三秒以内に離れないとぶっ殺すからな!!!」
「仕方ないわね~、三秒以内に貴方のこと、落としてあげる❤」
「な、何だろう?どこかで聞き覚えのある声だなあ?」
キヌタニは起き上がると、当然聞き慣れていただろう声の聞こえる方へノロノロと向かった。
「スタ……ーク❤」
「死ねーーっ!!!!」
三秒どころか一秒もカウントしないうちにスタークは叫び声をあげ、同時にワゴンの中からバコン!!という大きな音が鳴った。
「えっ!?今の音、アイス売り場から……!?って、何でその上にロケットランチャーなんて……??」
キヌタニはまず、ロケットランチャーをどかそうとした。
しかし非力な彼の力でサクッとそれを持ち上げるというわけにはいかなかった。
「うんしょっ!!……とっ、うわああっ!!!?」
一瞬だけランチャーが持ち上がったが、キヌタニはすぐにバランスを崩し、ランチャーを落としてひっくり返ってしまった。
「ぐぎゃっ!!重いっ……。」
ランチャーの下敷きになってしまったキヌタニがそこから脱出しようとした時、グラグラと揺れていたワゴンが彼の方に倒れてきた!
「うぎゃああっ!!もっと重いよぉ……。」
しかし倒れた衝撃は大したことなかったので、キヌタニはロケットランチャーとワゴンに押し潰されながらも意識を失うことが出来ずに呻くことしか出来なかった。
「残念だったな、ゴミ店主!!貴様のような植物プランクトンが俺様に勝とうなんて5000兆年早えんだ!!」
ワゴンの後ろ側ではスタークが、彼が最初に掘った抜け穴、ワゴンの真下に掘ったが使わなかった方である……そこから上半身を出して吠えた。
そしてワゴンの底にはぽっかりと大きな穴が開いていた。
「さすがは俺の掘った抜け穴だ!!やっぱり役に立つな!!」
「そ、その声……やっぱり……スタークの仕業か!」
キヌタニは潰されている肺から頑張って声を絞り出した。
「はっ!!じゃあな!アイスは全部貰っていくぜ!!」
そう言うとスタークは抜け穴の中に消えていった。
「嘘でしょ……!?僕、ずっとこのまんま……!?」
スタークがエリスに言っていたロールケーキの『気持ち悪いフォークの差し方』ってどういうことなんでしょうか?
作者も気になってロールケーキに十通りほど差し方を変えてフォークを入れてみましたが、よく分かりませんでした。
敢えて言うなら、ロールケーキをひっくり返してから(元の位置の)下から上にフォークを入れるのはちょっと生理的に嫌だなとは思いました。
もしくはロールケーキの中のクリームだけを拭い取ってスタークに差し出したか……?
一晩考えましたが結局、真相は闇の中です。
それから『気持ち悪いフォーク』ってどんなフォーク?と書いてて思いました。
デザート用ならフォークの針(←先端)は三本(かな?)ですがそれが何十本もあるとかですかね?
もしくは返しみたいになっていて刺さったら取れないとか……?(痛そう)
そんなフォークでスタークに食べさせたとしたら、本当にエリスは拷問が好きなのでしょうね……。
あ、次回はまたYamucha隊の話に戻ります!
彼らは滝壺から無事に抜け出せるのでしょうか??