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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第2章 名医、隕石になるってよ
41/162

2-3 冒険の計画は念入りに

ーー前回のあらすじーー


 ヤムチャは思いついてしまった。

RPGが封じられた今、自分にできることは何かと。


 レベルアップはダメ、回復アイテムもセーブポイントも使えなくなった彼にできること。

それは……トレジャーハントであると!


 閃いてからの彼の行動は速かった。

迅速にメンバーを募集し、道具を取り揃えて早速お宝を目指して出発してしまったのだから。




 ……ところで洞窟にお宝があるとは誰も言っていないのですが、読者の皆さんはお気づきでしょうか?

洞窟には必ずお宝があるわけではないのです!!


 もしかしたら地下帝国があってそこのカジノで大負けして……お宝を手に入れて大富豪になるどころか借金まみれになって強制的に地下労働をさせられる……なんてことがあるかもしれません。


読者の皆さんも洞窟に入る時は怪しいカジノに気を付けてください!!

Yamucha探検隊の四人が出発してから約二時間が経過した。



 足場が悪く太陽の光が意外と差し込まない密林の中を進み続けて、六、七回ほど野生動物の襲撃を受けたが、彼らからしたらそんなことはへっちゃら、余裕、朝飯前であり、地底洞窟の入り口に到着した。




「ほら、ここが入り口よ。」



ミーシャは細身の彼女がギリギリ通れるくらいの隙間を指差した。



「地図も無事書けたぞ……ってよくお前そんな所に入ろうと思ったな。」



ヤムチャは地図を書いた紙から顔をあげるとため息をついた。




「とりあえず俺が通れるくらいまで穴を広げなきゃ話が始まらねえ。……と言うわけで荷物持ちのシンタロー、ピッケルを出せ!!」



ヤムチャは高らかにそう命令した。





「……。」



「…………。」



「………………。」




しかしいつまで待っても返事が聞こえてくることはなかった。




「おいおいシンタロー、隊長が呼んだら返事くらいしろよ……っていなくねえか?」


「ヤムチャ、シンタローならあそこだよ。」




くじらんは元来た方角を指差した。



 すると、三人から300m程度離れた場所に、顔を真っ赤にして白目を剥いて息を荒げてフラフラ歩きになっているシンタローの姿がヤムチャとミーシャにも確認できた。



「おいおい、どうなってやがるんだ?隊列を乱すなんてよ、そんなことはこのヤムチャ隊長が許さんぞ!」



ヤムチャは遠くにいるシンタローにも聞こえるように叫んだ。



その声に返事をするかのごとく、彼はその場でうつ伏せに倒れこんだ。



「あら?どうしたのかしらね??」



そのミーシャの声を合図に三人はシンタローに近寄った。








「うぁ……もう、無理……ハハ……www」


「いやー、こりゃ骨を抜かれたクラゲみたいねえ……。」



シンタローは荷物に押し潰されて地べたにへばりついていた。




「おい、クラゲに骨はねえぞ…………どっちかっていうと殻をとられたクワガタだな……だが、本当にクラゲみてえになっちまったようだ……。」


「でも一体どうしてシンタローはクワガタに……??」



ツッコミ不在な三人は落ちている木の棒でシンタローの体をつつき回した。




「うげぇ……くすぐったい……、重い……。」



シンタローは体をピクピクと痙攣させていた。



「重いだあ?仕方ねえな、リュックは全部俺が持ってやらあ。」



ヤムチャは四人分のリュックを背負った。







「これは……重いな。」



しかしすぐに地面に下ろしてしまった。





「あーーーー……リュックは……自分で背負おうな、これは隊長命令だ。」



「えっ、私も?めんどくさいんだけど!」



ミーシャはリュックの右肩の紐をヤムチャの首にかけた。



「お前……隊長命令だぞ。」



と言いつつもミーシャのリュックを渋々と担いだ。



「ほらシンタロー、身軽になったでしょ。早く立っt……」


「イエーイ!!ふっかーつ★‼」



くじらんが手を差し伸べた瞬間、シンタローは息を吹き返すかのごとく飛び上がって立ち上がった。



「まだまだ元気じゃん、疲れたフリなんかしてさあ。」



くじらんはやれやれといった表情を浮かべた。



「いやいやwwwあんな重い荷物をこんだけの距離運ばされて疲れてないわけないだろwwww」



と、疲れを全く感じさせない朗らかな口調でシンタローは反論した。



「さあ、モタモタしてると帰る前に日が暮れるぞ!!シンタロー、ピッケルだ!」


「はいよーww」



四人は洞窟への入り口へと戻っていった。







十分後……






「よし!!これなら俺も通れるな!!それにしてもだ……、」



ヤムチャは何度目になるか分からないが穴の中を覗きこんだ。



「本当にこんなやべえ地形してたのか!?よくこんな所に入っていこうと思ったな!?」



 洞窟に入って目の前には大きな滝があり、二歩進むともう崖下に真っ逆さまであった。

しかもそこから地面、いや水面まで100mの落差があり、しかも落ちた先は滝壺になっていた。



「まあ、面白そうだったし?ちゃんと縄ばしごもあるでしょ?」



そうミーシャは言ったが……。






「随分ボロそうな縄ばしご……、本当によくこんなはしごを使おうと思ったね……。」


「そもそも何でこんな所に縄ばしごが……?こんな場所に誰か居たりするのかよ??」



 くじらんは感心したように、ヤムチャは不思議そうに言った。

彼の言う通り、縄ばしごは湿気でカビが生えて腐り、いつ千切れてもおかしくなかった。




「こんな重い荷物を背負ってこのはしごを降りたら途中で切れて終わる未来しか見えねえwwww」



「そうだな……ここはロッククライミングの要領で降りていくか!シンタロー、ロープとクライミングブーツだ!!」


「えっ、マジで降りるの!?www笑うしかねえなwww」




シンタローは笑いながらリュックから四人分のクライミングブーツとロープを取り出した。



「これとピッケルを使ってゆっくり降りていこう!なに、先に進む道の足場までせいぜい落差は40m位だろ?楽勝だ!!」



と、そう言いながらヤムチャは自分と他の三人の体を一本のロープで縛っていった。



「え?ヤムチャ何を……??」



ミーシャは不審な目で彼を見た。



「もし万が一誰かが足を滑らしたら大変だからな、他の三人が踏ん張れば落ちずに済むぞ!!安心しろ!俺が全力で支えてやるよ!!!」



ヤムチャはとても自慢気に胸を張った。





「え?じゃあヤムチャが足を滑らせたらどうなるの?」



くじらんはふと、思ったことを口に出してみた。



「……あーーお前ら、頑張れ!!」



ヤムチャは何も思いつかなかったのか苦し紛れに、シンプルでゴミみたいなアドバイスをした。



「まあ、安心しろって★ヤムチャが足を滑らせたらこのナイフで俺がヤムチャのロープを切っちゃうから!www」



シンタローがリュックからサバイバルナイフを取り出した。



「おいおい……俺は足を滑らせねえように頑張らせてもらうさ。じゃあ、行くぞ!!」








 コスプレの靴からクライミングブーツに履き替え、ミーシャの荷物を彼女に押し付けるとピッケルを片手にまず、ヤムチャが崖を降り始めた。



「うーむ、思ったよりかは足をかけられるところが少なそうだ……。お前ら気を付けろよ!」




「じゃあ、次は俺が行きまーす!!wwww」



シンタローは元気よく崖にへばりついた。



「うーん、結構滑るな、森にある崖よりも断然動きづらいわww」



まあ、それでも彼は余裕そうな口調で喋っていた。



そしてその声を合図に今度はくじらんが崖にしがみついた。



「うわ、本当によく滑るね……。これは気を付けないと大変なことになりそう……。」



高所恐怖症のくじらんは下を見ないよう慎重に崖の数少ない足場を移動した。







「三人とも何やってるのよ、馬鹿馬鹿しくてやってられないわ!!」



と、ミーシャはいつ切れるかも分からない縄ばしごを一人涼しい顔で降りていった。



「ミーシャ!?お前は今荷物を背負ってるからはしごにかかる力も強くなってるんだぞ!止めておけ!!」


「はぁ!?女の子に向かって体重が増えたみたいな言い方しないでくれる!?!?」




ヤムチャの言葉にカチンと来たのかミーシャははしごを降りるスピードを早めた!





「えっ!ちょっとミーシャ待って、早いよ!早いって!!」



すると彼女とロープで繋がっている、崖にしがみついたままのくじらんの体が引っ張られて……



「もう無理……うわああっ!!」



くじらんの手足は滑って崖から離れてしまった!



「えぇーwwwマジで~!?!?」



 そんな間抜けな声を出すシンタローもくじらんとロープで繋がっているので、重さに引っ張られて落下してしまった!


「何やってんのよ!二人ともーっ!!!」



それを見てミーシャは二人の体重を支えようとはしごに掴まりながらじたばたした。





ブチッ!!!


しかし案の定……縄ばしごはミーシャの真上で切れてしまった。



「いやああっ!!!何なのーー!?」






さあ、隊員たちの運命はこの男に託された!!!



「うおおおおっ!!???!!大丈夫かあーーー!?お前らぁー!!!」



 ヤムチャ隊長は渾身の力を振り絞り、ピッケルを崖にうずめ、必死にしがみついて三人分の体重を支えた!



「は、早く……崖に、掴まれーーー!!!」



 ヤムチャは崖に掴まりながら声を喉から何とか絞り出した。

その声に真っ先に反応したのはすぐ真下にいたシンタローだ。



 彼は目の前の10cmほどの足場を見つけるとそこに足をのせ、ピッケルを崖に突き刺して体を固定した!




「くじらん!早くしろ!!www」



 くじらんも呼び掛けに答えるかのようにロープを揺らして1m程離れていた大きめの足場に足を引っかけた!




「み、ミーシャ!急いでー!!」



くじらんはピッケルをうまく崖に刺せなくて足だけで踏ん張っていた!



「もー何なのよー!!!」



 ミーシャは闇雲にピッケルを振り回した。

すると、ガチン!と音がしてピッケルが運良く足場の多いところに突き刺さった!






「はあはあ……さすがに三人同時はきつかったな……。」


「いやお前、本当に化け物だわwwww」



シンタローは崖に掴まりながら爆笑していた。




「と、とりあえず先に進むには俺が下に降りなきゃいけねえな……あ??あーー……。」


「どうしたの、ヤムチャ??」



 下からくじらんが声をかけた。

しかしヤムチャは何も答えない。



「ちょっとー?どうしたのよー。早く地面に降りたいんだけど?」


「それがだな……ピッケルを強く崖に刺しすぎて抜けなくなっちまった。。」



ヤムチャはピッケルを引き抜こうとしたが、びくともしなくなってしまったらしい。



「うーむ、参ったな……ひねってみるか?」



 彼はピッケルを無理やりねじろうとした。

そしたらパキン!という嫌な音がした。



「あーー!!折れちまったー!!!」


「何やってんだー!?www」



シンタローが叫んだがヤムチャは一応まだ崖に張り付いてはいた。



「くっ……ピッケルなしで降りるのは厳しいそうだが、やるしかねえ!!」



ヤムチャは少しずつ慎重に崖を降りようとした。




「いや……そもそもあなたはこんな高さから落ちても平気でしょ?先に飛び降りて下で私たちを受け止めなさいよ。」



そんな時、ミーシャは平然とそんなことを言った。




「確かにヤムチャは何やっても死なないよね。」


「ヤムチャ、頑張れwwww」



そこにくじらんとシンタローも加勢した。



「やれやれ……だがまあ、ヤムチャ王国をめぐる冒険であれだけ醜態を晒しちまったんだ。ここは一つカッコいい所を見せておくか……ん?」



上を見上げるシンタローにはヤムチャの額に何かが降ってきたのが見えた。




「うおおおっ!!??ムカデだと!?!?」



 ヤムチャは体をねじりながら手でムカデを振り払った。

だがもちろん、彼は足を滑らせて崖から落ちてしまった!



「し、しまったあーー!!!」


「おいおいヤムチャ、飛び降りるなら先に言えよwwwロープを切らないと俺たちまでまっ逆さまだぜ??」



 こんな時にもシンタローは冷静、いや陽気であった。

取り出したサバイバルナイフを高く掲げて狙いをロープに定めた。





そして次の瞬間、ブツリ……!と変な音がした。



「うぉああああああ!!!???」




「おいヤムチャ、何でナイフの上に降ってくるんだよ!!www尻にナイフが刺さったらロープが切れねえじゃんwww」


「助けてくれぇーー!!!」



ナイフの尻尾をつけたヤムチャはそのまま落ちていった。




そして……




「あああー!www」


「うわあああーー!!!」


「いやあああっー!!!」



ロープで繋がっている三人も道連れに落下した……。







ドッカーン!!という爆音と共にヤムチャが地面に叩きつけられた!



「ぐふぅぅおぉぉぉ……!!!」




「あいでぇっ!!ミ☆」「んがぁっ!?」




「いったあーっ!!」「ぐへぇっ……。」「うごおっ!?」




「きゃあんっ!!♪」「うっ!?」「うぎゃ……。」「ぐがあー!?」




そのヤムチャの上に三人が順番に落下して人間タワーが完成した。





「ふぅ……まあ三人も下敷きがいれば痛くないわね!!」



ミーシャは何も無かったかのように起き上がった。



「ううっ……ヤムチャとシンタローのお陰で助かったよ……。」



くじらんも続いて立ち上がった。



「うぇー……くじらん重すぎ……。」



 ヤムチャとくじらんという巨体二人に挟まれたシンタローは、ふらつきながらも何とか立ち上がってみせた。





「グゴゴゴゴ……アアアア……ガガガガ……。」



 ヤムチャはリュックどころか体まで地面に半分埋まって、白目を剥きながらおぞましい声を発していた。

ちなみにナイフはどういうわけかさっきよりも深く刺さっていた。




「まあ、でもこれで計画通り全員無事に降りることができたわねー♪」


「いや、明らかに一人無事じゃないのがいるだろwww」



と、その時四人のいる地面がグラグラと揺れ出した!



「え!?何なの!?!?」



続いて地面にミシミシと亀裂が入った。




「ヤムチャの降ってきた衝撃が強すぎたんだろwwwもっと優しくぶつかれって★」


「そ、そんなこと言ってる場合じゃないわよ!!早く先に進んで安全なとこまで……!!」



そのミーシャの言葉で三人は走り出そうとした、のだが何故か前に進めなかった。




「「「や、ヤムチャーー!?」」」



 隊長が重石になっていて全く動けなくなっていたのだ。

そしてドーン!!という音と共に地面が崩れ落ちた!





「アア…………。」



「ダメだこりゃー!!www」



「誰かあー!!」



「もー本当に何なのよー!?!?」





そして四人の冒険家は60m下の滝壺へと消えていった……。

 残念!!彼らの冒険はここで終わってしまった!!!……とはならないと思いますが……。

まあ、隊長が何とかしてくれるでしょう!!!(本当か???)



 結局、40mくらいの落差じゃヤムチャは死なないということなんですねー。(棒)

ヤムチャがどこまで耐えられるのか実験するのなら、いっそのこと溶岩に沈めて死ぬか確かめてもいいのかもしれません。



 結局四人の荷物はどれほどの重量があったのでしょうか?

50……100kg?


 ヤムチャのテント一式やシンタローのツール系統が特に重そうですが、そんなものを背負って8kmも歩くなど正気の沙汰ではありません。


 読者の皆さんがお宝探しに出る際は絶対に真似しないでくださいね!!

特に戦闘グッズとクーラーボックスは必要ないかと思います。

スナック菓子は……採用!!

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