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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第2章 名医、隕石になるってよ
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2-2 新たな冒険へ……

ーー前回のあらすじーー


 ヤムチャの狂気に満ちたRPGから二週間……

停電から復旧した森では祝賀会が開かれようとしていた。


 空に飛ばされてお星さまになってしまったボール……彼の姿はもう100エーカーの森にはなかった。

代わりに存在するのはニートを辞めて生まれ変わった「くじらん」だった……。


さて、今回はどのような物語が始まるのか……それは誰にも分からない。


ーーーーーーーーーー


 ゲームは始めて一時間が一番楽しいですから。

小説も最初の三話くらいが一番面白いのかもしれません(適当)。


 まだ二章は二話目ですのでワクワクしながら読んでいただけると……いや、やっぱりカオスに備えてから本編に進んだ方がいいでしょう。

翌日の昼下がり……




 駄菓子屋には二日酔いで頭を押さえながら客(って代金を払わない奴をそう呼んでいいのかは疑問だが)にアイスを配っていくキヌタニと、そのアイスをどんどん平らげていく俺達が集まっていた。

今日もよく晴れていて暑いからな、アイスがとても美味しい。





「で、何の用なの?……ムチャムチャ、朝の八時からここで待ち伏せしてみんなを集めるなんてとっても大事な用事なんでしょうね?」



エリスはアイスのカップから視線を離さずにそう言う。


 ちなみに一番最後に来たのが彼女で、しかもまだ寝起きらしい。

連日の20時間労働を強いられていたし、むしろよく日が昇っているうちに起きられたものだ。




「全くだ、俺達だって暇じゃないんだぞ。ムグムグ……。」


「俺も早く畑仕事を覚えたいんだけどなあ、マグマグ……。」



 俺やぼ……くじらんも帰りたいムードを出しつつ、アイスを食べ続ける。

やはりまだくじらん呼びは慣れないものがあるな……。




「まあ、全員揃ったしな。そろそろ始めるとするか。」


「あ、言っとくけどリアルRPGとかならどうなるか分かってるわよね??」



ミーシャはアイスの棒をヤムチャに向けた。



「え?wwwどうなるn……あがっ!!」



その棒は不用意に開いたシンタローの口に突き刺さった。



「もうリアルRPGは絶対にやらねえよ……そんなのよりもっと心踊ることだ!!」


「うえっ……何で俺……っ!……何だそれは!?wwww」



 喉の奥に刺さったアイスの棒を引き抜いて血を吐くシンタローは目を輝かせているが、それ以外は全員不安な表情を浮かべている。


もちろん俺も、嫌な予感しかしないんだよな……。





「おいミーシャ、魚を見つけた地底洞窟ってまだ一番奥までは探索してないんだよな?」


「は??……まあ、暗いし肌寒いし用なんて無いし……そりゃあね。」



突然自分に話が振られたのでミーシャは驚いたが、事実をそのまま答える。



「どうして魚があれほど沢山いるのかも分かってないし、奥の方はどうなってるのか気になるだろ??そこでだ……、」


「冒険と宝探しなら行かないわよ。」


「何故分かった……!?」



ミーシャに先手を取られてしまいヤムチャは驚いている。



「あんたの単純な脳みその中身くらい大体は分かるわよ!!……全くコウモリ退治の時といいワンパターンね……。」


「うーん、でもちょっと気になるなあ……。」



 ミーシャは呆れているがくじらんは少し興味があるようだ。

まあ、俺も全くどうでもいいかと言われればそんなことはないな。

むしろついて行きたいくらいだ。



「えっ?」


「いやー、俺も行きたいなー♪www」




「えっ??」


「よーし!!四人いれば十分だろ!!隊長は俺、副隊長はくじらん、道案内はミーシャ、荷物持ちはシンタローだな!!!」


「えっ???……ってどうして私がメンバーに入ってるのよ!!!」



 ミーシャは手に持っていたハイパーカップ(抹茶味)を中身が半分くらい残ったままヤムチャの顔に叩きつける!



「ぐおっ!!??な、何を……隊長に向かってするんだ!?」


「もう隊長気取りかい!!私は行かないってば!! !!」



ヤムチャの顔面はアイスまみれになり、ミーシャは駄菓子屋から出ていこうとした。



「待て待て!!仕方ないだろ、洞窟にはお前しか行ったことがないんだぞ!?どうやって俺達にそこまで行けと??」


「いや、知らないわよ。勝手に探して?」


ミーシャは再びこちらに背を向けた。

しかしヤムチャも引き下がらない。



「あーーー!分かった、こうしよう!!洞窟の場所を教えてくれれば今後魚の調達は『シンタロー』がすることにしよう!!どうだ??」


「うんうん……え?ww俺なの!?wwww」



 そのヤムチャの言葉にシンタローは突然巻き込みを食らって驚き、ミーシャも肩がピクリと反応して振り返った。




「……はぁ。分かったから、道は一回で覚えなさいよ?」


「「よっしゃあーーー!!!」」


「……マジか~wwwww」



 ミーシャの答えに隊長と副隊長は歓喜の声をあげ、荷物持ちは微妙な表情を浮かべている。

彼女は駄菓子屋の中に戻ってきて新しいアイスを食べ始めた。



「え、はいはい!私も行きたいです!!モグモグ……。」

「ああ、できれば俺もついて行きたいな。」



エリスと俺もここぞとばかりにアピールする。



「そうだな、連れていきたいとこだが……ここから洞窟までどのくらいの距離だ?」


「ざっと8kmってとこかしらね??」


「随分と遠くまで探索に出掛けたんだなwwwwいや、獲物を追って気がついたらこんなところまで……とか?ww」



 そんなことを言うシンタローの顔にミーシャが一口しか食べてないハーゲンドック(ラムレーズン味)をクラッシュさせるが、そんなことじゃ彼は動じない。



「それにしてもちょっと遠いなwそんな長い距離を森の外で動いて大丈夫か?www」


「うーむ、さすがに俺も状況の分からねえ森の外を歩かせるのは怖いからな、今回は自力で自分の身を守れるやつだけ来てもらうか。……と言うわけでエリス隊員とよしだくん隊員はお留守番だ。」




知らないうちに隊員にされているんだが……、しかしお留守番か、少し残念だ。



「と言うかもう出発しないと帰る前に日が暮れそうだな、早く準備しちまおう!!!」



それから四人は慌ただしく服装や持ち物を整え始めた……。







20分後……






「よぉし!!みんな決まってるな!!」



準備を整えた四人を見てまあ……






お前ら一体どこのアマゾンに行くんだ?


 まずはその服装、駄菓子屋に売っていた冒険家のコスプレなんだろうが、かなり本格的で帽子にはライトもついているし何ならリュックまで衣装の一部らしい。





「結局私も着るのね……すごく暑苦しいわ。」


「そりゃYamucha隊のメンバーだからな!!」



 部隊の名前はそれでいいんだな……?

そしてそのリュックも登山用かと思えるほどの大きさがある。



「にしてもそのリュック、一体何が入ってるんだ?」



俺は気になってしまって四人に聞いてみた。




「俺のリュックには寝袋とテントが入っている。本格的だろ?後は火起こしの道具とかあれば便利そうな物は片っ端から詰めたぞ!!」




 ……日が暮れないうちに帰ってくるんじゃなかったのかというツッコミはしないでおく。

もう突っ込んでも面倒なだけだからな。




「俺のリュックには食料を詰められるだけ詰めてみたよ。スナック菓子は飢えを凌ぐのにピッタリらしいからね!!他にはロールケーキとかカンパンとか、体を暖めるためのお酒とかだね!!!」




 だから日帰りじゃないのか??お酒はさすがにマズイんじゃ……と言うかそこまでふざけた食べ物揃いならカンパンとかまともな物入れてるんじゃない。


と、心の中だけで突っ込む。




「私のリュックには予想外の戦闘に備えての弾薬や治療道具を入れてみたわ。あんな密林で大怪我なんてしたら一大事だもの。すぐに手当てしなきゃね!」




いや、予想外の戦闘って何だ……?一体こいつら何をしに行く気なんだ??




「で、俺のリュックには折り畳み式スコップやピッケル、ロープみたいな地形突破用のツールが入ってるぜww後は魚取り網だなw」



 そんなシンタローの肩には魚を入れておくためであろうクーラーボックスがかけられていて……本当にお前ら何しに行……いや、こいつの持ち物が一番まともかもしれない。





「じゃあ、この荷物は……、」


「荷物持ちのシンタロー、」


「よろしくねー( `・ω・´)ノ 」



そして三人はパンパンになったどでかいリュックをシンタローの肩にかけていく。




「ぐえーっ………さ、さすがに重い……wwww」



 シンタローは笑っているがこの状態で8kmも歩けるとは思えない。

一体荷物の総重量はどのくらいになるのか、恐ろしいものだ。








「えっと、そのコスプレとかアイテムとかお会計は全部で25万3200円になります!!」







「じゃあ、早いとこ出発しよう!!よしだくん、この森の留守番を頼む。」


「お土産、何か分からないけど楽しみにしててね。」


「あ、エリス。最近集会所が散らかりすぎよ、少し掃除でもしておきなさい。」


「あのさあ……マジで重いんだけどwwww」





四人はいそいそと駄菓子屋を出てこの森を出発した。




「ああ、気を付けてな!!なるべく早く帰ってこいよ!!」


「変質者に襲われて怪我なんてするんじゃないわよー。」



俺とエリスも外に出て手を振って見送りをする。





「さて、俺は後回しにしていた家の中の片付けをしなきゃな……試作品も壊されたし、はぁ……。」


「ミーシャに逆らったらまた酷いことをされそうだし……ここは素直に従おうかしらね~。」



 エリスも集会所に戻っていくことだし俺も早いとこ片付けに戻ろう。

それじゃあ機会があればまた!!











「昨日は変な魚の心臓を無理やり飲まされて気持ち悪くなって、その後も余ったお酒を無理矢理飲まされて、二日酔いでも頑張ってアイスを配ってたのに……僕の唯一の台詞と六桁のお会計、何でみんな無視するの……??」



 森の住人たちが去った後もキヌタニはレジの前で呆然としていた。

レジのモニターには相変わらず「253,200」の文字が映し出されたままになっていた。





「てめえごときのセリフ、シカトが当たり前だろ!!やっと邪魔者がいなくなったぜ!!」



そんなところに駄菓子屋の生活スペースから声がした。



「ったくよ、客を待たせやがって!!接客態度がなってねえな!!」



声の主、スタークは店の方に入ってくるや否や、日用品売り場の植木鉢を蹴り壊した。





「あっ!スターク!?お、お前は客なんかじゃない!!それからお会計、25万3200円!!!」



植木鉢の割れる音で我に帰ったのかキヌタニは素早くそちらに反応し彼の脳天をビシッと指差した。



「あ!?客でもねえ俺様に金を請求すんのかよ!どういう教育を受けてきたんだてめえは!!!」



 スタークは怒鳴ってそばにあった売り物の鉄板を投げつけた。

ガゴン!!とキヌタニの頭にその鉄板が直撃した!!



「ぎゃあああっ!!痛いじゃ……ないか……!!」



キヌタニは地面をのたうち回るが、六桁のお会計がかかっていたからか気絶はしなかった。




「おい、まだ俺に逆らうつもりか!?それなら自分の立場を分かってもらうだけだがな!!」



 スタークはキヌタニに近づいた。

そして彼はキヌタニのそばに置いてあったレジを自分の頭の上まで持ち上げた……。




「な、何をする気……?」



キヌタニは痛みと恐怖のあまりガタガタと震えていた。





「うるせえな、黙れや!!」



 するとスタークはそのレジを持った手を離してしまった。

次の瞬間、ガッ、シャーン!!!という音とレジのパーツが辺りに撒き散らされた!!


そしてレジはバラバラになって駄菓子屋中に散乱し無惨な姿になってしまった。



 ……救いだったのはレジの中にはお金が全く入ってなかったので、小銭が飛び散らずに済んだことくらいだろうか?





「ああああ!!!僕のレジがあーー!!!そ、そんなあ!?これじゃあお会計ができないよぉ……きゅううう……。」



キヌタニは痛みとショックでやはり気絶してしまった……。



「ちっ、俺様が直接手を下さずともこの雑魚は気絶するんだな、もうちょっと殺り応えが欲しいもんだぜ!!」



それだけ言い捨てるとスタークはいつものようにアイスを貪り始めた……。

 1.5章では森の中を冒険していましたが2章では森の外を冒険するようです。

そこに待ち受けるのは猛獣か悪魔か、もしくはリオ〇ウスか……?



 どうして駄菓子屋に探検家のコスプレ衣装があるのか……考えるだけ無駄なのでやめましょう。

ちなみに恐らく、それらの商品はレジのバーコードを通してるわけないんです。

だってみんな商品をレジに持っていくことすらしないので。


 それでもすぐに総額を出せるキヌタニ…………実は算術がすごい得意なのでは???

まあ、お金払ってもらえないから何の意味もないですが。


 それにレジの中に小銭を入れてないのは、お釣りが必要になることを想定していないことが見え見えですね。


 もしくはキヌタニがお釣りを返さない主義なのかもしれませんが……。

もしかしたら店主が客にお釣り分を「つけといて」とか言う新しいパターンかもしれません。

それはそれで面白いですがそんな店を利用するのは怖いですね。

万単位でのお釣りをつけて夜逃げされたらたまったものではないですから(そんな大きい額のお釣りなんてないよ?)。


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