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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第1.5章 ツアーガイド(我が真名はゲームマスター!!)の極意
37/162

1.5-22 RPGの後始末

ーー前回のあらすじーー


 今年も100エーカーの森にあの季節がやって来た。

そうクリスマスだ。


 今年こそは彼氏と過ごすぞと意気込んでいたエリス(XX)も気が付いてみればまた一人……それどころか一目惚れした男のストーカーに成り下がる始末……。


 輝くクリスマスツリーとてっぺんの星飾り……もとい場違いなキヌタニを見た彼女は魔が差してしまった……。


「こんな物、ぶち壊してやる!!」


 エリスはもう止まらなかった。

気が付けばツリーは倒壊し、仲間たちは発狂していた……。


 こんなこと望んでいなかったのに……。

でも後悔などしなかった。



 だっていずれにせよ、全部あのキヌタニのせいなのだから!!

しかもまだ八月だし……(小声)


==========


 ……なので、キヌタニの代わりに作者がエリスの暴れまくった跡を片付けていこうと思います。

読者の皆様も本編に移動したらお手伝いお願いしますね!(切実)

「あ……そういえば、今日から住む場所どうしよう??」



ボールは自分が非常に深刻な問題を抱えていたことを思い出した。





「集会所にはあのエリスがいるし……。




よしだくんの家はめちゃくちゃだし……。




シンタローの家はトラップまみれだし……。




キヌタニの家はキヌタニの家だし……。




ミーシャの家は……まあ、無理だし……。





消去法だよね、ヤムチャの家かな!!」




ボールは立ち上がりヤムチャの家に行こうとした。






「おい、ホームレス!……ちょっと待てや。」



 しかし、彼は唐突に背後から声をかけられた。

慌てて後ろを向くと闇夜の中から恨めしい顔が現れた……!



「なっ!?す、スターク!?何でここに……言いたいことは色々あるんだけどさ……どうしてそんなに泥だらけなの??」



薄暗い中でもスタークが泥団子になってしまっていることが理解できたボールは彼にそう尋ねた。



「ああ?……そういえば全然気にしてなかったな!しばらく地下にいるとそんなこと考えなくなってたぜ……って、そうじゃねえー!!」


「ええー!?それって泥汚れじゃないのー!?」



ボールとスタークは会話が全くもって噛み合わなかった。



「俺が泥団子だろうがてめえが肉団子だろうがどうでもいいんだよ!!んなことよりだ、俺には住む家がねえんだ!!ちょっと来い!!!」


「えっ?ちょっ……、」



スタークはボールの返事など聞こうともせず、彼の腕をグイグイと引っ張って連行した。










先程のキャンプファイアは火の勢いこそ弱まったが、まだまだ十分な火力を持って燃えていた。




「おい、これを見やがれ。俺様の家がこの有様だよ!!!」



「なあんだ、ここのことか。俺たちもさっきここに来たよ、お前の遺品がたくさんあるからってエリスが色々と漁って……ってお前生きてたね。」



ボールは聞かれてもないのにベラベラと余計なことを言ってしまった。



「何だと!?勝手な真似しやがって!エリスは強盗罪で死刑だな!!……で、貴様らが来た時にここは燃えてなかったのかよ?」



スタークは息をするように火のついた瓦礫をボールにぶん投げた。



「おわわっ!!危ないなあ!来た時は燃えてなかったよ。出発した時は燃えてたけど……。」



ボールは頭をヘルメットの上からポリポリと掻きながら答えた。



「おいおい!!それじゃあお前らがここにいる間に燃え始めたみたいな言い方だな!!どういうことだか一字一句余すことなく説明しやがれ!!!」



スタークは瓦礫を投げる手を止めようとしなかった。



「ちょっと!やめろってば!!……それがさあ、エリスがここから離れないからってミーシャがここに火をつけて無理矢理引き剥がしたんだよ。」



ボールは嘘をつくことを知らないようで、洗いざらい馬鹿正直に全てを喋ってしまった。



「ふ……ふざけんなよー!?放火なんてして許されると思ってんのか!本当に常識のねえゴミクズどもだな!!!ミーシャは今度見かけたら死んでもらうぜ!!」



スタークはさっきと逆で瓦礫を火の中に投げ入れ続けた!





「だがな、まずは手頃なとこから……ここにいるボール、お前だ!!!」



 そして彼はボールを指差すと、いきなり間合いを詰めて手に持っていた瓦礫で彼の腹部に殴りかかった!!



 スタークは別にヤムチャのように大柄ではないが、それでも力は強いしチンピラ数人くらいなら一人で余裕をこいてもぶっ倒せただろう。



 だが、森の住人たちをそこら辺のチンピラと同列にするなど身の程知らずもいいところだったのだ(そもそもチンピラなどこの森にはいなかったが)。




「うん?……す、スターク!何するんだよ!」



 ボールはびくともしなかったが殴られたことには気付きスタークに怒った!

そしてスタークが凶器にしたそれなりに頑丈だった瓦礫は粉々に砕けてしまった……。



「いや……お前が何すんだよ!?何だって全くダメージが入んないんだ!?貴様、腹に何か仕込んでるな!?!?」



 スタークはボールの着ているシャツを捲った。

すると、黒い防弾チョッキが露になった!



「あ。そういえばこんな物も着けてたっけ……。もう昨日の今日ですっかり体に馴染んじゃったよ。」



「馴染んだって意味分かんねえ……!つーかよ、何だよそのヘルメットやら安全靴やらは!!工事現場か戦争にでも行くのかよ?」



スタークは素手でヘルメットを力一杯殴打した!



「いや、全然痛くないから。だって森を歩き回る時はちゃんと装備を整えた方が安心ってヤムチャが……まあ、俺もこの二日間でそれがよく分かったしね。」



「は?誰もお前みたいな格好してねえだろうが!!駄菓子屋のゴミ店主並の戦闘力しかねえのかよ、てめえは!?」



スタークはボールの主張を真正面から突っぱねた。




「あーーもう会話するのもめんどくせえ!!俺は今すごくイライラしてるんだ。だからボール、てめえこの火の海に飛び込めや。」


「いやどういうこと?俺はそんな趣味ないんだけど。」



ボールは呆れ半分、不思議半分でスタークの言葉に返した。




「て言うか、それならまずはお手本見せてよ。」



 ボールはスタークの首を掴むと軽くキャンプファイアの方に向かって投げ飛ばした……つもりだったのだろう、少なくとも彼の感覚では。



しかし、まだ自分の力がどれ程のものか理解出来ていなかったようだ。




「うおああああ!?アチチチチ!?!?」



スタークは勢いよくキャンプファイアの中に突っ込んで……



「ふざけんなー……!ゴフッ!!」



 投げ飛ばされた勢いは弱まることなく、彼は炎の中を突き抜けて少し離れた木に激突した!

ぶつかられた木は根本からバッキリと折れて倒れてしまった。





「もう今日は疲れたよ。俺はもう行くね。」



ボールは今度こそヤムチャの家へと向かった。




「くっ……ぅおい……待て……(;-ω-)ノ」



 スタークは全身に火傷を負い、激突の衝撃も相当なものだったようで、息絶え絶えになりながらもボールを呼び止めようとしたが彼にその声は届かなかった。



「……さ、さすがに……これ以……上は、動け……ねえ。」



スタークもさすがに力尽きて、倒れた木を枕にしてそのまま眠りについた……。










1.5章  END……really???











「くっ……俺、さっきまで何して……?」



真っ暗な駄菓子屋の中、ゴミ袋の中で赤い方が目を覚ました。



「ぐっ……あああっ!!か、身体中が……痛てえ……!」



赤いのはゴミ袋から転がり出るとその場で悶え苦しんだ。



「この、匂い……駄菓子屋か……?……と、とにかく!!み……水、水が欲しい……。」



 赤いのは地面を必死に這って、触っている床や棚の触覚だけを頼りに、手探りで飲み物売り場へと向かった。


そして最初に掴んだ瓶コーラを手に取って栓を開けると半分以上床に零しながら喉に流し込んだ。




「ううっ…………い、生き返るっ……!!あ、頭からも……か、被りたいくらいだぜ!!」



 コーラの瓶をその場に投げ捨てて、また別の瓶を取ると栓を引き抜き、頭から中身の飲み物を一気に被った。



「ぎゃあああっ!!!何だこれーー!?熱い、熱いー!!?」



 赤いの……いや、液体を被って血糊が流れ、姿が判別できるようになった傷だらけのシンタローはその場でのたうち回った。

不運なことにその瓶のラベルには『スピリタス 96%』と書かれていた。



「水!!、水は……!!そ、そうだ!トイレの水!」



 彼は昨日のスタークとのやりとりを思い出したのか、真っ暗な中を転がり回って駄菓子屋の小汚ないトイレに向かった。



「水だぁー!!」



 シンタローはトイレのドアノブを手探りで見つけるとドアを開け、そのまま便器に頭から突っ込んだ!!






「うぇーーー…………◎∀■∪∴≦※┳△」




呻き声をあげたと思うと、シンタローはそのまま動きを止めてしまった……。








「うっ……なん……の、騒ぎだ……?」



今度は黒い方が意識を取り戻した。



「お、俺はまだ、ゲームオーバーには……ならんぞ……!!」




ゴミ袋から這い出ると黒いのは立ち上がった。




「何も見えねえが……、この匂い……駄菓子屋みてえだな……?」



黒いのがそう喋る間にもそれの表面からは炭の欠片がボロボロと剥がれ落ちていった。





「と、とりあえず……まずはHPの回復が優先だな。」



黒いのはシンタローと比べて大分元気そうだった。



「アイス……アイス……ここか?」



黒いのも手探りでアイス売り場のワゴンを探り当てたようだ。



「真っ暗で何も分からねえがとりあえず手に取ったものを食ってみるか!!」



手探りで適当にパッケージを掴んでアイスの包装を開けた。




「これは……丸10棒だな!!ああ……疲れが溶ける……。」



二口で食べ終えると次のアイスに手を伸ばした。



「これはハイパーカップだな!!抹茶味よりはバニラ味の方が好きだが、まあいいだろ!!」




 そんな調子でアイスを食べ続けているうちに表面の炭がどんどんと剥がれ落ちていき、ヤムチャの屈強な肉体が現れた。



 ちなみに、彼を縛っていたロープと身に付けていた下着が燃え落ちたことで全裸になっていたが、真っ暗なので彼は気づいていなかった。




「よし……体力も腹も満たされたことだし、一眠りするか!!あんなに熱い思いをしたから今夜は寒いところで寝てえな!!」



ヤムチャはそんなことを言いつつ、アイス売り場のワゴンの中に入った。



「はぁー……冷たくて気持ちいいぞー!アイス売り場の中に入るのなんて初めて……だが、ちょっといつもより冷え方が悪くねえか??……まあ、いいか!!!」



ヤムチャはそのままアイス売り場の中で眠りについた……。









「うーん、眩しい……朝になっちまったようだな。」



ヤムチャはアイス売り場の外が明るくなったことで目を覚ました。





「あーあ、電気がないってことはクーラーとかも全部動かないし、アイスも全部溶けちゃってるじゃない……。どーすんよ、本当に!!」



遠くからミーシャの声が聞こえてきた。



「ミーシャの奴が起きたってことはもう昼過ぎってことだろうな、こんな場所で寝てたらあいつに殺されちまう…………、んんん???」



アイス売り場から出ようとしたヤムチャは全身に違和感を覚えた。


 ふと、自分の体の方を見ると、停電して冷凍機能を失ったワゴンの中で、ドロドロに溶けたアイスに自分の体がまみれ、何よりも己が何一つ衣服を身に付けていないことに彼は気がついた。



「ど、ど、どうなってんだ!?これは!!」




「あれ……??何か今、ヤムチャの声が聞こえたような……??こんな朝から幽霊……!?」



ミーシャが駄菓子屋に入ってきた足音がした。



「(こ、これは……むちゃくちゃマズい!!ととと、とにかく今はステルスだ!!!)」



 ヤムチャは動きを止め、呼吸も止め、心臓も可能な限り動かさないように、気配を消してミーシャに気づかれないようにした。





「まあ……気のせいよね。私も昨日色々あったからちょっと疲れてるんだわー。」



ミーシャはアイス売り場をスルーして酒のおつまみを物色しに行ったようだ。



「(と、とりあえず大丈夫だったか……。だが、いつ見つかるか分かったもんじゃねえ、早いとこここから脱出しねえと!!)」



 しかし、ミーシャはすぐそばにいて、しかもワゴンから出ないと駄菓子屋からは脱出出来そうになかった。

ワゴンごと動くのもヤムチャの力なら可能だったかもしれないが、バレないという条件ではさすがに不可能であっただろう。



「ふぁ~……ヤムチャ、昨晩は家にも帰って来なかったなあ……いや……そもそも生きてるのかな?」



最悪のタイミングでボールが駄菓子屋にやって来た。



「(おいー!?嘘だろ!?)」



ヤムチャはそう叫びたいのを我慢してガタガタと震えながら必死に気配を消し続けた……。



「あら、おはようボール。あなたも朝ご飯?」


「ミーシャ……今は昼の11時半だよ。昼ご飯だよね……?」


「何を言ってるのよ、まだ午前中だから朝ご飯なの!」



そんなやりとりをしながら二人は食事をした。





「(お願いだからここを覗かないでくれよ……。)」



ヤムチャの全身からは汗が吹き出ていた。





「(俺は石ころ……俺は空気……俺は虚無……。)」








「……さてさて、じゃあ今日は私も畑仕事を手伝うわ。」


「あ、ありがとう!よぉーし、張り切ってやるぞー!!」


「どうでもいいけど、何で防弾チョッキなんか着てるのよ……?」



二人はアイス売り場には見向きもせず駄菓子屋から出ていった。







「………………………………………………………………。」







一分くらい経つと、ガララッと蓋を開けてヤムチャはワゴンから出てきた。





「やった……やったぞー!!!これが、これこそがtrue endだったんだ!!!」



 溶けたアイスにまみれた全裸のヤムチャは、駄菓子屋の入り口から真夏の太陽に向かって高らかに雄叫びをあげた。





            ~Yamucha kingdom

         THE WORLD IS 100ACRE!~


                  ーTRUE ENDー









「あああっ!やっぱりあのカマンベールチーズと生ハム腐ってたあーー!!トイレーーッ!!!」



 そんなヤムチャの脳内テロップをぶち壊した、炎天下を全力疾走でヤムチャの元へと走ってきた者がいた。



「ヤバいーー!!もう限界ー!!!……え??」



それまで爆走していたミーシャはヤムチャを見ると、便意も忘れてその場に立ち尽くした。





「あー……これはだな、その……エリスの真似だ!!」



ヤムチャはひきつった笑いを浮かべてごまかそうとした。




「あ、あ、あ…………、」



ミーシャはガタガタと震えだし、





「(あぁ…………………やっぱり無理か…………。)」



ヤムチャは覚悟を決めた。









「漏れちゃうーっ!!!!」



便意を思い出したのか、ヤムチャを完全スルーして駄菓子屋へとマッハで突っ込んでいった。







「……何か分からんが助かったぜ……もう、RPGは懲り懲りだ!!!」





 ヤムチャは面倒なことになる前に脳内テロップを消し去り、大急ぎでその場から逃げるように家を目指した……。






 P.S.トイレに駆け込んだミーシャはシンタローを見ると、彼を赤いものに逆戻りさせ、その代わりに彼女はトイレが間に合いませんでした。









        1.5章 (キリがないので今度こそ本当に)END!!!!!


残念ながらお片付けは終わりませんでした。


 電波塔は破壊され、シンタローは無残な姿になり、スタークの家は燃え尽きて、キヌタニは電波塔に放置……散らかり放題でむしろ何が片付いたのか全く分からない始末……。


 どうやら100エーカーの森の住人たちは片付けが相当苦手なようです!

決して作者に責任はございません。



夏場に食料品を常温で放置するのは止めましょう。

予想以上に生モノは腐るのが早いので……気を付けないとミーシャみたいに悲しい結末を迎えることになります。


 生鮮食品を腐らせない最適解はスーパーマーケットでレジを通す前に食べてしまうことです!

……食い逃げにはなってしまいますが、お腹を壊すよりはマシでしょう。



では、ミーシャのお腹の調子が戻って電波塔が復旧した頃にまたお会いしましょう!

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