1.5-18 エンディング
スタークは地上に出るために駄菓子屋に掘った穴へ向かったが、ゴミ店主、もといキヌタニが売り物を補充したためにアイス売り場のワゴンが動かせなくなり、外へ出られなくなってしまった。
そしてレギュラーメンバーのごとく出現する謎の声はまたしてもスタークのことを煽りに来るのであった……さあ、彼は一体どうするのか?
ミーシャの家まで転がされたヤムチャは怒りのあまりどこかへ独りでに失踪してしまった。
残された彼らはミーシャの家の中が気になり、中も見せてくれと懇願した結果、片付けるから少し待てとのことだった。
しかし、シンタローはそれを待たずに窓から不法侵入したため、錯乱したミーシャの手によってこの世から存在そのものを抹消されてしまった……。
結局、ミーシャの家の中がどうなっていたのかは永遠の謎である……。
まさかとは思いますが……「シンタロー」という名前を聞いて「あいつだよね?」とはなりませんよね……?
彼はもうこの100エーカーの森の歴史から消えてしまったんです……。
↑これを読んでドキッとした読者の方……。
残念でしたね、あなたの背後にはもうミーシャが……。
「何のことだかさっぱりだよぉー?」って方はお気になさらず!!
ええ、気にしなくていいので本編に行っちゃってください!
東三叉路から南西方向に程なく歩いた所にあの男は待ち構えていた。
「はははは!!!!よく来たな!この難関ステージへ!!!」
相変わらず自由を奪われて地面に横たわっているヤムチャは自分の家の前で高笑いをした。
「あまりにも無様ね~、難関ステージって何のことかしら~?」
ミーシャの肩から無事に解放されたエリスはヤムチャをバカにしたように言った。
「そう言ってられるのも今のうちだけだぞ……!ほら、俺の家にある隣の畑を見てみろ。たくさんの野菜が育っているだろ?」
「あーー、本当だ、よしだくんの家より広いや!!」
ヤムチャの家自体はボールの家と大きさは大して変わらない。
しかしその隣にはその五倍以上もある倉庫が建っていた。
確か農業用の道具が色々と詰め込まれていたはずだ。
さらにその隣にはよしだくんの家の1.5倍ほどの広さの畑が延々と広がっていた。
「いいか、たくさんの野菜がこの畑にはある。その中には今収穫時期真っ盛りのトマトもある。しかーし!!その100本のトマトの苗のうち1つだけめーちゃくちゃ苦い実をつけるんだ!!一本の苗から1個ずつ、順番に実を食っていって苦い実を食ったやつは毒状態に……ムググッ!!!」
自慢気に喋っていたヤムチャの口にミーシャが機関銃を突っ込んだ!
「何て物を育ててるのよ!ちゃんと食べられるもの育てなさい!!!だいたい毒って何事!?!?」
「グガガガ……ホォンファホォホォオフファヘッ!!?!??(そ、そんな喉奥まで!?)」
ヤムチャは涙を流しながら白目を剥くが、ミーシャは機関銃に込める手の力を決して緩めなかった。
「そ、そんな奥まで……!!」
それを見たエリスは何かを想像したのか顔を赤らめた。
「あーもう!!エリスが何を考えてるのか、って思うだけでも気持ち悪くなるわ!!」
「ふごぉ!!??」
ミーシャはため息をついて銃口を勢いよくヤムチャの口から引き抜いた!
銃口を引き抜かれたヤムチャは呻き声をあげて正気を取り戻した。
「ぐっ、はぁはぁ……まあ落ち着け、俺だって別に悪戯目的で育ててるワケじゃねえよ!畑の外周にこの苦い実を置いておくんだ!!そうするとそれを食った動物は畑に近づかなくなるんだよ、だから他の野菜も実が不味かったりする苗は育ててるぜ?!それに本当に毒が入ってる訳じゃ……」
「じゃあ、さっきの毒状態って何だったの?」
ボールは真顔でヤムチャの目を見た。
「あ?いや、な、何でもねえよ!??……じゃ、じゃあ別のステージにしよう!!俺の家の玄関を見てくれ、すぐそばにでっかい金属の樽があるな?」
「本当ねー、横からたくさんの変な紐が出てるわ~。」
「何か話を反らされた気がするけど……いいわ、もう。」
エリスの言う通り、人が一人すっぽりと入れるほどの樽は横に小さな穴がたくさん開いていてそこから細い紐が通されていた。
「あの樽の中にはな、大量の火薬が入ってるんだ!!」
一体彼はいつからこの樽を用意していたのか、検討もつかない。
「うん。で?それは一体何のための物なのよ?」
「聞いて驚け!あの紐、実は導火線なんだぞ!ただしあの三十本の線のうち火薬に着火されるのは一本だけだ。」
「そんなおもちゃ駄菓子屋にあったよね、樽に剣を刺すと海賊が吹っ飛ぶやつ。」
「そうそうそれだ!で、ここからが本題だ!!お前らには順番に樽の中に入ってもらって、一本ずつ導火線に火をつけてもらう!!もし火薬に着火してしまったら……、」
「…………。」
「………………。」
「……………………。」
「ドカーーーン!!!だ!!ワッハーッハッハ!!」
「…………………………。」
「…………………………。」
「…………………………。」
一人で盛り上がって大爆笑しているヤムチャに三人は絶対零度の視線を放った。
「そもそもね、ヤムチャ。」
ミーシャが無表情の顔をヤムチャに向けた。
「あなた、今の自分の状態が分かってるの?」
そう言うとヤムチャの真横にしゃがみこんだ。
何かを察したのか、ボールとエリスもそれに倣った。
「ん??どうしたんだ、お前ら?」
すると彼らは無言のまま力一杯、ヤムチャを担ぎ上げた!
ヤムチャの巨体は重かったのだろう、エリスの細い腕がプルプルと震えていた。
「!?!?い、いきなり俺をどこに運ぶ気だ??!!?」
ヤムチャは必死に喚くがどうにもならなかった。
「うるさいなあ、唾が顔に飛んでくるから黙って担がれててよ。」
三人はそのまま樽の中にヤムチャを頭から投げ込んだ!
「ぶおっ!!おい!いきなり目の前が真っ暗だ!お前ら何をし……って!」
「さーて、このライターで……、」
ミーシャはどこからかライターを取り出した。
「火薬の匂い!まさか樽の中か!?」
「じゃあまずは俺が一本つけるよ!」
「いやいや、俺は参加しないぞ!!」
「あ、外れだったみたい。」
「じゃあ次は私~♪」
「おい!人の話を聞け!」
「ちょっとエリス、何で四本も火つけてるの……?」
「もうそれ以上導火線を燃やすなー!!」
「そうよ!一本一本、変わりばんこで燃やさなきゃ!♪」
「ちがーーーう!!!!!」
⏬⏬⏬⏬早送り⏬⏬⏬⏬
「あ、あっという間にあと二本だね……!」
「はぁはぁ……もうやめろ……!!!」
「ここでエリスがハズレを引かなければ最後にハズレだけが残って私の負けね……。」
「うーん、どちらにしようかなあー?……えいっ!!って、ああっ!!手が滑って両方に火をつけちゃったーー!!」
「終わったぁーーー!!!!!」
…………………………。
………………………………。
……………………………………。
ーーーーーーーーーー
そよ風が、畑で野菜の苗を静かに揺らしている音だけが聞こえる。
神は、樽を爆発させない選択をした……そう、この世界の全てが平和だった……。
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「いや、何を言ってるの!?て言うかっ、全部の導火線燃やしたのにドカーン!っていかないじゃないっ!!!!」
ミーシャが樽を指差しながら激怒した。
「……いやなあ、今思い出したんだが、ハズレの導火線をどれにしようか悩んでたら……着火材塗って火薬の塊に導火線を繋いでおくのを忘れてたぜ!!」
「えええええーっ!!バカなのー!?」
ボールもビックリして自然と大声が出たようだ。
「まあ、あれだ。RPGの神様はゲームマスターの俺を死なすようなことはしなかったわけだな!!ガハハハ……ゲホッゲホッ!火薬が……気管に……!!」
「ゲームマスター??ヤムチャが??」
「RPG……!!もしかして、ダメージとかHPとか私ににんにく食べさせたりとか!!」
「ほー……なるほどねー……。」
ミーシャはいきなりヤムチャのズボンに手をかけると、下着ごと引き剥がして機関銃の銃口を露になったヤムチャの穴に突き刺した。
「うおおああああー!!!!!」
ヤムチャは突然のことに悲鳴をあげた。
「ヤムチャの悲鳴なんてなかなか聞けないわよね~♪……さあ!全部吐きなさい!!でないとこのまま弾丸ぶっ放すわよ!!!」
「えっ、それって……中d……ムグッ!!」
またしても顔を赤らめたエリスの口を大慌てでボールが塞いだ!
「ダメだよエリス!!一応中学生でも見れる、R15作品なんだから!!そんな表現したらこの森ごと全部消されちゃうよ!!」
「え!?え!!??何の話!?て言うかそんなこと言ったらもうあの二人の状況ダメでしょ!私だってこの森に来てから早々、完璧にアウトな格好してたし!!」
しかしエリスもこんな下らないことで食い下がり、ボールと言い合いになった。
「くっ……仕方ねえ、白状しよう……。」
ヤムチャは痛みに耐えながら口を開いた。
「森のツアーをしようと決めたすぐ後からこのツアーのタイトルを考えていたんだ。
~Yamucha presents…… 「ROAD TO 100ACRE」~
だとか……
~Yamucha's guidance…… 「THE WORLD OF 100ACRE」~
だったり……
~Yamucha Kingdom…… 「THE WORLD IS 100ACRE」~
といった具合にな……。」
「うわっ、ダサっ!!」
ミーシャは秒殺で辛辣な反応を返した。
しかしそれには構わずヤムチャは続けた。
「正直、完璧なタイトルとは言えなかった。万が一にダサいと言われる可能性もあった!」
「どっちかって言うと一が万って感じだけど。」
「だからこのタイトルは本当はお前らには秘密にしておきたかった……だがな秘密にしたら、どうしても俺は……そのタイトルの通りのリアルRPGをやってみたくなっちまったんだ!!」
「……どうしてなの……?理解不能だわ……。まず、タイトル通り……なのかしら???」
ミーシャは呆れて銃口をヤムチャから引き抜いた。
「ツアーガイドという仮面を被りながら、お前らというパーティーメンバーに悟られることなくゲームマスターをするのは本当に大変だった!!」
「何か企んでることはみんな分かってたわよ?」
「でもすごく楽しかった!!みんなで装備を着て、コウモリを討伐して……もっとこの『Yamucha Kingdom』で俺はお前たちと冒険がしてえ!!ああ、本当は昔からずっとこういうことがしたかったんだな……って、しみじみ思ったさ!」
「どこよ……やむちゃきんぐだむって……!」
ミーシャにはそろそろ我慢の限界が来ていた。
「これからは毎日みんなとリアルRPGで決まりだな!!対人形式の戦闘とかも……」
「あの世に行って一人でやってろ。」
ヤムチャの世迷い言に耐えかねたミーシャは今日一番の冷たい声を放ち、火のついたライターを樽の中に投げ入れた。
「うおっ!?急にまぶし……って、ただのライターじゃねえか。……ん?ライター……??」
「いくら16歳の健全な男の子でも入っていい場所と入っちゃいけない場所があるでしょ!!」
「初登場回で不審者扱いされたと思ったら、次話には全裸で屋外を走り回るヒロインなんて普通はいちゃいけないからね?」
一方、ボールとエリスは未だに低レベルな口論を続けていた。
「変態ニート!!」
「金髪ビ……???」
二人の近くでその時爆音がした。
「うががあああああーーーーっ!!!!」
ヤムチャの悲鳴が天に昇っているのが二人にも聞こえた。
そして、二人は上を見上げた……。
ヒュー~~~ルルルル……ドン!!!
ーーーーーーーーーー
夏真っ盛りの夕暮れ空に一発の特大花火、ああ、何て下品な花火なんでしょう……。
生き残った私達三人は互いにこのヤム……花火の悪口を言い合う。
でも、Yamucha Kingdomの終焉にはこの程度の低クオリティな花火が丁度いいのかもね……。
これが、このRPGのトゥルーエンドよ。
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そんなミーシャのモノローグは間違いなくゲームマスターの思い描いていたエンディングとはかけ離れていただろうが、とにもかくにもこうしてヤムチャのリアルRPGは完結した……。
~Yamucha Kingdom…… 「THE WORLD IS 100ACRE」~
「あ、そういえば……帰ったら銃口、念入りに消毒しなきゃ……。」
~Fin~
……そんなわけでYamucha Kingdomは滅亡してしまいましたが、彼らのツアーはガイド不在な中でもう少しだけ続くようです。
このまま平和に終わるわけもなく、もう一波乱ありそうな予感がする……一体次は何が起きてしまうのか?お楽しみに!!
エリスとボールは裏側の話持ってくるのやめてもろて。
そういうのは他所でやってください。
下ネタ要素たっぷりの回になってしまいましたが大目に見てくださいm(_ _"m)
そういえばこの小説、R15指定だったんですよ、ご存じでしたか?
この先でどんな描写が出てくるか分かったもんじゃありません。
100エーカーの森ではいつ何時も油断は禁物なのです!!
読者の皆さん、ちゃんと防弾チョッキは着てますか?
少しくらい大丈夫……そう思った時に限ってエリスの下ネタとミーシャの弾丸は飛んできます!!
では、次回まで防弾チョッキは着けたままでお会いしましょう!!