1.5-15 直接対決!!
ーー前回のあらすじーー
森の北東部にある崖に来た彼らはヤムチャから経験値を賭けた勝負を持ち掛けられた。
そこで名乗り出たシンタローは何とヤムチャに勝利し、見事経験値を得たのであった……。
その後、ミーシャとシンタローは「墓地に向かう」とだけ言い残してエリスとボールの目の前から突如として姿を消してしまった。
さらにはエリスの真横でボールも居なくなり……。
一体彼らはどこへ消えてしまったのか!?
私物が突然消えることってありますよね。
作者は寝る時に履いていた靴下が起きたらどこにも見当たらないことがたまにあります。
そのうち出てくると思っていても結局出てきません、私の靴下がどこにあるのかご存じの読者の方は至急教えてください。
謝礼として靴下の10%を切り取って贈呈いたします!
さてさて、少しだけ時は遡り、スターク王国の王はどうしていたかというと……
「……な、な……ふざげるなぁー!!!!」
ガタガタという小さな振動が伝わってきた。
「無駄だっつーの!お前らみたいな雑魚にはこの国は落とせねえよ!!」
スタークは大声で独り言を言い放ち、その声は反響していつまでも周囲に響いていた。
「あいつらまさか、俺があの地上の鉄塊の中に居ると思ってんのかねえ、本当にバカだな!!」
そんな独り言を言っていた間も振動は伝わってきていた。
「あんな狭いところに住めるわけねえだろ!でっけえ鉄板を四方に地下深くまで突き刺して、そこに囲われた部分を瓦礫で埋めて上にまた鉄板を被せて、外から穴を掘って鉄板の真下に空洞を作ればスターク王国の完成だ!全く、こんなことにすら気づけねえなんて本当に知能に低い連中だな!!」
「それならただ地下に空洞を作って、地上に『スターク王国』の看板を立てておけば良かっただろう。あんな大きいサイコロなど作る必要なんてあったのか、そう問いかけてくれる仲間もスタークにはいないのだな。全く、これだからスタークは。」
「そしてその外からの穴ってのが、駄菓子屋のアイス売り場の真下に繋がってんだよな!!あの連中、バカばっかだから絶対に気がつかねえはずだぜ!!」
「そりゃアイス売り場の目の前なら分かるが、どうやってワゴンを押しのけて、アイス売り場の真下の穴から出てアイスを奪うのか、逆に聞きたいくらいだから絶対に気がつかないだろうな。全く、これだからスタークは。」
「ああ!?うるせえな!アイス売り場の底にも穴を開けておくんだよ!!そうすりゃあの雑魚店主がアイスを補充したら勝手に穴の中にアイスが落ちてくるだろ!?何でそんなことも分からねえかな!!??」
「そんなことしたら穴があることが一目瞭然だろ、その雑魚店主とやらはともかく、他の客に気づかれておしまいだ。全く、これだからスタークは。」
「黙れや!!俺様が考え出したアイデアなら全部上手くいくに決まってんだろ!!バカ野郎!!!……って、どこにいやがんだ!?俺の許可なしに話しかけてくんじゃねえよ!ああ!?」
「話しかけるどころか、お前が今いる地下空洞の中にいるぞ。何にもない本当にただの穴だな、20坪も一人で掘ったのには感心するが。それでも高さは1m位しかないから立ち上がれないし、床には何も敷いてないから寝ると体が泥だらけになるじゃないか。全く、これだからスタークは。」
「何だよてめえ!!勝手に入ってきてんじゃねえよ!!大体入ってきて文句言うなんて何様だ!?なら、てめえはもっといい城を作れるんだろうな!!??」
スタークはそう怒鳴ると自分の寝転がっている場所の天井に勢いよく拳を入れた!
するとその部分が崩落してスタークは土まみれになった。
「うおっ!?何なんだ!!ボロい地盤しやがってよ!これも全部話しかけてきた貴様のせいだからな!!!」
スタークは土の山から抜け出して吠えた。
そしてこの地下空間の唯一の光源である、駄菓子屋に売っていた懐中電灯を叩き壊してしまった。
「どうしてお前は何でもかんでも人のせいにしたがるのだ。全く、これだからスタークは。」
謎の声からは大きなため息も一緒に聞こえてきた。
「や、や、…………やめなさーい!!!!」
いつの間にか振動は止んで、今度は銃声が聞こえてきた。
「だあーっ!!!どいつこいつもうるせえんだよ!!!こりゃ明らかに迷惑行為だな!!人権侵害で訴えてやる!!!」
それだけ言うとスタークは真っ暗な中、手探りで空洞から駄菓子屋に繋がる抜け穴を進んでいった。
「全く、これだからスタークは……。」
「あっ!!!」
ボールは体が突然宙に浮いたかと思うと、さらには目の前が真っ暗になった。
「うわあああ!!!」
体に風を感じたかと思うと一瞬だけ全身が柔らかいものに包まれ、再び体が宙に浮いた。
そして何か固いものにに強くぶつかった!!
「うっ……、一体何が起きたの……??」
ボールはゆっくりと起き上がった。
「あーっ!!!ボール大丈夫!?怪我はしてない!?」
ミーシャがどこからか駆け寄ってきた。
「ごめんなボールwwwうっかり俺たち二人だけ先にここに来ちまったよwwちゃんと言っておかなきゃいけなかったんだなww」
シンタローは笑いながらボールに謝った。
「えっと……大丈夫なんだけど、一体何が起きたのかさっぱり……。」
ボールは薄暗い周囲を見渡した。
ここは洞窟のような場所のようだった。
一方にはトランポリンと縄ばしご、もう一方には遠くの方に明るい光が見えた。
「ボール、梯子の上の方を見てみろ、遠くに光が見えるだろ?ww」
シンタローは上の方を指差した。
「お前もあそこから降ってきたんだぜww」
「ざっと50mってとこね、まあそんな高さから落ちたらヤムチャ以外の人間は即死だから、下にトランポリンを敷いたってわけよ。」
「まあ、トランポリンがあるっていっても結構高く飛び上がるからなww今のボールみたいに着地を上手くできないと大怪我するぜwww」
「そ、そうだったんだ……俺の場合はよしだくんにもらった装備があったから、怪我しないで済んだんだね……。」
ボールは装備をしてなかった時のことを想像して震え上がった。
「そうなるとエリスが心配ね……防具もないし、着地できなくて頭でも強打したらたいへn……」
「いやああああ!!!!」
ミーシャの不安を裏切らないで三人の頭上からエリスの悲鳴が降ってきた!
「いやwwさすがにウケ狙いしすぎだろwww」
シンタローはエリスを指差してゲラゲラと笑った。
「助けてぇーーええええ??ああああ!!!」
トランポリンの感触に一瞬困惑して、再び空中に放り出されてまたしても叫び出すエリス……リアクションだけなら10000点満点なのだが、そんな議論をしていられる状況ではなかった。
「エリスーーー死ぬなーーーー!!!」
「俺はどうしたらーーー!!??」
「いやw俺らには何もできねえよwww」
顔を真っ青にしているミーシャとボールとは対照的に、シンタローは冷静に釈迦のごとき笑顔を浮かべていた。
「わたしぃーー死ぬのぉー!!?イヤだぁー!!!」
エリスは空中でジタバタしているが、それで彼女の落下速度が変わるわけでは……いや、どういうわけか、むしろ手足を振り回すことで加速していた。
「諦めろってエリスwwwさすがに高さ7mじゃ死んだりしねえよwww」
エリスは為す術無く地上、いや地下空間の地面にドシャリというイヤな音とともに着陸した。
「ぐっ!!……あ、あ……れ?あ、あんまり痛くない……???」
エリスは辺りを見回した。
そこは紛れもなく地面の上であった。
一通り見渡して、彼女の右手元に微かに柔らかいものがあるのに気がついた。
「あ…………ああ…………あ…………。」
エリスの真下から化け物みたいな呻き声が聞こえてきて、不思議に思い下を向くと、そこには白目を剥いて痙攣を起こしたミーシャがエリスの下敷きになっていた。
そしてエリスの右手はミーシャの胸部に添えられていた。
「いや、見た目以上に小っちゃくない??」
次の瞬間、エリスの顔面に突然ミーシャの足が、……恐らく痙攣によるものだろうが、地面からぐいっと持ち上がりエリスの後頭部を強襲した!
「ぐぎゃっ!!……い……痛いっ……!!」
エリスは痛みに耐えかねて、頭を押さえ地面をのたうち回った。
「二人ともー!!大丈夫なの!?!?」
「これは何と言うか、面白いことになったなwwww」
エリスがミーシャの上に墜落してからシンタローとボールが駆け寄るまでわずか15秒、ほんの15秒で事の状況は激しく変わった。
それはもちろん、次の15秒にでも言えることで……。
「あーーー!!今日は散々な日だなあー!!!」
四人の頭上からヤムチャの騒がしい声が響いてきた!
「シンタロー!!!直接対決だ!!ここでお前をぶったおーーす!!うおおおおお!!」
ヤムチャはトランポリンの上に着地すると、できるだけ高く飛ぼうと力を溜めた!
「え?ww俺何かしたっけ?ww」
「うるせえ!!!Yamucha Kingdomのトップは俺だあー!!!」
訳も分からず身構えるシンタローを睨み付け、ヤムチャは空高く舞い上がった!
次の瞬間、グチャ!という音と土煙と同時にヤムチャの姿が消えた……。
「痛たた……あれ?速すぎて何も見えなかったけど、ヤムチャ……もしかして飛ぶ勢いが凄すぎて、体が風圧に耐えきれなくて粉々になったんじゃ……。」
エリスは珍しく彼女にしては知的なことを言って、それを自分で想像して気分を悪くした。
「ハアハア……おいおいwwエリス、あの程度も見えなかったのかよwwフゥ……!」
「て言うかシンタロー、さっきまで私のすぐそばにいたわよね??……もしかしてあなた、瞬間移動使えるの!?!?」
エリスの言う通り、シンタローは一瞬にしてエリスとミーシャの横から7mほど距離をとっていた。
そんな彼女の顔はミーシャの蹴りの打ち身で赤くなったり、彼女のよく分からない想像で青くなったりしている。
「それにボールは??ボールも今まで私の隣にいたのに……。」
「ボールならお前の足元だぞwww」
シンタローに言われた通り、自分の足元を恐る恐る見てみるとそこには……
「ギャーッ!!!生首ぃーー!!!」
エリスは飛ぶようにその場から離れシンタローの足にしがみついた。
そこには……ボールとミーシャの生首が転がっていた。
「いやいやwww生首ってwwwよく見ろよ、ただ二人とも地面に埋まってるだけだぜwww……まあ、生きてるかは分からないけどなw」
「あ、本当だ……よくも笑いながらそんな酷いことが言えるわね……。って、あああーーーーっ!!!!」
エリスは一息ついたと思いきや、再び悲鳴をあげてシンタローの足を羽交い締めにした。
「足ぃーー!!!人の足がぁ↑ーー地面にぃ→ー突き刺さってるーーー!!!↺いやあああっ!!!」
「痛い痛い!wwそんな強くしがみつくな、あれはどうみてもヤムチャの足だろwww」
シンタローはエリスを引き離そうと彼女の頭を掴んで揺さぶった。
普通の人間の腹周りもある太くて毛むくじゃらの足……確かにあれはヤムチャの足に違いない、エリスは言われてそう思った。
「あっ……はい。……んん??ってことはヤムチャ……足だけになっちゃったの……?」
「何でよwwwww他のパーツはどこに行っちゃったのwwww」
シンタローは抱腹絶倒状態だった。
「いやだって、グチャ!っていう嫌な音したし……他のパーツは潰れて無くなっちゃった……?」
エリスはまたしても顔が真っ青になった。
「いやー……ww……あー……どうだかな……?確かめてみるか?ww」
笑っているシンタローの顔にも冷や汗が伝った。
そうして二人は顔を見合わせると無言でヤムチャの片足にそれぞれ手をかけ力を込めて引き抜こうとした。
「…………んーー……。」
「…………あーー……。」
「「抜けない。。」」
二人は再度顔を見合わすと、ため息をついてヤムチャの足から手を離した。
「抜けないんじゃ、足以外のパーツが無事かは分かんないなwww」
「んで、何でこうなったの?何も見えなかった私にも説明しなさいよ。」
エリスはその場で体育座りをした。
「しょうがねえなwwまあ、エリスの頭でも分かるように解説してやるよwww」
シンタローはバカにしたようにエリスの額を指でつついた。
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…………まずヤムチャはトランポリンから勢いよく飛び上がると、高さが10m以上もある天井にやべえ勢いで突っ込んで頭から腰まですっぽり埋まったんだwww
俺はその時、もうこれでヤムチャの攻撃も終わりかと思ったんだが、あいつは体を無理矢理ひねって、周囲の岩盤をぶっ壊して脱出したんだ!!www
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「ほらな、あそこに穴が開いてるだろ?」
シンタローは天井に生成された不自然な空洞を指差した。
そこには直径2mほどの、アイスを綺麗にくり抜いた跡のような半球の空間があった。
「oh…………ヤバ。」
エリスも驚きのあまり口調が狂った。
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……続いてその時に散らばった岩石をすぐさま掴んで俺の方に投げてきたんだよ!ww
俺もそう簡単にやられるわけにはいかないからな、慌ててボールの後ろに隠れて巨大な弾丸を回避したんだ!!w
ヤムチャは三発の岩を投げてきたが、全部ボールの腹を直撃したみたいだなwww
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「ほらな、でかい石ころが転がってるだろ?ww」
シンタローは直径7、80cmもあるだろう三個の岩石を指差した。
「ファーーーーwwあんなの石ころって言わないわよwwつか、あんなのお腹に三発も受けたら死んじゃうってwww」
エリスはもう信じられないとばかりに、口調がシンタローに寄ってきた。
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……さらにあいつは天井を力一杯蹴ると、俺の方に向かってダイブしてきたんだ!ww
避けられそうもなかったからボールに隠れてながら、ミーシャの体を掴んで二人を盾にしたんだなww
そしたらヤムチャは右手でボール、左手でミーシャを掴むと、二人とともに地面にめり込んだってわけだ!!
その反動で俺は吹っ飛ばされたってとこだなww
地下深くにそんな洞窟が隠れていたなんて、謎の深い森ですね!
でもトランポリンが老朽化して壊れていたら……ミンチになっちゃいますねww
ちなみに、7mの高さから落ちたら多分死にます。
死なない自信がある人だけ真似してみてください、多分死にます(二回目)。
凡人には認知できない次元で戦いが繰り広げられていたんですね。
ヤムチャが飛び上がってからシンタローが吹っ飛ばされるまで0.3秒は絶対に経ってないと思います。
せめて0.01倍速くらいで戦ってくれたら作者も参戦できるのになあ……。
読者の皆さんも彼らの死闘に参加してみてください、多分死にます(三回目)。