1-2 謎の女性
ーー前回のあらすじーー
100エーカーの森の狂人、スターク……彼は駄菓子屋へアイスを求めてキレ散らかしながら歩いていた。その途中でヤムチャ、ミーシャとの死闘を繰り広げ、さらにはボールの奇襲という天災に巻き込まれてしまった!!
逃げ惑う彼の正面には崖が、後方には迫り来るボールが、これはもう崖とボールの間に挟まれてしまうこと間違いなし!!
ぺちゃんこになってミンチになったスタークの末路は、捏ねられてから焼かれてハンバーグか、はたまた茹でられてつみれ汁か………読者の皆さん、スタークをどう料理したいか想像して本編へGO!
為す術も音もなくスタークは崖とボールの間に押し潰されてしまった。
「(ああ……真っ暗だ、認めたくねえが死んじまったみてえだな。何かクラシックみたいな音楽も流れてきて……ん?クラシック???それに穴を掘っているような音も聞こえるぞ?)」
そこまで考えてスタークは自分が生きてることを自覚した。
確かにボールのような500kgの巨体にのし掛かられたら一大事だが、ボールは大半が脂肪なのでその脂肪がクッションとなりスタークは無傷で済んだのだ。
それにしてもボールの体脂肪率はいかほどなのか、考えただけでもゾッとする。
そしてスタークはもう一つ、あることに気がついた。
「うぶぉっ………おいっ、シンタローぉっ……!そこで……何してるっ!」
彼の口元を覆いつくすボールの皮下脂肪を必死で押しのけてどうにか声を出した。
「おっと残念、生きてたかーwww」
陽気な声でそんな返答が聞こえてきた。
スタークはボールの脂肪を掻い潜り外に出ようとした。
「ぎゃはははは!!!!くすぐったいからやめてー!」
ボールは笑いながら小刻みに振動してスタークの脱出を妨げた。
「暴れんな!異臭放つな!!つか痩せろクソデブ!!!」
スタークはボールを殴り付けた、と言っても脂肪ばかりだから痛くはなかっただろう。
辛うじてスタークがボールと壁の隙間から抜け出すと目の前には彼の肩の高さくらいまである土の山が出来ていた。
脇にはその土が元々あったのだろう、人を一人生き埋めにできそうなくらいの穴が空いていた。
「崖の上で絵を書いてたらお前ら二人が崖に突っ込んだのが見えたんだよなww、だからこのまま崖の中に埋めてやろうとしたのに出てくるなよ☆wwあーあ…………もう少しでスタークとボールという森の足手まといな二つの有害ゴミをまとめて処分できたのになーwwwつか、どうして俺だって分かった?」
盛られた土の奥には天然パーマの風変わりな青年、シンタローがスコップを片手に、もう片方の手にはラジカセを持って立っていた。
「寝ぼけんな、変なクラシック流すのなんて貴様くらいなもんだよ!!それに森のゴミはボールとお前だろうが!早く土に還ったらどうだ??」
土の山を素手で破壊しながらスタークが吠えた。
「あー、そろそろ朝飯の時間だ。キヌタニに恵んでもーらおwwww」
シンタローはスコップを放り出し、ラジカセを肩に担ぐとスタークの罵声など無視して駄菓子屋の方へとスキップして向かった。
「はぁ!?(#`皿´)無視する気か!?!?……どっか行きやがったぜ、ゴミどものせいで食欲も失せたわ!寝るか。」
別れの挨拶代わりにボールのお腹、いや背中だろうか…………?
区別もつかないが一発蹴り飛ばしてスタークも去っていった。
「…………あれ?もしかして俺はこのまま放置なの??」
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「……あれ?私、何で倒れて??……いや、そもそもここはどこ??」
シンタローとスタークのいさかいの真っ最中、森の南側にある入り口の門(人の出入りなんてないが)の所に倒れていた一人の女性が目を覚ました。
彼女は意識を取り戻してすぐに自分と周囲の状態を確認した。
「(手荷物は……ない。服は……大分汚れてるわね。ポケットの中身は……ティッシュはある、それだけか。そしてここは……集落の入り口かしら?この集落の周りには……密林ばかりで何もなさそうね、引き返すのは危険かも。しかし、人の気配が全然しない。もう捨てられてしまった村なの?)」
分析もさることながら次に彼女はどうやってここまで来たのか、記憶を辿ることにした。
「(確か大学の授業が終わって、お昼ご飯を買うお金がないからいつものようにコンビニのアイスを万引きさせて、でも好みのフレーバーじゃなかったから下僕の男子に全種類盗んでくるように命令したら、そいつが逆上して警察呼ばれて必死に逃げて山に入って撹乱してそれから……ダメだわ思い出せない。というかこんな山奥まで来たってことは結構時間も経っちゃったわよね。今は何時かしら??)」
左腕の時計で時間を確認する。泥汚れが酷かったが壊れてはいなかったようだ。
「はぁ!?丸3日も経ってる!??どういうこと??……まだ状況を判断するには情報が足りないからとりあえずこの村の中に入ってみましょうか。……まだ住人がいればいいんだけど。」
こうして彼女は狂気溢れる100エーカーの森へと足を踏み入れた……。
クラッシック聴きながら作業する人ってあまりいない気がします。
歌詞もオチもないから聴いてると眠くなっちゃいそう……。
ボールは明らかにお腹と背中の区別がつかないけど、それ関連だと自転車で走ってると遠くの人がこちら側に来てるのか、はたまた向こう側に行ってるのか分からないんだよなあ……(危ないだろ)
何か変な部外者が100エーカーの森にやって来ましたがここは世界でも有数の超危険地帯……?
早く離れた方がいいぞ! という作者の声も彼女には届かない……。