1.5-6 『人間の深層心理』
ーー前回のログーー
ーシンタローの家に到着ー
ーエリスにタライ落とし!ー
ーエリスに15ダメージ!ー
ーミーシャにタライ落とし!ー
ーミーシャに15ダメージ!ー
ーシンタローが現れた!ー
ーシンタローは去っていった……ー
ー廃寺に到着ー
ーエリスは掛け軸を調べたー
ーなんと掛け軸が降って来た!ー
ーエリスに10ダメージ!ー
ーボールとよしだくんはエリスを救出した!ー
ーボールがレベルアップした!ー
ーよしだくんがレベルアップした!ー
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良い子のみんなはゲームは1日1時間……は厳しいから3時間までね!
じゃあ、前回の続きからRPGを再開しましょう!
「あ、三叉路に来たね。」
ボールが指をさす。
「ああ、ここは西三叉路だな。環状線を2つの直線の道で4分割しているから三叉路も4つあるぞ。西側にあるから西三叉路って俺たちは呼んでるな。」
よしだくんが説明した。
「で、その奥がみんな大好き、駄菓子屋ねー。」
ミーシャがそれに付け足した。
彼女は早くも先ほどの出来事を忘れて、エリスの頭に機関銃を突きつけるのを忘れていた。
「この前はここの近くを通ってスタークを追いかけたり、瓦礫の山から救助したのよねー♪一体今はどこにいるのかしらん?♪♪」
エリスは頭の中がスタークのことで一杯だったのだろう、すごくウキウキとしていた。
「さあ?あんな奴どうでもいいよ。」
ボールがその名前を聞いて心底嫌な顔をした。
きっと先日、スタークを転がり潰そうとした時に悪口を言われたことをまだ根に持っていたのだろう。
「どうでもいいと言えば……キヌタニは意識が戻ったかしら?全く……一発弾丸をかすめただけで意識不明だなんて情けないわね。」
「しかし、その一発以外にも色々と拷問されて傷を負ってたみてえだがな……。」
ヤムチャがそう言うとみんなの視線は一点に集まった。
「な、なによお、あいつが気持ち悪いからいけないの!!!」
エリスは頑張って反論をした。
「まあいいよ、キヌタニだし。」
「そうだな。キヌタニだし。」
ボールとよしだくんはかなりどうでもいいという顔をしていた。
「もう駄菓子屋はエリスもボールも行き慣れてると思うがキヌタニのお見舞いがてら一応行くか。」
一同はヤムチャに続いて駄菓子屋に入った。
「これは……まだ意識が戻ってないようだな。売り物が補充されてない。」
よしだくんはアイス売り場を覗いてため息をついた。
「全く、本当に使えない店主ね!!また鞭打ちの刑にしてやろうかしら!!」
エリスはどこからか鞭を取り出して構えた。
「……さすがに止めてやれ。これ以上あいつを痛めつけたら朝飯とおやつが延々と食えなくて面倒だ。」
「私もおやつ抜きは嫌よ!やれやれ…………しょうがないから看病くらいはしていこうかしら。」
ミーシャが店と生活スペースを仕切っている引き戸を開けた。
「…………あら?いな……いわよ???」
彼女はキヌタニが寝ていた布団を凝視したが、いつまで見ていても布団の中は空っぽのままであった。
「どういうこと?まさか拉致されちゃったとか……?」
ボールは少し慌て気味になった。
「まさか、考えすぎだ。どうせトイレとかだろ。」
よしだくんは冷静にそう言ってトイレのドアを開けた。
「ん……?いない、な……。」
彼は便器の中まで覗き込んだが、さすがにキヌタニでもそんなところにはいなかった。
「全く、ここの後片付けでもしてやがるのか?」
ヤムチャは元18禁コーナーの中を覗いた。
「……アア、ココニモキヌタニハイナカッタカ。」
彼は顔を引っ込めて振り返り、引きつった笑いを浮かべていた。
「……何かあるな?」
よしだくんはそんなヤムチャの口調と表情から怪しいと感づいて、嫌そうな顔をしながら元18禁コーナーを覗き込んだ。
「オ、オレハナニモミナカッタゾ!!」
彼はガタガタと震えながら声を裏返らせた。
「みんな甘いわ!!キヌタニならアイス売り場の中に決まってるでしょ!」
エリスはヤムチャとよしだくんの様子も無視してアイス売り場を覗き込んだ。
「あれ??何かいないかもしれないんだけど??まさかあ??」
彼女は身を乗り出してさらに奥まで覗いた。
「エリスは何をしているのかしら……やれやれ。」
ミーシャはエリスを呆れた目で見てから二人に習って中を覗き込んだ。
「し、し……死んでもらうわよー!!!」
次の瞬間、銃声が駄菓子屋に鳴り響いた。
ヤムチャとよしだくんが一瞬で正気に戻り、飛び退いてミーシャから離れた。
「えっ!!!何があったのーー!?」
逆にボールは慌ててミーシャの方に駆け寄った。
そして元18禁コーナーの中を覗き込むと……
「えぇ……なんでこうなってるの……??」
ボールはいつもなら興奮して鼻血を出していた場所で、ドン引きして吐きそうになった。
…………中は大量の照明でしつこすぎるほどピンク色に照らされており、壁を一周するようにイルミネーションが取りつけられていた。
そして床には先日のミーシャの銃撃事件によって、壊されて売り物にならなくなった■■■や■■■の残骸が散りばめられている。そしてその真ん中には……
「ハァ、ハァ……全く、いきなり襲撃だなんて卑怯だぞwww」
と、三角木馬の裏で息を切らしながら笑いを浮かべているシンタロー……
……に何かされたのであろう、三角木馬に座らされて、白目を剥いて、口をまち針で留められ、手足が腫れ、メイド服を着せられ、耳には木の棒が突き刺さり、鼻からヨーヨーをぶら下げられているキヌタニがいた。
なお、奇跡的に二人とも被弾しなかったようだ……。
「これは卑怯でも何でもないわ!!そもそも何でシンタローがいるのよ!!これはあなたの仕業なの!?返答によっちゃあ、その頭吹き飛ばすわよ!!」
ミーシャは矢継ぎ早にシンタローを怒鳴りつけ、再び機関銃を構え直した。
「いやいやwwそんなわけねえだろwむしろ何で俺がやったと思うんだよ!wwww」
シンタローは首をフリフリと横に振った。
「お前のことだから全然信用ならんな。だが、事情聴取くらいはしてやらあ。」
「まあ、今から簀巻きにし始めても間違ってない気がするが……。」
ヤムチャとよしだくんは落ち着きを取り戻し、シンタローを冷たい目で見た。
「んまあ、そんなに求められちゃったら事情を話すしかないなwww」
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今朝、七時くらいに朝飯を食おうと駄菓子屋に行ったらもうアイスが売り切れてて、補充させるためにキヌタニ無理矢理叩き起こそうとしたんだけど、何故かこいつがいなくなってたんだわwww
それでトイレの便器の中とか、アイス売り場の中とか、電子レンジの中とかを探したんだがいなくて、最後に覗いたここに三角木馬に座った状態で手足を縛られて、目と口を塞がれて、小悪魔のコスプレをさせられたキヌタニがいたんだなwwwww
それ見て俺は閃いちゃったわけ!!
これは……芸術作品の予感!!
そう思った俺はこの部屋全体を少しいじくり回して芸術作品にしたんだわwwただどうしてもキヌタニの格好が気に食わなくてだな、ちょっとメイド服を着てもらうことにしたんだよwww
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「そしてこの作品の名前は……『人間の深層心理』!!」
彼の話を聞いていた四人は口をだらしなく開け、涎を垂らして唖然としていた。
「あ、途中で空腹が限界だったからつまみを土産に一度集会所に戻ったぜHAHAHAwwwww」
シンタローはこんな状況にも関わらず高笑いをしていた。
「あっ、ちょっ!!何か足が引っ掛かっちゃって体がはまっちゃった!!誰かぁ~……(´д`|||)」
一方でエリスはアイス売り場から出られなくなってしまい、シンタローの話を聞いてる余裕もなかったようだ。
しかし、みんなシンタローの方に意識が向いて、誰も彼女を助けようとしなかった。
「……いや、足りねえな。この作品には、何かが足りねえ!!」
と、そこでヤムチャが叫び出した。
「それは……シンタロー!お前だ!!」
彼はシンタローに詰め寄った。
「いやいやwこれはもう完成作品だか……えっ!!?」
シンタローはヤムチャがまたしてもどこからか取り出したロープでぐるぐる巻きにされた。
「さて……どうしてやろうかな……??」
ヤムチャは生まれたての赤ん坊も黙るような形相でシンタローを見つめた。
そして…………
「あ、あ……あああーーーっっーん❤」
30分後……
「な、なあ……さすがにこれは酷くねえか?ww」
元18禁コーナーの雰囲気はヤムチャの手が加わり随分と変わってしまった。
照明は不気味な紫色に変わっており、床には刃が上を向いた状態で無数の売り物のナイフが立てられていた。
そしてメインのシンタローは腕を背中で縛られ、三角木馬を両足の間に固定され、足を天井とロープで繋がれて逆さ吊りにされた。
「あ?どこらへんがだ?完璧な出来じゃねえか。名付けて、『独裁政治からの脱却』ってとこだな!!!」
ヤムチャは満足そうに頷いて腕を組んでいた。
「えぇ……趣味悪いわよ。」
ミーシャは既に機関銃をシンタローに向けて構えていた。
ちなみにキヌタニは『バカの深層心理』から救出され、適切な応急処置を受けた後に布団の中で寝かされた。
「もしシンタローが自力で足の縄をほどけたとしても、ナイフの海にダイブするしかないという仕組みになっているのか、なるほどな。」
そう言ってよしだくんは二本のナイフを手に取り、シンタローのそばにはしごを置いて登り、何やら細工を始めた。
「……これでいいだろう。お前の足の裏にナイフをくくりつけさせてもらった。お前がもがく度に天井とお前をつなぐロープが左右に揺れてそのナイフで切られていくからな。串刺しにされたくなければそこで当分は大人しくしてることだ。」
「じゃあねシンタロー、俺たち忙しいから。」
ボールが一瞥すると、四人はシンタローに背を向けた。
「ちょっとみんなー!!何で私を放置プレイするのよー!!!助けてよぉー!!」
エリスはまだ脱出できずにアイス売り場の中でもがいていた。
「あれ?エリス、こんなところで何してたの……?」
ボールが気づいて、エリスの足を引っ張って助け出した。
その時にアイス売り場からバキッという音が聞こえたがみんな知らんぷりをした。
彼女は霜焼けで全身が真っ赤になってしまった。
「いだだだ……首がぁー!!!バキッってー!……はぁ、はぁ、寒かったあ……( ノД`)」
エリスは首を手で押さえて唸った。
「うーむ、エリスは今ので5ダメージ食らったな…………って、もうHPが5しかないじゃないか!!!早く回復しないとまずいぞ!!!」
そう言うとヤムチャは慌てて食料品売り場にすっ飛び、大量のニンニクチューブを抱えて戻ってきた。
もちろんお代など払うはずもなかった。
「これを食って元気を出せ!!力が湧いてくるぞ!!」
ヤムチャはエリスの口をこじ開け、すりおろされたニンニクをできるだけ多く押し込む。
「むごぉ、ふごぉふぉ…………!?!?!?!?!?!?んぐぅーー!!!!」
エリスは突然のことに最初は理解が追い付かなかったが、自分の口に押し込まれた物の正体がにんにくだと分かると悶絶し始めた。
「ちょっとちょっとー!!!???あんた何してるのよーーーー!!!!バカなの?アホなの??どっちなのよーーーーー!!??????」
そんな二人を見て、ミーシャは機関銃を構えるどころではなく頭を抱えて悲鳴を上げた。
「なんだなんだ!!??ヤムチャお前とうとう気が触れたか!?!?」
よしだくんは止めさせようとヤムチャの首を締め上げるが彼はその程度では全く動じなかった。
「頑張れエリス!!飲み込むんだ!!!そうすればHPが全回復するぞ!!!!」
「んーーーー!!んーー!?!?!?」
「いや、二人とも何言ってるか分かんないんだけどーーー!!??」
訳の分からないヤムチャと口の中が一杯で喋れないエリスを見てボールは嘆き叫んだ。
5分後……………
「はあはあ…………もういきなり何するのよ!あとちょっとでにんにく人間になるとこだったわ!!」
「いや、にんにく人間って何それ、おいしいの…………??」
エリスはヤムチャの胸ぐらをつかみ、ボールはボケに等しいツッコミをナチュラルに刺した。
「あ??何だよせっかくHPを回復させてやったのに…………お前はあと少しで死ぬとこだったんだぞ!!分かってるのか!?」
ヤムチャもエリスの頭を掴んだ。
「いや、それは誰のせいだと思ってるのよ!!」
エリスはヤムチャのお腹をボコボコと殴るが全然効いてなかった。
そして残りの三人は全く会話の噛み合わない二人をただただ眺めていた。
「ねえ、さっきからヤムチャの言っているダメージとかHPとかって何のことだと思う??」
「ああ…………俺にも分からん、でも何かを企んでそうではあるよな。」
「全く…………くだらないことだったら容赦しないわ!!」
さらに5分後…………
「あーあ、もう何でもいいわ、いくら殴っても効かないし、飽きたし、よく分かんないけど元気出たし。」
エリスがヤムチャの手を振り払って距離をとった。
「えぇ…………あれで元気になるのか…………。」
そんなエリスを見てよしだくんの背中に寒気が走った。
文章だけで拘束されたシンタローの状況が理解できたでしょうか?(とても不安)
逆さ吊りにされているんだけど三角木馬に座らさせているのです!!
つまり足の間で三角木馬を支えていると……痛そう。
シンタローもよしだくんもキヌタニを探してトイレの便器の中を探してますが……。
キヌタニならそこに居そうという森の住人たちの共通認識なのかもしれませんね。
エリスが5ダメージしか受けなかったのはヤムチャの優しさでしょうか…?
本当だったらもう死んでてもおかしくないはず……だってエリスだし。
そしてヤムチャはなぜ回復アイテムにニンニクチューブを選んでしまったのでしょう……?
もっと胃薬とかリコリスとか薬用酒とか色々あったはずなのに!!
次回こそは誰かが死ぬんでしょうか??
RPGは死人が出ないと楽しくないですからね!!