1-1 闘争と逃走
どうやらこの小説を読む準備が出来たようですね。
お待ちしておりました、今から読者の皆さんは100エーカーの森に足を踏み入れることになります。
そこはとてつもない魔境かもしれません、死ぬかもしれません。
でもご安心ください、危なくなったらいつでも脱出が可能です(ブラウザの戻るボタンから!)
100エーカーの森がどこにあるのか、時代は過去か現在か未来か……それはここでは言えません。
お話が進めば明らかになるでしょう、それまではご想像にお任せします。
そうだった、一つだけ余計な誤解を生みそうなのでこれは言っておきます!
本小説では一人称視点と三人称視点のナレーションが混在しています。
三人称視点では本文冒頭で喋っているよく分からない誰かさんがナレーションしているものだと思ってください!
それでは…………ようこそ100エーカーの森へ!!!
???「……力を使い果たし薄れゆく意識の中で私にできることはもうない、せめて最後は思い出に浸ることとしよう……。」
あれは、去年の夏のことだ。あの夏は一段と騒がしい夏だったな……。
ここは100エーカーの森、いや、正確には100エーカーの広さしかない「村」なのだが。
その森の中心に家を構えていたスタークというどうしようもないバカがいた。
あの日、スタークはいつも通りキヌタニの駄菓子屋から朝御飯(この時昼の11時)のアイスを取って来ようとした(買うとは言っていない)。
「あー、クソが!なんでこんな暑いんだよー!」
そう言って自らの家の壁を蹴飛ばすと駄菓子屋の方に歩き出した。
100エーカーしかない森だ、駄菓子屋までは大した距離もない。
が、この日は簡単に駄菓子屋まで辿り着くことはできなかった。
「ちっ……嫌な奴に会っちまったな…………!!!」
同じく朝食兼昼食のアイスを食べに来た(買うとは言っていない)ヤムチャと途中でバッタリ鉢合わせしてしまったのだ。
「あ?無駄にでけえ目障りなオブジェが転がってんな!俺が通るんだ、早くどけや。」
スタークはヤムチャをどかそうと彼の腰の辺りにローキックを繰り出した!
しかし、ヤムチャはびくともしなかった。
スタークは身長170cm,体重60kgと月並みな体格だが、ヤムチャは大柄で200cm,110kg程もある。
「ん?何か足元でゴミ虫が喚いてやがるな、踏み潰してやるか。」
ヤムチャがスタークを余裕の表情で見下ろし二人の間に殺気が走った。
が、その殺気もスタークの頭上に鉄の塊が振り下ろされることでふっと消え、ゴツンという鈍い音が辺り一面に響いた。
「っー!!!……誰だ、この俺に害を与える罰当たりなクズ野郎は……!」
スタークはさすがに痛いようで頭を抱えた。
「はぁ……朝から精神的に良くないものを見ちゃったわねー!」
いつの間にかスタークの背後には機関銃を構えた小柄な女性が立っていた。
「おお、ミーシャか。ナイスタイミングだ!その機関銃でこのゴミ虫を粉砕してやれ!」
「ったく、何でオブジェが2体に増えてんだよ、増殖力だけはゴキブリだな!!」
スタークは頭から血を流しながらヤムチャとミーシャを交互に睨んだ。
「何よ、私がフランス人形のように可愛いって?はいはい、どーもありがと!」
全く感謝の篭ってない言葉を吐いてミーシャは機関銃をぶっ放した。
爆音と共に無数の弾丸がスタークに襲いかかる……はずだった。
「おいー!!なぜこっちに弾丸が飛んでくるんだー?!狙うところが違ーう!!!」
「うっさいわねー、片っ端からスクラップにしてやるんだから!!」
ミーシャは機関銃を撃つと、とんでもないサイコパスへと性格が変わるのだ。
ちなみに彼女、常に機関銃を背負って携帯している。
………………怒らせたらその当人も周りの人間も命の保証はない。
一方、ヤムチャは予想外の事態に慌てて逃げ惑い、そして不思議なことに1発たりとも被弾していなかった。
だがそれは別にミーシャの狙いが悪いという理由ではない。
ヤムチャの身体能力が異常に高いだけなのだ(もちろん彼はタコ型で触手が何本もあるわけでもないし、どこぞの進学校で教師をしているわけでもない、手と足が2本ずつあるだけだ。)。
これで斧やらノコギリやらを双剣のごとく振り回していたのだ、もはや人間兵器という二つ名が相応しい奴だった。
「あー、何か醜いオブジェ同士が喧嘩してんなー。騒がしいから黙れや!」
スタークは二人が暴れてるのを見て鼻をほじっていた。
と、その時突然地震が起きてミーシャは機関銃を撃ち止めた。
一方で気を抜いていたスタークは驚いて、指を鼻の奥にまで突っ込んで引っ掻いてしまったようだ。
「ああ……またか。」
「……そーみたいね。」
ヤムチャとミーシャが顔を見合わせた。
「このっ!今度は鼻から血が出てきやがった!」
スタークは鼻を押さえていた。
そして3人は少し離れたところから、いびつな球体のようなものがこちらに転がってくるのを視界に捉えた。
「ボールだな。」
「ボールね。」
「……クソボールが。」
そしてそのボールとやらはあっという間に3人の方へ接近して来た。
意外かもしれないがこの「ボール」は一般名詞ではなく、固有名詞なのだ。
「助けてー!家の前で転んだら止まれなくなったんだー!!」
ボールが助けを求めた。
……お分かりだろうか、ボールは一応身長160cm,体重500kg()の人間である。
ちなみに職業はニートで、好きなものはポテトチップスとエロアニメ……。
そして自重を支えられず歩くこともできないので移動手段は転がるのみ。
「「「助けられるかー!!!」」」
3人は全力で逃げ出した。
「お願いだよー、助けてよー!!」
ボールは転がりながら泣き叫んだ。
「うっさいわね!いかがわしいアニメを見てばっかでろくに風呂も入らずに臭いから近づかないで!!!……ってスタークが!!」
そう早口で吐き捨てると同時に、ミーシャは道の脇に飛び退いてボールの脅威から逃れた。
「本当にな!ロクに働きもせず、家でゴロゴロしてるだけのクソニートがよ!そもそもいつも転がってるくせに転ぶって概念ねえだろ!!!……ってスタークが!!」
ヤムチャも真上に高く飛び上がりボールの真後ろへと待避した。
「は?俺は別にそんなこと言ってねえよ!でもお前はキモいし臭いしクソニートだとは思うがな!!」
逃げつつスタークは盛大に自爆してしまった。
「何だって!!許さないぞー!!」
ボールはさらに加速しスタークを擂り潰そうとした。
「おい!ニートの分際で俺に歯向かう権利があると思ってんのか!!」
「いや!お前も特に働いてないよね!!」
全力疾走をしながらスタークは懲りずに口応えをした。
しかし彼は前に向き直り、大変なことに気づいてしまった。
スタークの視線の先には切り立った崖がそびえ立っていた。
つまり行き止まりということだ!!
「これまでだね、スターク!!覚悟しなよ!!」
「ふざけんな!さっさと止まれこのデブが!!」
「いや、それはどっちにしろ無理。」
行き止まりに追い込まれてしまったスターク、主人公なのに初回でぺちゃんこになって死んでしまうのか!?
果たしてスタークの運命やいかに!?
調べてみると体重500kgの人間はざらにいるようですね(はい?)
ボールももっと体重増やしてギネス記録目指して頑張って頂きたい……!
ちなみに空気抵抗の関係からかボールの転がる速度は40km/hも出ないらしい(本当か???)
それじゃ、バイバイスターク。早くぺちゃんこになってくれ(切実)