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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
小休止 番外編
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extra3 闇鍋は無くならない

番外編の最後は3章のその後のお話です。


 3章はヤムチャが巨大なぼたん鍋に沈められたところで終わっており、『鍋はみんなで美味しく頂きました。』という一文で締めくくられていました。


ですが100エーカーの森の鍋パーティーがそんな平和なものになるわけもなく……。


食うか食われるかの命がけのパーティー会場へようこそ!!

「ゼェゼェ……てめらは手加減ってもんを知らねえのか??」



 グラグラと煮える鍋に十分以上も沈められて死ぬような思いをした俺、ヤムチャは殺意に満ち溢れたミーシャとシンタローの足を払い除けてどうにかぼたん鍋から脱出した。



「悪霊が出てきちゃった!!もう一回鎮める(沈める)わよ!!」


「まだピンピンしてるからな、ピクピクとしか動かないくらいまで茹でてやらないとな!!www」



真っ赤なシンタローは俺のことをもう一度鍋の中へと投げ飛ばそうとしてきやがる!



「止めやがれ!!もうみんなで楽しく肉を食おう!!な?……な!?」


「うるせえ、俺はむしろ食われるところだったんだぞ!?ww」



笑いながらもシンタローの腕の力の入り方は容赦がねえ!!


油断してたらまたいつ落とされてもおかしくねえな!



「シンタローの言うことは分かるけど、俺はお腹が減ったから普通に食べようかな?」



って、くじらんは俺たちのことを気にも留めねえでお玉を使って肉を自分の取り皿によそい始めたぞ!?



「先ほどシンタローとヤムチャが飛び込んでたが私は何も気にしないぞ。」



そして仙人も表情を変えないまま肉に手を伸ばす。



「五年前の俺だったら驚いていたかもな。」



さらにはよしだくんも二人に倣って肉にがっつき始める!



「ど、どうして人間がどっぷり浸かった鍋なんて食べられるんだい!?す、少しは衛生面を気にしたまえ!!」



フジモンは俺たちが鍋の中にいたのが気になるようでまだ食べようとはしねえ。


んまあ、靴とかも履いたまま突っ込まれたわけだし……なあ??



「もう俺は知らんぞ!俺だって肉が食いてえんだ!!」



我慢ならねえ!


俺もお玉で鍋からありったけの肉を掬った!



「あら、食べさせないわよ??」



って、肉を掬ったお椀をミーシャに取られちまったじゃねえか!!



「今日のあなたは食べられる方よ!分かった??」



しかもそう言うと一瞬の隙を突いて俺のことをもう一度鍋の中へ突き落としたじゃねえか!!



「アチチチ……言うほどでもねえか?」



先ほど火が消えていたおかげか、鍋は少しぬるくなっていた。


いや、それでも80℃近くはあるからな!良い子は真似するんじゃないぞ!!



「二度も鍋の中にぶち込みやがって!!ならもうこの中で食ってやらあ!!」



鍋のスープに潜って肉を直接貪ってやる!!



「おい!お前だけズルいぞ!!ww ……とおっ!!☆」



何を思ったかシンタローまで鍋の中にもう一度ダイブしてきやがった!!



「肉は俺のもんだ!!ww……ブクブクブク!w」



シンタローも俺を真似て肉を食い始めたぞ!!




「あれ……?俺が引きこもってる間にぼたん鍋の食べ方が変わったの??確かにお玉を使う暇が省けそうだけど……。」


「そんなわけないでしょ。ちゃんとこれ使って?」



ミーシャはいつの間にか取り皿が空になっているくじらんにお玉を突き出す。


いや、こんな短時間でもうあれだけ肉が盛られていた取り皿を空にしやがったのか!?


こりゃあ、俺の食い分が減る危機だな!!



もう全員やってることがメチャクチャだし俺も好き放題させてもらうぜ!!



「いーや、これから俺がルールを変えるぞ!!……おらあっ!!」



俺がくじらんを鍋の中に引きずり込んでドッパーンという湯しぶきが盛大に上がる!!



「んもう!!少しこっちにもかかったんだけど!何であの中に入ってて熱くないのよ……。」


「やれやれ、もう少し落ち着いて食べて欲しいものだ。」



そしてミーシャとよしだくんは文句こそ言うが顔色一つ変えずに肉を頬張ってやがる!



「ふぅ……私の老いぼれな胃はこれ以上肉を受け付けないみたいだ、後は若者たちだけで楽しんでくれ。」


「ぼ、僕も食欲が失せたから帰るよ!しゅ、集会所の干し肉でも食べようかな??」



 仙人とフジモンは自分たちまで鍋に引きずられるのが怖かったのか逃げるように去っていったぞ……もしかしたらマジで鍋に引きずり込んでたかもしれねえがな!!



「いいかくじらん、もしみんなで肉ばっかりを食っていたらどうなると思う?」


「どうなるって……肉が減っていくんじゃないかな?」


「甘いな!!ここで注目すべきは鍋の中の肉だけじゃねえ!スープの割合が増えることによって少なくなった肉が余計に取りづらくなる!さてくじらん、こういう時お前ならどうする?」


「どうするって……そもそもどうにかするべき問題なの?」


「仕方ねえ奴だ!なら、俺が今からお手本を見せてやる!」



俺は鍋の中に潜ると鍋のスープをグビグビと飲みまくる!


鍋の水深を5cmほど減らしてやったぜ!!



「ぶはぁ!!つまり答えはこうだ!!スープも一緒に飲んでバランスをとる!!分かったらやってみろ!」


「えっ!?あばぼっ……!!」


そしてそのままくじらんの頭を鍋の底に沈めてやった!


そしたらさっきと同じようにまた水面が下がっていきやがる!!



二分後、3cmほど下がったところで俺はくじらんの頭を解放した。



「ぐはあっ……!!……はあっ……もう……急に酷いよ……!!」


「だが、よく頑張ったぞ!!」



そして全員の視線は鍋の中にいる最後の一人へ向いたぜ!



「えっww俺もやるの?wwいやいや……もちろん言われなくてもやるつもりだったけどな!とうっ!w☆」



シンタローは元気よく自分から鍋の底に沈んでいったぞ……。


そしたら鍋の水位がさらに下がっていきやがる!!



「おりゃあっ!☆どうだ!!やっぱり俺が一番だな!!」



確かに、今ので10cmほど水位が下がって間違いなく肉は取りやすくなったな!!



「シンタロー……お前にスープ飲みで勝てる奴はこの森にいねえ、それは認めてやらあ。だがな……ぼたん鍋のメインはスープじゃねえだろぉ!!」



バカめ!!まんまと罠にハマったな!!


これでてめえらはもう腹一杯になってるはずだ!!


つまり、今ここで肉を食らえるのは俺一人だけ!!!




「おっと、待ちなさい。」



はっ!?!?


 鍋の中にもう一度飛び込もうとした瞬間、頭の上からお玉が伸びてきて俺の首筋を掠めてきやがった……!!



「俺たちのことを忘れてないか……?」



ミーシャとよしだくんがしっかりと上から狙っていたじゃねえか……!!



「そう簡単に肉は独り占めさせないぞ。」


「どうやらスープを飲みすぎたみたいじゃない……。いや、安心していいのよ?だって飲んだのなら足せばいいんだからね!!」



そう吠えるミーシャの両手にはチューハイの缶が握られてんだが……。




おいおい……冗談だよな!?



「よっしゃー行ってこーい!!♪」



思った通りっつーか……マジでやりやがった!!


缶チューハイを開けるとこいつは鍋の中に注いできやがる!!



「え?ミーシャはどうしてせっかく減らしたスープをまた増やしてるの??」


「うん、色々とそれ以前の問題じゃね?wwって、何で俺を狙ってかけてくるの??ww」


「つーか、めちゃくちゃ酒くせえ!!すぐに止めてくれ!!」



 まだまだ冷めきらない鍋に放り込まれた酒はアルコールがどんどん蒸発して俺たち三人の吸う空気に混じって肺に入ってきやがる!!



「何だっけこの感じ……うーん……?ブクブク……。」



何で考えていたら一瞬でくじらんは酔っ払って鍋の底に沈みかけたじゃねえか!!



「おおい!?鍋の中で寝たら溺れ死ぬぞ!!おらあっ!!」



咄嗟に俺はくじらんを鍋の外へと放り投げた。




「うーーん……目が回るなぁ……zzz」



これであいつはこの争いから脱落だな。



「て言うか、そんなもの入れるんじゃねえよ!!ww鍋が変な味になるだろって……ゴクゴク!!……うわっ!既に違和感あるわww」



シンタローは酒を足されて闇鍋と化してしまったスープを飲んで盛大に顔を歪めた。



「だってスープがそんな少ないんじゃ干上がっちゃうじゃない。ほらほら、まだまだ行くわよ!!」



更にミーシャは赤ワインの栓を抜くと容赦なくドバドバと鍋の中へ流し込んできやがった!!



「おっ、赤ワインかww何でも肉とよく合うって言うよな!モグモグ……いや、浸して食べるのは何か違うわwww」



おいシンタロー!てめえは一体何を馬鹿な真似してやがる!!


グルメっぽいこと言ってやがるが、言動と行動の差が酷いな!!



そんなことよりワインの方がアルコール度数が強いからさっきよりもアルコールが……!!



「ゲホゲホッ!!!おおいっ!!これ以上酒を入れるな!!」


「うるさいわね!さっさと酔い潰れなさい!!」


「全く、鍋の中にまで入って肉を食うなんてお玉で肉を掬う邪魔だぞ。」



よしだくんはやんわりと言っているが本音はミーシャと同じだろうな……。



くっ……こうなりゃ最後の手段だ!!



「シンタロー!!潜ってさっさと肉を食っちまうぞ!!」


「えっ?wwもうスープで結構お腹いっぱいなんだけど……?wwでもせっかくの肉だからな!!とうりゃぁっ!!☆」



鍋の中に潜っちまえば蒸発したアルコールを吸うこともねえ!!


このまま二人で肉を食い尽くしてやるぞ!!



俺はどうにかスープを出来るだけ飲まないように肉だけを水中で貪った……。


いくらお酒をある程度足されていようともさすがはぼたん鍋だ。


肉はちゃんと旨え!!




しばらくはそう思ってたんだが突然、口の中が甘くなりやがった……!?


目の前をよく見ると、肉らしからぬ何かが浮いてるじゃねえかよ……?


五分以上も潜ってたから確認がてらそろそろ息継ぎに上がるとすっか。



「ぶほおっ!!!……おいミーシャ、まだ何か変なもの入れてんじゃねえだろうな……あ。」



そんな鍋の縁に立つミーシャの手にはエクレアとロールケーキが握りしめられていた。



「……おい、まさかとは思うがそんな物……鍋に入れてねえだろうな?」


「……かさ増しよ、かさ増し。肉だけじゃ栄養偏るから。」



ミーシャは無表情で次々に甘味を鍋の中に投げ込んできやがる……!!



「……まあ、肉ばっかりでも飽きるだろうし味変としてはいいんじゃないのか?」



そう言うよしだくんの取り皿には肉がこんもりと盛られているぞ……。


きっと俺とシンタローが鍋に潜水している間もお玉で肉を掬い続けていたんだろうな。


鍋にぶち込んだ甘味にノータッチなのは言うまでもねえだろうよ!



「味変ならもっと真面目にやりやがれ!!つーか、甘味で栄養の偏りが無くなるってのか!?」


「あら、ロールケーキじゃ嫌ならもうちょっと体に良さそうなものにしてみる?」



どうやら俺は余計なツッコミを入れちまったらしい。


あいつの手にはフルーツジュースの紙パックが握られてるじゃねえか……。



「ほらほら!お望み通りヘルシー鍋よ!」



ミーシャの恐ろしいところは素面でもこういうイカれたことを平然とやりだすことなんだよな!!



「って、俺の頭にかけんじゃねえ!!!」



鍋の中とは裏腹に冷てえジュースを避けていると何かが浮かんできた。


それはうつ伏せのまま動かなくなったシンタローじゃねえか……。



「おい!!てめえまで酔い潰れやがったのか!?」



「うえー……肉が甘い……甘すぎる……www」



シンタローは目を見開いて笑い、そんなことをうわ言のように呟いてらあ……。



「んなことしてたら溺れるぞ!!」



俺はシンタローも鍋の外へと投げ飛ばしてやった!



「モグモグ……うん、美味しいお肉だったわ。あーーお腹いっぱいでナンダカネムクナッテキタナー(棒)。それじゃあ後はよろしくー。」



目を離した一瞬でミーシャは取り皿にあった大量の肉を食い尽くしやがった。


そして何事もなかったかのように帰りやがったぞ!?



「ミーシャも結構食べていたからな。そろそろ満足したんじゃないのか?」



よしだくんは何とも思ってないようで、延々と肉を齧り続けている。


……どうやら俺たちが鍋のスープを減らしている時にもずっと肉を食っていたんだろうな。



「せっかくだし、このエクレアも食べてみるか……うん、今まで食べたことないような味だがこれはこれで美味しいな。」




おいおーい???


鍋にぶち込んだエクレアが美味い……だと!?


信じられねえが……食ってみるか。



目の前に浮かんでいたチョコケーキを口の中に放り込んでみたぞ。



「うえっ!?いやいや!!チョコに醤油なんてありえねえ!!こんな物食えるかー!!」



 目の前にちゃぶ台が無かったから、代わりにプカプカ浮かんでた麸菓子をコロコロとひっくり返してやったぜ!



「美味しいんだが、どうにも刺激が足りないな。うーん……?」



何をもって美味しいと言っているのかはよしだくんにしか分からないが……。


さらには事前に準備してあった調味料を漁り始めたぞ??


そして真っ赤な瓶を手に取った……。



「辛いのはすごく好きってほどじゃないが、少し入れる分にはいいアクセントになりそうだ。」



おい!!それはタバスコソースだろ!!


そんなものを鍋の中に入れられたら……!!



「待て待て!!甘いものを入れたのに辛いものまで入れたら意味がねえだろ!!」


「そうか??世の中には甘辛いものもあることだし、いいんじゃないのか?」



俺の制止も虚しく、よしだくんときたらタバスコをそんなドバドバと……。


程なくして、肌がピリピリとしてきたぞ!?



「どうだろうかヤムチャ、辛さは丁度いいか?」


「もうこちとら全身で嫌と言うほど味わってらぁ!!そしてその味は最悪だぜ!!」



ほんのちょっとだけ汁を舐めてみるか……。




…………。


いや、思ったより全然辛くねえな。


正直まだまだ甘ったるいぞ。



「最悪だって?じゃあ次は……このクミンを入れてみよう。スパイスの一種みたいだな。」



クミンはミーシャがカレーを作る時に入れてるのをよく見かけるな。


だったら鍋に入れればカレー鍋に……。



って……そういう次元の話じゃねえんだった!!


甘ったるい闇鍋にスパイスなんて入れてみろ!


一層深けえ闇の鍋になっちまう!!



(いやいや、深けえ闇の鍋ってなんだよ!もはや自分でもわかりゃしねえや……。)



よしだくんは何のためらいもなく、クミンを丸ごと一瓶ぶち込みやがった!!


ヤバいのは分かってるんだが……どんな味になるんだろうな?


また一口、啜ってみたぜ。



「おえっ……こりゃあ甘ったるいカレーじゃねえか……!!」


「そうなのか?ズズッ……うん、面白い味だな!」





なあ……どうしてこんな物をこのよしだくんという人間は笑顔で飲めるんだ??



「この調子でもっと美味しくしてみよう。次はこのアラザンを……。」



ああ、もうダメだ……。



視界はよしだくんによってばら撒かれたアラザンによって埋め尽くされ、気が遠くなっていきやがる……。


そのまま体が鍋の底に沈んぢまってらあ……。


こんなおどろおどろしい鍋の中で力尽きるなんてよ……。


俺があの時シンタローを鍋にぶち込まなけりゃあなあ……。


だがもう後悔したって手遅れだ。


ああ……鍋は普通が一番だぜ……。




p.s.翌朝、シンタローが鍋のそばで目を覚ますと干上がった鍋の底で腹をパンパンに膨らませたヤムチャが倒れていたのだとか……。

 最後の状況から判断するにヤムチャはよしだくんの手によって生み出された闇鍋を意識が飛んでいながらも見事に完食したようですね。


やはり食べ物を無駄にしてはいけません。


それはそうと昔のファミレスでジュースを混ぜて遊んだ経験は読者の皆さんにあるでしょうか。


 現代のガ〇トのドリンクバーは設定によっては最初からジュースが混ざった状態で出てくるではありませんか!!


とうとうファミレスもドリンクを混ぜることを公認したようなもので……いい時代になりましたね!



 もともとは番外編を書く予定などなかったのですが、ここで書いておかないと永遠にお蔵入りになりそうなシーンもあったので供養ということで投稿をしました……。


これで本当に来年の夏まではお休みします!!



最後に皆さんに宿題を出しておきます。


Q.『アラザンは調味料に入りますか?』


来年までに考えておいてください!!


では、また6章でお会いしましょう!!!

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