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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
141/162

5-27 コルク、再来

ーー前回のあらすじーー


 プロトンは森の住人たちと巨大な釜風呂、もとい鍋を囲んで鹿の肉をお供にたくさんの昔話をヤムチャから聞かされた。


 離れ離れになってしまった六年間も彼らはこの場所で必死に生きており、その事実を自分は絶対に忘れないと心から彼は思うのであった。


 そしてフジモンはそれ以前の昔話も聞きたいと言うので、今度はプロトンから幼少期の住人たちがどんな様子だったのか、それはもう……暴露の連続であった。


 夜も一緒に寝ようという誘いも受けて一度はそれに応じたものの、決心がついてみんなが寝静まってから去ろうとするとチッダールタに呼び止められた。


 本当にこの結末でお前は良いのかと……だが、彼はとっくに決心していた。

決して自分は諦めない、絶対にいつか帰ってくると。


 プロトンは駄菓子屋の地下倉庫に戻って眠ろうとするが、考え事をしているうちに思いつく。

自分も『彼』と同じように手紙を書こうと。

その手紙は誰が書いたのか分からないようにして、絶妙に見つからない位置に隠しておいた。


 翌朝、列車の音で目が覚めた彼はもうエリスが話を着けてくれたのかと期待を膨らませながら彼女の到着を待った。

だが、彼女は……プロトンを気絶させて裏切者だと言い放ったのだ!!



 100エーカーの森の悲劇、第一部の最後の一日がやって来ます。

このカオスな森で最後に笑っていられるのは誰なんでしょうか?


 とてもとても長い一日になりそうです。

まずは主人公ながら未だにその風格の欠片もないスタークの様子から見ていきましょう……。

プロトンがこの森を去ってから五日目の昼……。




 襲撃の時と比べればすっかり元気になった、ただのおじいちゃんことチッダールタはスタークを監禁している洞窟に来ていた。



「その壊れた頭の調子はどうだ?そろそろこの森から出たいと思うようになったか?」



「てめえ……本当に俺様を殺す気か?」



少し衰弱しているようだが未だに目から放たれる殺意は健在だな。



「この森から出られればお前は本当の意味で自由になれる。やはり私の言っている意味がお前には理解出来ないのか?」


「知らねえな!この森の外に出たらアイスが食べ放題なのかよ!?」


「それはお前次第だ。ちゃんと働いて金を稼ぐことが出来たら、毎日腹を壊すほどアイスが食べられる生活だって可能だろう。」


「ああ!?俺様に働けってのか!?」



「そうでもしなければお前はここでも、外の世界でもどの道今後は生きていけやしないんだぞ、これだからスタークは。」


「何て罰当たりな世の中なんだ!このスターク様を働かせるような世界が無事に存続できるだなんて思うんじゃねえぞ!?」




……やれやれ、本当にどうしてここまで頑固になるんだろうか?


 他の住人たちからすれば、『それはスタークだから』で済む話なのだが……私はどうにも納得がいかない。


彼のことを誰よりも知っているからこそ、ここまで意固地になる理由が見当たらないんだ。



もっとこう……苦痛を避けて快楽を求めるために動く純粋な生き物のはずなんだがな……。




 そうそう、苦痛を与えるという意味ならば彼はここに監禁されてから、水と最低限の野草しか口に出来ていない。


飢えさせて拷問しているのだがなかなか上手く行かないな。



「ならもう少しこのままにしてやるしかないな。気が変わるまでお前はそのままだ。」


「はぁ!?こうなったら俺様の全てを持って世界をはk……、」






私は彼から離れて洞窟の入口まで戻ってきた。




「フジモン、今の話は聞こえていたな?」


「うん……かなりの極限状態に置かれていて、まだあれほど君を罵倒する元気があるなんて……。」




フジモンはしばし考えた末にこう続けた。



「彼は何も信じられないんじゃないかな?人間不信って言葉はあるけど、周りの人間だけじゃなくこの世界の全てを信じていない……。」



「世界の全てか……確かに彼は万物の事柄に対して憤慨しているな。」


「やはり彼には精神的な治療が必要だよ。このまま放ってなんかおけない、絶対に外の世界へ連れて行きたいところだね。」


「そのためにもプロトンやエリスが早くこの森から出る手筈を整えてくれれば良いのだがな。」





 余談だがプロトンがいなくなった翌朝、彼がいないことに対して私は『寝相が悪すぎて森の外まで行ってしまったのではないかな?』と適当に誤魔化しておいた。



 ちなみにフジモンは当然のごとく寝ていた傾斜から転がり落ちて、これまた少し寝相の悪いくじらんの下敷きになっていた。



そして何故か別のベッドで寝ていたはずのミーシャがくじらんの上に乗っかっていたな。



 その空いたベッドの上には、これまたどういうわけか寝袋に入っていたヤムチャが寝袋ごと移動しており、手足をその寝袋から突き破り大の字で寝ていた。




よしだくんは寝相が良かったが、シンタローもなかなかに動いてなかったな。


 この二人のそばなら寝ていても蹴り飛ばされる心配がなさそうだったから、あれからは二人の近くで眠るようにしているぞ。



 ……と言っても、ミーシャやヤムチャがわざわざ遠くから転がってくることもあるからあまり意味はないんだがな。





さて、本題に戻るとしよう。



 あれからプロトンの方は動きが一切無く森の住人たちも時々エリスの捜索はしていて、夜はみんなで寝ているがそれ以外は概ね通常運転と言ったところだ。



 駄菓子屋の売り物も最後にプロトンが補充してくれたのだろうな、みんな少しずつ大事に売り物を消費している。



ミーシャの方も左足はともかく、頭の方は少しずつ回復しているみたいだ。



 フジモンも点滴の繋げ方やリハビリの介助をくじらんに教えていて、着々とこの森を離れる準備が進んでいる。



私も洞窟に置いていた荷物を少しずつ処分しているところだ。


あの家具をどうするのか、残されていってもみんな迷惑だろうからな。




私たちはよしだくんの家に向けて歩き出した。




「今日のところは戻るとしようか。もう少ししたらミーシャ君の料理を手伝おうかな?」


「お前は最近ミーシャをよく手伝うが、料理にでもハマったのか?」



「まあ、楽しいっていうのもあるさ。でもね、みんなそれぞれ何かを頑張っている……ミーシャ君はリハビリ、エリス君やくじらん君は医者の勉強、それを見て名医の僕も感化されたってわけさ。」


「名医なのは関係あるのか?」


「もちろん、名医ならどんなことでも卒なくこなすことが求められるからね!料理程度出来なくて何が名医だと怒られてしまうよ!!」




……お前は名医の定義を何だと思っているんだ?


それはもう完全無欠な天才だぞ??




「お前が手伝いたいなら好きにすればいいと思うが……。そうなると私も何かに挑戦してもいいかもしれないな。」




残りの短い人生、外の世界に出たところで無意味に過ごすだけでも勿体無いからな。


せっかくなら有効活用したいところだ。



「いいじゃないか。ちなみに何か趣味とかやりたいことはあるのかい?」





趣味……やりたいこと……?



何なんだそれは……?





フジモンに言われて私は恐ろしい事実に気がついてしまった。



私は趣味なんて持ったことがたったの一度もなかった。



洞窟のテレビでアニメを見ることはあるが、それも趣味とはまた違う。



 常に私は『やらなければならないこと』に追われていて『やりたいこと』についてなど考えたこともなかった。





「……チッダールタ?急に立ち止まってどうしたんだい?」



気がつけばフジモンが私の顔を覗き込んでいた。


どうやらいつの間にか移動するのも止めていたらしい。




「いや……やらなければならないことに追われ続けた人生に意味はあるのかと思ってな。」



「急に何を言うんだい?やらなければならないことか……それは、何のためにしなければならなかったのかな?」




何のためか……?


日々を食い繋ぐだけでも必死だった時期もある。


だから一日中食べ物を探し回ったあの日々はただ『生きるため』にあったのだろう。




それから修業をしていた日々はどうだろうか?


直接の目的は神通力を養うため……。


ではその神通力は何のためにあった?



自分の人生を変えるためだったのか?


それは違うだろう……。




……………。


分からない。




「何がしたいかなんて、どうして生きてるかなんて……分からんよ。」


「チッダールタ!!」




!?


突然、フジモンに正面から肩を大きく揺さぶられた!



「人生に深い意味なんて追い求める必要はないんだよ!僕も目の前の患者を救い続けることが自分の人生の意味だと思っていた!だけど、違ったよ。どうしても助けられない患者もいるってことをここへ来て初めて知った。だとするなら僕はこれからも出来るだけ多くの人を救おうって思えたんだ。……彼らが教えてくれた。それは君も同じだよチッダールタ、もし誰かのためになることをしているのならそれだけで十分その人生に意味はあるんじゃないのかい?」




誰かのため……。


そうか、この神通力は大切なものを守るために使うことが出来る……。



 私がまたここへ戻ってきた意味だって、自分では気が付けなかったがそういうことでもあったのかもしれないな。




「ありがとうフジモン、どうやら私はすごく大切なことを忘れてしまいそうになっていたようだ。やれやれ、年というのは取りたくないものだ。」



「今のは物忘れって感じじゃなかったけど……でも、役に立てたのなら良かったよ、たった今、僕の人生にもまた一つ意味が増えたさ。」



私の人生は……彼の言う通り誰かのためにあったのかもしれないな。


だとしたら、同じように残りの人生も誰かに捧げるとしよう。






「ただいま、少し遅くなってしまったね。」


「おお、帰ってきたか。二人で腹ごなしの散歩ってのは最近の流行りなのか?」



「もうこんな時間……ご飯の準備はもう少し先でもいいかしら?」


「なら先に薪や材料は集会所に持っていくとするか。くじらん、一度カメラの方は放置でいいから手伝ってくれないか?」



「あっ、うん……って、ええっ!!!??」



シェルターの中で監視カメラの映像を見ていたくじらんが突然悲鳴を上げた!!



「おいおい、どうした!?」


「な、何かあちこちで変な大きい機械が映ってるよ!?」



くじらんにそう言われて私とミーシャ以外はすぐさまシェルターに飛び込んだ!




「こっ、これは!!」


「間違いねえ!あの時と同じ戦車だ!!」




戦車だと!?



それもドーベル将軍が乗ってきたものと同じ……。




「ど、どうするんだい!?」


「とりあえず、みんなシェルターの中に避難だ!!」



よしだくんがそう言うと、私とミーシャもシェルターの中に担ぎ込まれた。





監視カメラの映像からは至る場所で戦車が進んでいるのが確認出来た。



「これって……この森に向かってるんだよね?」


「間違いねえ、しかもこの数……まさかプロトンの言っていた『もっと大きな襲撃』なのか!?」



ヤムチャは明らかに焦りと絶望が入り混じった表情になっている。


カメラの位置的にこの森は既に戦車の大軍によって包囲されているのだろう。




そんな……ヤムチャが生きていると相手にバレてしまったのか?





『はーい、100エーカーの森の住人どもー。今から一分以内に全員出てきなさーい。』



突然、地上から拡声器を通したような声が響いてきた!



これは……コルクの声!?




「ど、どうするのよ!?あの軍勢相手に戦っても勝ち目なんてないわよ!?」


「お、大人しく投降したほうが身のためじゃないかい!?」



「そうかもしれねえ……だが、外に出て降参したとして俺たちが無事でいられる保証はどこにもねえんだぞ!?」



ヤムチャはそう言った、つまり外に出るつもりはないということだな。





『時間切れー!じゃあお前ら、片っ端から建物をふっ飛ばしちゃって!!』



一分どころか三十秒も経たないうちにコルクはまた叫んだ!




待て……何だって!?



そう考えられたのも一瞬だった。




ドーン!!


爆発音が立て続けに鳴り響く!!



「きゃーーああっ!!」



頑丈なはずのシェルターにまで振動が伝わってくる!!




「落ち着け!ここなら相当な衝撃が来ない限り安全だ!!」



シェルターを作ったよしだくんが冷静にそう呼びかけた!




ドカーン!!



今度はさっきまでと比べ物にならないくらいの衝撃が来て、みんなの体も宙を舞った!!


地面に叩きつけられた衝撃が腰に来るな……。



「うおおっ……!?こ、これは真上から聞こえたぞ!?」


「も、もしかしてすぐ上にあるよしだくんの家も爆撃されてるの!?」



だが幸いなことにシェルターが潰れそうな気配はまだ微塵もない。


とは言え、爆撃だってまだまだ止みそうにない……。



「今は耐えるしかないだろうな……。」



シンタローはまた衝撃で飛ばされないよう床にしがみついている。




「ねえ!どうなっているのよ!!何で急にこんな事が起きるの!?」



ミーシャは我慢ならずに怒鳴りだした!



「俺たちにも分からねえんだ……!本当にどうしてこんな突然!?」





『そろそろ止めてもいいよー!さすがにこれで全員死んだんじゃない?』



しばらくするとまたコルクの声が聞こえてきて爆撃は収まった。




『それじゃあ、念のため生き残りがいないか確かめようか。』





「一体地上はどうなってるんだ?」



「分からないが……生き残りを探しに来るということは私たちを皆殺しにするつもりだったのだろう。だとしたら今はここで大人しくしているべきだな。」



私はみんなにそう指示を出した。



「今は冷静に……そうだよね?」



フジモンも恐怖からかガタガタと震えているが、必死に平静を保とうとしている。


監視カメラは爆撃によって全部壊れてしまったようで地上の様子は何も分からない。




「どうして……どうしてなの……死にたくない……!」



この前は自ら命を絶とうとしていたミーシャも今はパニックになって、生きたいと願っている……。




頼む……こんなところで私たちの人生を終わりにしないでくれ……!





しばらくして上の方から複数人の足音が聞こえた。




「……こんなになるまでしなくても良かったんじゃないですかね?」



「俺も同感だよ……。どうしてこんな酷いことを!」



何かをガタガタと動かす音に混じってそんな会話が聞こえてくる。





「こんなことをしてお嬢は心が痛まないのかね?」


「さあ……昔っからああいうお人だ。さて、そろそろ報告をするから一旦静かに。……こちら第23部隊、北東の大きな家、生存者、死者ともにゼロ。」



『……了解、こっちに戻ってきて。』



最後には音声を通したコルクの声も小さいながら聞こえてきた。




「……行ったのか?」



最初に口を開いたのはよしだくんだった。



「そうみてえだな、だが念のためもう少しここで様子を見ておくぞ。」



そうしてみんなで息を潜めていると、再びコルクの声が聞こえてきた。




『ねえ、生存者どころか死者すらどこにもいないなんておかしいよね?もしかしたら、森の外に逃げてるのかもよ?第32部隊までは森の外を徹底的に捜索!見つけ次第、戦車の主砲で消し炭にしなさい!!33部隊からはもう一度森の中をくまなく探して!!必要なら戦車の燃料を使って瓦礫に再着火させなさい!全部灰にして探しやすくしてもいいから!』




とてつもなく物騒な発言が聞こえてきた……!



「安心しろ……火災くらいじゃこのシェルターは壊れないさ。」


「だけどこれじゃあいつまで経っても出られないじゃないのかい?」



「そうだけど、出てもきっと死んじゃうよ……。」



「本来なら食料と水をここに用意しておくべきだったな。だが、それを悔やんでも仕方あるまい。可能な限りはここで粘った方がいいだろうな。」



私がそう言うとみんな大人しくなった。




どれほどの時間が経ったのか分からないが、再び地上から足音が聞こえてきた。


続いて何かが燃える音もな……。




「少し暑い……。やっぱり家の瓦礫が燃やされているんだろうか?」


「それも森の建物全部だろうな……。ここまで徹底的にやるなんて……!」


「シンタロー、あまり感情的になるな。冷静になれや!」



少し強めにヤムチャがシンタローを諭した。



「そうだな……こんな時だからこそ、落ち着かないとな。」




『ねえ、もっと燃料使ってもいいんだよ!?そんなチマチマとやらないでくれる!?』



コルクの怒声が聞こえてきた。


その声に応じるかのように火の勢いが強くなっているのを感じるな……。




「でもどうしてここまで執拗に俺たちのことを殺そうとするのかな……?」


「本当だよ……僕たちが一体何をしたって言うんだい!?」


「あのコルクって奴を俺は絶対に捕まえてその理由を吐かせてやる……!」



ヤムチャはノコギリを手に取った。



「おい!まさか外に行くんじゃないだろうな!?」


「やっぱり止めてくれるか……。」


「ヤムチャ、相手にも必ず隙が生まれるはずだ。今はチャンスを待ってじっとしているべきだとみんな思っているぞ。」



「分かったよ……無駄死にするような真似はしねえ。」




ヤムチャはシェルターの壁にもたれかかった。




また程なくして、火の手が収まってきたらしい。


そして季節通りに肌寒くなってきた。





「……こちら第51部隊、北東の大きな家、やはり生存者も死者もいません。」



『それだけやっていないからそこには本当にいないみたいだね。じゃあ、君たちも森の外を捜索してくれる?』




「了解……はぁ、普通ここまでするか?」


「さすがにおかしいですよね?全員抹殺するほどのことではないと思うのですが……。」


『モタモタしてないで早くして!』


「ひっ!?は、はい!!」




地上からしていた話し声と足音は消えていった……。




「何だか……コルク以外はあまり乗り気じゃないみたいだね。」


「うむ、部隊の意思とは関係なく否が応でもそうさせるコルクの権力は相当なものなのだろうな。」



「だが……あの部隊の人間なら俺たちの言うことにも耳を傾けてくれるんじゃねえか?」


「そんな……信用出来ないわよ!!」





『もうこの森に用はない!!全員外の捜索にあたれー!!』




コルクの怒声が再び響いてきた……。




「もしかして……今がここから出るチャンスなんじゃない?」


「確かに敵が全員外に行ったのなら森の中はがら空きだ!」


「一応、少しだけ待ってから外の様子を確認してみるか。」


「そうね……地上はどうなってしまったのかしら。」




恐らく、目を塞ぎたくなるような光景が広がっているだろう。



だがきっと、彼らならそれも受け入れて前に進んでくれるはずだ。



もう私にはそれを見守ることしか出来ないのだろうな。






みんなで600秒数えてから地上に出ることにした。



「……598,599,600。みんな、覚悟は出来たか?」


「行きましょう、どれだけ悲惨なことになっていたとしても……見たものが事実よね。」


「その事実を俺たちは受け入れる、そう決めたよね?」


「ああ、どれだけ困難な状況でも決して乗り越えて見せる。」




「じゃあ、シェルターの入り口を開けるぞ!!……ゲホッ!?すげえ灰の量だ!!」



ヤムチャがシェルターの入り口を開けると大量の灰が中に流れ込んできて視界が真っ白になる!



「ゴホッゴホッ……だが、地上に出れそうだな。よし……。」



ヤムチャは地上の世界に顔を出した。



「お前ら……本当に覚悟は出来たんだな。」



上から、地上に出たヤムチャの震え声が聞こえてきた。



「もう……出来てるさ。……ぐっ!」



シンタローも地上に出ると表情が険しくなった。




続いて私たち五人も順番に地上へと出てきた。





……………。





何もない。





真っ赤な空から降ってくるのは雪ではなく灰だ。



 ついさっきまであったはずの彼らの家や集会所、駄菓子屋さえも跡形すら消えて、瓦礫までもほぼ無くなっていた。



森の周囲の密林は360度どこを見渡しても燃えている。



足元にはくるぶしが埋まるくらいまで灰が積もっている。





 100エーカーの森は……皆が確かに生きてきたこの小さいながらも美しい森は……灰に覆われた地獄と化してしまった。




「これは……キヌタニの言う通り本当に焦土になっちゃったの……?」





未来のキヌタニが教えてくれたこと……。


この森が焦土になってしまうという悲しい未来。




それが今、現実になってしまった……。

 今回のお話で分かることは、100エーカーの森の建造物に鉄筋は使われていないと言うことです。

あれはさすがに灰には出来ないので……。


 森の跡地を衛星写真とかで見たら明らかに不自然な白い空間があって何だこれ?となりそうです。

でもさすがに小さすぎてスルーでしょうか……。


 もう一つ確実なことは、前回プロトンが書いた手紙も駄菓子屋と共に真っ白な灰になってしまったということです。

でもこれだって彼らの運命ですしプロトンもこれでいいと思っていることでしょう。(?)


 さて、何も無くなってしまった大地で彼らはこれからどう生きていくのか……読者の皆さんならどうしますか?


 まずは某恐竜ゲームのようにダメージを受けながら素手で木を殴って木材を手に入れるところからでしょうか?

その肝心な木もないんですが。


 明らかに詰んでしまった森の住人たち、次回は森だった場所の中心で色々な人物が叫びます。

読者の皆さんも太平洋の中心で何かを叫んでみてください!!

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