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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
137/162

5-23 プロトンの愉快な一日 その1

ーー前回のあらすじーー


 駄菓子屋の地下倉庫から続くトンネルをしばらく進んだプロトンたちは、謎の横穴と差出人不明の手紙を発見した。


 その手紙を読んだチッダールタとプロトンにはどこか思い当たる節があるようで……。

彼らは手紙を元あった場所に戻しておくことにした。


 次に横穴を進んでいくと、一見行き止まりになっているかのように見えた壁は後から作られたもので何と共同墓地まで繋がっていた!!


 疑問も一部解消されたところで彼らは引き返し、フジモンとチッダールタはスタークと大量の薬を抱えて住人たちのもとへ帰って行った。


 残されたプロトンは住人たちに会いたいという気持ちと会ってはいけないという理性が交錯する中で、明日は住人たちと過ごす日にして早めに踏ん切りをつけよう……そう決心したのだった。



 『隠された通路』などと聞くと好奇心がくすぐられます。

何があるか分からないからワクワクするのですよね。


 時間が許すのであれば旅行は一切の下調べをせず、スマホも持たないで行ってみたいものです。

……それは旅行ではなく冒険なのかもしれませんが。


 それはデジタルデトックスというものでしょうか?

スマホなしで生活するのは大変でしょうね。


 読者の皆さんはスマホなしで生活出来そうですか?

100エーカーの森にもスマホはありません、森でのご自身の生活を少し想像してみてください……。

……不安なことが減ったからか、昨日と今日はよく眠れたな。



まだ朝の七時だが頭がスッキリしている。





今日は一日中森の住人たちと過ごす……。


すごく楽しみだ。


何せやりたいことがたくさんあるんだから。




まずは……得物の手入れをするとしよう。



俺は売り物の砥石でハルバードの刃を磨いた。



……と言っても別に誰かと戦うわけじゃない。




「後は一応、ライフルも……いや、それは興冷めだな。」



俺はハルバートと大量のアイスを持って駄菓子屋を出発した。





みんなが今寝泊まりしているのはよしだくんの家だと昨日教えてもらった。


研究が不自由なく出来るよう、広めの家にしてあるんだってな。



俺は家の中に足を踏み入れた。




「おはよう……流石にみんなまだ寝てるか?」



 ドアを開けて中を見渡すと、シンタローとよしだくん、チッダールタは起きていて、くじらんは寝起きのようだ。


フジモン、ミーシャ、ヤムチャはまだ寝ている。




「随分と朝が早いな。……その袋の中身は何だ?」



よしだくんは俺が持っていた袋が気になったようだ。



「これはお前たちの好物だぞ……ほら!」




俺はヤムチャの枕元にその袋を置いた。



「こんなにたくさん!……いや、助かるよ。みんなアイスに飢えていた頃だったからな。」


「アイスだって……!?どこから持ってきたんだよ!」



『アイス』という単語に反応したシンタローもこちらに駆け寄ってきた。



「種類も偏ってない……やっぱりお前は分かってるな。」




アイス一つでここまで信用を得られるなんて安いものだ。



「んあ……何だかアイスの匂いがするぞ……これは幻か?」



ヤムチャはアイスの匂いで目が覚めたらしい……そんなものが存在するんだろうか?


恐らく彼以外は誰も『アイスの匂い』なんて感じ取れていないだろう。



「幻なんかじゃない、お前の求めてるアイスは目の前にあるぞ?」




「おぅ……?冷てぇっ!!」



ヤムチャが寝返りを打って彼の顔面がアイスの袋に埋め込まれた。




「こ、これは……アイスじゃねえか……って、プロトン!?」



俺の顔を見てヤムチャは完全に目が覚めたらしい。



「な、何でてめえがここにいやがるんだ!?」


「まあ、差し入れでもしてやろうかと思ってな……。それよりどうだヤムチャ。」




俺は背中に背負っていたハルバードを構えた!


と、起きていた全員が驚きの表情になった。




「えっ……。えっ!?プロトン!!誰を殺る気なの!?」



まだ半分くらい寝ていたくじらんも飛び起きて訳の分からないことを言い出した!




「あっ……ち、違うんだ。これはお誘いでな。」


「こ、殺し合いのお誘い!?」




くじらん……そんなわけないだろ。


……とは言ってもこの前までは敵同士だったわけだし、そう思われるのも無理はないのか。




「いやいや、狩りのお誘いだよ。お前とは一度行ってみたかったんだ。」


「狩りだあ?そりゃあ俺も行くけどよ……どうした突然??」



「久々にお前たちと会って何がしたいか考えていたんだ。そこで一つ、思いついたのはお前と狩った肉をみんなで食べることだったんだよ。」



「なるほどな……だがよ、俺は外に出て大丈夫なのか?森の外の人間に悟られたらマズいんじゃなかったのかよ?」



「一昨日の夜にコルクが来ただろ?あの時にお前と会わなかったから彼女はもうさほどそのことを警戒してないようだ。だから今なら自由に動いても問題ない。」



「そうなのか?俺もしばらく狩りなんてしてねえしな……。なら、ちょっくら仕留めてくるか!」



ヤムチャは立ち上がって二本のノコギリを準備した。





「待って!俺も行くよ!!」



突然、くじらんが名乗りを上げた。



「くじらん?お前は狩りに行ったことなんてあったか?」



「ないけど……俺はずっと引きこもってたから今思うようなやりたいことがずっと出来てないんだ。狩りも一度してみたかったんだよ、それに……、」



言うべきか少し迷ったような素振りを見せながら彼は続けた。



「森の外にはエリスがいるかもしれないんでしょ?やっぱり気になるから探しに行きたいんだ。」



「そうだな、気がかりなのは間違いねえがきっと大丈夫だと思って考えないようにしてたんだ……。いい機会だな、あいつのことを狩りがてら探してやろうぜ。」




そうか、エリスは彼らに黙ったままいなくなったのか。


みんなから気にかけられるほどには、彼女もここに溶け込んでいたんだな……。








「森の外って何だかワクワクするよね……それで、狩りってどうすればいいの?」



狩りをすべく密林にやって来た俺たちは、野生動物を探していた。



「少し遠くに鹿がいるな。ゆっくりと出来る限り距離を詰めるぞ。」



俺たちから100mほど離れたところに一頭の鹿がいた。


まさか見ず知らずの人間から命を狙われているとは知らないだろうな……。




姿勢を低くしてゆっくりと近づいていく……。



「よし……ここまで来たら一気に距離を詰めるぞ。うおおっ!!!!」




鹿との距離は30m、ヤムチャは三秒も経たずに距離を縮めた。



 強大な殺気を感じて鹿が逃走する一歩目を踏み出した瞬間、ヤムチャの振るったノコギリによって地面と水平の二枚おろしになった!!





「ガハハハ!!これが狩りだぜ!!」



ヤムチャはまだ生きているのかもしれない鹿の頭側の部分を抱えて俺たちのところに戻ってきた。




「思ってたよりすごく手荒なんだけど……真似出来るかな?」



くじらんは狩りというものが思ってたのと違ったのか困惑している。


もちろん、俺も同じだ……。



こんなのヤムチャにしか出来ないだろ……!!



「安心しろ、意外と簡単なんだぜ?」


「そりゃあ爆走して突っ走るだけだが……くじらん、試しにやってみるか?」



「えっ?う、うん……?」





俺たちはまた別の鹿を見つけると、同じようにゆっくりと近づいた。



「よし、ここからならいけるだろ。やってみやがれ!」



小声でヤムチャがそう言うとくじらんは頷いて茂みから飛び出した!



「うああああっ!!!……って、全然追いつけないよ!!」



 くじらんが10mほどまで距離を詰めたところで鹿はこちらに気がつき、すぐさまどこかへ走り去ってしまった……。



「遅いな!もっと魂込めて走るんだぞ!!」


「いや!ヤムチャの速さが異次元なんだよ!!」



俺もここで口を挟ませてもらった。



「せっかく三人で来てるんだ、ここは協力しようじゃねえか。」


「協力して……ってどうすんだよ?三人で走っても足の速さは三倍にならねえぞ?」



「おいおい、正面から立ち向かうだけが狩りじゃねえんだぞ?」



肉食動物だって集団で狩りをすることもあるんだ。


今回はそれに倣おうじゃないか。






俺たちはまた鹿を見つけると同じように距離を詰めた。



「よし、俺とくじらんは奥に回り込むぞ。」


「うん、分かった。」




俺は鹿の右奥へ、くじらんは左奥へそれぞれ回り込んだ。




そんなことは露知らず、鹿は呑気なもので地面に落ちている木の実を食べていた。




じわじわと全員で三方向から間合いを詰めていく。



そしてふと、ヤムチャの気配に気がついたらしく、俺の方に走り込んできた!



「かかったな!!」



俺は茂みから飛び出してハルバードを振りかぶった!


だが、思ったより早く鹿は方向転換して、俺のハルバードは空を切ってしまった。



そして鹿はゆっくりと前進していたくじらんの正面に行った!




「今だっ、やっちまえ!!」


「いけええええっ!!」



ゴツリ!と鈍い音が響いた!


突然現れたくじらんが振りかざした園芸用スコップは鹿の脳天を直撃して、頭部を叩き潰した!!


そして鹿はそのまま地面に倒れた。




「や、やった……!!」



くじらんは動かなくなった鹿を見て歓喜した。




「なあ、少し面倒くさかったぞ。……だが、こういう狩りも悪くねえ。まさかくじらんと一緒に来れるとは思ってなかったしな。」


「こうやってみんなで協力するの、すごく楽しいよ!まだ続けるよね?」



「ああ、次は俺も止めを刺したいな。」



やっぱり、ライフルなんて持ってこなくて正解だったな。




ところで……どうして今日のくじらんはスコップなんかを武器にしてるんだ?

 作者も最後のプロトンと同様の疑問を持ちました。

彼は襲撃の際にくーちゃんの荷物にあった剣を使っていたはず……。

それが結局スコップに逆戻りしていました。


 1.5章でもくじらんは『どの武器もしっくり来なくて……』などと言っていましたから、武器らしい武器は扱いに困るのでしょう……。

使い慣れない優れ物を使って力に溺れるくらいならきっと彼は素手の方が強いはず。


 運動音痴でないのに球技が苦手な方はくじらんと似たようなところがあるでしょう。

己が見一つで戦う方が向いているかもしれません。


 モン〇ンでも武器を装備しないで素手でモンスターと戦うとかあれば面白いと思うのですが……昔はキックとかパンチで攻撃が出来ました、今でも出来るのかな?


もしヤムチャと言うモンスターと素手で戦いたい方がいらっしゃれば挑戦をお待ちしております!

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