表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
135/162

5-21 コルク(狂人)とスターク(狂人)

ーー前回のあらすじーー


 シンタローはミーシャと最期に会って話すべく、チッダールタとジョージの力を借りてミーシャの精神内部に飛び込んだ!


 飛び込んだ先で待ち構えていたものはミーシャの記憶だった。

彼女が十数年に渡って見たものが次々と現れては過ぎ去っていった……。


 その終わりで彼女は自らの墓を作って待っていた。

シンタローは必死に呼び止めたが、彼女はそれを聞き入れるどころか彼まで巻き添えにして人生を終わらせようとしたのだ!!


 絶体絶命だった瞬間、背後からもう一人のミーシャが墓から飛び出てもう一人の彼女を倒し、シンタローは一命を取り留めた……。


 彼女はもう一つの人格に負かされそうになっており、それを彼が救ったのだと話した。

かくして、シンタローはミーシャを連れ帰ることに成功したのだった……。


 冷静に考えて、自分の精神面に他人が入って来るなんてかなり嫌ですよね……。

自分の家に見知らぬ人がいると考えたらこれは大変なことです。


 自分の精神にもしっかりとセキュリティを施さないとだめですよね!

パスワードもなるべく分からなそうなものを設定しましょう!


 読者の皆さんはパスワードを使いまわしてしまう方ですか?

今じゃ端末にどんな難しいパスワードも記憶させることが出来るので、覚えやすさはあまり重要でもなくなりましたね。


 情報の暗記を何でもかんでも機械頼りにしていると、そのうち個人情報がとっさに出て来なくなるかも……(←自分の生年月日が出てこないアホ作者です)。


 読者の皆さんもせめて自分のフルネームくらいは機械に頼らず、自身の脳ミソに刻み込んでおくことをお勧めします……。

全く……これは重労働だ。



夜になり、俺はエリスと二人で地下倉庫にある冷蔵の食料品をまとめていた。




「本当に人使いが荒いわね……。せめて、手伝ってくれてもいいのに。」


「あいつは結局そういう奴だ。それは今後何が起きても変わらないだろうな……。」



と、突然エレベータが動いて下に降りてきた!



「薬も遂に底を尽きてきた……。そしてミーシャ君はまだまだ治療が必要な状態が続くだろう。」


「つまり、どうしようもなくなると?」


「そうだね……それに僕たちはもう時期ここから居なくなる。その先は彼ら自身で頑張ってもらうしかないんだ。」



フジモンとチッダールタが何やら深刻そうな話をしながら降りてきた。



ちなみにスタークも彼らの横で拘束されたまま浮かされている。



「おいおい!!突然来たからびっくりしたぞ!!お前たちがここにいるところをコルクが見たらどうなっていたことか……。」



「そうか、お前の仲間には秘密だったか。これは済まなかったな。」


「それで、何の用だ?」


「今日は今後の予定を聞きに来たんだよ。いつ頃、僕たちはここから出られるんだい?」



「確かにそれは気になるよな。申し訳ないがまだ話が通せていないんだ。また今夜にも彼女が来るだろうから、その時にでも話してみることにするよ。」



「スタークの方はどうなの?少しは心変わりしたのかしら?」


「そのことなのだが、もう少し荒療治が必要らしくてな。まだ時間がかかるかもしれない。」



「そして僕たちもすぐにここを去る訳にはいかないね。ミーシャ君も目が覚めたとは言え、まだ僕の治療が必要そうだ。」



「目が覚めた!?本当なのか!」


「うん、それはとても喜ばしいことだ。だけど……かなり心身ともに不調を訴えていてね。もう手持ちの薬だけじゃ対応にも限界があるんだ。」




ミーシャが意識を取り戻した……!


今すぐにでも会いに行きたい……。



だがエリスにも言われた通り、軽率に会うことは良くない。


そして今の俺に出来ることは……。



「そうか……薬ならこの倉庫から持って行ってくれればいいが、代えの医者を探すのは……って!」




列車の音がする!!



「マズイわよ!コルクが来る!!」


「えっ!?見つかっちゃうじゃないか!!ど、どうするんだい!!」


「落ち着くんだフジモン、私の術で姿を消すぞ……。」




チッダールタが手を合わせると、二人の姿がみるみるうちに消えていった……。




「えっ!?ぼ、僕がいないぞ!?どうなっているんだい!!」


「フジモン、落ち着け。そしてゾーンに入れ、透明になっているだけでお前の存在は消えていないぞ。だが……見つからないために存在も消えたと思った方が良さそうだな。」



「わ、分かったよ……ゾーンに入るのは言われて出来るものじゃないんだけどね?」



二人は倉庫の隅で気配を消した。




さて……まあ、誤魔化せはするだろうな。



「危ないわね……こんなのがバレたら全員頭に銃弾を叩き込まれるわよ……!」



エリスは二人がいるであろう方向に向かって言う。






間もなくして列車が倉庫に到着した。



「さてさて、荷物の整理はどれくらい進んだのかな?」



コルクがいつものように上から目線な口調で言いながら降りてきた。




「この倉庫、思ったよりも食料品の占めている割合が多いんだな……と言うわけでまだまだたくさん残ってるぞ。」



俺は売り物をパンパンに詰めたダンボールの山を指差した。



「まあ……ここの住人は駄菓子屋の売り物ばかり食べてたみたいだからね。列車にもたくさんは載せられないし今日のところはそれで十分でしょ。……それで、君の足元に落ちてるそれは何なの?」



俺はコルクに指を差された自分の足元を見た。





俺が下を向くと……拘束されてコルクのことをギロリと睨みつけているスタークが転がっていた!!




なんてこった!!


チッダールタの奴、スタークの姿を消し忘れたな!?


こんなの言い訳出来ないぞ!!




「んーー……理由を聞きたいところだけど、やっぱいいや。」



コルクは彼の頭にピストルの照準を合わせた!



「その目つき、すごく不快だね。そう、不快になったから死んでもらいたなーって。」




何だよ、言及すらしないのか。



……だが、本当に不快になる。


何がそこまで人を不快にさせるのかはよく分からないが。



「……………。」



スタークは何かを訴えたいような表情で口を開こうとしているが何故かさっきから何も喋らない。



いや、喋りたいのに喋れない……その方が正確な気がする。




 いずれにしろ、彼が裏切り者ですらないと分かった時点で、俺からしても既に利用できない役立たずのようなものだろう。



だったら……彼が死んでも構わない。





「何を考えてるの!?」



少しだけ硬直していたエリスが正気に戻った……とは言えないだろうが、コルクを突き飛ばした!



「えっ……痛っ……!!」



ふっ飛ばされたコルクの方もちょっとだけ呆然としてから痛覚を感じたようだ。




「分かってるわよ……あなたは自分が気に食わない人間を躊躇うことなく即座に消そうとする。だとしても彼だけは消させないわ!!!」



エリスはスタークの前に両腕を横に広げて立ち塞がった!



「……ねえ、何のつもり?だったら、君が代わりに死んでくれるわけ?」



コルクは立ち上がって呆れたようにピストルの照準をエリスの脳天に合わせた。



「っ!?そ、それは……。」


「そういうわけにはいかないでしょ?だから、大人しく彼が死ぬところを見てればいいのよ。」



コルクはニタリと笑った。


スタークの側に立つエリスの擁護などしないが、こいつも相当性格が悪い……。



「い、嫌だっ!」



エリスは不意を突いてコルクのピストルを持っている右手を掴み上げた!!



「こ、今度は何なの!?」



バン!という音が響いて、ピストルから放たれた弾丸が冷蔵倉庫のモニターにめり込んだ!


やっぱり実弾を詰めているのか!!




「もう覚悟は決まってるの!!私は彼を守るって!」


「君は馬鹿なの!?……いや、大馬鹿だねっ!!」



コルクは左手でヱリスの胸ぐらを掴むと彼女を床に叩きつけた!!



「ぐはっ!?」



「はぁはぁ……まさかこんな手荒に反抗してくるとは思わなかったよ。でも、気が変わった。」



コルクはスタークの前でしゃがみこんだ。



「エリスがこれほどまでに拘る君のことを知りたくなった……ねえ、君は一体何者なの?」




このコルクの質問……俺には引っかかるところがある。


昨晩彼女はスタークのことを知っていると、確かにそう言っていたはず……。


なのに、この質問をするのはどういうことだろうか?




「…………。」



それでもスタークは何も話さない、いや話せないのだろうか。



「ドーベル将軍は随分と君に関心があるようだった。そして、君は確かに興味深い。」



「ううっ……!興味深いって……コルクは彼のことを、知っているわけ?」


「ええ、彼がこの森にいることは知っていたよ。だけどね……。」



コルクは実験体のモルモットを見るような目つきになった。



「君はどうしてまだ生きているの?」




まだ生きている……?


質問の意味がよく分からない……。




「……ふふっ、君を見てると本当に不快な気持ちになるわ。」



彼女はむしろ安心しているような口調でそう言った。



「コルク……お前が何を言いたいのか、俺たちは全然理解出来てないぞ?」


「エリスはともかく、プロトンには分かるんじゃない?」



俺は……か?


更に彼女は続けた。



「この森の住人たちは本当に恐ろしいわ……とても私たちと同じ人間とは思えない。君はこんな場所で一年半以上も生き延びた。これは驚くべきことよ!」


「だからって、何も彼らを狂人みたいに言わなくても……!」


「いえ、狂人でしょうよ。……今回の襲撃で私たちの仲間がどれだけ犠牲になったと思ってるの?」




その言い分は確かに正しいのかもしれない。


あれだけの大人数で押し寄せたら普通は命を守るために投降するだろう。



だが彼らはそれをしなかった。


それどころか、こちらの部隊を壊滅させてしまったのだから。



だが、彼らに何か落ち度があるわけでもないだろ?



「こちらの犠牲の大きさは確かに甚大だ。だが、彼らが悪いって言うのか?」


「それは君が生き残ったから言えることよ。亡くなった仲間たちからすれば、きっと森の住人たちが憎くて仕方ないはず……。」




それをお前が言うのか……?


これほど人命を軽視しているお前が……?




「まあ、それは置いといてさ。どうやってこんな場所で生き延びたのか気になるってわけ。キヌタニからも少し話は聞いていたけど、やっぱり本人の口から聞きたいよね。」



「…………。」



やはり何も喋らないスタークはずっと俺たちを代わりばんこに睨みつけている。


いつもの彼ならここまでボロボロに言われれば怒鳴り返してくるはず……。



それをしないということは……。




『正解だ、私が黙らせているんだ。余計なことを口走られては困るのでな。』




!!!!


脳に何かが響いてきた!!



……なるほどチッダールタの神通力か。


だが、彼が黙らせていると言われて納得がいった。



 それに、フジモンやチッダールタがここにいることをバラされでもしたら俺たちは全員ここまでだしな……。



「実際はどうなの?みんな君のことが嫌いだったようだけど、殺されたりしなかったわけ?」


「…………。」




「……それは分かっている範囲で私が代わりに答えるわ。彼はみんなと距離を置いて、みんなも彼と関わろうとはしなかった。出来るだけお互いに干渉せず生活しようとしていたわ。」



「でもこれだけ小さな森じゃそれも難しいんじゃない?偶然出会ってしまうこともあるでしょ?」



「それこそ殺すことすら嫌がられていたわよ。何なら彼を視界に入れるだけでみんな不快感を感じていたようだしね。」



「へぇー……ドーベル将軍は一体どういうつもりだったのかしらね?『きっとこの森にいい影響を与える』とか言って君をここに住まわせた……。」



結局コルクも彼のことを全然知らないってことか?


そしてスタークはドーベル将軍の知り合いということになるのか……?




「おい!結局こいつは何者なんだ!?」



いい加減、我慢の限界だ!



 異次元レベルの自己中心的な態度に、勝手に塞がる傷……こんな奴をここに長い間放置するなんてどういうつもりだったんだ!?



「……やっぱりプロトンも気になる?でもさ、ドーベル将軍は記憶喪失だから聞こうにもそれが出来ないんだよねー。」





記憶喪失……それどころじゃないんだよ。


彼はもう……これは打ち明けておこう。




「コルク……彼は、ドーベル将軍は……今日自ら命を絶った。記憶が戻って自分のしてしまったことに耐えられなくなったんだ。」



「ふーん……そっか。すごく呆気ないし、簡単に予想出来ちゃうような結末だね。」



彼女は面白くなさそうに言った。


確かに彼は本来、根は優しい人間のはずだ。


だとしたら現実を受け止めきれなくなるのも無理はないだろう。




だが、これとそれでは話が違う!




「出会った時から、その程度の人間だろうとは思っていたけど……つまんないの。」




他人の命を自らの娯楽のように……!!




「ね、ねえ……スタークのこともそうだし、それとは別であなたに頼みたいことがあるの。だから場所を変えて……出来れば森の外で、じっくり話し合えないかしら?」



爆発寸前だった俺を見かねたのかエリスが話題を懸命に逸らした。



「んー?何だろう?でもこれからしばらくはここの撤去作業くらいしかやることがなくて私も暇になりそうだし、いいんじゃない?」




まるで他人事みたいな返答をしてきたな……。



「だったら今夜にでもこの列車でコルクと一緒に出発したらどうだ?」


「それがいいかもね、じゃあどんどん列車に荷物を積み込んでよ。」



もうスタークには興味を失くしたかのようにコルクは段ボール箱の山を指差した。






で、結局彼女は荷物の搬入を一切手伝ってくれなかった……。



「……よしよし、ご苦労さま。それじゃ、行こっか。」



コルクはダンボールの上に座って列車を誰かが動かしてくれるのを待っている。




「……わ、私が運転するのね。ほとんどやったことないんだけど平気かしら?」


「真っ直ぐなルートだから爆走しても別に危険じゃないし、ちょっとくらい止まる位置がずれても問題ないから適当にやればいいのよ。」



「うぇ……冗談きついって……!」



エリスは運転室に入ると震えた手でマスコンを握った。



本当に平気だろうか……?


列車って意外と止まらないんだよな……。


だがコルクはきっと毎回とんでもないスピードを出しているのだろう……。




「それじゃ、君も頃合いを見て向こうに戻ったりしてもいいからね。」


「了解だ。俺も早く帰りたいからな。」




ゆっくりと列車が動き出した。



「エリス、ビビってないでもっと加速して。」



「わ、分かったわ……急かさないでよ……。」



そんな会話をしながら二人は去っていった。






「ふう……生きた心地がしないね。……も、もしかして本当に存在が消えてたりしないかい!?」


「……お前は何を言ってるんだ。それを確かめたいなら私が殴ってやろうか?」



「それは……冗談で言ってるのかい?」



フジモンとチッダールタの姿が少しずつ見えるようになってきた。




「まあ、最悪の自体は免れたが……。」



俺は視線を足元のスタークに移した。



「エリスと言い、お前たちと言い結局こいつをどうする気なんだ?」



「私としてもこいつは一緒に連れて行くつもりだ。外の世界で馬鹿げた真似をしないように見張っておかなくてはな。」



「僕も彼のことを放ってはおけないかな。体の傷を治すだけが医者じゃない。スターク君には大きな心の傷がある……。それを僕は感じ取っているんだ。」




「おいおい……二人してこいつの面倒を見るって言うのか?」



それは何の特もしないと思えてならないんだが……。



「かなり大変だぞ……数日間しか一緒に過ごしてないがもう彼と一緒にいるのはごめんだ。」



「それでも僕はみんなに教えてもらったんだ。僕にはまだ救える患者がいる。ならば、目の前の患者と全力で向き合うだけさ。それに……僕はもう外科医としては終わりかもしれないんだ。」


「フジモン……。それでも前を向いてられるお前はすごいと思うぞ。」


「何かあったのか?」



「僕は……助けられるはずだった命を見捨てた。その罪を自分の命をもって償おうとした。でも、それが過ちだと教えてもらえた頃には遅かったんだ……。」



フジモンは自分の首についた痛々しい傷跡を見せてきた。




これは……首でも吊ろうとしたのか!?



「……色々あったんだろう、深くは聞かないことにする。だが、彼を説得する術はあるのか?」


「よもやここまで頑固だとは私も思わなかったんだ。一体何がそうさせたんだかな……。」




「……せえよ。」



スタークが小声で何かを呟いた。


チッダールタはそっちの神通力も一緒に解除したのかもな。




「スターク君?どこか痛いのかい?」




「うるせえよ!!てめえら本当に何なんだ!?心の傷だぁ!?俺様が傷つくことなんてあるわけねえだろうが!!大体、この俺様に関わろうなんて生意気なんだ!気安く触るんじゃねえ!!」



俺たちを代わる代わる睨みつけながら彼はまくし立てた。


何を適当なことを……と、思ったのは一瞬だった。




なぜこの森に居るのかは分からないが、確かに今も一方的に拘束されて、言われたい放題だ。


確かに怒るのは無理もないだろう。



「……まあ、癪に障ったこともあったんだろうな。しかし、お前は本当にどこからどうやってこの森に来たんだ?ここに留まり続ける理由も見当たらない……。コルクは知っているようだが、教えてはくれなさそうだしな。」



「ああ!?コルクなんて奴は知らねえな!一方的に知り合いを名乗るなんてとんだ身の程知らずだ!殺してやるしかねえな!」



コルクのことを知らないというのは本当だろうな。


だが以前尋問した時に質問した、どうやって来たのかを知らないというのは流石に嘘だろう。



 彼もコルクも教えてくれないとなれば、恐らくドーベル隊長しかそれを知る者はいないが……彼はもういない。



「プロトン、こいつ自身もどうやってここへ来たのかは本当に知らないようなんだ。だからそこについては聞かないでやってくれないか?」



「そうなのか?だとしたら尋問した時のあの答えも嘘じゃなかったのか……疑って済まなかった。」


「謝って済む問題か!?この俺様を疑った罪は一生消えねえぞ!!つかクソジジイ!!てめえがそのことを知ってるのはおかしいだろ!!どうやってその情報を手に入れやがった!?」



「……あれ、チッダールタ?君はそのことについて以前彼を尋問したんじゃなかったのかい?その結果、スターク君が何も覚えてなかったというのは聞いたけど……。」



「こんなスターク程度ならそんな面倒なことをせずとも分かるんだ。何にせよ、この件に関しては私を信用してくれ。」



神通力が使えるチッダールタのことだ。


どうにかして……心を読んだとかか?



いずれにせよ、スタークはここまでどうやって来たか本当に覚えてないってことか……。




「この際だから言わせてもらうが、私はお前がこの森から出た方が幸せになれると思ってここまでしつこく説得しているんだ、それは覚えておけ。」


「てめえの考えなんて知らねえな!俺様は自分の居たい場所で自分のやりたいことをしている時が一番幸せなんだよ!!」



「じゃあ、そのやりたいことをするためにはどうするべきなのかをその知能が足りない頭でせいぜい考えるといい、これだからスタークは。」


「ああ!?俺様の選択が間違ってるわけねe……、」


「それはそうと、この先に何かあるような気がするんだ。二人とも悪いがついて来てくれないか?」




チッダールタは突然、線路の続くトンネルの方に浮遊して移動を始めた。



「何かって……それは一体何なんだい?」


「それを確かめるために行くんだ。お前は何でもかんでも即座に答えを求めるんじゃない。」


「おい!てめえら俺様を無視するなんて耳が聞こえなくなりやがったのか!?」




フジモンもチッダールタについていき、スタークは二人に怒鳴り散らした。



「………。」



俺は床に転がされているそんな彼を見た。


彼の心は他人に対する拒絶と軽蔑に満たされている。



だが、そうなってしまったのにはちゃんとした理由があるはずだ。


ヤムチャたちも到底普通の人間とは言えないが、彼と森の住人たちはそこが違う。




……可哀想にな。



いつの間にか彼に対する腹立たしさは消えていた。



「お前は少しここでチッダールタに言われた意味を考えた方がいいな。」


「ふざけるな!スターク様に指図なんてするんじゃねえよ!他人に指図するのはこの広大な地球の大地に俺様だけで十分だ!」



その罵倒には反応せず、俺は二人の背中を追った。

 脱出ゲームで出てくるトンネルは決まってホラー展開になるので、あまり行きたくないです……。

駄菓子屋の先に続いているトンネルにも、もしかしたら何かが潜んでいたりして……??


 ホラーが苦手な方でも次回は安心して読める内容となっていますのでご安心ください。

どちらかと言うとお宝探しに近いお話になるでしょうか……。



 さて、五章も早いものでもう20話を越えました。

一章ではセミが鳴いていたのが季節もいつの間にか12月になっています。

リアル時間で言えば初投稿からは五年が経ちます……。


 お話の中の世界の流れも、作者が過ごす日常の時間も本当にあっという間でした。

四つほど前のお話でチッダールタが100エーカーの森で過ごした日々は楽しくもあったと言っていましたが、作者にとっても非常に楽しい日々でした。


 こんなことを書くともうすぐ完結するんじゃないかって思われそうですが、それはまだまだ遠い先になりそうです……。

ですが五章を書き終えて、第一部が終わったら一旦区切りをつけてお休みかなとは思っています。

……勝手に一年以上更新を止めていたりしたのでいまさら何を、と怒られそうですね!!


何だかんだで五章はまだまだ続きますので次回もよろしくお願いしますね!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ