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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
132/162

5-18 部下と息子と

ーー前回のあらすじーー


 コルクからヤムチャを遠ざけるべく、よしだくんの家から彼を連れ出したチッダールタは二人で夜道を散歩していた。


 何気ない話がしたいと思っていたチッダールタだが、辛い状況下にあっても100エーカーの森で生きていこうとするヤムチャの本心と決意を意図せずとも聞くことが出来た。


 コルクが退き、二人も家へ帰ってくるとそこには被弾したシンタローが座り込んでいた。

自分たちがいない間にコルクが来たと知ったヤムチャは怒りを露にする。


 何故プロトンはコルクを連れて来たのか、そしてどうにも彼は様子が変だったこと……プロトンには聞きたいことが山ほどあると、よしだくんが彼と話し合いたいと申し出た。


 さらにチッダールタはジョージの力を借りれば、もう一度ミーシャを連れ戻せるかもしれないとシンタローに告げた。


 シンタローは彼女の判断を尊重したいと最初は乗り気ではなかったものの、ヤムチャにお互い遠慮せず話し合って来いと言われ、連れ戻さずとももう一度説得してみようという話になった。


 チッダールタは墓地でのジョージとした会話を思い出し、自分は彼らの行く末を見守るだけと改めて心に誓うのであった……。



 本当は助けてあげたいのに助けてあげられない状況はとても歯がゆいですよね。

はじめてのお〇かいを見てるとついついテレビの前で助けてあげたくなっちゃう方は多いのではないのでしょうか?


 作者は間違い探しをやっている人の横でその人の視線を見ながら『もっと横!!』とか口出しをする遊びが好きでした。


 ただ今となっては間違い探しが苦手過ぎてやっている人より先に見つけることが出来ないのでその遊びが成立しなくなりましたね……。


 読者の皆さんは間違い探しが得意な方ですか?

得意であれば是非、小説中の誤字脱字を見つけてみてください!!


……この小説の存在自体は間違いではないですよ?

空は雲一つなく、よく晴れ渡っている。



俺、よしだくんは寒くないようにコートを着込んで駄菓子屋に向かっている途中だ。


目的はもちろん、あのプロトンという男に会うためだ。




あの女が誰なのか……どうしてこの森を襲ったのか。


そして、ドーベル博士はなぜあんな風に変わってしまったのか。


聞きたいことが山ほどある。




いつもの駄菓子屋が見えてきた。


何故か入口の引き戸が開いている……。


その隙間から、プロトンが床の掃き掃除をしているのが見えた。




……彼は何で掃除なんかしているんだ?


一時的に住み着いているだけなのに……。



そんな疑問を抱えながら俺は駄菓子屋に入ることにした。




「あっ……君は隊長のところの子供だな。よく来てくれた。」



プロトンは予想外にも掃除の手を止めて笑顔で歓迎してくれた。


ヤムチャやシンタローくらいにしか感心が無いと思っていたんだがな。



「今日は俺が代表で話をしに来たんだ。」


「そうなのか、じゃあアイスでも食べながら話を聞くとしよう。」




アイスだって?


そんなものがまだ駄菓子屋にあるはずが……。


俺はアイス売り場の中を覗き込んだ。




「……めっちゃ入ってるな。」


「誰か来た時のために用意しておいたんだ。好きなだけ食べるといい。こっちでゆっくり話そう。」



プロトンは飲食スペースの方に俺を誘導してきた。




どういうことだ?


ここの掃除をする理由も、アイスを調達した手段も分からない……。


だが、彼に敵意がなさそうなことはよく伝わってきた。




……現段階ではな、まだ信用はしきれない。





ご丁寧なことに飲食スペースの暖炉は稼働していてこの空間は随分と暖かい。



「随分と準備がいいじゃないか、俺が来ることが分かっていたのか?」


「まさか、誰か来た時のためにこうやって準備しておいてたんだよ。」




つまり、実は昨日もこうやって同じように準備していたってことか?



「来るかも分からない俺たちのために?」


「そうだ、せっかく来てくれたのに何もないんじゃ寂しいだろ?」




……そもそも本当にどこからアイスを調達したっていうんだ?


全く持って謎だが話し合いの場は設けてくれたみたいだ。



俺は取ってきたアイスをテーブルに置いて席についた。



「話をしに来たって言ってたな。君の気が済むまで要件を聞こうじゃないか。」



彼もアイスを持ってきて椅子に座った。



「正直、何から聞けばいいのか迷うくらい色々と話したいことがある。だがまあ、まずはみんなも気になっていることから聞くとしよう。」



俺は少しだけ間をおいて、頭の中を整理した。





「今回の襲撃を起こした目的は……キヌタニじゃないんだよな?」



俺の問いかけにプロトンは少し考えてから話し始めた。



「キヌタニを捕えて、隊長が目的を達成したとそう言ったのは君も聞いていたな?」


「ああ、だから襲撃の原因はキヌタニにあると思っていた。……でも、お前はヤムチャに助言をしに来た。そして本当は彼を殺そうとしていたとも言った。でもそれは最終的な目的じゃない、ヤムチャを消すことで達成される真の目的があるんじゃないのか?」


「なるほどな……。」



プロトンはまたしばらく考えてこう言った。




「最終的な目的そのものを俺の口から言うことは出来ないな。だが、君は頭がいいと隊長から聞いている。だから考えるためのヒントをあげることにするよ。」



「やはり肝心なことは秘密なんだな。だがこの際、ヒントでもいいから教えてくれ。」



俺はリュックのポケットからメモ帳とペンを取り出した。


こういう時のためにしっかり準備しておいてよかったよ。




「じゃあまずは……君がこの森に来た時の率直な感想を思い出すんだ。子供しかいない小さな集落……。君はこのことについてどう思った?」



「博士からそのことを告げられた時は本当に意味が分からなかったな。俺にも実の両親が居ないから……特別に変だとも思わなかったが、確かに異質な環境だとは感じた。そして彼ら以外の人間が一夜にして全員消えたというのも……。」




正直なところ、子供だけで住んでいるから何なんだ?



……と言うのが当時の感想ではあったな。



だが、当の本人たちも家族が失踪した理由も知らないというのは本当におかしな話だ。



「君の予想でいい、彼ら以外の森の住人たち全員が揃いも揃って一夜にして姿を消すためにはどうしたらいいと思う?」



「うーん……それは姿を消した人間たちが自発的に動かないと厳しいだろうな。でも本当にそれが答えなのか?」



「残念ながらそれは違う。だが、そうでもないと厳しいという意見には同意するよ。あまりヒントを出しすぎると答えがすぐに割れてしまいそうだから失踪の件についてはこの辺りにしておこう……。さて、あまりあげられるヒントは多くないけど、まだ言えることがあるとしたら……本当は目的を達成するだけならばここまで大々的な襲撃が必要だったとは思えない。それこそよしだくん、君が気がつかない間に作戦を実行して目的を達成することも十分出来たと俺は考えている。」




「俺が気が付かない間に……?」



どういうことだ?


つまり、あの大群も戦車も要らなかったと言いだけだな。




「じゃあ戦車で森をめちゃくちゃにする必要も……。」


「ああ、無かったな。ちなみにあれは隊長の独断だ。」



「隊長……博士の?」


「君はどこか勘違いしそうだから言っておくと、あれは狂ってバカ高い砲弾を無駄撃ちしていたわけじゃないぞ?ちゃんと彼にも考えがあっての行動だ。」



博士が襲撃と関係なくこの森を破壊する理由……。


全然分からない……!!




「とりあえず、襲撃の目的は本来ならば派手な戦闘をせずとも達成出来た。そして……俺に質問したということは六年前に起きた住人たちの失踪事件も関係しているんだな?」


「そうだ、後は自分で考えてみてくれ。」



これ以上はもう情報を提供してくれなさそうなので俺は話の要点をメモ帳に書き留めた。





「じゃあ次の質問だ。……昨日お前と一緒にやって来たあの女……お前の仲間なのは間違いないだろうが、みんな彼女に対して怒り心頭だし、俺は気味が悪くて仕方ないんだ。」



「コルクのことか……あいつが、ミーシャにあんなことをしたなんて……正直恨めしい!」



どういうわけかプロトンの方が感情的になってしまった。



「あっ……!!済まない……。それで、彼女の何について聞きたい?」


「まずはそうだな、彼女は組織の中でかなり上の立ち位置なのか?少なくとも、お前の上司という感じは受け取れたが……?」


「君の言う通りだ。彼女は俺の上司にあたる、そして今回の襲撃の指示役でもある。」



「指示役……!?博士じゃなかったのか……!」



てっきり俺は今回の襲撃は博士が黒幕だと思っていた。


だが、違うなら話が変わってくるぞ。




「博士は権力に溺れているようにも見えた。それはコルクって奴に操られていたってことか?」



「それは少し答えに困る質問だな……。確かに彼は過剰なまでに権力を求めていた。でも、今回の襲撃に関してコルクの意のままだったかと言えばそれは違う。」




やっぱり彼の言うことは難しい……。



「それからこれは個人的に気になったんだが、あの意味不明な銃は何だ?」


「あの転位銃のことか……あれは彼女がしている研究の副産物……らしいな。」




副産物??


 発明しようとしてあれを開発したなら本当にすごいが、あのレベルが副産物で出来たとしたら本当は何を作ろうとしていんだ?



「彼女は一体何の研究をしているんだ?」



「そこはやはり君も研究者として気になるか……じゃあ、これは他の住人たちには内緒だぞ?」



俺は頷いた。


何故秘密にしたいのかは分からないが、個人的に気になることだから、その約束は守るつもりだ。




「どうやら彼女……タイムマシンを開発しているようなんだ。それで物質を現在とは別の時空に送る実験をしている時にその武器のことを閃いたらしい。」



それを聞いて、俺の中で何かが繋がった気がした。



「もしかしてタイムスリップに関する研究をしている博士の知り合いって……、」


「そんな研究をしているのなんて俺の知る限りでは彼女だけだな。」




そういうことだったのか……。


じゃあもしかしたら……俺は昔、彼女と会ったことがあるのだろうか?



「つまり、彼女も研究者だってことか……。」


「うーん……まあ、部分的にはそうだな。少なくとも彼女は傭兵として生きているわけではない。だが、彼女の主な研究テーマはタイムスリップに関することじゃないんだ。」



「それは違うのか!?じゃあ、一体何だって言うんだ?」



こんなすごいテーマがメインじゃないのかよ!?



恐ろしい人間だな……。




「それは……秘密でもいいだろうか?実はそれが襲撃の目的とも関係あることなんだ。」



これは意外だったが、あまり驚きはなかった。



「つまり、自分の研究のために今回の襲撃を決行したってことか。」


「それは正しいな……コルクのことについてはこのあたりにしておこうか。」



正直なところ、彼女の振る舞いは恐ろしかった。



だから出来ることならもう関わりたくない……。





「なら、また別のことを質問するとしよう。プロトン、お前は俺たちに助言をするためにこの森に滞在しているのか?」



「それは……今はそうだ。」



彼は何か言いかけてから、誤魔化したように肯定の返事をした。



「今は??と言うと……?」


「襲撃が起きて君たちに会うまでは別の目的があって滞在していた……。だが、その目的は達成出来なかったんだ。」


「ちょっと待て!?じゃあ襲撃があってからずっとこの森に居たってことか!?」



「あっ……。しまった……だが、そういうことだ。」




おいおい……!


よく誰にも気がつかれずに潜んでいられたな……!?



「ちなみに、その以前の目的は何だったんだ?」


「それは……教えられない。そして、君たちも知らない方がいい。」




知らない方がいい……か。


彼がそう言うのなら本当にその通りなのだろうな。


俺はその件について触れないことにした。




「俺たちに助言をするって言ってたな……。ヤムチャが生きているとそちらに知れたらもっと大きな襲撃が起きると。もしかしてあのコルクが俺たちのもとにやって来ることも分かっていたのか?」



「あれか……まあ、そんなところだ。」



彼は煮えきらないような返事をしてきた。


でも……だとしたらおかしい!




「だが、現にお前は俺たちのもとにコルクを連れてきた。本当はヤムチャと彼女を会わせるつもりだったんじゃないか!?」



そう強い口調で俺が言うと彼は暫し黙り込んでしまった。




そしてしばらくして口を開いた。



「どうやら何でもかんでも教えると君には全て見抜かれてしまいそうだ。だからこれだけを言っておく。俺はあの時、ヤムチャがその場所に居ないと分かっていてコルクを連れて来た。」




居ないと分かっていた……?


それは何故だ??



まさか……盗聴器!?




「これ以上は話すつもりはない。じっくりとその優秀な脳みそで考えるんだ。」



そう言われてしまったから思いついた可能性をまた書き留めておいた。





「じゃあ最後の質問だ。……お前は博士が元々はあんな人間じゃなかったことを知っているのか?」



これが個人的に一番聞きたかったことだ。


何故彼はあれほどに権力を追い求める人間になってしまったのか……。



「俺が隊長と出会ったのは二年ほど前だ。以前はただの研究者だったと聞いている。そして、四年半ほど前だったか、突如として彼は組織内で頭角を現してきたんだ。」



つまり、俺がここに来てから一年くらい経った時だな。



「その当時、コルクの研究に対して反対する声が組織の中で大きくなっていたんだ。彼女は組織でもかなり上の階級にいる人間だが、それでもその意見を無視出来ないくらい弾圧が強くなっていた。」


「そのことが博士のことと何か関係があるのか?」


「そこでコルクの大きな味方となったのが隊長だったそうだ。最初は何の権力もないからと、支援をすることすら断られたそうだ。だが粘り強い交渉の末、彼が計画したとある作戦を受け入れてもらえることになったんだ。」



「作戦……か?」



「その内容は……もしかしたら、君が聞いて気持ちの良いものじゃないかもしれない。それでも良いと言うのなら教えてあげるとしよう。」




自分の知らない博士がいたのならどんなことであろうと聞きたい……!


俺は黙ったまま頷いた。

 自分の知らない所で自身の昔話なんてされたら恥ずかしいこと極まりないですよね……。

ドーベル将軍が記憶を取り戻してこの時のことを知ったら顔から火が出るでしょう……。


 プロトンもよしだくんも真面目過ぎるせいでとてもとても真面目な回になってしまいました。

二人にはもっと弾けてもらわないと困ります!!


 それこそ森の住人たちと対峙するにはアイス売り場のワゴンへダイブするくらいでないと……。

でも彼らがそれをしたところで真面目な変人にしかならないでしょうか……?


 あまり自分の柄じゃない行動を無理して取るのはお勧めしません。

「何だかキャラ変わった?」って思われるなら成功なのですが、「今日のお前どうした?」って思われたらそのムーブは止めた方がいいです……。


 元からの自分のキャラと新しく取り入れたい要素を上手いことマッチさせるのがミソですね!!

間違ってもパリピだからとアイス売り場にダイブはしないように!(←そのネタ四回目じゃね?)

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