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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
129/162

5-15 ダーツvs転移銃

ーー前回のあらすじーー


 プロトンとエリスを騙して予定よりも早く100エーカーの森へやって来たコルクはプロトンの信用を取り戻すチャンスを与えると言って彼に森の中を案内させた。


 まずは記憶を失くしたドーベル将軍と再会し、コルクも彼の様子を目の当たりにするとさすがに驚いているようだった。

そして記憶がないはずのドーベル将軍は……何故かコルクに怯えていた。


 次にプロトンは襲撃で犠牲になった仲間たちの遺骨が安置されている場所へと向かった。

それを見てコルクは何を感じるのだろうと考えていたプロトンだったが、彼女は無造作にも仲間たちの遺骸を踏みつけて人命の軽さを嘆いていたようだった……。


 彼女の表情を見て不思議な感覚に包まれたプロトンだったが、ここで立ち止まっているわけにもいかないと思い直し、森の住人たちが待つ場所へとコルクを連れて行くのだった。



 他所の家に行ったら礼儀正しくするのは当たり前なのですが、コルクはそれでも気にせず自分勝手に振舞いそうです……。

せめて森の住人たちへの手土産くらいは用意するべきだと思うのですが、やはりそんな考えは彼女に無いようです。


 読者の皆さんはどこかへ持っていく手土産に何を選びますか?

暑い日には溶けるものとか日持ちのしない物は渡しづらいですよね。

だから作者は手土産選びが苦手です。


 で、結局無駄に値段の張るものを選んで懐が寂しい……。

そんな経験がある皆さんはコルクのメンタルを見習って本編に進みましょう。

「ここなら、誰か居るはずだ。」



昨日の昼間、みんなと再会した家の前にやってきた。


家の中は電気が点いているので無人ということはないだろう。



「コルク、覚悟は出来てるのか?」


「そんなの、最初から出来ているわよ。変わったであろう未来を……この現実を受け入れるわ。」



彼女が言い終わるのを待って俺は玄関のドアを開けた。




「おかえりフジモ……え?」



 くじらんはフジモンが帰ってきたものだと思って俺たちに声をかけてきたようだが、見当違いの人間がここにやって来たものだからこっちを見たまま固まってしまった。


シンタローと隊長の子供、よしだくん?もこちらを見て驚いた表情をしていた。



 よしだくんは謎の機械をいじっていて、くじらんとシンタローは何をするわけでもなく寝袋に入って考え事をしていたようだ。



そしてミーシャはまだ眠ったまま……。




「ふーーん、なるほどね。」



 当然こんな展開は彼らも全く想像出来なかっただろうから、コルクを見ても何一つ反応出来ずにただ唖然としていた。




「あら?あの子って……。」



静かに眠るミーシャを見つけたコルクは他の住人たちを無視して彼女に近付いた。



「彼女は私を瀕死に追い込んだ。私に勝ったはずなのにどうしてこんな怪我を?」



そしてミーシャの額に触れようとしたその時だった!




「触るなっ!!」



叫んだシンタローの手にはダーツが握られていた。



「そんな軽々しくミーシャに触るな!!」



そしてコルクの喉元目掛けてダーツは放たれた!!


重力を無視したように真っ直ぐな軌道を描いてダーツは飛ぶ!




「ふぐっ!!?」



避けきれなかったコルクはダーツの刺さった喉を手で押さえ、その場にしゃがみ込む。




「ふざけるな……。お前にミーシャが勝っただと?つまりこいつの左脚を奪った、歩けなくしたのはお前か??」



シンタローは殺意をむき出しにしてさらにダーツを構えた!




「ゲホゲホッ……くっ、彼女が私を追い返した後……どうなったのか、知らないわ……!」



そしてダーツを無理やり喉から引き抜くとコルクの喉からはダラダラと血が出てきた。



そして彼女は両手にピストルを構えた!


さらに間髪入れずシンタローは二本目のダーツをコルクに投げつける!



次の瞬間、彼女の姿が消えた!!


ダーツは虚空を舞い、家の壁に突き刺さった!!


あいつ……転位銃を使ってるのか!!


そんなヤバい代物を安々と出すんじゃねえよ!!




「ど、どこへ!?」


「シンタロー、後ろっ!!」



くじらんが指を差す!!


コルクは一瞬にしてシンタローの背後を取っていた!




「ばーか。」



ドン!!という音を立ててコルクは右手に構えたピストルを発砲した!


どうして片手でピストルをそう精度良く撃てるんだよ!?



「ぐっ!?」



弾丸はシンタローの肩を掠めて家の壁にめり込んだ!




今の……威嚇なんかじゃなく本気で殺そうと!?



「いい加減にしろ!余計な争いをするんじゃない!!」



試しにこう叫んでみたがコルクはどうせ止まらないだろう……。


シンタローまで消そうとするなんて何を考えてるんだ!!




「チッ……何だかさー、イラッと来ちゃった。だから君にはここで死んでもらいたいなーって。」



そう言うとまたコルクは左手のピストルを撃って姿を消した!




「そこか!?」



シンタローは自分の左後ろに向かってダーツを投げつけた!



「ぎゃっ!?」



ダーツは転位したコルクの右耳たぶを貫く!




「めっちゃ痛いし……!勘がいいね……!!これは全力で向かって分からせてやるか!!」



ダーツを耳から引き抜いて投げ捨てた彼女の目に殺意が宿る!!



マズい!こうなったらもう止められない!!


移動先にヤマを張ってピストルを構える他ないぞ!?



俺は腰からピストルを抜いてシンタローの背後に構えた!




「ぐあっ!?」



突然、後頭部に衝撃が走った!




「タイマン勝負の邪魔をしないでくれる?するにしてもこっちの味方でしょうよ、普通は。」



彼女はいつの間にか右手にスパナを持っていた……!




加減ってものを知らないのか……!?


普通にかなり痛かったぞ!!



俺は素直にピストルを降ろした。





「さーーて、ついて来れる?」



コルクはそう言うと連続で転位を始めた!


そんなことをされたら……!



「あぶねっ!!」



転位しながら彼女は容赦なく発砲してくる!


弾丸がシンタローの脇腹に当たりそうになった!




「卑怯すぎる……!!」



よしだくんの口からそう言葉がこぼれた。



俺だってこんなのフェアじゃないと思うさ!


だが、本当に止める術がない!




家の中をコルクは縦横無尽に転位し続ける!



一方のシンタローは必死で彼女の姿を追いながら弾丸を避けることしか出来ていない……。


そのうちこっちにも流れ弾が飛んできそうだ!





「そこだっ!!」



シンタローは誰も立っていない玄関のドア目掛けてダーツを投げつけた!



「あっ……!?」



ダーツはものすごい速さで転位銃の銃口に吸い込まれていった!!




「えっ、ちょっ!?このっ……!!」



コルクは引き金を連続で引くが転位銃は反応しなくなってしまった。




「さすがシンタロー……よくピンポイントで狙えたね!」



くじらんはこんな状況でも感心したように言う。



「まあ……そこには七回ほど転位してたしな。無意識だと思うがどこに移動するかのサイクルもある程度読めていたよ。」


「だとしても銃口の位置まで把握するなんて不可能でしょ!?……恐ろしいほど勘がいいのね。やれやれ、この銃を作るのにどれだけの時間がかかったと思ってるの?」




いや……だからそんな大層なものを軽々しく使うからだろ……?




「もういいや、正々堂々と戦って死んでもらうとしましょう。私はピストル、君はダーツで。」


「それのどこが正々堂々なの!?」




くじらんは叫ぶし、俺も同意だ!



ダーツとピストルで公平な勝負だなんて馬鹿げてる!!



「でも実際、いい勝負……いや、私が押されてたでしょ?それでさらに私が手加減するんだからズルでも何でもないよね?さあ、君たちは邪魔しないでよ?二人だけのタイマン勝負なんだから。」



コルクは転位銃をしまうとピストルを両手で握った。




「やってやろうじゃねえか……。お前にはこの森から出てってもらう!!」



シンタローはその勝負を受ける気満々で、ダーツをコルクの心臓目掛けて投げた!



「ふんっ!君にそれが出来るかな?」



コルクは横に飛んでダーツを避ける!



ダーツは玄関のドアにガッチリと突き刺さった!


病み上がりでどうしてそんなに動けるんだよ!?




「いてて……まだ本調子じゃないんだけど、こっちからも行くよ!!」



コルクはピストルを連射する!




「当たってたまるか!!」



シンタローは家の中を駆け回って弾丸を避ける!




「クソっ!喰らえっ!!」



シンタローも負けじと飛び回りながらダーツを投げる!




「嫌だねっ……うおっとっ!!?」



コルクのもつれた足にダーツが容赦なく刺さる!!


彼女は脚を封じられて動けなくなってしまった!



足を押さえてコルクはうずくまる。



「……歩けなくなったミーシャがどんな思いで自ら飛び降りたか分かるか?『自分には何も出来ない』『仲間を追いかけることすら出来なかった』……その虚無感が理解出来るか?」



シンタローは彼女の心臓に狙いをつける。





「悪いけど……興味ないかな?」



それはまさしく不意打ちだった。


コルクはパッと笑った顔を上げ、ピストルを構えた!



ドーン!という音を立ててシンタローが後ろに吹っ飛ぶ!!




「があっ!!……ぐっ!!」



認めたくないが今のは作戦勝ちだな……!!


きっとダーツが刺さったことも大して痛くなかったのだろう。




いや、そんなことより!!!



シンタロー……死んでないよな!?


すぐに応急処置を……!!!




「興味がないなら……持たせてやるよ!!」



シンタロー……!?



彼は立ち上がってダーツを構えもせずコルクにゆっくりと詰め寄る!


彼の右胸に開いた傷穴はゆっくりと止血されていく。





「え……?いや、それはそうか……?」



 動揺したようなコルクの呟いたその独り言の意味も、シンタローの傷が癒えていく理由も俺には分からなかった。



 もう一回コルクが彼に発砲しようとした瞬間、近付いてきたシンタローにピストルを蹴り飛ばされてしまった!!



「いっ……!!いや、待っ……グムッ!?」


「どんな思いでミーシャが戦ってきたのか……分からせてやる!!」




彼は左手でコルクの顔を鷲掴みにした!!


そして右手にはダーツが握られている!




「絶対に……許さねえ!!」







「……!!」



ポトポトと真っ赤な血が床に垂れる。


ダーツの先端はコルクの右目に突き刺さっていた!


彼女の左目はまだ自らの状況を理解出来ていなさそうだ。



そしてシンタローは彼女を後ろに突き飛ばした!



突き飛ばされたコルクは自分が何をされたのか気がつき、そして悲鳴を上げた!!




「うっ……あああっ!!!」


「当たり前にあったはずの視界を奪われた気分はどうだ?」




シンタローはすごく悲しそうな顔をしている。


ミーシャと同じ状況、身体の一部を失った人間を自ら生み出してしまった罪悪感からだろうか?





「はあはあ……片目が潰れても、まだ左目は見える。無くなった分は、聴覚や嗅覚で補えばいい。彼女は強い意志を持っていたようだけど……柔軟な考え方は出来なかったようだね?」



彼女は立ち上がって、とても痛いだろうに右目から血を流しながら笑ってみせた。




こいつはどうしてさっきから人の感情を逆撫でするようなことばかり言うんだ!?


片目を潰されてもそこまで冷静でいられるのは大したもんだがな!!




「さて、それはそうとして……奥にあるのはシェルターだよね?ちょっと中を見させてもらうよ?」



 まだ目から流血している中、コルクはタイマン勝負に飽きたのか今まで戦闘なんてしてなかったかのように歩いてズカズカと家の中を歩いていく。




「ここに隠れてるんじゃないの……?私の勘はそう言ってる。」





まさか……本当にそうなのか!?


だとしたら……全てが終わる!!



「さてさてー、よいしょっと!」



彼女はシェルターの入り口を開けて懐中電灯点けると中を照らした!!





「……ありゃ、何よこれ?」



コルクが怪訝な顔をしたので俺も中の様子を確認した。


そこには森の何処かの様子が映ったモニターがたくさんと椅子が一つあるだけで人影はなかった。




「これは……監視カメラか?そんなもの見つけられなかったが……?」



「そんな簡単に見つかる場所にあったら監視にもならないでしょ。……悪趣味ね。」




コルクはとても不快そうに吐き捨ててシェルターの入り口を乱暴に閉めた。


そして再びミーシャに近づいた。




「彼女には私たちの仲間になってもらいたかった。この前は卑怯なことをしたけど、正々堂々と戦ってもみたかった……。」



そしてコルクは誰とも目を合わせないまま家から出て行く。



 さっきまで殺されかけていたシンタローですらも、コルクがあまりに早い切り替えをしていたので何を言えばいいのかも分からず立ったまま動かなかった……。




まだ、見ていない部屋もあるというのに……。


これも『どうせここにはいないだろう』という勘なのだろうか?



何にせよ、俺は彼女の案内を続けなければならない。




「随分と騒がせたな……失礼する。」



俺も彼らに頭を下げてからコルクの後を追った。

 ピアスの穴を開けるのが怖いと言う話をよく聞きますね。

実は耳たぶってそんなに痛みが残らないそうです。


 もしかしたらコルクもダーツが刺さった傷を利用してピアスを付け始めるかもしれませんね。

「この傷は勲章だよ!」なんて言い張るかもしれません。



 ちなみに痛みを感じやすいのは手指だったり、舌や唇だそうです。

だから舌ピアスってすごく痛そう……。


 逆にへそは痛点が少ないのでもしかしたらピアスを開けるならもってこいなのかもしれませんね。

読者の皆さんも是非へそにピアスを開けてみてください!!

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