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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
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5-14 罪の行方

ーー前回のあらすじーー


 ヤムチャの生存を隠蔽する作戦を遂行すべく、プロトンはフジモンとチッダールタを駄菓子屋の地下倉庫に呼び寄せた。


 そこには彼らからしたら行方不明になっていたはずのスタークとエリスがいて、フジモンはエリスを呼び戻そうとしたが彼女は自ら組織の人間であることを暴露したのだ。


 彼らは作戦を共有し、ついでにスタークはチッダールタに預けられることになった。

一息つこうとしたプロトンとエリス、そんな二人の耳に列車の走行音が飛び込んで来た……。


コルクは二人を裏切って約束よりも一日早く100エーカーの森への降り立ったのだった。



 待ち合わせなどの約束に遅刻する人は困ったちゃんですが、早く来すぎるのもまたそれはそれで問題があると思うのです。


 作者の母親は試験などがあると集合時刻の一時間半前くらいには到着するようにしているそうですが、それは会場の設営側に迷惑なんじゃ……といつも心の中で謝ってました。


 それとプライベートの約束でも相手に早く来られすぎると何だかギリギリに着いた方が申し訳なくなるので、そんなに早く来ないでくれと思ったりします。


 そして作者はプライベートだとほぼ遅刻するので、むしろ約束の時間までには来ないでくれとまで願ったりもします……。


結局のところ、相手に合わせて行動出来るかが大事と言うことですね!!

「二人とも随分と間抜けな顔をしてるじゃない。それが私を出迎える態度なの?」



コルクは不満げな顔をして列車から降りた。



「そりゃ驚くわよ!あなたは『明後日の夜』って言ったのよ?今はまだ『明日の夜』なの!二人とももう寝てたらどうするつもりだったのかしら??」



「そうねえ、寝ていたら一人で勝手にこの森を嗅ぎ回るつもりだったわ。別に君たちが居ようが居まいが私のやるべきことは変わらないもの。さてと……じゃあプロトン、私を案内してくれる?」



「ああ……え?案内ってどこに??」


「それは君に任せるわ。私の君に対する疑惑を晴らすチャンスをあげるって言ってるの。」




そう来たか……。


だが、それなら自由度が高い。



二人と別れてからまだそれほど時間も経っていないしこちらの声は届いているだろう。




だとしたら、やるべきことは二つ。



ドーベル将軍が生きているとその目で確認してもらう。


そして森の住人たちの中にヤムチャが居ないということを気の済むまで見てもらう。



……後者は『居ない』ことを証明しなきゃならないから難しいかもしれないがやるしかない。




「なら、出発するとしよう。」



俺とコルクはエレベーターに乗って地上へと上がった。







暗い夜道を二人で歩く。


彼女とこの森で、こうやって並んで歩く日が来るとは……。




まずはドーベル将軍とご対面といこう。


まだ俺も彼の無事を確認していないんだよな。




「そういえば襲撃の日、俺たちと一緒に戦っていたって聞いたがいつの間に……?」


「お忍びで行ったんだから君は知らなくて当たり前よ。それにしたって随分とこっ酷くやられたの!さすがはこの森の住人たちね。」



「死にかかっていたと聞いてたがもう傷一つないな。」



「頑張って治したのよ。こんな時にいつまでもベッドの上でじっとなんかしてられないわ。」




頑張って治すって……どういうことだよ……?


自分で手術したとでも言うのだろうか?



「戦況を見ていたならこちらの犠牲が甚大なことは分かっているだろう?ドーベル将軍も……大怪我をしている。」



俺たちはくじらんの家に到着した。



「彼はこの家にいる。まだ起きているだろうか?」


「寝ていても叩き起こすわ。多くの犠牲を出した責任は彼にもある……それを償わせるわ。」



コルクはそれだけ言うと俺よりも先に家の中へと押し入った。


二階へ進むとそこではフジモンと戸惑いを顔に浮かべた男が待っていた。




「来たね……彼は相変わらずさ。」



フジモンは腕に巻くベルトと聴診器でドーベル将軍の血圧を測っている。


本当に測定しているのかしているふりだけなのかは判断がつかない。




「君たちは……?彼の知り合いなのか?」



自らの地位に酔いしれた彼はどこにも居なかった。


見知らぬ場所で未知の環境に怯えた非力な男がそこにはいた。




「そういうこと……!?これは……怪我をしてるわね、それも深刻な。」



コルクはため息をついてゆっくりとドーベル将軍に近付いた。




「き、君は……誰だ?なあ、お願いだ。これ以上近づかないでくれ……。」



 ドーベル将軍はコルクを見ると何故か怯え、フジモンを押しのけてまで後ずさりしてそのまま壁際に追い詰められた。


それでもお構いなしにコルクは近づき続ける。




「怖い……怖いんだ……!来ないでくれ!!」



一瞬、目を疑った。



ドーベル将軍がコルクを突き飛ばした!


彼女は何も出来ずにそのまま後ろへ尻餅をついた。




「…………え。」



そしてしばらくそのまま口を開けて座り込んでいた。




「あっ……す、すまない!き、君を見ると、とてつもない恐怖に駆られるんだ……。どうしてかは分からない、でも、近づくのはやめてくれ……!!」



コルクはそのまま、ドーベル将軍のことをただ見つめていた。





「もし私の見ているものが本当なら……十分に罪を償っているのかもね。」



そして彼女はゆっくりと立ち上がり、家から出ていった。



「もういいのかよ……?フジモン、ドーベル将軍を頼んだぞ。」


「ああ、後は任せておきたまえ。」



彼のこの発言は素なのか演技なのか分からないがそれは置いといて、俺はコルクの後を追いかけた。







「それで、次はどこ?」



勝手に家から出ていった割に彼女はちゃんと家の前で待っていた。



「そうだな……。北の方……『北三叉路』に行くか。」




恐らく、いや間違いなく今回の作戦とは関係ない場所だ。


でも、こいつには見て欲しい。




この森で何があったのか、残酷な現実を見せつけてやる……!!







「ねえ、プロトン。一つ聞いてもいい?」


「何だよ?」



俺は彼女の方を向かずに言葉を返した。



「今まで疑問に思ったことはない?どうして自分はこの森にいないのだろうって。君だって十分にこの森で生活するにはふさわしいポテンシャルを持っている。君がこっちに居てくれたらどれだけ助かったか。」



ポテンシャルね……。


確かに、キヌタニ一人よりも計画はもっとすんなり進んだかもな。


だが、自分がいないことを疑問に思ったことなんてない。



「興味ないな。」


「君は誰とでも仲良くなれて他人との距離をすぐに詰めてしまう……。それが弊害になると思ったから。キヌタニはいい意味でも人見知りだったからむしろ適任だったのよ。」



どうでもよかったが、嫌でも納得してしまった。


確かに、俺がキヌタニだったらとっくに彼女から離反しているだろう。



そうでなくても、今だって彼女にしてみればテロに等しいような行為をしているわけだしな。




「そして結局キヌタニは命を落とした……。」


「こうなるはずじゃなかったのよ、でもやむを得ない犠牲だと割り切るしかない。」



……さっきはドーベル将軍に部隊が壊滅した責任を取らせるとか言っていたくせに。



本当は何とも思っていないんじゃないのか?





……着いた。


仲間たちの墓標に。




「コルク、ライトを持っているなら正面を照らしてみろ。」


「ライト?……えっと、はい。」



彼女は持ち歩いていたライトを取り出してスイッチを入れ、正面を照らした。




「よく見ておけ。これが俺たちの払った犠牲だよ。」



目の前には無数の遺骨が照られされている。


どういうわけかみんな、彼女の方を向いている気がする。




「これが……そう。……ふぅーん。」



 すると、コルクは徐ろに前へ出て躊躇うことなく仲間の亡骸を踏みつけ、彼らの中心部でこちらを振り返った。



「何かさあ……思うのよ。人の命は大事だと言うけれど、みんなが思うよりも全然軽いなって。」



コルクは少し笑っていた。


その笑みがどういう意味なのか、俺には理解出来ない。



「どうしてこうもみんな簡単に死んじゃうのかな?もっと人間が屈強ならいいのにね。」




だが、その言葉は彼女の望みそのものだろう。


不完全な彼女自身には成し得ない、他人に託す願い……。




「プロトン、君も同じなのかな?」



……!?



彼女はピストルの銃口をこちらに向けてきた!



「もし今ここで私が引き金を引いたら……君もこの骨みたいになるのかな??」



……さっきまでの笑った顔はどこにもなく、すごく悲しそうな顔をしていた。




これは、撃たれる……!?


一応、避けられるようにはしておくか……!




「だとしたら人間って本当に悲しい生き物……なーんてね。まさか本気にしたわけ?」



彼女はピストルを懐にしまった。





何だ今の感覚は……?


コルクがあんな表情をするなんて……それに、強い悲しみも伝わってきた。



いや、これは俺が勝手に感じているだけの感覚か?


仲間を死なせてしまった悲しみを、仲間が眠るこの場所だからこそ余計に感じたのか??



「君にはまだ生きていてもらわきゃ困るのよ。……ねえ、これほど沢山の仲間の犠牲、無駄にしないためにはどうするべきか君は分かっているはずよ。」



彼女は骨の山から降りてきた。


その言葉の本心は、『ヤムチャが生きているなら確実に息の根を止めろ』ということだろう。



だけど俺は……仲間の犠牲を無駄にしないという意味なら何としてでも彼を守り抜きたい。




悪いなコルク、お前のやりたいようにはさせねえよ。




「……じゃあ、ここを『時計回り』に歩いて次の場所に案内する。お前を森の住人たちと会わせるのは怖いが会わせないわけにもいかないからな。」



「遂に彼らと直接顔を合わせる日が来たのね。本来ならどれほどこの時を心待ちにしていたことか……。こんな暗い気持ちでこの日を迎えるなんて思ってもみなかったわ。」



本来ならば彼女は彼と会うためにここにやって来るはずだった。


だがもう、彼は居ない……ということになっている。



コルクは森の住人たちと会った時、何を思うのだろうか?

 考古学ドキュメンタリーで出てくる頭蓋骨って全部自分のことを見ているような気がします……。

長い年月を経て探し当ててくれた感謝なのか、晒し物にされている恨みなのか……。

色々な感情がひしひしと伝わってくるような気がします。


 そしていつかは自分もああいう風に頭蓋骨を晒し物にされるんじゃないかと思うと気軽にお墓にも入ってられないですね……。

自分が死んだら骨は破砕し、地球の中心にでも葬って回収不能にしてもらいたいものです。


 ところで……遺骨は一般廃棄物として扱うことが可能らしいです。

つまり他のごみと一緒に捨てることが可能……ヒエッ!?


 火葬した遺骨の灰を自治体が業者に売却→貴金属を抽出、リサイクルするのも普通だとか……。

普段あまり目にすることのない光景なだけに衝撃でした……!!


 読者の皆さんは産業廃棄物として売却されたくなければ、死後のことをあらかじめ考えておいた方が良さそうです……。

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