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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
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5-13 秘密基地へご招待

ーー前回のあらすじーー


 プロトンは森の住人たちの前に立つことが耐えられず、逃げるように駄菓子屋へと帰って来た。

手持ち無沙汰になってしまった彼はドーベル将軍の行方について考えを巡らせつつ、駄菓子屋の仕出しをするのであった。


 夜になり何者かが駄菓子屋を訪ねて来たかと思えば、それは100エーカーの森からの脱出を願うフジモンであった。

さらにその後をチッダールタが付けてきたようで、彼もまた森からの脱出を懇願してきたのだった。


 森からの脱出を手配することと引き換えに、プロトンは二人にヤムチャが生きていることをコルクから隠ぺいする手伝いを依頼した。


 今日のところは二人を帰して作戦を練っておこうと思った矢先に、彼はスタークを連れて同じくこの森から逃げようと企んでいるエリスを目撃した。


 そんな彼女を見かねてプロトンはエリスも今回の脱出作戦に参加しないかと提案したが、スタークのことを捨てては行けないから、とはっきりしない返事しか返って来なかった……。



 今までは森の住人たちが暴れ回るばかりでしたが、とうとうそれ以外の人物たちが暗躍するターンが回ってきました。


特に今まで目立った活躍もないエリスは今度こそ作戦に貢献できるのか!?


 ……そろそろ何かしらのアクションを起こさないと彼女はモブキャラの『変態A』で終わってしまいそうですからね!!


ではでは、ここから数話はエリスにも頑張ってもらいましょう……(不安しかない)。

そしてあっという間に夜が来た。




駄菓子屋の電気を点けて待っていたら、九時頃にフジモンとチッダールタが現れた。




「待たせたね、仲間たちを振り切ってくるのは骨が折れたよ。」


「やれやれ、そりゃ誰かさんがキョドったらみんな怪しむよな?」



「ぼ、僕は怪しまれるような真似なんてしてないよ!?みんなが鋭すぎるのさ!!」




なるほど、少し遅くなったのは彼が原因か。




「よく来たな、お前たちをここにある組織の秘密基地に招待するぞ!話し合いはそこでしよう。」



「秘密……基地……?そんなものがあるのかい?どこにも見当たらないけどね?」


「確かに見当たらないがフジモン、一目見て存在が分かるようじゃそれは秘密基地ではないぞ?」




むしろここの地下倉庫の存在が何のヒントもなしに分かったらホラーだぞ!?


しかし、まさか外部の人間をこんな短期間で何人も招き入れることになるとは……。



「二人ともこっちだ。」



俺は彼らをカウンターの裏に招き入れた。



「ここに何かあるのかい?まさかこの地面が動いて地下に行くとでも??」




………………。



何故分かった???


俺は黙ってマンホールを開け、エレベーターの起動ボタンを押した。



ガコン!と地面が地下に沈み始める!




「わわわっ!!えっ!?本当に動いた!?どど、どうなってるんだい!?!?」


「お前はさっきから感情の起伏が忙しいなフジモン……。しかし、駄菓子屋にこんな仕掛けがあったとは……。」



チッダールタも顔には出てないがそれなりに驚いているようだ。



「……それも随分と深いな。これでは誰も気がつかないわけだ。」



「いや、僕は分かっていたさ。店主は色んな売り物を仕入れていたけど、地上経由ならそれを誰かが目撃しているはずだからね。だったら地下から仕入れているとしか考えられないよ。……それで、地下から仕入れるってどういうことだい?」



自分の発言を理解していないフジモンはふざけているのか??


それとも本気で言っているのか……?






フジモンの謎な発言について考えていると地下倉庫に到着した。




「ねえスターク、考え直して!?こんな森よりも絶対に住みやすい場所があるはずよ!!」



「やかましいな!!働かずにアイスが食べ放題だなんて恵まれた環境が他にあるってんのか!?」



「こんな生活……ずっと続くわけないわ!もし突然駄菓子屋が無くなったらどうするつもり?」



「そんなもしもの話をするんじゃねぇ!無くなったらその時に考えりゃいいだろ!!」




「それじゃあ遅いのよ……じゃあ、断言するわ。数ヶ月以内にこの駄菓子屋は無くなるはずよ!生活出来なくなる前に私と一緒にここを抜け出しましょう?」


「うるせえんだよ!!てめえの予言なんて誰が信用するか!!猪がする占いの方がまだ信用できるぜ!!そもそもだ!駄菓子屋が無くなろうと爆破されようと、てめえと一緒だなんて死んでもお断りだからな!!」




昨日と同じような光景……。



だが、やはりスタークはエリスの話を聞き入れようとしない。



彼はテレビの画面を見るついでに、エリスの話を受け流していた。





「えっ……エリス君!?!?どど、どうしてこんあ所にいるんだい!!いや、スターク君も一緒だし一体君たちはどういう関係なんだ!?しかも深い森の奥にこんな施設があるなんて、ここは何のための場所なんだい!?」


「まさか二人がこんな場所にいるなんてな……。それにしても駄菓子屋の地下がこんなことになっていたなんて、どうして想像出来ようか……!?」




二人ともこの光景を見て驚いている。


それはそうだ、普通じゃ思いもしないだろう。



「エリス、二人を連れてきたぞ。早速、作戦会議を始めるとしよう。」



「ん?……うわああっ!!フジモン、仙人……。ひ、久しぶりね……。」



こちらに振り返ったエリスは二人を見ると驚いて転びそうになった。



「そんな久しぶりってほどでも……じゃないよ、エリス君!!一体今まで君は何をしていたんだい!!みんな心配しているんだよ!?早く顔を見せに行こう!!」



 フジモンはエリスに近づいて手を引っ張ろうとしたが、彼女は素早くフジモンを避けて俺のすぐ横で仁王立ちになった。



「悪いわねフジモン。私は『こっち』側の人間なのよ。だからもうみんなのもとには戻れない。」




「こっち側……?えっ、エリス君……まさか、裏切ったのかい!?」


「落ち着くんだフジモン。彼女はきっと、最初からヴェルト・マスリニアの人間なんだ。年寄りの勘がそう言っている。」



「そんな根拠のない勘は全然信用出来ないね!それに、君が本当に最初から裏切り者だったとしたらなおさら驚きだよ!!」



フジモンは信じられないといった顔をしている。




「仙人……あなたは本当に何でも分かるのね。そうよ、私は元からヴェルト・マスリニアに所属していた。でも安心して?あなたたちの敵ではないもの。」




「敵じゃないって……エビデンスはあるのかい!?」



フジモンの口から医者らしい?一言が飛び出した。



「私はスタークを連れてこの森から抜け出したい。そのためにはコルクからヤムチャが生きていることをどうしても隠し通さなければならない……どう?目的はあなたたちと同じなの。」



「つまり、協力した方がお互いの利益になると……。私は賛成だな、とてもじゃないが彼女が嘘をついているようには見えん。」




「チッダールタ……それはお人好しが過ぎないかい!?」


「フジモン、いずれにせよ私たちは彼らの力を借りないとここから脱出することが出来ないんだぞ。だとしたら、怪しいと思っても協力するしかないんじゃないのか?」



「…………………。」



フジモンは黙って深く考え込み始めた。


だが、すぐに口を開いた。




「やれやれ、僕も裏切り者の仲間入りかい。まあ安心したまえ、この名医が手を貸すからには作戦が失敗するなんてことはまずないよ!!」



「お前がキョドって皆に怪しまれる光景が目に浮かぶぞ?まあ、その時のフォローは私に任せろ。」


「ええ、私も何となく想像しちゃったわ。」



「何だって!?僕にはこれっぽっちも想像できないね!」




これは……上手く収まったみたいだな。



「みんな……コルクは昔から侮れない奴だった。何をしてくるか分かったもんじゃない。だが、ここで隠し通さなければお互いに未来はないんだ。明日の夜、彼女はここへヤムチャを探しにやって来る。そこからが勝負だ、みんな頼んだぞ!!」



それから俺たちはあまり時間をかけないように前もって立てた作戦を共有した。


どうやって連携を取るか、コルクが取りそうな行動は何か、ヤムチャをどうやって誘導するか……。


知恵を絞って予想した。




「そろそろ帰らないとまた怪しまれてしまうな。じゃあ、この盗聴器はヤムチャたちにバレないよう仕込ませておくとしよう。」


「そうだね、僕はドーベル将軍の様子を注意深く見ていることにするよ。」



「二人とも頼んだぞ。お前たちの協力が無ければこの作戦は間違いなく失敗する。どうかヤムチャを……俺の仲間をよろしくな!」


「くれぐれも私の存在をバラさないでよね?」



「バラすわけがないだろう……そうだ、あそこにいるスタークのことだが私に預けてくれないか?上手く行けば自らこの森から脱出しようと欲するように誘導出来るかもしれん。」



「えっ、スタークを??……前も思ったけどあなたって随分とスタークに詳しいわよね。何だか嫉妬しちゃうわ。……いいわよ。いや、お願いするわ!」



「任された。では……はっ!」


「うわっ、下らねー……うおおおっ!?!?」



 チッダールタの服に付いているイルミネーションが白く光ると、お笑い番組を見ていたスタークの体がたちまち宙に浮き、彼の元へと引き寄せられた!



「よし、では帰るとしよう。スターク、お前は洞窟の中で大人しくしてるんだ。」



二人はエレベーターに乗るとボタンを操作した。



「おい!!俺様にはアイスを食べるっていう重要な任務があるんだぞ!!……このデブヤブ医者!こっち見るんじゃねえ!!」


「スターク君!まだ僕のことをヤブ医者扱いするのかい!?僕が名医じゃないわけないだろう!?それにデブでもないよ!?」



「いや、私もデブなのは認めてもいいと思うぞ?」



そんな会話をしている彼らの声が遠ざかり、聞こえなくなった。






「でも……ドーベル将軍が記憶喪失になっていたのは予想外だったでしょ?私がもっと早く教えてあげれば良かったわね。」


「まあ、厄介だが……ここに連れて来られない理由が出来たから結果的には悪くないな。」



コルクがどう行動するかが読めないとは言えども、隊長の安否は間違いなく確認するだろう。


大怪我をして記憶の無くなった彼に会えば、彼女はそれなりに納得してくれるはずだ。




他に心配なことは、俺以外にヴェルト・マスリニアの仲間が残っていないことだな。


これでは森を制圧したと言っても説得力がまるでない。



 それはもう、フジモンとチッダールタに『この森はヴェルト・マスリニアに制圧されました』という雰囲気を出してもらうしかないだろう。



フジモンの演技力には不安ばかりが残るが、信じる他ないな。



「ヤムチャはしっかり動いてくれるだろうか……?」


「それはきっと大丈夫よ。仙人もフジモンも、ヤムチャにはすごく信頼されてるもの……あら?何か聞こえてこない?」



何かを感じ取ったエリスが隣で耳を澄ます。



「何か……?」



俺も聴覚に神経を集中させる。





……ガタン…………ガタン……。



これは……列車の音?


そうか、こっちに荷物を運んできたのか。






いや!そうじゃない!!


もうこっちに荷物が運ばれることはないはずだ!!


だとしたら……!!!




列車の走行音はどんどん大きくなっている!



「ねえ、この列車ってもしかして……!」


「ああ、まんまと騙された!!」





そして、列車は駄菓子屋に到着し、運転手が降りて来た。



「よしよし、約束通り二人ともいるようね。」





コルクは丸一日早く、この森にやって来た!!

 もちろんこの後コルクは、『今日は君の誕生日でしょ?驚かせようと思ってサプライズよ!』

などとは言うはずもなく……彼女にそんなユーモアはないでしょう。


 サプライズは大抵嬉しいものですが時折やりすぎな人がいますよね……。

家を燃やしちゃったり、脅迫のつもりでビルの屋上から人を突き落としちゃったり……。


 他人を喜ばせるつもりが取り返しのつかない事態に陥る可能性もあるので、そのサプライズは自分がされても平気な物か……もう一度考えてみてください。


(そういうこと考える人は自分がされても別に嫌とも思わないんだよなあ……。)

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