5-11 六年ぶりの再会
ーー前回のあらすじーー
キヌタニにとてつもないほど恨まれていることを知ってショックを受けたシンタローたち四人は、くーちゃんとキヌタニを埋葬すべく共同墓地に向かった。
そこでジョージの墓石に触れた時、摩訶不思議なことが起きた。
ジョージが彼らに向かって話しかけてきたのだ!!
キヌタニの魂をどうにかして救ってやれないかとジョージに相談したところ、彼がキヌタニの魂に話しかけてくれた。
二人の間では何やら意味深な会話が行われていたのだが……とにもかくにも、彼の魂は少しだけ救われたのかもしれない。
読者の皆さんは死者と対話したことがありますか?
作者は残念ながらありません、どうやら霊媒師には転職出来そうもないのです……。
もし対話出来る方がいましたら、この小説を相手に読んでもらってもいいでしょうか?
この世を去った方の感想と言うのは新鮮で参考になるかもしれないので!!
よしだくんの家に戻ると、くじらんとフジモンは変わらずミーシャの容態を窺っていた。
タッキーは家の前にしゃがんで眠っている。
「おかえり……あれ?仙人はおぶわれているけどどこか悪いの?」
「いや、少し神通力を使いすぎてしまってな……。」
「チッダールタ、無理をしちゃダメじゃないか!とりあえず横になって休むといい。」
フジモンに言われてヤムチャは仙人を背中から降ろした。
「ヤムチャ、これからどうするんだ?さっきは二人を埋葬するまで何もする気が起きないって言っていたが……。」
「やっと見つけた。」
開きっぱなしになっている玄関のドアの外、そこから聞き慣れない声がした。
「誰も居ないと思って森中を探し回ったよ……。」
!!!!
お前はっ!!!
襲撃の時にくじらんと二人で相手したハルバード使い!!
「え……どう……して!?」
くじらんも表情が固まっている。
他のみんなも彼の服装が、襲撃の時にやって来た敵と同じだと気がついているらしい。
「……なるほどな、敵の残党がまだ残って居やがったのか!!!」
ヤムチャはキヌタニとくーちゃんの仇とばかりに、鬼ですら即降参しそうな表情で彼を睨みつける!
「俺の服装を見れば敵だと認識出来るだろう。そうだ、俺はヴェルト・マスリニア戦闘第六部隊の副隊長……そして俺たちがこの100エーカーの森を襲撃した張本人だよ。……この度は本当に、本当に済まなかった。」
そのハルバード使いはそう言うと土下座をして頭を地面に擦り付けた。
「えっ……?」
よしだくんは敵の予想外な行動に困惑している。
「こんなことじゃ許されないことは分かっている!でも……会いたかった、会わなきゃいけなかったんだ!……みんなに伝えたいことがある。」
「何だ?てめえらの大将ならいねえぞ??」
「ドーベル将軍のことじゃない。……ヤムチャ、お前のことだ!」
え……?
どうしてこいつはヤムチャのことを知ってるんだ!?
「随分馴れ馴れしい口調で……いや、どうして俺の名前を知ってやがる!?いや……待てよ、その喋り方……。」
ヤムチャは自分の記憶を辿るかのように暫し考え込んでしまった。
やがて彼の表情は何かを確信するものに変わった。
「俺の勘違いなんかじゃねえ……なあ、プロトン……お前、プロトンの兄貴だろ!?」
ヤムチャは彼の……プロトンという男の両肩をがっしりと掴んだ。
「覚えてくれていたのか……。そうだ、本当に久しぶりだな。」
プロトンは少し微笑んだ。
どういうことだ!?
ヤムチャの知り合いなのか!?
「……!?そこの奥で寝ているのはミーシャか?」
「ああ、昨日自ら命を絶とうとして助かりはしたが、ずっとこのまま……もうこれ以上家族や仲間が居なくなる人生はたくさんだってな……!!」
「……そんな。俺たちのせいで……本当に謝っても謝りきれない……!!」
プロトンは再び頭を地面に擦り付けた。
「なあシンタロー……お前は覚えてねえか?その昔、十年ほど前だ。俺が年上の大人に毎日戦いを挑んでいたことをよ。」
え???
俺か?
唐突に話を振られたのでヤムチャに言われたことを理解するのに少し時間がかかった。
ヤムチャが喧嘩を……?
……それも十年前か。
それこそ、俺はミーシャと毎日のように遊んでいた頃だ。
かくれんぼをしていて、ヤムチャの家の屋根の上に隠れていたこともあったか。
………………。
『くっそぉ……どうしてこの拳は届かねえんだ……。』
『ははは!!その程度か?』
『こんなんじゃ……弟たちを守れねえ!!うおおおっ!!!』
そうだ、思い出したぞ!!
ヤムチャは一時、隣に住んでいた青年と毎日飽きもせずに手合わせをしていた記憶がある。
確かにその光景を俺はこの目で見ていた!
「ヤムチャの家の隣に住んでいた……?」
「そうだ!!シンタロー……ただのヤンチャ坊主だったのにお前も逞しくなったな……!!」
心なしかプロトンは目に涙を浮かべているようにも見えた。
「とりあえず、お前が誰なのかは分かった。……だが、何故だ!?何故、六年前に失踪した住人のお前がこの服を着てここを襲ったんだ……!?」
「そうだよ……どうして自分の故郷を襲ったの!?」
「そ、それは……。」
ヤムチャとくじらんに詰め寄られるがプロトンは黙ってしまった。
俺だって、どうしてもこいつに聞きたいことがある。
「疾走したはずのお前がここにいる、生きているということは……他にもお前のように生存している住人がいるのか?」
もしかしたら俺たちの家族も生きているんじゃないのか……!?
「……ごめんな。それは……伝えることが出来ない。もし……!言わなければここでお前たちに殺されるとしても……絶対に言わない。」
そう宣言したプロトンはとても苦しそうな表情をしていた。
誰かに口止めされているのか?
それとも伝えてしまったら俺たちがショックを受けるから?
理由は分からないが……彼は間違いなく俺の問いかけに対する答えを知ってはいるのだろう……。
「どうして答えてくれねえんだ……!俺たちはもうどうするべきか分からねえんだよ!!」
ヤムチャはプロトンの肩を大きく揺さぶる。
「俺はみんなをこれ以上苦しませないためにここまで会いに来たんだ……。キヌタニが死んだ過去を変えられなくても、これからの状況を悪化させないための助言はすることが出来る……。」
そう言ってプロトンは唐突に立ち上がった。
「ヤムチャ……急で困るだろうがとにかく、お前はこの森から消えたことにしろ!」
プロトンはヤムチャにビシッと指を差した!
「えっと……それは仮死状態とかになって敵の目をごまかすとかそういうことかい?」
医者のフジモンが少し難しいことを言い始めた。
「いや、そんな大それたこともいらない。とにかく家の外に出なければいいんだ。森の外の人間にお前が生きていることを悟られなければいい。」
「どういうことだ……??もし家の外に出たら、俺が生きていると分かったらどうなる?」
「その時は……もっと大規模な襲撃が起きる。」
……!?
あれよりも大きな……!?
今回だって数百人規模の敵が来たんだぞ!
もっと大規模だと一体どうなるっていうんだ!?
「どういうことなの!?どうしてヤムチャが生きていたらそんな恐ろしいことが起きるって言うの!?」
くじらんも立ち上がってプロトンを怒鳴った!
「みんな、落ち着いて聞いてくれ……。ヤムチャ、俺たちは今回の襲撃でお前を殺害しようとした。だが、何者かの邪魔が入って代わりにキヌタニが死んだ。俺の仲間がこの事実を知れば間違いなくお前のことをもう一度消しに来る。」
……どういうことだ?
すぐには言われたことが理解出来ない。
つまり、襲撃の目的とキヌタニは無関係だったってことか!?
なのに……あんな形で犠牲になってしまったのか?
そんな理不尽な……。
そして本来は命を狙われていたのはヤムチャだった!?
意味が分からなくなってきた……!
「……何故そこまで執拗に彼を消そうとするんだ?お前たちの目的は何なんだ?」
やけに静かだった仙人もここで口を挟んできた。
「……それに関しては教えられない。それに、お前たちも知らない方がいい。」
……随分と気になる言い方をするな。
だが、いずれにせよプロトンは何も教えてくれなさそうだ。
「ヤムチャ、お前の方に心当たりはないのか?」
「……さっぱりだな。プロトン、てめえらが何を考えてるのかなんて知らねえよ。だがな……俺はお前から命を狙われる筋合いはねえ!」
「お前の言う事はごもっともだよ。だから、こうして助言をしに来たんだ。……お願いだ、俺だってお前には死んで欲しくない!」
プロトンは頭を下げながらそう訴えてきた。
「信じきれねえ……だが、ここの住人だったお前がこんなことを言うんだ、何らかの意味があるんだろ。……なあ、もう一つ聞かせろ。」
「俺に答えられることなら答えるさ。」
「六年前のあの日、俺たちが寝ている間に一体何が起きたんだ?そもそもお前はその日、何があったのか知っているのか?」
「………………。」
プロトンは何も答えない。
でも、何かを言おうとしているのか、迷ったような表情をしている。
しばらくして彼は重そうな口を開いた。
「分かった、一つだけ教える。……俺はあの時の事件、と呼ぶことにしよう。あの事件に巻き込まれた側じゃなく、森のみんなを巻き込んだ側だ。」
えっ……?
巻き込んだ側……?
「どういうことだ!?まさか……お前が俺たちの家族を……!!」
そういうことなのか!?
だとしたら……絶対に許せない!!
「……どれだけ聞かれてもこれ以上は何も話せない。……俺はしばらくの間、駄菓子屋にでも滞在するとしよう。用があるなら訪ねて来いよ。」
プロトンはそう言い残してこの場から去ろうとした。
「最後にもう一つだけ……くーちゃんっていう10歳くらいの女の子に銃を向けたのはてめえか?」
ヤムチャは拳を握りしめて必死に怒りを抑えている。
「??……これは断言できる。俺は子供に銃を向けるなんて真似は絶対にしない。」
プロトンは振り返って俺たちの顔を見ながらそう言うと、今度こそ走り去ってしまった。
「何なんだ……!?まさか、本当に助言だけしに来たっていうのか!?そんな馬鹿な!!」
俺がそう言ったがヤムチャは意外なことを口にした。
「あくまで俺の主観だ。プロトンがこんな襲撃なんて進んでするとは思えねえ。昔遊んでもらってた時の記憶が頼りだがな……。」
「ヤムチャ……それを言うならドーベル博士だって……あんな人じゃなかった!!数年もあれば人間はいとも簡単に変わるさ!!」
よしだくんはやり切れない、とても悔しそうな口調でヤムチャの発言を否定した。
「お前たち、一旦落ち着いた方がいい。彼が信用に足りる人物なのかどうか……慎重に判断するべきだと私は思う……。」
横になったままの仙人がその場を諌めた。
「俺は……あんな奴のことを信じたくない。だが……くじらんは一度、崖から落ちそうになったところをあいつに助けられている。ただ襲撃を起こしに来ただけならそんなことはしないはず……。」
「確かに、俺を助けた時の眼差しはすごく優しかったんだ……。それが理由じゃないけど……俺は信じてみてもいいかなって。」
「だが、まだ隠し事をしているのは明らかだ。俺はちゃんと全てを吐かせてからじゃないと信用するべきじゃないと思う。」
「俺は……分からねえ。森のリーダーなのに申し訳ねえが……何が正しいのかもう分からねえんだ。昔の仲間が敵になって、しかも助言をしにやって来た。……本当に訳が分からねえ。だが……。」
ヤムチャは話の途中で家の中に入り、そして床に寝転んだ。
「家から出なきゃいいんだろ?不便っちゃ不便かもしれねえが、別に難しくはねえし大変でもねえ。だったら助言くれえは信じてみてもいいかもしれねえなって思えるんだ。そうじゃなきゃ、もう何を信じていいのかも分からねえ……。」
「おいおい、まだエリスも見つかってないんだぞ!?」
よしだくんがヤムチャを起こそうとしているがきっと彼はもう当分動かないだろう。
そしてヤムチャの本心は間違いなく最後の部分だ。
「…………………。」
フジモンはゾーンに入ってしまったのか、ずっと一人で考え事をしている。
もしかしたら今の俺たちがしていた会話も聞こえてないのかもしれないな。
何が正解かなんて誰にも分からない。
だが、プロトンを信じなかったとして俺たちはどうするべきなんだ??
彼を殺すのか?
……十分ありなのかもしれない。
でも、昔の仲間をそう簡単に……。
………………。
決められない。
「お前たち、悩んでいるようだがそれでいいと思うぞ?幸か不幸かプロトンはしばらくこの森にいるようだし、今すぐに答えを出す必要はないだろう。」
気がつけばヤムチャや俺だけじゃなく、よしだくんやくじらんも眉間にシワを寄せていた。
これからどうするべきなのか……。
消えたエリス、くーちゃんを襲った犯人、記憶喪失のドーベル将軍、意識不明のミーシャ……解決していない問題もたくさんある。
それはこれからみんなで、全員が納得する答えを見つけるしかないだろうな。
……前に進まなきゃいけない、どんな道でも。
その先に道がなかったとしても。
人見知りだとなかなか、リアルで他人と会おうという勇気が出せないですよね。
もちろんネットで知り合った人と簡単に会っていいのかは諸説ありますが……。
最近引きこもりすぎて家の外すら怖くなっている作者に誰か、家に居ながらリアルで外出できる方法を誰か教えてください……。
家ごと動けばいいのでは?と言うのはなかなかに名案なのですが、残念ながら集合住宅に住んでいるためそれが出来ないのですよ……。
ここはアパートの一室を切り離せるように改造するしかないでしょうか?
そんなサービス業者が存在するならご連絡ください!!