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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第5章 終わらぬ悲劇の中で
124/162

5-10 墓標に息づく魂

ーー前回のあらすじーー


 シンタローたちは亡くなった二人を埋葬すべく、まずはキヌタニの遺骨を回収しに行った。

彼の頭蓋骨を手にした時、不思議なことが起きてその場に居た四人は真っ暗な空間に吸い込まれた。


 そこでキヌタニは彼らにどれだけ自分が仲間たちのことを恨んでいたのかを吐露し続けた。

全員、予想していたよりもずっと厳しくも、真実を突く言葉に圧倒され反論など出来るはずもなかった。



 一見優しそうな人が突然怒って暴言を吐いたら、いつもヒステリックな人に言われるよりもずっと心に刺さりそうですよね。


 そう考えてしまうと精神的に良くないので、ここはギャップ萌えの概念を推していきましょう。

普段は温厚なのに突然荒ぶって……キャッ♥


 そう思えればきっと怒っている人に対する考え方も変わってくるはずです!

そしてエリスみたいに変なポイントで興奮するような変態になれます!!


そんな変態になれそうなら本編にお進みください!!

…………。



気がつけば俺たちは大量の遺骨の上で倒れていた。



みんな服が灰まみれになっている。




「これは……夢じゃない、よな……?」



俺がそう言うと、みんなが起き上がってきた。



「夢なんかじゃねえ……お前には一昨日話したろ?俺はキヌタニの魂に話しかけられたのがこれで二度目だ。」



ヤムチャにそう言われて、彼が以前そんなことを話していたのを思い出した。




「……まさか、あれほどまでに憎まれていたとは。」



よしだくんは俯いたままかなり暗いトーンで呟いた。



同じ森の仲間に『ずっと嫌いだった』なんて言われたら俺だって立ち直れないよ。




「あの空間に吸い込まれた時、すごく嫌なエネルギーを感じ取ったんだ。憎悪……そんな生易しい言葉で表現できるものではないが、マイナスの感情をおぞましいほどに濃縮したような何か……。魂というものが本当に存在するなら彼は成仏出来ていないのだろうな……。」



つまり、その嫌なエネルギーがキヌタニの魂そのものってことなのだろうか?


だとしたら……放ってはおけない。



「仙人……どうにか、救ってやれないか?」


「うむ……正直、私にはどうしようもない。だが……。」



仙人は空を見上げた。




「力を借りることなら出来るかもしれないな。……まずは二人を共同墓地に埋葬するところから始めよう。」


「話がいまいち見えてこねえが、それも重要だな。じゃあまずは墓地に行くとしようや。」



俺たちは出来るだけキヌタニの遺骨を回収し、壺に入れてから、墓地へと向かった。






墓地に着いてから、まずはみんなで二人を埋葬するための穴を掘った。



「墓石も今度用意してやらないとな。……さあ、二人とお別れするとしようや。」



ヤムチャはくーちゃんを、俺はキヌタニの遺骨が入った壺をそれぞれの穴の中に置いた。




「この森の土へと還っていくんだな。どうか、穏やかに眠って欲しい……。」



よしだくんは天井から差し込む光を見つめてそう呟いた。



でも……キヌタニはまだ穏やかに眠れないだろう。


そう思っていると仙人はジョージの墓石に手を当てた。




「本当は……みんなで襲撃を乗り切ったと、そういう報告をしたかったよ。だが……叶わなかった。これは私の力不足だ、本当に申し訳ない……。」



目を閉じてそう語りかけた仙人はジョージと会話しているようだった。




『お前だけのせいなんかじゃない。』



そう言おうと思って俺は仙人の肩に手を置いた。





『チッダールタ……俺はあの馬に憑依させてもらって、そのおかげでミーシャを守ることが出来た。俺もみんなと一緒に戦えたんだ。』



!!!!!


ジョージの声が聞こえる……!



俺は慌てて二人の手を引っ張って仙人の肩に乗せた。




「おい、これって……。」


「……聞き間違えるはずもねえよ!」



二人にもジョージの声が聞こえているらしい。




『キヌタニとこの女の子のことは残念だったが、どうか自分たちを責めないで欲しい。お前たちの戦いっぷりはしっかりと見させてもらったからな。』



ジョージが褒めてくれた……。


俺たちが戦っているところを本当に見ていてくれたんだな。



「ジョージ、今もキヌタニの魂は苦痛に苛まれている。どうにかしてやりたいんだ、力を貸してはくれないか?」




『今、キヌタニが近くにいるのを感じるよ……それもすごく辛そうだ。よし……じゃあ、俺からも彼に話しかけてみるとしよう。……キヌタニ?そこにいるんだろ??』



ジョージはまるで近くにいる人間に話しかけるかのようにキヌタニに語りかけた。



そして、いきなりバチバチッ!という火花が脳内で散った気がした!!


一瞬だけ、激痛が走った!!




『や、やあ……ひ、久しぶりだね……ジョージ。』



キヌタニの声も聞こえる!!


そして何故か、とても気まずそうだ……。




『まさかお前がこっち側に来てしまうとは……さすがにこれは予想外だな。』




『う、うん……僕もまさかこんな早くに死ぬとは思わなかったよ。』




何だかキヌタニの喋り方がすごくぎこちない。


彼は人見知りだがそういう感じのぎこちなさでもない。




『キヌタニ……苦しかったよな。ずっとこの六年間、本当によく頑張ったな。そして……助けられなくて本当に済まなかった。』




…………。



今の俺たちは過去にミーシャの精神面に入り込んだ時と同じで感覚を共有しているのだと思う。


ヤムチャやよしだくんの感情も流れ込んでくるし、俺の感情もみんなに伝わっているだろう。



 ……今のジョージの発言からはキヌタニに対して謝っただけじゃなく、俺たちに対しての申し訳無さも伝わってきた気がした。




『そんな……僕だってあの時、ジョージを……。』


『言わなくていい。』



キヌタニが何か言いかけていたのをジョージが止めた。




『それは俺たち二人だけの秘密にしておこうな?そうじゃなきゃ……俺たちが死んだ意味も無くなるような気がしてさ。』



『……そっか、分かったよ。』



すごく、キヌタニがジョージに対して余所余所しい……。


その理由の一端をキヌタニはうっかり俺たちに漏らしてしまったみたいだが。




『随分と苦しさも和らいだんじゃないのか?魂がさっきよりも明るくなっているのを感じるぞ?』



『うん……既に死んじゃったジョージと話せたことで、少しだけ自分が死んだことも受け入れられた気がする。……でも、まだみんなのことは許せないかな?』



そう言われて少し、頭痛が来た。



『そうか……そんなすぐに許そうとしなくてもいいだろ?時間が解決してくれることもあるだろう。旅立てるようになったら在るべき場所へ逝けばいいさ。みんなもいいよな?』




「ああ、俺たちを恨んで気が済むなら好きなだけ恨みやがれ!!」


「見下されて嫌だったなら、今度は俺のことを見下してくれて構わないからな……。」


「私も近いうちにそちらへ行くかもしれない。その時は飽きるまで罵倒してくれよ……?」


「俺に散々こき使われて大変だっただろ……。今度はお前が俺を好きにする番だからな!」




『そう……なら、当分は恨ませてもらうよ。』



それだけ言い残すとキヌタニの存在がふっと消えた気がした。





当分……それは何ヶ月、何年……いや、もっとかもしれない。


彼の姿を毎晩のように夢で見るかもしれない。



それでも……受け入れよう、自分たちが犯してしまった罪の重さを。



「ありがとうジョージ……まさか後ろの三人にも聞こえているとは思わなかったぞ。」


「声が聞けてすごく嬉しかった。……ジョージ、実は今、ミーシャが死にかかっているんだ。」



『ああ、知っているともシンタロー。この森で起きていることは全部、このジョージにはお見通しだ。……お前たちが把握してないことですらな。』



「把握してないこと……?」




『いや、何でもない……。なるほど、あの時と同じようにミーシャの精神面に入って助けられないか……ってか。』



説明するよりも前に俺の話そうとしていたことを喋られてしまった。




『うーん……あの時は何故か目を覚まさなかった、って感じだったけど今回は原因が明らかだよな。崖から飛び降りて頭にダメージを受けて、それで昏睡している……。さすがに前回とは状況が違いすぎるぞ?』



「……何か救う方法はないのか?」




『残念だが俺にはどうすることも出来ない。フジモンとかいう医者に頑張ってもらう他ないだろうな。……俺だってミーシャには死んで欲しくない。だが、こればかりは……。』



「分かった。俺たちの力で何とかしてみせる。」



ジョージに俺たちの心が読めていると言うこと、それは逆も然りだ。




〈死んでしまった俺が何でもかんでも教えてどうにかしてしまうのは何か違う気がするんだよ。だから、この森のお前たちが知らない所で何かが起きても教えるつもりはないし手を貸すつもりもない……。今回は特別だからな?ここからはお前たち、生きている仲間たちでどうにかするんだ!!〉




そんな気持ちが伝わってきたんだ。


俺は仙人の肩から手を放した。



「話せて嬉しかったよ、ジョージ。」


「ヤムチャ、よしだくん、本当に申し訳ないのだが、ここからは私と二人きりでジョージと話させてくれないか?」



そう言われたので二人も仙人から離れた。





さっきキヌタニが俺たちに漏らしてしまった感情……。



 あの日、ジョージが死んだ日の昼間、キヌタニは何かを打ち明けようとしていた彼の話をわざと妨害していた……。


どうしても阻止しなければならなかった……。



 理由までは伝わってこなかったが、キヌタニがジョージに対してぎこちなかったのはこれが原因だったのか?



そんな事を考えていると仙人もジョージとの会話が終わったようで墓石から手を離した。




「待たせたな……やれやれ、ジョージも変な所で律儀なもんだ……。」


「一体何を話していたんだ?」



「そうだな……『私は私のやり方でみんなを守ると宣言した』というところかな?」


「何じゃそりゃ、よく分からねえが……。二人を埋めてやるとしようや。」



俺たちは二人の上から土を被せた。


そして、手を合わせた。




絶対に二人のことは忘れない……。


四人とも同時に顔を上げた。





「じゃあ……まずは一度よしだくんの家に戻るか。」




「そうだな……ふう……。」



仙人は地面に座り込んでしまった。




「すまない……神通力を少し使いすぎてしまったようだ。」



「無理すんなよ?仕方ねえ、俺が運んでやらあ。」



ヤムチャが仙人を背中におぶった。




「ありがとうヤムチャ……キヌタニはずっとこの言葉を言って欲しかったんだな。」





『ありがとう』





どうしてその五文字が言えなかったんだろう?


言えと言われたらいとも簡単に言えたその言葉が……。




その後悔を反芻しながら俺たちはよしだくんの家へと戻った。

 読者の皆さんは一日に『ありがとう』って何回くらい言ってますか?

他人と関わる人ほど言う回数は増えるでしょう。

あまり人と会わない生活をしていれば言うこともないかもしれません。


 作者が思うのは他人と関わる限り、この言葉とは絶対に縁を切ることが出来ないと言うことです。

引きこもり学生だった時代と比較すると、一日で一生分の『ありがとう』を言っているんじゃないかと思うほどですね。


 随分と当たり前のことを言っているようですが、日々の当たり前に感謝をすると言うのは本当に難しいものです。

駄菓子屋でのただ食いは感謝されるべきことだったようで……(作者はそう思ってません)。


 ですが何事にも感謝の意を表しておけば、社会は随分と丸く収まるんじゃないかと思うのですよ。

世の中なんてちょろいものです。(投げやり)


 だからこの小説を読んで下さる人がいることに感謝をしていれば戦争が無くなるんじゃないかと期待したりして……。


 皆さん、本日も100エーカーの森を訪れて下さりありがとうございます。

私は感謝しているのでもっと世界は平和になってください!!(???)

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