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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第4章 悲劇の寸法線
109/162

4-20 肆、再会

ーー前回のあらすじーー


駄菓子屋を死守していたチッダールタもとうとう敵に攻め入られ、降参を余儀なくされてしまった。


 だが敵からは殺意を感じることなく、傷を負ったミーシャがタッキーに運ばれてきた際には率先して治療まで施す始末……。


 敵の見立てでは部隊の中に裏切者がいるのではないかとのこと。

追加でやって来た敵は駄菓子屋で彼らを保護すると言ってきたのだ!


 どうやら命の危険はない、そう思った矢先に突然チッダールタは気絶させられてしまった……。

果たして100エーカーの森はどうなってしまうのか!?


 もはや森の至る所に敵がいてもおかしくない状況です。

孤軍奮闘しているであろう彼はどうなったのでしょうか?

「はぁ………終わったのか??」



 東三叉路の辺り一面には死体の山、地面は真っ赤に染まり元の色がどうなっていたのかも想像がつかねえ。



森の外周に立っている木は燃えて、火の手はどんどんと広がっている。





今はこの場で、俺だけが立っている……。



そう、俺こそがこの森のリーダー、ヤムチャだ!!



崖から大量の敵が降りてきたと思ったら、こちら側に向かって突撃してきやがった!!



しかし何だか敵も怯えてたな、ピストルの弾もありゃ俺が避けなくても当たりゃしなかったぞ。




俺はとにかく敵を切り刻みまくった!


これ以上先には進ませねえぞという思いでノコギリを振り回してやった!




何人かは取り逃しちまっただろうが、ミーシャや仙人が何とかしてくれてるだろうよ。







南からの銃声も聞こえなくなっちまった……。



機関銃の音が聞こえたんだがよ、あいつはスナイパーライフルを持ってたはずだ。




……………。




くじらんとシンタローもあの敵の大群の中で戦ってたはずだが行方不明だ……。




……………。





いや、全員無事だろ!


今はそれを考えるよりも目の前の事態に集中しなきゃからねえからな。



 ちなみに野生人のおじさんは敵がいなくなるとどこかへ突っ走って行ったぞ、残党狩りにでも行ったんだろうな。





さて、敵はまだいるのか?


目視の限りは見つけられねえが……一度よしだくんに連絡したほうがいいか。




俺がポケベルを手に取った時だった。



何か光るものが俺の頭上を飛び去って行きやがった!




そして背後でドカーン!!という爆音が響いた!!




振り向くと……!!!





「お、俺の家が!!消し飛んでやがる!!!」



 嘘だろ……さっきまで我が家があった場所にはお気持ち程度の瓦礫があるだけで、残りは塵となって霧散しちまった。



飛んで来た何かは崖の方から来やがった!





……まだだ、まだ終わっちゃいねえんだ!!



これからは一体何が起こるって言うんだよ!





ガタガタガタ……今度は何か機械音が聞こえてきやがる。



そしてそれはどんどん大きくなってくる……!





「相手が何であろうと……俺が倒す!!」



自分に言い聞かせてから俺は北東の崖へと走り出した。







崖へ近づくにつれて機械音の原因の姿が大きく見えてきた。



 遠目じゃ何だか分からなかったが……どれだけ信じ難くても自分が見ているものを受け入れるしかねえようだな……。





「せ、戦車…だと……。」



 深緑色の光沢を持つその機械はテレビで見たことある戦車に違いねえ!!

そんな戦争に使うようなものまで出してきやがるのかよ……!!





「おやおや、随分と怯えているね?まあ、無理もないか。」



戦車の方から拡声器を通したような声が聞こえる。




……怯えているだぁ?んなわけあるかよ!!




「おいてめえ!!怯える余裕もねえくらい俺は怒ってんだぞ!!突然人の家を吹き飛ばすなんてどういう了見だぁ!?」



「ああ、あんな小屋が君の家だったのか、済まないね。あの程度の建物なら景気づけに破壊しても誰も困らないだろうと思ったんだが、これは失礼した。」




こいつ、1ミリも反省してなさそうな口調でよくもベラベラと……!!



「それだけじゃねえ、てめえらのせいでそこら中火事になってやがる!雨でも降らねえ限りこりゃ相当な範囲の木が燃え尽きるだろうよ!!」



ギギーーッ、という音を立てて俺の目の前に炎を纏った高木が倒れてきた。




「火事になってるのは我々のせいではないのだけどね……。君のお仲間が火炎瓶を投げまくっていたそうじゃないか。全く、うちの部隊の9割以上が君たちにやられるか逃げ出すかでほぼ壊滅だよ。」



「ふん、知ったことじゃねえな!!てめえらが勝手に襲撃してきて返り討ちに遭ってるだけじゃねえか!そもそもこの森を襲撃してる目的は何なんだよ!!」




「確かに部隊が壊滅したのは自業自得と言われると返す言葉もないが……とにもかくにも我々の目的はすでに達成されている……何とは言わないがね。撤退する前に隊長である私も挨拶に来たというわけさ。……もし目的が達成出来てなかったらこの戦車の出番だったというわけだが……この主砲の餌食にならずに済んでよかったね。」





訳が分からねえ……!



こいつら何がしてえんだ!!










「ねーねー、よしだくん……みんなだいじょうぶかな……?」




「………ああ、みんな無事だろう。くーちゃんは何も心配しなくていい。」



 俺はくーちゃんの方を振り返ることなく、監視カメラの映像を映しているモニターから目を離さずにそう答えた。



 くーちゃんには俺の発明品で遊んでもらっている。

もちろん以前のように試作品でケガをしたりすることはないようにしてあるさ。



 そしてこのシェルターはエリスの家のとは違って広く8畳くらいで作っているから、身動きを取るのにも苦労しない。




 ……あんな大群相手に怪我一つしていないわけがない。

みんなカメラに映ってないから安否は不明だが……。




自分だけ安全な地下シェルターの中で留まっていることに罪悪感を感じてしまう。




俺だって本当は戦いに行きたいんだ、でもきっと足手まといにしかならないだろう。




北のカメラは死体の海を映し出している……。



その周囲は火事になっていてここまで火が回ってこないか心配だ。





「ねえ……何かこのシェルターゆれてない?」



背後からまたくーちゃんの声がした。



そう言われれば……かすかに振動を感じるな……。





「ん?どわぁっ!?……なな、何だ!?!?」



俺はカメラに映ったものに衝撃を受けて椅子からひっくり返ってしまった。



「よ、よしだくん!!どうしたの!」



突然のことにくーちゃんが駆け寄ってきた。



「いや……何か今、とんでもないものを見てしまったような………。嘘だろ……?」



俺はくーちゃんに見せまいと、とりあえず死体の映っていない別視点に映像を切り替えた。





……いや、マジかよ!



どう見たってあれは戦車だ……。


あんなものに人間が敵うはずない……。



さっきカメラに映ったということは、もうすぐそこまで来ているということだ。




「くそっ!とにかくくじらんとシンタローに連絡だ!」



俺は一刻も早く二人に知らせようとポケベルで通話を繋げようとした。





「……………。ダメだ、二人とも出ない……。」




まさか、と思った。



いや、そんなはずはない!




そもそもあんな位置まで戦車が迫ってきたら二人とも音で気づくはずだ。


だからちゃんと撤退して……撤退中だろう!





「ねえ……みんな本当に……へいき、かな……?」




平気なわけがない。



だがそんなこと、言えるわけない。



そんなことを思っているとシェルターの中により大きな振動が来た!



「こ、今度は何だ!?!?」




幸いにもシェルター自体が壊れる気配は微塵もない。


俺は再びカメラの映像を確認した。



だがもうどのカメラにも変わったものは映ってなかった。






……おや、…………えているね?まあ、……ない……。




!?!?




こ、この声は……!!


拡声器を通しているようだが……もしかして!!




「くーちゃん!絶対にシェルターの外に出るなよ!!」



それだけ言い残して俺はシェルターから出ようとした。




待て……もしこの上が火事になってたら……。



いや、今はそんなこと関係ない!!



俺はシェルターのロックを外して地上に飛び出した!!




……幸い、家まで火は回ってきていなかった。





……になってる………………のせいでは……………ね……。





また聞こえた!




やっぱりそうだ!!


間違いない!!




俺は声の聞こえる方に向かって一目散に駆け出した!!









銃声とはまた違う音が聞こえてくる。


戦車の主砲だろうか……?



でももしあの声が……そうだとしたらどういうことだ?



俺は頭の中がこんがらがってきた……。










「やめろー!!それ以上は……!」



遠くでヤムチャが叫んでいるのが見えた。



そして彼は崖の方向に走り出した!




「おっと、無駄だよ?」



今度は機関銃を乱射するような音が聞こえてくる。




「なっ!?……さすがに崖を上りながら弾を避けるのは厳しいぞ!!」







「ヤムチャー!!無事か!?」



俺の声に反応してヤムチャがこっちを向いた。



「よ、よしだくん!?な、何でここにいやがんだ!!早く戻れ!!」



 当然だがヤムチャはとても驚いて、俺に怒鳴り返してきた。

でもヤムチャに何を言われようが、俺は戻るつもりなんてない。




「よしだ、くん……?も、もしかしてそばにいるのか!?」



拡声器を通した声が俺のことを呼んだ。



そして俺はヤムチャのもとまで辿り着き、戦車と対面した。





「やっぱりそうだ!!博士……ドーベル博士ですよね!!」



ドーベル博士……俺の、育ての親だ……。





「ああ……確かに面影がある!5年ぶりくらいかな?……随分と逞しくなったね。」




博士は戦車のてっぺんから顔を出した。




「博士の方は……あまりお変わりないですか?まさかこんな形で再会するなんて……。」




本当に……どうして博士がこの戦車に……?





「……あーーー。あーー!?!?ちょちょちょっと待てーー!!!あまりのことに何も考えられなくなってたけどよ!敵部隊の隊長が博士……よしだくんの育ての親ってどうなってやがんだぁ!?」



硬直していたヤムチャが突然叫び出した!




「そうか、君は森のお仲間に私のことを話したんだね?今の私はヴェルト・マスリニア第6戦闘部隊隊長、ドーベル将軍さ。」




「……あなたは研究者だったはず、どうして戦闘部隊の隊長なんかに……。」



俺の知ってる博士は争い事なんて嫌いだったはずだ。



「まあ、昇格といったところかな。おかげで部下が随分と増えたよ。」


「そうだったんですね、出世おめでとうございます。」



なんて言ったが正直おめでたいなんて心の中では微塵にも思ってない。



博士が、戦闘部隊に……とても嫌な感じがする。




「さてと、このまま再会の感慨に浸っていてもいいのだけど仕事はスムーズに行わないとね。我々の目的は既に達成されて後は帰投するだけなんだが……よしだくん……と呼ぶことにしよう。この戦車に乗って私と一緒に来ないか?」




博士と、一緒に……?




俺は何を言われているのか分からなかった。




「馬鹿言ってんじゃねえ!!誰がてめえらなんかと一緒に行くかよ!!」


「勘違いしてもらっては困るね。一応私としてはこの森に彼を預けていたつもりだったんだが……つまり、連れて行くというよりは引き取りに来た、という方が正確かな?」




「博士……。」


「もちろん、君が冷遇されることはもうないよ!君に酷いことをする奴は私が組織から叩き出してやるからね。今の私にはそれくらいの権力があるんだから!」




もう、俺の知っている博士とは違う。


その権力とやらに溺れてしまっているようだ……。





「博士……会えて嬉しかったです。……でも!!あなたとは一緒に行きません!僕の知っているドーベル博士じゃない、今のあなたは権力に溺れたただの侵略者だ!」



……言ってしまった。だけど、これでいい……。





「残念だよ……君が良い方向に成長出来ると思ってこの森に預けたのに、どうやら変な考えを植え付けられてしまったらしいね。」



「頭がおかしいのはてめえの方だ!!二度と来るんじゃねえ!!次は戦車なんか無しでこの森に来てみやがれ!……容赦なく切り刻んでやる!!」


「そんな物騒なことを言わないでくれよ?じゃあ……しばらく経ったらまた戦車でこの森に来るとしよう。よしだくんの考えが変わって私たちのもとに来ると言うならいつでも歓迎……な、何を!」




突然、博士の体が戦車の中に吸い込まれた!!




「な、何だ??仲間割れでも起きたか??」



ヤムチャが少し動揺している。




博士……本当に変わってしまった。





「うるさーい!!!僕だって!!僕だって!!!うわああああー!!!!」



突然、戦車から悲鳴に近い叫び声が聞こえた!!


それに続いて戦車が暴走を始めた!!




これは、キヌタニの声!!




「こらっ!!やめないか!!ちょっ!普通に危ないから!!!」


「僕だって!このくらい出来るのに!みんな、僕をバカにして!!僕がやってやるんだ!!!」



戦車はぐるぐると回りながら近くの木々をなぎ倒す!!




「おいどういうことだ!!あいつがグルだっていうのか!?」


「こらっ、ギアが壊れる!人質は大人しくしてろ!!」



キヌタニが人質だって!?



「訳が分かんねえ……だがあの戦車を止めるならチャンスかもしれねえ!!」



ヤムチャは崖を上り始めた!





「僕をバカにしたこと、後悔させるからね!!」



パーン!という音ともに主砲が発射された!!


弾は的外れに森の外へと飛んでいった。



だがあんなものがこちらに向かってきたらたまったもんじゃない!



「ヤムチャ、早く止めてくれ!!」


「分かってるが……うおおっ!!おい、止まれっ!!」



 彼は不規則に動く戦車の軌道に惑わされている。

避ける方向を間違えてキャタピラに巻き込まれでもしたらひとたまりもない!!



いくらヤムチャの馬鹿力でも戦車の装甲はノコギリじゃ破壊できないだろうしな……。




「止まるもんか!!僕はもう誰の言いなりにもならないんだから!!!」




そのまま戦車は暴走を続け……崖から転落した!!




「何をするんだぁー!!だから言っただろう!」




ガッシャーン!!という爆音を立てて戦車は逆さまに転落した……!!



そして戦車からは誰の声も聞こえなくなった。





「こんな装甲に守られてんだ、きっとキヌタニも隊長も死んではねえだろうよ……。」



ヤムチャは崖から飛び降りてきた。



「はっ!ヤムチャ危ない!!」



と、燃えた高木がヤムチャの頭上に倒れてきた。




「おっと!このくらい気づいてたぜ?」



ヤムチャは余裕そうに高木をかわした。




「さすがにそうか……って、まずい!!!戦車に火が!!」



燃えている高木は戦車のすぐそばに倒れている。




「弾薬に引火したら爆発する!!」



俺は戦車に駆け寄った。


絶対に俺が助けるんだ!!



あんなこと言ってしまったけど、それでも博士は……!




「そうか!!って、よしだくんダメだ!!」



ヤムチャは戦車から飛び退いて、さらに戦車へ突撃する俺をひょいと抱えて走り出した!




「ヤムチャ、離してくれ!!やめろー!!降ろしてくれーーっ!!!」



嫌だ、離せ!



博士、いなくならないでくれ!!!





「いやだーーーーぁっ!!!!!」



俺の叫び声に反応したかのように戦車は一瞬、白い光に包まれ、そして大爆発した!!!





「うわあああーーー!!!!」



俺もヤムチャも爆風に吹き飛ばされた!





………は、かせ……………。




………どうして……………。




……………やだ……………。





………………………………。

 まさかまさか……敵の黒幕がよしだくんの育ての親、ドーベル博士だったとは……。

そしてどういうわけかキヌタニが人質に……!?


 結局はヤムチャが一人で戦力面を全部解決した面白くない展開になってしまいました……。

ご覧になっている方はご愁傷様です(適当)。



 戦車の中にいた二人はどうなってしまったのか?

倒された仲間たちは無事なのか!?


次回、襲撃シーン最終回です!

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