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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第4章 悲劇の寸法線
106/162

4-17 壱、開戦

ーー前回のあらすじーー


 とうとう襲撃当日を迎えてしまった森の住人たち、まず手始めに非戦闘員であるフジモンとエリスをシェルターに叩き込むべく早起きをしてよしだくんはミーシャを迎えに行った。


 寝相の悪い彼女もよしだくんに怒鳴られることで何とか起きたが、エリスの方はリヤカーに投げ込まれ、さらにはシェルターに投げ込まれようとも爆睡を続けるのであった……。


 そんな爆睡中の彼女を横目に、フジモンはこの森から脱出するべく方法を模索していた。

彼は襲撃に便乗してこの森から抜け出すことが出来るのか?



 前回ミーシャも言っていましたがエリスとフジモンのどちらかが裏切者であった場合、もう片方は本当にシェルターで大人しくしている場合ではないのですが……。


 しかも面白いことに二人とも100エーカーの森から出たがっているので、人質になれるかもしれないことを考えるとこれはチャンスかも……?


 読者の皆さんはこういう状況でもう一人が裏切者だった場合どうしますか?

多分殺されないようにするのが精一杯だと思いますが……。


お菓子でもあげておくと幾分かは相手の機嫌が良くなりそうなのでお勧めです!!

めちゃくちゃいるじゃん……。



50、いや、100人を超えてそう……。



こんな数とてもじゃないけど相手になんか出来ないよ!!




こちらは森の北側を監視しているくじらん。



ついに俺たちの戦いが始まろうとしているんだ……。



 時刻は朝の8時半、フジモンが落ちてきた宇宙船のクレーターの影に隠れて敵がいないか双眼鏡で探っていたんだ。



 そうしたら………電波塔近くの崖の上に何者かが集結し始めたんだ。

オレンジ色の目立つ制服?にヘルメット、銃も持っていることは分かった。


まだ目立った動きはないけど次の瞬間には突撃されるかもしれない……。




「はぁ、タッキーどうしよう?」




 俺は隣にいるタッキーに話しかけた。

まあ、返事をしてくれるわけじゃないけどさ。



タッキーは表情一つ変えずに俺のズボンのポケットをじっと見ていた。



そして俺は気がついた。




「そっか、よしだくんに連絡しよう。」



俺はズボンのポケットからポケベルを取り出した。


多分よしだくんも監視カメラであの大群には気がついているだろうけど……。






「……もしもしよしだくん、あの大群なんだけど……。」



『ああ、随分と大掛かりに来たものだな。北東の崖が最前線のようだ。あの大群に一人で突っ込んでも無駄死にするだけだろう……。』


「じゃあ、どうするの……?そうだ、ヤムチャに行ってもらおうよ!ヤムチャだったら100人相手にしても余裕で戦えるんじゃない?」



『まあ確かにそうなんだが………俺が恐れているのは今お前の目の前にいるのが囮の部隊だった時だ。もしかしたら背後から何倍もの勢力で襲いかかられるかもしれないぞ?』



「ええっ………!?あの何倍って……そんなことになったら終わりだってば!!」




『もちろんまともに戦えば、な。敵を倒そうとしなくてもいい、とにかく戦場をかき回してくれ。タッキーに乗って駆け抜けるんだ!』



敵陣のど真ん中に行けってこと……だよね?



「撃たれたら終わりなのに……よしだくん、無茶言うね!!」



さすがに俺も口調が強くなってしまった。



『……嫌なら逃げろ。俺だってお前に死に行けとは言いたくないさ。だが、それが一番の最善策だ。進軍が始まってからあの数を迎撃してもそれこそ勝ち目はない。』



いつも真面目なよしだくんがこう言うんだ。



やるしか……ないんだね。



「分かった、やってみるよ。」



『よし、シンタローにもそちらへ合流するように連絡する。いいか、決して深追いするな。相手がパニックになったら退いてもいい。くじらん………頼んだぞ。』



よしだくんは通信を切ったみたいだ。




ヘルメットはしてる、防弾チョッキもしてる。


 よしだくんからみんなに配られた、駄菓子屋の装備が強化されたものを着けているから多少はやられても……やられたくはないけど。




もしかしたら今日は俺の……人生最後の日になるのかな……?



そうなら父さん、母さん………優しく出迎えてほしいな。









「よぉーしくじらん、俺たちで奴らをボコボコにしちゃおうぜwww」



 俺に合流してきたシンタローはいつも通り、ハイテンションで……そんな大声出して敵に気づかれたらどうするの!?



ちなみにシンタローも俺と同じ装備をしてるからヘルメットが邪魔でシンタローの顔は見えない。


そして俺たちは少し移動してよしだくんの家の近くまでやってきた。




「それにしてもあんな大群の中に……突っ込んでる途中で蜂の巣になっちゃいそうだけど……!」


「うーん、分かりみが深いな〜wやっぱり仕込みをしておくか☆」



シンタローはそう言うと火炎瓶を構えて、100mは離れている敵の密集地点に遠投した。


着弾するとすぐに火の手が上がった!





「うわああっ!!!」


「何だ!何が起きたんだ!!」



そしてすぐに敵の悲鳴が聞こえてきた。



「よーし、それじゃ敵の背後に回り込むか!www」



シンタローはタッキーに飛び乗った。





「火炎瓶一本で敵をあんなに混乱させるなんてすごいや!」



俺も続いてタッキーに跨る。



「行くぞタッキー!敵の背中を突くんだ!!www」



シンタローがそう言うとタッキーは全速力で走り出した!






すぐに目の前が密林で覆われる。




……ついに敵と戦うんだ。


俺は鞘から剣を抜いた。



そして剣の刃を見た俺は……恐ろしいことに気がついてしまった。




もしかしなくても……これから人を殺すんだ。



戦うんだから当たり前だけど……そんな当たり前のことがどこか遠くに感じられていたんだ。



今まで何の実感もなかった。





怖い、怖いよ……。


俺は人殺しになるなんて……。




 ふと、現実に引き戻された。

離れた場所であちこちから火の手が上がっている。


タッキーに乗っている間にもシンタローは火炎瓶を投げ続けていたみたいだ。



「よしよし、敵陣は既に乱れてるな!もっとかき回してやろうぜ!!www」



遠目に火だるまになって転がっている敵が見えた。





「でも、殺らなきゃああなる………。」



無意識に声に出ていた。



「くじらん、怖がってたらあっという間に死ぬぞ。死ぬのはな、人を殺すことよりもっと怖い……覚えとけよ。」




そして、シンタローに俺の心を悟られていたみたい。


シンタローは敵陣を凝視したまま、とても真面目な口調でそういった。




死にたくない。




ここで死んでたまるか!




「そうなんだね……俺、殺すよ!絶対に死ななーーーい!!」



俺の中で何かが弾ける音がした。




体が熱い!


エネルギーが溢れてくる!



もう体が疼いて……早くこの剣を振り回したい!!




「くじらん、俺は遠くから敵をかき回す!俺は死なない、お前も死ぬな!!」



シンタローはタッキーから飛び降りた。




シンタローは死なないよ。俺もね!!!






敵まで15m……、



10m……、



5m……、





「ん!?な、何だ!?!?」


「行くぞー!!!」



俺は目の前の敵目掛けて剣を振った!


ゴキリ、という敵の骨をへし折った確かな感触があった。



次の瞬間、敵の首が宙を舞った……。




「……殺った。」



特別な感情はなかった、でも……、



「もっと、もっとだー!!!」




気がつけば叫んでいたんだ、もう自分が止められない!





「あ、あいつやばいぞ!!」


「来るなー!!」


「みんな逃げろー!!」



敵の悲鳴を聞くと余計に力がみなぎる!




「うおおおーっ!!!!」



俺は戦場を駆け抜けるタッキーの上で剣を振り回した!




剣を振り回すたびに敵の体の破片が宙を舞う!


辺り一面が血の生臭い空気で覆われていく!!


剣も、タッキーも、俺の体も真っ赤に染まっていく!!!




「あいつに構うな!突撃!パラシュートで降下だ!」



冷静な敵が周囲に呼びかけた。



 すると、周囲のパニックムードが消えて、敵の流れが森の内側に向いた。

敵は一目散に崖からパラシュートで降りていく。




「タッキー、殺るぞー!!」



俺がそう叫ぶとタッキーはさらに速度を上げ、俺が切り損ねた敵を跳ね飛ばしていく。



「全員切り刻んでやるー!!はあーーっ!!」




ガギーン!!!



戦場に甲高い金属音が鳴り響いた。




腕が……痺れるっ!!!



剣が何かに引っかかった!


俺は振り回していた剣の先端を見た。



「……力こそあれど……技術は大したことないな。」



細身の男がハルバードで俺の剣を止めていた。



その状態から男がさらにハルバード一振りすると、俺はタッキーから振り落とされてしまった!



「ぐあっ……!!!何で!!」



男は俺の前で仁王立ちになっていた。



「お前ら!こいつに手出しは無用だ!!…俺がやる!」



そして周りの敵に呼びかけた。





「……舐めてるの?おりゃあっ!!!」



俺は力任せに男の脳天めがけて剣を振り下ろした!



ギーーーン!


金属が擦れあって火花が飛び散る!



「うぐっ……あ…まいっ!!」



俺の一撃は受け止められ、そして上手くかわされた!



振り下ろした剣は地面にめり込んでしまった!




「隙ありっ!」



やばいっ!



俺は剣を引き抜いて男の一突きを横に飛び退いて避けた。



避けたけど、俺の右胸に刃が浅く刺さった!




「ぐっ……いた……くない!」



 ……よしだくんの防弾チョッキが俺のことを守ってくれた。

チョッキには大きな切り傷が出来ている。



「ふん、そんなものか。本当に武道の心得はない素人なのだな。」




武道の心得……そうか!



俺はヤムチャから受けた指導を思い出した。



もっと素早くコンパクトに動くんだ!




タッキーはさっきからずっとその場で俺たち二人のことをじっと見ている。



「やっぱり俺のこと舐めてるよね?……そろそろ本気を出すよ!」



俺は剣を構え直した。



「……目つきが変わったな。さっきまでは自我を失くしていたようだが今は違うようだ。面白い、今度はこちらから行くぞ!!」



ヤムチャには劣るけど、それでも男は凄まじい勢いで間合いを詰めて俺を斬り伏せてきた!



落ち着いてっ!


刀身で……受けるっ!!



ギリギリとまたしても火花が散る!


そして、受け流すんだ!!


刃を滑らせてハルバードの射程からすり抜けた!




今度はこっちの番だ!


足元からナナメに斬り上げる!!



「うっ……重いっ……!」



それでも男は俺の攻撃をつかさず受け止めてくる!




無理だっ!離れろっ!!


俺はぐらつきながらも後ろに飛び退いた!



その時、俺の足は何かで滑ってしまった!!



「うわっ………いっ!」



すぐに立ち上がろうとして地面に手をついた時、べちょりと何かが絡みついてきた。





「これ………血だ。」



俺たちの周囲一面は血と死体の海になっていた。





これ……全部……俺が……。




「事の重大さに気がついたか?お前がここを地獄に変えたんだ。さっきまで生きていた人間を寡黙な肉の塊に変えた……そういうことだ。」




はっ!!!




男は……俺のすぐ目の前に立っていた。



今の隙……間違いなく殺られてた!!




俺が勝ったら、この男も肉の塊に……そんなの!


でも、俺が負けたら……俺だってこんな風に!!




嫌だ!



そんなの……絶対に……!!



「嫌だっ!!!」



俺はしゃがんだまま剣を横に振るった!




「ぐっ!危ない……!」



男はハルバードの柄の部分で俺の攻撃を受けてきた!




シンタローの言ったことが分かった!!



殺すことより死ぬことのほうが怖い!!!





なら……殺すしかない!!



「このっ……がぁっ!!!」



俺は押し合いに負けて跳ね飛ばされた!



 背中にグチャリという生暖かくて柔らかい感触が伝わってきた!

それが何かを俺は考えないようにした!



「負けないよ!!せいっ!!」



俺は剣を振ると見せかけて奇襲で男の胸を突こうとした。




ガリッ!





一瞬だけ、上手くいくと思った。


剣はハルバードの柄と刃の付け根の間に引っかかった。



「捕まえたっ!!」


「ああっ!!」



そしてハルバードを一振りすると、俺の剣は手から離れて男の後ろに放り出されてしまった。



「……勝負あったな。」



男はハルバードを片手に尻餅をついた俺の方へ近づいてくる。



剣はもう使えない……!!




どうする?どうにかしないと!!


俺は死体の海で少しずつ後退りする。




そして、カツンと右手に硬いものが当たった。


それを俺はチラリと横目で見た。




これは……ピストル!



俺はすぐさま男に銃口を向けた!




「これ以上近づくな!!」



そして吠えた!


でも、男は足も止めなければ顔色も全く変えなかった。





「お前に……それが使えるのか?」



「!?」



更に男は迫ってくる。


もう後ろは崖でこれ以上下がれない。



「どうせ銃なんて握るのも初めてなんだろ?慣れないことはするものじゃない。」



そしていとも簡単に男は俺からピストルを手で取り上げて、自分の真後ろに放り投げた。





「さてと、終わりにしようか?」



男はハルバードを構えた。



くっ……。




「タッキー、ここにいちゃダメだよ!早く別の場所へ行って!!」



俺はさっきからずっと動かないタッキーに叫んだ。




「…………。」



タッキーは一瞬だけ俺の顔を見て、どこかへ走って行った。




「こんな状態で馬の心配をするなんて……大したものだよ。」



もう……どうしようもないんだもん!!


何か、何かないの!?







「お前もな、後ろを取られてよくもそんな呑気でいられるもんだな。」



男の背後から聞き慣れた声がした。



「なっ……!?」


「武器を捨てろ。10秒以内にだ。」



いつの間にかシンタローが男の頭にピストルを突きつけていた!!





「シンタロー、生きてたんだ!」


「当たり前だろ、俺が死ぬわけない。……さあ、早く捨てろ!」




「……これは厄介だな。」



男は構えていたハルバードを手から離した。




 その瞬間、ハルバードが地面に落ちるよりも早く、男は振り返ってシンタローの腕を掴みピストルを奪った!



そのままシンタローを地面に投げ倒して彼の首を足で踏みつけた!




「うぐっあっっ……。」



まだだっ!!



俺は男に飛びかかってピストルを奪おうとした。




「遅いっ!!!」



でも男は俺がピストルを奪うより早くハルバードを拾うとその柄で俺の腹を突き飛ばした!




「あうっ!!!」



そして俺はその弾みで崖から放り出された。






世界がスローモーションになる。




必死に男の足を払いのけようともがくシンタロー。




あたりを見渡せば火炎瓶のせいかあちこちで森林火災が起きている。




崖の下では野生人のおじさんが走り回って敵と交戦している。




そして男は俺に手を差し伸べてくる。







世界の時間の流れが元に戻った……?



気がつくと俺は崖で宙ぶらりんになっていた。


いや、男に腕を掴まれていたんだ。




「重っ……ほら、引っ張り上げるからしっかり捕まっておけ。」



俺は言われるがままに崖の上まで男に引っ張り上げられた。






どうして……?



助けなければ俺は死んでいたのに……?



俺は呆然とその場に座り込んでいた。



横ではシンタローが倒れたまま咳き込んでいる。




「さすがに焦ったぞ。これだけは先に言っておくけどな、俺らはお前たちの命まで取るつもりはないんだよ。」



そんなことを言われても……。


俺は思考停止したままだ。





「そ、そうか……道理でお前以外の人間は……殺傷武器を持ってなかった……スタンロッドとか……銃も大半は実弾じゃないんだろ?」



シンタローが息絶え絶えに言った。



「ああ、脅しの空砲とか麻酔弾もあるけどな。お前らときたらこっ酷くやってくれたもんだ。だがまあ……久々に本気を出せて楽しかったよ。」





楽しかった………?


意味がよく分からない、もう何も考えられないや……。



「とは言え、まだ俺たちの目的は達成されてない。これ以上お前たちに暴れられたら計画に支障が出るからな。このまま戦闘から離脱して安全な場所に移動してもらうぞ。」




えっ、計画って何だろう……?


それから安全な場所って??




「うっ!?!?」



な、何だろう!?


首にすごい衝撃が走って……。




目の前が……暗くなって……。




もう………………分からないよ……………。

 ついに襲撃が起きてしまいました。

実はそんなこと起きないんじゃない?と思っていた方、残念でした。


 気が付いた時には目の前の敵を肉塊にしているくじらんはもしかしたら相当やばいやつなのかもしれません(キ〇トじゃん)、正気に戻った時の落差も激しいですし……。


長い間引きこもっていたので戦闘力が未知数でしたが、実は彼も相当な戦闘狂なのかもしれません。



 敵は彼らの命を取るつもりはないとのことですが、信用していいのやら?

だとしたら敵の目的は……?


そして男一人を相手にボコられたくじらんとシンタローの運命は???



次回はミーシャの出番です!


彼女は味方をハチの巣にせずちゃんと戦えるのでしょうか??

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