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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第4章 悲劇の寸法線
105/162

4-16 零、準備

ーー前回のあらすじーー


 野生のおじさんが森の住人たちに溶け込んでいるのを見て、更には明日の戦いに参加することまで決まっていたことを知ったヤムチャはどこか不満げに話し合いの場から去ってしまったのだった。


 しかし、さすがはロリコン……くーちゃんから激励を受けただけでやる気を取り戻し、完全復活を遂げるにまで至ったのだ。


 一方のエリスはここ最近ずっとミーシャの家でぐうたらな日々を過ごしており、翌日が襲撃当日であることにも気が付いていなかった。


 彼女はこの森での自分の行動に思いを巡らせ、何と100エーカーの森からの脱出を決意した!

しかもスタークを連れて行くという縛りプレイのような難易度でだ……。


果たしてエリスの逆襲劇が幕を開けることはあるのだろうか?



 ずっと体を拘束されて食事も他人に食べさせてもらっていては、いざ解放されても自分じゃ何も出来なくなってそうです……。


やはり教育と言うのは少し厳しめにしないといけません。


 厳しい環境に身を置くと言うことで、100エーカーの森へボーイスカウトで子供を送り込むと言うのは……いえ、さすがに虐待で訴えられそうですね。

ピピピピピ…………。




遠くで目覚まし時計のけたたましい音が聞こえる。





もうそんな時間だろうか?




目を開けてみる………窓の外はまあまあ明るい。


時計に目をやると5時半だ。




 もう季節は冬の入り口にあるのに意外と日の出が早いんだな。

ドイツでもここは東側のエリアなのかな?



そんなことを思っているうちに意識がはっきりしてきた。



僕は……100億年に一度の名医、フジモンだ。



そして今日は11月30日、襲撃当日………。







「うーー…………ん、朝か………。」



 時計の音が止まった。

よしだくんも目を覚ましたみたいだね。




「フジモン………起きているか?」



よしだくんは横になったまま僕に声をかけてきた。




「……起きているよ。」



寝起きで重い喉から声を絞り出した。





「ついに……この日が来てしまったのか……。」



よしだくんはベッドから這い出してきた。




「モタモタしている時間はない。フジモン、まずはお前とエリスをシェルターに避難させたいんだが行けるか?」



電気の点いてない部屋でよしだくんがこちらに問いかけてきた。



「いつでもいいよ、どうせ僕はリヤカーに揺られることしか出来ないしね……。」



 移動するだけでも人の手を借りなければならないのはずっと歯痒い思いをしているけど、それも今日で最後だと思いたいね。










コンコンコン、よしだくんが玄関のドアをノックする。



「ミーシャ、起きているか?寝ているなら起きろ?」




ドタン!という音が家の中から聞こえてきた。



「お、跳ね起きたみたいだな。」



ミーシャ君はいつも朝寝坊しているイメージだからやっぱり寝てたみたいだね……。



ガチャ………ゆっくりと玄関のドアが開いた。





「いたいよぉ………よしだくん、おはよう……。」



でも出てきたのはミーシャ君ではなく髪をボサボサにしたくーちゃんだった。



「お、おはよう………ミーシャは起きたのか?」


「ううん……おねえちゃんの寝相がわるくてベッドから蹴り落とされたの………。」



 うん?自分で落ちたんじゃないのかい?

くーちゃんくらいの歳の子なら寝てる間にベッドから落ちるなんて珍しいことじゃないよね?


そんなことを思っていたらよしだくんは無言で家の中へと入って電気を点けていた。



「おいミーシャ!もう朝だぞ!!……何で足に枕があるんだ?」



そんなよしだくんの不思議そうな声が家の中から聞こえてきた。




「おねえちゃん……いつもおきたら体がさかさまになってるの……。なんでなのかな?」


「ミーシャ君は夢の中で暴れてるんじゃないかな……?本人の前では言わないけどね……。」




「………聞こえてるわよ。」



玄関のドアを叩きつける音とともに目があまり開いてないミーシャが出てきた。




「あっ………お、おはよう…………起きたんだね。」



思わず出てくる言葉が棒読みになってしまう。



「次言ったらぶっ飛ばすわよ……。軽く準備したら先に二人にはシェルターに入ってもらうわ。」



「あ、うん………それでその、エリス君は?」



「エリスなら………ここよ!」



ミーシャ君は一瞬だけ家の中に戻るとエリス君を抱えて……、



「いだっ!!」


「ふげっ!?zzz………。」



こちらに投げ飛ばさないでくれたまえ!!



そしてエリス君はどうして寝てられるんだい……!?









「エリス君の家……始めて中に入ったけど何で照明がどこもピンク色なんだい………!?」



たった今、僕とエリス君は地下のシェルターに放り込まれようとしている。



「そうね、これは家主の脳内を再現しているってところよ。製作者はシンタローだから気になるなら今度聞いてみればいいんじゃない?」



「あいつはどうでもいい箇所ばかりに拘るからな……。」



ミーシャ君は興味が無さそうに言い放ち、よしだくんは呆れたようにため息をつく。





「グー…………ガー…………。」



そしてエリス君ときたら未だに爆睡中だよ。


ここまでくると図太いと言うか……もう大物感あるよね!



「さて、じゃあシェルターに入ってもらいましょうか……それっ!!」



「んがっ!!!」


「ぐふっ!………zzz〜」




痛いっ……僕とエリス君は順番に地下のシェルターに投げ込まれてしまった。



そしてエリス君、まだ起きないのかい……上に乗っかられていると少し重いんだけどね………。



「それじゃ、私たちは他にやることがあるから。喧嘩しないで仲良くするのよ?まあ、どちらかが裏切り者だったらそれ以前の問題だけど。」



そんなミーシャ君の捨て台詞とともに僕たちはシェルターの中に閉じ込められてしまった。



 幸い、シェルターの中にはピンク色ではない普通の照明があるから視界は奪われずに済んでいる。

でも……高さは140cm、1畳も広さがないような場所に大人二人は流石に狭くないかな……?



って、狭いのは僕の体型のせいじゃないよ!!




「ゴー………んんっ……スターク…………。」



 ……今日だけで何度目になるか分からないけど、エリス君は本当に起きないなあ……。

せめて、僕の上からは退いてほしいんだけど………我慢するしかないのか………。









……今日のみんなの動きは、



よしだくんはくーちゃんと彼の家のシェルターに避難する。


そこから森の外周に仕掛けたカメラで敵を見つけてみんなに情報を送る、いわば管制塔の役割だ。




そしてみんなで違う方角を監視する。


 ヤムチャ君は北東、ミーシャ君は南東、シンタロー君は南西、チッダールタは西、くじらん君は北で待機する。



ちなみにくじらん君は早く移動できるようにタッキーに乗っている。


あと、野生人のおじさんは敵を感知したら森の中心からその方向へ真っ先に突っ走っていくらしい。




 そしてスターク君なんだけど……やれやれあんな非人道的なこと、僕は反対だったのに……。

考えるだけでも恐ろしいよ。



これで全員だね、いや……えっと、駄菓子屋の店主は何をするんだろう?


 今回の作戦には一切関わってないような気がするんだけど、まさかいつも通り駄菓子屋を開くつもりなのかい!?


……正気とは思えないね、敵の略奪に遭って補給地点にされるのがオチさ!



 まあ、僕とエリス君も戦力外だから店主のことをとやかくは言えないんだけどね。

今は無実だと証明するために大人しくしているしかなさそうだな……。







……このところ思っていたんだ。



このままじゃこの森から脱出する術がない。



 交通機関もなければ他の集落がどこにあるかも分からない。

森の外へ出れば野生動物の餌食だ。




 悪い場所ではないけれど、一生をここで終えるのはさすがに勘弁だから故郷へ帰れなくともどうにかして都会へ行きたいのさ。



今回の襲撃は僕にとって好機なのかもしれないんだ。



 もしこの森が制圧されたら上手いこと人質になり、身代金を引き換えにモンゴル政府へ交渉するように持ちかけたい。


 自分で言うのも何だけど僕は宇宙で行方不明になった有名人だ、相手は危険な組織かもしれないけど僕のことをすぐに殺したりはしないで有効活用すると思う。



襲撃が撃退されたら残党を探して行動を共にするのが選択肢になるかな。




……何はともあれ、この機会を逃すわけには行かないんだ。



僕はこの森から必ず抜け出してみせる!

 エリスに続いてフジモンまで100エーカーの森からの脱出計画を立て始めたようです……。

これで襲撃が起きなかったらフジモンはどんな反応をするんでしょうね?www


 「僕は一生ここで生きていくしかないのかい!?!?」とかオドオドしてミーシャにいじくり回されるのがオチでしょうが()



 しかしあんな狭いシェルターに二人でいたら閉所恐怖症になりそうですよ……。

フジモンが閉所恐怖症になるのが先か、エリスが目覚めるのが先かどっちでしょうかね?


間違った方は罰として二人と一緒にシェルターの中に入って頂きます。


 次回は遂に森の住人たちの戦いの火蓋が切って落とされます!

まず先鋒として立ち向かうのはあの二人だ!!

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