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100エーカーの森の悲劇  作者: カンナビノイド¢39
第4章 悲劇の寸法線
103/162

4-14 ミーシャがまともで怖いです

ーー前回のあらすじーー


 シンタローの愚かな思い付きでお姉ちゃん(ミーシャ)を賭けたよしだくんVSくーちゃんの勝負が繰り広げられたわけだが、結局勝者は決まらず、敗者はシンタローとなった。


 それからよしだくんの提案で野生のおじさんの様子を見に行こうという話になり、訪ねてみると彼は飢えと渇きで弱っていたペットのようになっていた。


 食料を用意しようと一同が駄菓子屋に向かう中、シンタローは一人で彼を尋問するのであった。

どうやら彼は20年以上も一人で密林を彷徨っていたらしい……。



 太平洋戦争で各地に潜伏していた日本兵が、戦争の終わった後もずっと現地でサバイバルをしていたという記録もありますが……どうやって食い繋いでいたんでしょう??


 読者の皆さんはそんなジャングルや無人島に放り出されるのと、100エーカーの森に放り込まれるの、どちらがいいですか?


 100エーカーの森だと食料には困らない一方で、機関銃を持ったサイコパスに襲われたり、全裸で走り回る変態ストーカーにつけ回されたり、宇宙一の芸術家に家を魔改造されるかもしれません!!


 どちらを選ぶかはお任せしますが、災害が多い今日ではいつからでも野生動物と死闘を繰り広げるサバイバルが始まってもいいように備えておいた方がいいですよ?


「27年間も一人で……………そんなのすぐに信じろと言われてもな…………。」



 よしだくんは俺の話を聞いてどこか唖然としていたww

面白くはあるけど、当然の反応だなww



「でも僕としてはそれだけ長い時間一人で居たというのは逆に腑に落ちるところがあるね。」


「どういうところよ?ずっと密林で暮らしてて、服がボロボロになっちゃったから全裸で走り回ってるってこと?」




「まあ、それもあるんだけど…………でも君たちの話ではジョージも2年半のサバイバルで服を着てなかったそうじゃないか。」


「だとしたらフジモンが腑に落ちたってのは何なの?」



「君たち、どうにも不思議なことがあると思わないかい?………喋り方だよ。」



喋り方だって?



あっ………確かにww



「それはカタコトってことだよな?wwww」


「その通り、奇妙じゃないかい?大人がこんなにぎこちなく喋るなんてさ……………。」


「言われてみれば………このおじさんもれっきとした人間で昔は普通の生活を送ってたのよね。じゃあどうしておじさんはこんな喋り方になっているのよ?」


「これは僕の予想だよ?彼はずっと一人で暮らしていたんだ。つまり、誰かと会話するという行為が27年間に渡って無かったんじゃないかって考えた。そうすると、導き出される結論は……。」




え、待って待ってーー??ww


それってまさか???www



「まさかだと思うが『おじさんが人間の言葉を忘れちゃってる』とか言わないでくれよ?www」



「どうして分かったんだい…………?僕の中ではこれしかないって思ったんだけどね……。」


「人間の言葉を忘れるなんてそんなことあるかよwwwだったらミーシャは今頃……ひっ!!w」



「ん?気にせず続けて??」



いや、銃口を脳天に突きつけながらそういうこと言うなよwwww



「シンタロー、このおじさんのようなケースなんて早々ないだろう。普通ならこうだ、みたいな常識は捨てたほうがいいぞ?」



「そう、だよね……でもシンタロー、ちゃんと常識あるの?」



ちょっとくじらん?w



何で唐突に俺の悪口が出てきたの?wwww




「まあ、よしだくんの言うことは一理あるかもなwwでもおじさんは何だかんだで俺の言うことをちゃんと理解してたぞ?www聞いたことに対してちゃんとした答えが返ってきたからなwww」


「確かにそうじゃなければシンタロー君がさっきまでおじさんから色々な情報を聞き出してた、なんてことは出来ないんだよね…………。」



「フジモン、だったら喋り方を忘れているってことはないか?小さな赤ん坊だって親とか周囲の人間の会話を聞いて発音を学習するんだ。会話が一切存在しない環境に長く置かれたことで……、」





「ちょっといい!?………みんなでそんな推測なんてしなくても、このおじさんに直接聞いたらいいじゃない!!」




ミーシャ!?wwww


……何でお前がそんなまともなこと言うんだよ!www



今夜は蝉の雨とか降ってきそうwwww



「そ、そうか!!こちらの言葉が理解出来るならそれが可能じゃないか!どうしてもっと早く言わないんだい!?」


「いや、みんな分かってるもんだと思ってたのよ!」



「と、とりあえず……お、おい、悪いが少し食事を中断してくれないか?」




「ガブガブ…………ウウ?オ、オレ、タベル、ヤメタ。」



 おじさんはよしだくんの言われた通りに駄菓子を手から離したなwww

裸なのもあるんだろうけど、何だか忠犬に見えるわーwww




「本当に言葉が分かってるみたい………おじさん、すごいね。」


「いや、人間だから当たり前なのよ??」





「えっと………とりあえず君に聞きたいんだけど、君は昔からこんな喋り方をしていたのかい?」



「チ、チガウ、オレ、フツウ、シャ、シャベッタ!!イマ…………ムリ。」


「なるほどな……じゃあやっぱり喋り方を忘れたってことなのか?おじさん、そこらへんの自覚はあったりするか?」



「ゥーーー………、オレ、シャベル、ナイ……ナカッタ。コト、バ……イラナ、イラナイ、コトバ、ワカ……ラナイ。」



「どうやら肯定の返事のようだなwwwwまーー、何だかムカつくけどフジモンが言っていた、長いこと密林で生きてたことが腑に落ちたって言う感覚は正しそうだなwwwww」




「やれやれ…………ごめんなさいね、いっぱい食べて頂戴。」



ミーシャはおじさんに駄菓子を薦める……えっと、リコリス持ってきたの誰だよ?www


犯人は一人しかいないだろうけどww



「待て待てって!ついでだから脅迫状のことも一応聞いておこうじゃないか。悪いがもう少しだけ食べるのを休憩してくれ。」


「オレ、マツ、ガマン、スル。」



「助かる………今から以前俺たちに送られてきたある手紙の内容を読ませてもらう。万が一知ってることがあれば教えてくれ。





十一月末日、君たちの住む森を襲撃する。

ヴェルト・マスリニア 第六戦闘部隊隊長


君たちに会う日を楽しみにしているよ。





……という短文なんだが、まあ知らなければ……ん!?」





「ウウウウウ…………!!ヴァガアアァァーーーー!!!」


「ど、どうしたの!?どこか痛いの!?」




おじさんは脅迫状の内容を聞くと突然表情が変わって怒りで満ちたような雄叫びを上げた。




「ヴェ…………ヴェルト………………、アアアアアーー!!!!」


「ねえ、どうしたのよ!大丈夫なの!?」



ミーシャはおじさんの肩を揺さぶる………いや、体調悪いならそれは逆効果だってww



「ユ、ユルサン!!ヴェルト、マス……リニア!!アイツラ、コロスーー!!!」



 おじさんは手に持っていたリコリスを握り潰した!

これはきっとリコリスに対する恨みじゃないだろうなww



「も、もしかして……知ってるのか!?このヴェルト・マスリニアと何か関係があるのか!?」


「ア、アイツラ、オレ、ウラギリ!!オレ、ヒトリ!!!」


「もしかして、さっきシンタロー君に話していた、組織に裏切られたって話かい!?」




「だとしたら、このヴェルト・マスリニアって組織は人殺しを普通にやってるってことか……。」




「オレ、タタカウ!!アイツラ、ユルサン!!」


「戦うですって!?」


「オレ、アイツラ、ノド、カミツク!タベル!!」



 おじさんは物を噛み切ることが到底出来なさそうなボロボロの歯を剥き出しにした。

噛み付いて食べるって……wなかなかにヤバいこと言うよwww




「おじさんはさ、ミーシャの話だと桁外れの身体能力を持ってるんでしょ?だったら……俺たちと一緒に戦ってもらったほうがいいんじゃない??」


「くじらん君!!彼は怪我人なんだよ、医者として彼を戦場に送り込むわけにはいかない!」



唐突にフジモンが強い口調で切り込んできた!



いつもオドオドしてるのに、医者の立場になった時だけ何だかすごく、こう…………なwwwww



「フジモン、お前の言いたいことは分かる。でもな、俺たちの方だって戦力は多いに越したことはない。それにだ……。」



よしだくんはおじさんの瞳を見つめる。



「襲撃があるかないかは別として、この機を逃せばもう復讐のチャンスはないかもしれない。………これはまたとない機会なんだ、どうする?」



 おじさんは一瞬たりとも考える素振りを見せなかった。

よしだくんから顔を背けずに即答した。



「タタカウ!!オレ、イノチ、カケル!!!」


「そんな!もし戦ってる途中で傷口が開いたら………!!」




「決まりだな。……悪いがフジモン、人生にも優先順位って物があるよな?確かに怪我が完治してないまま戦場に出るのは危険かもしれない。だがな、彼はこのままだと一生後悔する。お前だって自分の患者に後悔するような人生を送ってほしくはないだろ?」




「うっ………はぁ、よしだくんに言われると敵わないよ。分かった、彼がどんな怪我をして帰ってこようとも僕が救ってみせようじゃないか!」



「うーん、フジモンがそう言うとなんか説得力がないよのねー。」


「み、ミーシャ君!?やっぱり僕は信用出来ないのかい!?!?」


「そりゃまあね、あなたが信用されないのはもうどうしようもないわよ。」



ミーシャ、相変わらずフジモンには遠慮がないなwww




「とにかくそれならそれでヤムチャやチッダールタとも共有しておいた方がいいよな。」



「確かに。でも今日は遅いし仙人はおじいちゃんだからもう寝てるかもね……。」


「仙人は200歳超えてそうだもんなww夜とか7時に寝てるんじゃねえの?wwww」




「いや、あのおじいちゃん意外と夜遅くでも私たちと一緒にいることが多かったじゃない。それに深夜アニメなんて見てるから尚更夜更かししてそうだわ………。」



うーん、今日のミーシャは本当にまともすぎて怖いわーwwww




「まあ、とりあえず今日は解散とするかい?」


「そうだな、また明日の昼頃にここで集まろう。このおじさんも居てもらった方が話もスムーズに進むだろうしな。」


「今日は色々あったから疲れちゃったね………あっ、ここの駄菓子も片付けないと。」



くじらんは持ってきた駄菓子を回収しようとした。



「オ、オレ、ゼンブ、ゼンブ、クウ!!」



おじさんは残っている駄菓子を腕で抱きかかえた。




 全部!?ww俺でも正直こんなに食べれるか怪しいけどwww

だってまだミーシャのおやつ3日分くらいあるぜ??www



「さっきは食べる手を止めてしまったしな。食べ足りないならここに置いておこう。」



「ア、アリ、アリガ……トウ。」



おじさんはぎこちなく頭を下げた………うーん、頭頂部の禿げ方が絶妙だわーwwww





「それじゃあ俺は見たいアニメがあるから、みんなおやすみー!」



くじらんが一抜けで電波塔から足早に去っていった。



「やれやれ、深夜までアニメ見て起きるのは昼頃になるんじゃないかしら?」


「それはあるかもしれないけどよ……アニメも見てないのにいつも昼頃まで寝てる奴がいるってマジー?wwww」



「はぁ!?どういうことよ!そんなニートみたいな生活を送ってるゴミは私が根性を叩き……あ。いや……何でもないです。」





ミーシャさーん?



ついにお前にもネボスケの自覚が芽生えたようだなwwww










はぁ……やっと食事が出来そうだ。



洞窟を出た私、チッダールタは空腹で倒れそうだ。



 あのヤムチャとスタークとかいうバカコンビが何かしでかさないかずっと見張っていたが、常に一触即発だったからな。


 いつまで経ってもその場を離れることが出来なさそうだったから、神通力でしばらく動けなくなってもらったんだ。




「全く……二人ともあれほどまでに気を張り詰めていて疲れないのだろうか……?」



それなりに疲れてしまった私は集会所までひとっ飛びする元気もなくゆっくりと夜道を漂う。



私の頭の中は明後日の襲撃のことで一杯だ。



襲撃は間違いなく起こる。



本当に彼らを守り切れるのだろうか………。



もし失敗してしまったら……いや、失敗なんて許されないんだ、そんなこと考えてはいけない。




 事実として私が神通力を使って敵を一掃すれば被害を最小限に抑えられるだろう。

でもそれが正解だとは思えないんだ。




彼らが自分たちの力で……乗り切らなければ。


もちろんそれにはリスクもある。


そこをどうにかするのが私……???




 何やら近くから不穏なオーラを感じ取ったぞ。

考え事は一旦中止だ。



このオーラは一体どこから?


いや……探るまでもない、そこの駄菓子屋だな。



駄菓子屋の電気は既に消えている。


そしてこんなオーラをキヌタニが出すことはないだろう。




となると……?


私は一応姿を消してから駄菓子屋の中を覗き込んだ。






「あーあ!!君さあ、どういうつもり?ここんとこ気色悪いプレイばっかりして……。」




「僕は…………こんなこと…………。」


「言い訳なんて聞きたくない!ほら、住人たちにバレないよう元の場所に縛っておくから!」




「コルク……僕、服が着たいんだけど……。本当に寒くて寒くて………。」


「はぁ!?その状態じゃ服なんて着られないでしょ、拘束が解かれたって分かる真似は厳禁よ!!じゃあ、近いうちにまた来るから!!」




それっきり甲高い声は聞こえなくなりオーラも消えてしまった。





 いなくなったのか……?急にオーラが消えるなんて不気味だ。

私は姿を消したまま駄菓子屋の中に侵入した。





「……どうして………なんで………こうなってるの………?」



暗闇の中で全裸のキヌタニが床に座り込んで呟いていた。


キヌタニ、お前は……襲撃のことを何も知らないのだよな。





本当に……知らないのだよな???




心の中でキヌタニに問いかけるがもちろん返事は返ってこない。



ここで見たことは誰にも言わないほうが良さそうだな。



私はキヌタニを横目に駄菓子屋を後にした。








 真っ暗な集会所には一人分の料理が残されていた。

ミーシャがちゃんと私の分を残しておいてくれたのだろう。


駄菓子屋のアイスもいいが、こうやって人の温かみが感じられるご飯もまた良い。



人の温かみ……彼らはきっとその大切さを理解せずとも自然と感じているはずだ。




私も、もっと早く知りたかったよ。




 この料理を食べたら……行かなければならないな。

私にはまだやることが残っているんだ。








皿洗いまで済ませた私は廃寺へとやって来た。



一度、深呼吸をして感覚を研ぎ澄ませる。



ここが……ジョージの死んだ場所………。


他の場所とは少し違うオーラがすると思ったが、それが理由だったか。




私は精神を集中させる。




ジョージ………お前が遺した思いの欠片、使わせてもらうぞ。




 意識を体の中央に集約させ、廃寺に存在するエネルギーを吸い取っていく。

するとジョージの生前の感情が私の精神にも微かに流れ込んできた。



 彼の感じたもの、喜怒哀楽……シンタローの話で聞いたように私は彼と感覚を共有しているような気になった。



「私が言えたことではないが魔術とは不思議なものよ。さて、では行くとしようか。」







次に私が訪れたのは電波塔の比較的高い足場の上だ。




「ここらへんが良さそうだな………では、やるとしよう。」



私は先ほど吸い上げたエネルギーを脳天に集中させる。





この行いがどんな結果を生もうとも後悔などしない。



いや、後悔しない結末にするだけだ。





「さあ、いくぞ!はああああーっ!!!!」



脳天のエネルギーを私は外界へ吐き出すように爆発させた。




一瞬、世界にヒビが入り粉々に砕け散った。



それは本当に一瞬の出来事だった。



次の瞬間にはもう何の変哲もない、いつも通りの風景が広がっていた。



しかし、風が吹き荒れていて、流れている空気も明らかにさっきまでとは別物だ。





「後戻りは出来ないが……これでいい。」



襲撃を受けるならこうでもしないとこちらが厳しい状況になるだろうからな。



さて、神通力でかなり体力を削がれてしまったし、明日に備えて帰るとしよう。

 いつもは変な人が急に真面目になると、みんなびっくりして頭がおかしくなったんじゃないかと心配することがありますよね……。


 普段がおかしいのにどうして真面目になったらまたおかしくなったと思われてしまうのか……。

人類が抱える永遠の謎ですね!!


 作者が白飯をいつも単体で食べているからって、たまに他のおかずと一緒に食べるとすごく変な目で見られる時があります……。


 読者の皆さんはお米を単体で食べる派ですか?

お米は単体の方が美味しいと私は思うのですが……。



電波塔でチッダールタは一体何をしていたのか?


それはまだ彼にしか分かりません。


でもきっと、100エーカーの森にとって大切なことなのでしょう。


四章はまだまだ続きます。



キヌタニが服を着れるまで?……それもまだまだかかることでしょう。

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