1-9 白昼の打ち上げ花火
ーー前回のあらすじーー
エリスとキヌタニの同棲生活から一夜明け……、駄菓子屋はエリスがキヌタニにDVを加える拷問場へと変貌してしまっていた!
さらにはシンタローの暗躍により駄菓子屋にはコスプレ衣装まで売られていることが発覚してしまった!!
衝撃的な真実と力尽きたキヌタニを目の当たりにしたヤムチャたちはどうするのか!?
意外と他人への拷問が好きな人は多いらしいですよ?(ソースは私だ!)
読者の皆さんはキヌタニにどんな拷問をしてみたいですか?
拷問ってすごく種類が豊富なので気になったら本編に進む前に調べてみると良いかも!
「「「………………。。。」」」
シンタローの説明を聞いた三人は呆れて言葉が出てこなかった。
四人の間には沈黙が流れていたが、それを妨げるようにまた駄菓子屋から誰かが出てきた。
「ちょっとぉ~キヌタニ逃げんじゃないわよ~!……あれぇ?みんな私抜きで何してるのぉ~?」
それは顔を赤くしてふらふらと歩いてくるエリスであった。
彼女は誰がどう見ても相当酔っていた。
「あ、本当に悪魔の格好をしてるな……。」
よしだくんは少し引き気味に言葉を零した。
「うへへ……そーよ、カワイーでしょ~??」
エリスはそんなよしだくんの肩を抱き寄せたが、
「うわっ、酒臭いぞ!離れてくれ!!」
よしだくんは慌ててエリスの腕を振り払い4mほども距離を取った。
「む~何よぉ、連れないわねぇ~(-o-)」
「つーか、シンタローはさっきまでどこにいたんだ??中を覗いた時は見当たらなかったぞ。」
「ああ、駄菓子屋の裏に抜け道を作ってたww」
シンタローが指差した先は駄菓子屋の奥で、そこの壁にはヤムチャ一人が通れるくらいの歪な穴が開けられていた。
「なんかねぇ~食い逃げがしやすくなるんだってぇ~。」
「なるほどね!!!シンタロー、珍しく有能じゃないの!!!」
ミーシャが機関銃を空中にぶっ放した。
彼女の発砲はシンタローへのねぎらいのつもりだったようだが……、
「びっ、ビックリするだろ!いくら真上にだからっていきなり機関銃を撃つんじゃない……。」
よしだくんはもはや条件反射でとっさに手で頭を抱えて伏せた。
「はぁ!?何よ、じゃあよしだくんが的になってくれるの!!?」
ミーシャはまた豹変してしまったようだ。
よしだくんの方に機関銃を構えて、今にも撃とうとしていた彼女を急いでヤムチャが後ろから羽交い締めにした。
「おい!!落ち着け!毎回毎回暴れやがって!!そろそろ機関銃没収するぞ!!」
「何ですって!!!?これは私の命よ!!」
ヤムチャとミーシャがいがみ合っているが、ミーシャもヤムチャの馬鹿力の前には対抗できずどうにもならなかった。
そうこうしているうちによしだくんは何かを思い出したようだ。
「あっ!!そうだった!今日の正午に花火が打ち上がる予定だからみんなにも知らせに来たんだ!駄菓子屋に行けばそれなりの人数がいると思ったが全員居るとは驚きだ。」
よしだくんはもちろんスタークを数に入れずに話していた。
「花火だと?よしだくん、いつの間にそんな物を作ってたんだ?」
ヤムチャは不思議そうに首をかしげた。
「ちょっと待ちなさい!花火なんて私の撃ってる祝砲と大差ないじゃない!!何でよしだくんは良くて私はダメなのよー!!?」
ミーシャは納得がいかない様子でヤムチャの腕の中でまだ暴れていた。
「多分そろそろだぞ……。」
よしだくんは北東の崖の方を見た。
すると何かの悲鳴が崖の方から聞こえてきたのでみんなそちらを向いた。
「ん~?今何か聞こえたぁ~??」
酔っぱらってるエリスにも悲鳴は聞こえたようだ。
しばらくすると遠くの方で何かが空へと舞い上がっていくのが見えた。
「……ぎゃあああああーーーー!!!何が起こってるのーーー!!?誰か助けてーーーー!!!!」
「何か」が「何か」を噴射して空を飛んでいた。
「えっと……あの花火、喋ってない??」
あまりの出来事にミーシャも抵抗を止めた。
「いやwww普通にあれwwww」
「ああ、ボールだ。」
「なんだと!!!?」
「嘘よねー!!?」
「んあ~?何それぇ~?」
シンタローは気づいていたようだがミーシャとヤムチャは全然分からなかったようだったし、エリスに至ってはボールの存在をそもそも知らなかった。
「……いやいや、何でボールだって分かったのよ?」
ミーシャは疑うような目でシンタローを見た。
「いやいやwwあの油の質といいあの体格といいボール以外にいないだろ?ww」
シンタローはさも当たり前のごとく返した。
「……体格がここから見えるかはともかく、どうしてお前はボールの油の質なんて知ってんだよ、気持ち悪いやつだな……。」
ヤムチャが引き気味にシンタローを見た。
「お前まさか、ボールの体に穴を開けて油を出してみたことがあるのか……?」
よしだくんはシンタローに近寄って尋ねた。
「え?急にそんな大真面目な顔してどうしたの?wwもちろんあるぜwあいつの油、めっちゃ勢いよく吹き出すのよww若干血も混じってたからさすがに怖くなってその穴塞いじゃったけどなwwww」
笑いながら(笑ってない時など無いような気がするが)シンタローは言うが、対照的によしだくんの顔はみるみる青ざめていった。
「なあ……今回はどうやってあの穴を塞げばいいんだ??」
よしだくんの言葉を聞くと全員が向かい合って沈黙した。
その間にもボールは油を吹き出しながらどんどん上昇していった。
「うわあああー!!!地面が遠くに見えるー!!?何でー!!!??」
そんな悲鳴とは対照的に誰も口を開くことはなかった。
彼らには、どんどん上昇して地上から遠ざかっていくボールをただ眺めることしかできなかった。
「諦めろ……ボールはもう……。」
1分くらい経ってからヤムチャが口を開いた。
その頃にはもうボールは空高く舞い上がりすぎたのか、姿がどこにも見えなくなっていた。
「んもーう、そんなことどーでもいーからぁ~、みんなで飲みましょーよー♪」
エリスはそんなことを気にせず、ずっと安定して酔っぱらいモードだった。
「そうだな……ボールを偲んで乾杯しよう……。」
ヤムチャはお酒を取りに行こうとゆっくり駄菓子屋へ歩き出した。
「ボール……あなたはニートでどうしようもない奴だったけど、いなくなった方がなんて私は……いや、やっぱりいない方が良かったかも……。」
ミーシャはボールがこの森に必要だったのか思い直し複雑な顔をしていた。
「ああ……俺は何てことをしてしまったんだ……。ちょっと宙に浮かせて怖い思いをさせてやろうと企んだだけなのに、こんなことになるだなんて思ってなかったんだ!!」
よしだくんはその場にへたれこんで俯いた。
「あ、あれ?ww空の様子が何かおかしいぞ!ww」
突然シンタローが空を見上げて呟いた。
4人がそれに倣うと、若干空が赤くなっているのが確認できた。
次の瞬間、雲の切れ間から炎の玉が飛び出してきた!
「何だよ!?隕石か!?」
ヤムチャはそばにあった少し太めの木の棒をひっつかんで構えた。
何やらこの森に落ちてきそうな軌道だった。
「いや、そんなものじゃ太刀打ち出来ないだろ……。」
よしだくんは冷静に突っ込んだが、その間にも隕石は轟音をあげてどんどん迫ってきていた。
「ん?何か……隕石の音に混じって聞こえてこない??」
「何かって何よぉ~?」
ミーシャに言われてみんな注意深く耳を澄ませた。
「確かに……ノイズみたいなものが聞こえるな。」
よしだくんにも轟音とは別の音が聞き取れたようだ。
「待てよwwあれもしかしてwwwボールじゃね??」
シンタローが目を細めて言った。
が、今度は誰も驚かなかった、というより呆れた。
「いやいやいやいや、ないない!ボールはもうお星さまになったんだ!!!」
よしだくんは首を振りながら地味に酷いことを言った。
「いや、だってあの燃え方www間違いなくボールだろwそれにボールが燃えてる時の叫び声ってあんな感じじゃなかったか?www」
シンタローは首をかしげながら笑った。
「だからどうしてあんたはボールの燃え方とその時の叫び声を知ってるのよ!!?」
ミーシャが激しく(機関銃でバシバシとシンタローの肩を叩いて物理的に)突っ込んだ。
「そりゃwww燃やしたからに決まってるだろwwwさすがに森林火災になりそうだったからすぐに消火したけどなw」
「「「あ、ああ……。」」」
エリス以外の三人はもはやどうやって突っ込むべきなのかも分からなかった。
「へえ~なにそれぇ~おもしろそうね~。」
エリスだけはさっきから本当に呑気なものだった。
もちろん五人が喋っている間も隕石?ボール?は待ってくれず地上へ接近してきていた。
「……って、ちょっとー!!?どんどんこっちに近づいてるわよ!!!?」
「俺たちの近くは平気そうだが森に落ちたらどんな被害が起きるか分からねえ!落ちたらすぐに周囲の状況を確認するぞ!!」
「分かった!!ミーシャ、ヤムチャ、シンタロー、行くぞ!!」
四人は隕石の落下予測地点へと走り出した。
「え~!!?ちょっと待ってよぉーーー!!!!うえぇ、気持ち悪い……◆◇●┼┗┛┃└┳※△!」
ヨロヨロとエリスも四人の背中を追いかけようとしたが、飲み過ぎが祟ってすぐに気持ち悪くなり胃の中を空っぽにせざるを得なくなった。
体重500kgの人間の体に穴を開けると油を噴き出してどっかに飛んでいくらしいです……。
↑ここは試験範囲外だから安心していいよー♪
ところで作者は人の体に穴を開ける拷問と言えば「鉄の処女」くらいしか知らないのですが……
他に何かあったら教えてください!(そう考えるとよしだくん怖い……)
他人に火をつけようとするのなんてさすがにシンタローくらいだわー。
恐ろしいわー。真似できないわー(しないでもろて)
シンタローくらいになると燃え方の個人差で誰だか分かるんだね、すごいですね(棒)