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道楽と 復讐と  作者: 刺猟
3/3

師と 弟と

--えっと…ここはどこなんだ?暗い。いつからこんな所にいた…?


ダメだ、全然思考が追いつかない。とりあえずここから離れよう。


そうして僕は光を求めて歩き出した。けど、一向に何かが見える気配もない。


「おい、君!」


さっきまで誰もいなかったはずなのに、突然そんな大きな声で呼ばれたので少し驚いた。


「誰ですか?」


そう問いを投げかけた。

声の主の男性は若干高めの声で応えた。


「ふんそうだな…私は旅の者だ。君は名をなんと言う?」

「あ、えっと……あれ?」


そう言えば、なんて呼ばれていたっけ。自分がいったい何者なのか、それすらも分からないでいた。


「そうか、記憶が…とにかくここは危ない。着いて来なさい。」


僕はその時は何も疑わず、その自称旅の人に着いて行った。

なんたって、記憶は暗いところから始まったし、自分が何者なのかすら分からない。何をしようにも行く宛も無いし、仕方がなかった。

そしてなによりも、この人なら何か知っているんじゃないかと考えていたからというのもあったと思う。

こうして僕とあの人は出会った。そして、これが最大の人生の間違いであったと、この時は見当もつかなかった。




それから、いったい何度の朝を迎えただろう。

僕はすっかり自称旅の人の家に居着いてしまった。

周りは木に囲まれ、少し歩くと大きな湖がある。

そんな森の奥にある小さな家だった。


「すみません、ずっと居させてもらって。」


そんな感じで、僕はその人に感謝と申し訳なさを表しながら言った。


「ああ、大丈夫だよ。君には少し興味もあるしね。」


そんなことをその人は言った。いったいなんの興味だろう。やっぱりこの人は何かを知っているんだ。


「ところで、記憶はどうだい?名前くらいは思い出してほしいものだね。」


そこで僕は思い出そうと試みた。どんな名前だったか…確か、僕の名前は…


「カ…イ?」

「お、思い出したのかい?」

「確か、カイ…だったような。そう呼ばれてた?感じがします。」


何か違うような気もしたが、今はそれしか思い出せなかった。だが、そこまで思い出せただけでも充分だろう。これから少しずつ思い出していこう。


「カイ だね。分かった。これからはそう呼ばせてもらうよ。」


本当のではないかもしれないが、名前で呼ばれるのは少しいい気分になれるものなのだな。と僕は思っていた。


「あ、じゃああなたのこと、僕はなんて呼べばいいんですか?」


思えばこの人の名前を全く聞いていなかった。せめて、少し呼びやすくして欲しい。


「私か…そうだな、師匠とでも呼んでもらおうか。」

「……え?」


当の本人はとてもニコニコしながらそう言っているが、反対されるとは思わなかったのだろうか?だがあまりにもおかしな事を言われたので僕は、何故だと聞き返す気力も出なかった。


しかし、いつしか僕はその人を本当に師として仰ぐようになっていた。



それは、魔法を教わったからだ。



どうやら僕はもともと、魔力という魔法を使うための力の源を持っていたらしい。師匠はそれを感じ取ったから僕に魔法の使い方を教えてくれたのだと言う。

つまり僕は、記憶を失くす前も魔法を使っていたのだ。何か思い出すためにも、いち早く習得しなければと僕はとても努力した。


そうして数週間後

僕は自分の顔に両手を被せる。そして、師匠の顔を強く想像する…少しして手を離すと…


「ど、どうですか?師匠」

「うん…そのまんま私の顔だ。驚いたな…まだ教えて一週間だぞ。いくら元々魔力を持っていたって、初めての大人でも完璧になるまで半年以上はかかるのに…やはり記憶は無くても体が覚えてるものなのだろうか。」


僕が1番適正のあった変化魔法を成功させると、珍しく師匠が驚いていた。と言っても、一緒に過ごしたのはまだ1ヶ月足らずではある。しかし、それでも分かる特徴が1つ。

師匠は基本、ずっと微笑んでいる。とてつもなく喜んだり、泣いたり、怒ったり、いつも冷静なのでそういう表情は一切見られない。だが、今日初めて師匠が他の表情をした。


なんだか頑張った甲斐があったな。


「全く、なかなかの有望株が見つかってしまったものだ。」


そう言って師匠は笑った。

その時の師匠の豊かな表情を僕は決して忘れまいと、じっくりと目を凝らして見ていた。




しかし、翌週からは少し調子に乗りすぎた。


どうやら、見た目を詳しく想像できる動物なら姿まで変化できるらしく、その能力を使い面白半分で師匠にイタズラを仕掛けてしまった。

当然ながら師匠には不気味とも思えるあの笑顔でこっぴどく叱られ、その日の家事全てを押し付けられた。




「カイ、魔法は悪用するためにあるのでは無いんだ。悪戯も例外ではない。今日みたいなことは二度としてはいけないよ。」


夕食を済ませた後、師匠から再度念を押すようにそう言われた。

昼間に師匠の怖さを知ったので絶対に逆らう気にはなれないし、逆らう理由もないので「はい」と、テーブルを挟んで反対側に座る師匠に返事をした。


これから、イタズラはやめよう。絶対に。



そう誓ってから約半年

僕も変化魔法だけではなく、身を守るための魔法もいくつか習得していたそんな時期にちょっとした事件が起こった。


「どちら様ですか?こんな夜遅くに、こんな森の奥まで。」


最初はそんな声だった。多分、師匠だ。


「な、なぜ気付かれた!?」

「い、いかん撤収だ!」


侵入者だろうか。僕は部屋の扉からこっそり声のする方に目をやると師匠の他に複数人いた。

恐らく気付かれないように侵入したつもりなのだろうが師匠に気付かれ、逃げ出そうとしている。


「逃がしませんよ。」


師匠がそう言うと魔法によって恐らく1人捕まった。


「な、この魔法…お前右王か!?」


右王?何のことだろう?


「その話はいい。何が目的ですか。」


僕は師匠がその質問を出したところで耳をすました。


「逆に、なんだと思うよ?右王様よ。」


「…カイか」


僕?何故僕が狙われるのだろうか?


「なるほど、あの人は今そう名乗ってるのか。隠す気があるんだか無いんだか…」


いったい何の話なのだろうか。侵入者はなんだか僕を知ってるような口振りだ。ここで僕が出ていって聞いてみるか?


「あなたは、カイの何を知っている。」


僕が出るまでもなかったようだ。師匠が先に質問を投げかけていた。やっぱり少し様子を見よう。


「そう簡単に教えると思うかい?」


「まあ、そう言うと思っていましたよ。とりあえず今回は何もされなかったので帰してあげましょう。ですがもしまたこのような事があれば、ただじゃ置きませんからね。」


「右王がこんなにも甘い奴だったとはな。きっと後悔することになるぜ…」


そう言い残すと解放された男は黒い霧となり消えていった。結局、僕の事は分からず仕舞いだったな。


「もう出てきてもいいですよ。カイ」


流石にビックリした。

なるべく気配を隠して覗いていたのに…

やっぱり師匠はすごい。

僕は参ったというような顔をしながら師匠の前に出た。


「バレてましたか…」


「ああ、ほとんど聞いていただろ?そろそろ私の事も教えなくてはね。」


「師匠、右王というのは…」


そこで少しの間師匠は息を吸うと口を大きく開けた。


「私は、本王の護衛役 右王!この世界のトップを支えてきた男!」


師匠は突然胸を張り、背筋を伸ばし、手を胸に当てて大きな威厳のある声でそう言った。

僕はその後の詳しい説明で、世界に本王と右王と左王がいるというのを知った。というか何となく思い出したと言うのが正しいかも。


「まあ、王達の説明はこの辺にして、さっきの男の話だ。」


「そうです。師匠はなぜあの男を逃がしたんですか?」


「追跡魔法を付けたんだよ。何処から来たのか調べようと思ったが…だいぶ優秀な魔法士だ。もうバレて対策されてしまった。」


それほどの魔法士が僕を狙うって、一体何事なんだろう…


「そこで提案だ。ここにとどまるのは危ないからカイは旅に出るんだ。」


僕の頭の中にはいくつかはてなマークが立った。


「旅…ですかっていうか、動き回った方が危ないと思うんですが…」


そう師匠に問いかけるとその表情を変えぬままあの人はなぜか少し自慢げに言った。


「それは当然、ボディーガードを雇ってね。」






「いったいどういう人がいいんですか?」


僕はある魔法士の紹介所の魔法士一覧表を難しげな顔をして見ていた。


「資金は私が出す。雇い料が高い人でもいいからこなした仕事が多い人や経験がある人を選ぶんだ。」


と言われても正直ピンと来ない人ばかりで誰も選ぶ気になれなかった。僕と共に旅をして、いざという時僕を守れる人だ。写真と経歴や仕事歴だけでは選ぶのに情報は不十分だ。

だがそんな時、1人の少年(?)が目に入った。


「この顔…ヒロ…?」


「決まったかい?ってこの子は新人だぞ。」


そう言ったあとに師匠は何を見たのか小さく「そうか」と呟き


「いいでしょう。この子にしなさい。」


「えっ、いいんですか?新人だって…」


「そう、だから育てるんです。……この子を雇ったら1度ここへ連れてきなさい。」


ボディーガードを育てる…なんと無茶苦茶な計画だ。だが、右王である師匠がそう言うのだ。なにか思惑があるのだろう。従っておいて損は無いはずだ。

そんな事を思いながらすぐにでも旅に出られるように支度を進めた。


そして翌日、思い立ったが吉日とは言うがこんなにすぐ師匠に送り出される(半ば追い出される)とは思わなかった。


「じゃあ、行ってきます。」


「ああ、気を付けて。」


そう言葉をかけられた僕は変化の魔法をかけてどこの誰かもわからぬおじさんの顔になってひとまずはここらで一番大きな街、ミヤの街へ向かった。

森を抜け、近くの村から馬車に乗り、小さな街から汽車に乗り、長い長い旅の第一歩を踏み出した。

こんにちは刺猟です。

ひっさびさに投稿しました。

本当は書く気なんて無かったんです。

でも完成させなきゃなんか可哀想だなと思い始めたので書きました。

何とか完結までは持っていきたいので頑張ります。

それではまた

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