きっかけと 理由と
こんにちは刺猟です。
なんか、パッと浮かんだ話が、うまく形にできたらヤバそうな感じだったのでちょっとやってみます。前回の異世界のやつ同様に三部作でやってこうと思います。(前後する場合あり)
というわけで今回もお付き合いください。
それでは後書きで。
物事のきっかけなんてものは案外小さいものだったりもする。しかし、反対に大きなきっかけもあったりする。例えば、8年前の小さな村で起こった魔法種襲撃事件だ。
とても穏やかな昼下がり、小さな村の小さな学校で少年少女達は元気に魔法を学んでいた。
「はい、皆さんいいですか?魔法は感情が大事です。怒りや憎しみなどの負の感情に任せて撃つと自分より強い相手には何の役にもたちません。」
「じゃあどうしたら強い人を倒せる魔法が撃てるんですか?」
少女は先生に問う。
「そうですね、楽しいことや嬉しいことを考えるのが1番いいですね。それが基本と言ってもいいでしょう。」
少女達はとても関心を抱いていた。
「他には魔法の面白い話は無いんですか?」
少年が問う。
「ではこの話はどうでしょう。」
生徒達は身を乗り出して話を聞く
「魔法は自分の魔力を超えて撃つことはできません。超特大魔法や、自分より強い魔力の持ち主の力や記憶を奪ったりですね。ちなみに、自分の魔力や記憶を無くすこともできません。」
「へ〜」
「もっと他にありませんか?」
「えっとそうですね…」
少年達はとても好奇心が旺盛で先生も話のネタにかなり困っていた。
そんな平和な時が永遠に進むはずだった村に今、絶望が迫っていた。
「ホントにこんなことやって俺のやりたいことが見つかるのか?」
「我らが王の命ですから。きっと見つかります。」
まだ少し子供っぽさが残る青年とそれに仕える執事のような装いのおじさんが村の入り口に立っていた。
「はぁ〜、ダルいな〜」
そんなことばかり言って青年は何も行動しようとしない。
「あまり時間もありませんし、手短に終わらせましょう。」
執事がそう促すと青年はたちまち獣のような醜い姿に変わり、村の中心へ飛び出した。
「一瞬で終わらせる。」
「ちょ、それを使うと流石に被害が大きくなり過ぎます!」
「ちょうどいい!お前にはそろそろうんざりしてたんだよ!」
青年はそう言うと力を溜め始めた。
「なっ、なりません!そこまで特大の魔法は隣村まで飛んでいきます!」
「うるせぇ……よ!」
その瞬間青年は炎の特大魔法を撃ち、村の全てを焼き払った。人や家や草木、全てを。
「ちっ、王の子とは言えまだ16歳。所詮ガキだったか。」
流石の寛容そうな執事も呆れてそう愚痴りながら防御魔法を使った。
「無駄だぞ!」
すると青年は執事の方に炎を集中し始めた。
「な、お辞め下さい!うっ……ああぁぁぁぁぁぁ!」
執事の抵抗も虚しく、瞬く間に燃え尽きてしまった。
「はぁ、はぁ、結局何もねぇじゃねぇか」
そう言って青年は元の姿に戻り、全てが焼けた地に足を付けた。
「おい」
「ああ?」
学校にいた少年だ。
「なんだお前?」
「これやったのはお前か?」
その時の少年の顔には、悲しみと憎しみしか映っていなかった。
「ああ、そうだよ」
「殺してやる!」
殺意が足された少年の顔は青年を沼へと引きずり込んだ。
「これか……これだこれだ!俺が探し求めたもの!おい子供!この顔絶対覚えとけ!そのうち俺はまたお前を殺しにくる!その時にもその顔をみせてくれ!じゃあな!」
そう言って青年はその場から立ち去る。少年はその場に崩れ落ち、泣きじゃくった。全て焼けた村の中心で。
この日の出来事がきっかけで青年は道楽のために、少年は復讐のために再会を目指した。
時は流れて8年後
汽車が停まっている駅には青年と少し老いたおじさんがいた。
「もう行くんだな。お前にもやっと仕事が入ってよかった。」
「俺以外に強い魔法士はいっぱいいるしね。今まで本当にありがとうございました。おやっさん」
そんなことを話していると発車の汽笛が鳴る。
「それじゃあ、行ってきます。」
「ああ、しっかりやるんだぞ。ヒロ!」
そして汽車は出発と同時に車輪の軋む音を駅全体に響かせた。
「あれから8年、やっとだな。これがお前の復讐の第一歩だ。」
汽車は蒸気機関の音を轟かせながら建物の少なく静けさのある田舎町から、人通りが多くて少し騒々しい都会の街に出てきた。
「ついに来た。ミヤの街。やっぱ向こうとは違って人も、物も、空でさえ少し違く感じるな〜」
汽車は駅に着き無数の乗客が一斉に降りてくる。そんな中ヒロも新しい街へ足を付ける。
「あ、返せ!」
それは唐突に聞こえてきた。
「泥棒だー!」
「ん?あいつか…」
泥棒と指を指される男がヒロの真正面へ向かってきた。
「風よ…」
その言葉に続き、呪文を唱えるとヒロは泥棒に向かってその魔法を放ち、宙に浮かせて見事に捕獲した。
「いやー、君!ありがとう!助かったよ!」
かなりの大きな荷物を持った、旅人だろうか。帽子を深く被り顔がよく見えない。
「失礼ですけど、礼を言う時くらい顔を見せてくださいよ。」
「ああ、すまないね。何せ追われる身なのでね。」
そう言って旅人は帽子を取りなかなか濃い髭面で頭を下げた。
「それじゃあ失礼するよ。また。」
「またってなんだ?まあいいや、早いとこ行っちまおう。」
そう呟き、ヒロは一枚の紙に書かれた地図を頼りに見知らぬ街を1人歩き出した。
ミヤの街 中心部
「流石は中心部だな〜。なんでも揃いやがる。…げっ、ケシの実ってこんなに高く売られてるのか…流石都会だ。」
ケシの実はヒロの小さい頃からの大好物だが、売られているのは初めて見て、値段の高さになかなか驚いている。
寄り道もそこそこに昼下がりにはヒロは目的地に着いていた。
「やあ、新人くんじゃないか。初仕事、おめでとう。」
「いえ、マスターこそ仕事を探してくれてありがとうございました。」
ヒロの向かった先は、街の隅の方にある小さな喫茶店、というのは建前でここは裏の世界ではそこそこ有名な魔法士紹介所であった。
「さあ、座って。今回の仕事内容と依頼人のプロフィールだ。」
そう言ってマスターが仕事の書類を渡してくれた。
「ボディーガード…依頼人も若いな。これ、俺と対して変わらないんじゃないか?」
「24だってさ」
「ほへ〜、この人はなんか狙われるような職業なんですか?」
「そこは秘密だとさ。なかなか謎の多い男だよ。」
職業どころか住所や出身、親の名前まで不明というなかなかの謎の多さだ。
「狙われてる…か、さっきもそんな人いたな。しっかり逃げられてるだろうか…」
「ははっ、最近はぶっそうなもんだな。そうだ、今夜この人と面会してもらって、仕事は明日からだ。頑張れよ。」
「はい」
そして夜が更けて街中の建物の灯が灯り始めた。
「さあ、依頼人の登場だ。」
いつぞやの魔法放送に出てきた司会みたいな台詞だ。
すると目の前には写真で見た通りの若い銀髪の男がやって来た。
「どうも、今回はご依頼頂きありがとうございます。俺はヒロって言います。よろしくお願いします。」
とりあえず俺は初めての仕事なので丁寧に自己紹介してみた。
「初めまして。依頼主のカイです。と言っても僕からしたら既に一度会ってるけどね。」
なんだかちょっと意味不明なことを言っている。いったいいつの時代の口説き文句だ。
「やっぱり気付いてないか…この顔に見覚えはないかな?」
と言いながら顔を手で覆うようにすると次の瞬間なんだかつい最近見たような髭面が目の前に現れた。
「え…えっと…昼間のおじさん…ですよね?なんで若人なんかに化けてるんです?」
この時点で冷静なのは、魔法を知ってるからだ。だが、この世界には意外と魔法の存在を知らない人もいる。なんたって魔法種は今や絶滅危惧種みたいなもんだからな。魔法を知らない人がこの光景を見たらきっと気絶する。
「違う違う。髭面が偽の顔で、こっちが本当の顔。」
そう言って目の前にはまた、若い顔が戻ってきた。
そして、「変化魔法が得意なんだー」と言いながら沢山の顔を披露した。
「ちなみにここはプライバシーとかあると思うので答えなくてもいいんですけど、なぜ追われてるんです?」
「分からない」
は?と思わず口に出してしまいそうだったがなんとかこらえた。
「ええと…それはつまり?」
「話すと長いんだが、僕には1年前の記憶がない。そんな中、路頭に迷っていると、ある魔法士が僕を拾って育ててくれた。そしてどうやら僕には魔力があったらしく、なんとかここまで使いこなせるようになった。そして拾ってもらってから半年経つとなぜかある組織から追われるようになった。」
ここにきてやっと謎が多い理由がやっと分かった。記憶が無いだなんて、なんと不便な。
「なるほど…で、いつまであなたのボディーガードをすればいいですか?」
「記憶が戻るまで。」
そんな無茶な…記憶を無くすっていうと、何かの衝撃か、誰かの魔法だ。前者は、彼にとって衝撃的な事をすればなんとかなりそうだが、後者は術者がいないとどうにもならないというのに。
「マスター」
「なんだい」
「これって本当に初仕事ですか?」
「ああ、そうだよ。彼のご指名さ」
ん?指名?なんで俺なんだ?
「報酬は相応な額を払うつもりだよ。だからよろしく。」
その言葉が俺の思考を遮るように出てきたので「はい」と二つ返事をしてしまい、結局、何故俺を指名したのかを聞きそびれてしまった。
そんなところで面会は終わり、疲れて喫茶店の隣の寮へ行き、床に着くとすぐに深い眠りに落ちてしまった。おやっさんのところからミヤの街まで長旅だったからかな。
ミヤの街に来て初めての朝だ。俺が起きて、カウンターへ行くとマスターがもう喫茶店の支度を始めていた。
「おお、おはよう新人くん。よく眠れたかい。」
「はい、お陰様で」
なんとなくカウンターに腰かけると机には新聞が置いてあった。その新聞の記事の二面辺りには"魔法種襲撃事件から8年 たった一人の生き残りが故郷に手を合わせる"なんて書いてある。俺のことだ。一昨日、今や何も残されていない故郷へ行って手を合わせて来たところだ。ここまで大々的に報道されるとは思っていなかったが。
「君も大変だったね。もしかしたら、あの依頼主はそこに興味を持って君に依頼したんじゃ無いか?…なんてな。」
なるほど、そういう理由もあったりするのか。なんてこの時は考えたものだ。
でも本当の理由なんてものは、そんな易々とした軽い興味本位などではなく、もっと想像のつかないような、俺にとっては最悪なものだった。
はい、というわけで道楽と 復讐と 第1部 きっかけと理由と でした。
かなり自信があるせいか、ボリュームもマシマシです。この調子で最後まで持つかわかりませんが、頑張っていこうと思います。あ、今回は次回予告とかありません!てか、次回のこと全く決まってないのでできません!てなわけでまた次回!




