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序論 悪魔の始まり
街灯が要らない程、月は輝いていた。その光に照らされ、それは、姿を現す。山のように積まれた何かの上に、それは立っていた。血だらけの人間。顔には狐のお面がある。その頂点に立つそれの右手には、血がこびり付いた日本刀が握られているのだ。
「稜、大丈夫か?」
同じく、血塗れの日本刀を持った、18ぐらいの男の子が立っている。稜と呼んだ男の子は、現代人とは思えない服装だった。水色の袴を身にまとい、腰には鞘がぶら下がっている。
「清光、僕、人を………」
稜と呼ばれた男の子が刀を力無く離すと、稜の右胸に吸い込まれていったのだ。それと同時に、稜は膝から崩れ落ち、気を失って倒れ込んだ。
「稜。お前は初めてにしてはよくやった。でも、辛いのはこれからだ」
清光は稜を抱き抱え、姿を消してしまった。そして月に照らされていた狐達も、いつの間にか跡形も無く、消えていたのだ。