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生きることが嫌いな少女が生を謳歌するお話。  作者: 素振りをする素振り
生きることが嫌いな少女が終わりに向けて一年を始めるお話。
7/15

現実に捕らわれていては話が進まない

「良いのか? 内容も聞かずに決めてしまって。契約書をよく読まないと後で後悔するのは自分だぞ?」

「すみません、報酬が豪華すぎて・・・。福引きで一等ハワイ旅行を当てた気持ちになりました・・・」

「それは嬉しいことだな。だが俺は温泉が良い」

「あ、それは私も同じです。ハワイ旅行よりも温泉が好きです。心の洗濯って必要ですよね」

 死神さんと温泉は素敵、と言う話で盛り上がってしまった。

 温泉が好きなのはこの死神さんであって死神全体の話ではないのだろうけれど。

「良いか、よく聞けよ。手伝いの内容だ。無理だと思ったら断ってくれ。ただし、手伝った方がお前の為にはなるだろう」

「はい、耳の穴かっぽじってよく聞きます」

 私の発言が面白かったのか「よろしい」と笑うと死神さんは腕を少し上げ、人差し指を顔よりも少し上に上げる。

 あの方向に何かあるのか?、と振り返ろうとしたが死神さんの指先が蒼く淡く光り出し私はそれに注目した。

「耳の穴かっぽじって聞いてもらうと同時に、目ぇかっぽじってよく読めよ。

いや、目かっぽじったら何も見えないな」

 ハハッと笑う。この死神さんは笑いのツボが浅いらしい。

 死神なのに沢山笑うなんて、なんだかイメージと違う。


「まず、大切なことから伝えよう」

 言葉を発すると同時に蒼色の光で空間に文字を紡いでいく。

「何もしなければお前は一年後に死ぬ。一年後の今日だ。11月16日。

死因は事故死。不運にも居眠り運転のトラックにな。

お前に先ほど言った「死ねない」だがこれが理由だ。死ぬ日はもう決まっていて、それを早くに手に入れることはできない。これはルールだ。どうしようもないルールだ」

 一年後に死ぬ。

 驚いていい。泣いていい。気を失ってもいい。

 とんでもなく大きな、大切な、ショックなことを伝えられたのだろうが私は「へぇ・・・。一年後に・・・。何を運ぶトラックかな?」くらいにしか思わなかった。

 なんせ今すぐにでも死のうとしていた人間だ。未練も、やり残したこともない。明日提出のレポートはやり残しているけれど。

「そこで、だ。俺はお前に、染都願に、生きるチャンスをやる。

いや、お前の場合、死ぬチャンス・・・、かな?」

 ここで死神さんは「しまった・・・」といった顔をして手を止めた。

「今言葉にして気づいたが、これは「死にたくない」事前提の取引だ・・・。

お前の前だと完全に俺が不利であるし、取引する必要がないかもな・・・」

「面白い話なので取り敢えず続けてください。受けるか否かは私が判断します」

「面白いって・・・。素直なやつだ。まあ良い、それじゃあ続けるな。

これは後で説明をするが「俺の手伝い」をしてくれればなんと、お前の寿命を延ばそう。

一年後、悲しくも天に召されるはずのその魂、守ってやるよ。

勿論、その一日後に殺すようなことはしない。詳しくは俺が設定しているわけではないから知らないが、「長生き」のレベルまで生かしてやるよ」

「うん、聞いてわかりました。私受ける必要がないやつですね」

「その通り。最悪だ。手伝い内容まで一応聞くか?」

 私は「勿論、どうぞ」と先を促す。

 今の話の内容からわかる通り、私はこの話を受けるメリットが今のところ全くない。

 自殺志願者に「寿命が延びるよ!」なんてクリスマスにサンタさんからプレゼントをもらえたと思ったら参考書だった、くらいのがっかりプレゼントじゃあないか。

 それでも話を促す理由。

 ズバリ、最高に楽しいからだ。

 私は生きることは嫌いだがそれは「楽しいことがない」からでもある。

 「生きるのが好き」そう言えるほどの物を私はこの世界に持っていない。

 それをしている間は幸せをかみしめられる趣味も、その人と会っていると周りが見えなくなるような人も、その人の為に頑張りたいと思えるような人も、何一つ持っていない。

 けれどこの話からは直感で、何かを感じるのだ。

 「生きがい」になりそうな何かを。何より楽しそうだしね。楽しいことは大切。

 「手伝い内容だが、簡潔に言うと戦ってほしい。悪霊と」

 おぉっと、又も現実に捕らわれていては理解ができない存在が出現したぞ?

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