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生きることが嫌いな少女が生を謳歌するお話。  作者: 素振りをする素振り
生きることが嫌いな少女が終わりに向けて一年を始めるお話。
4/15

頭のおかしい人

「死…神…」

 私は図書館の玄関口においていた足を数歩、外へ向けて動かした。

 死神を名乗る男を見つめながら少しずつ…。

「どうした?もしかして俺が怖いのか…?今から「死ぬ」なんて相当に怖い事をしようとしているお前が…?」

 又も男は笑う。


 そうだ、私は、とても怖い。この人が、この存在が、とても怖い。

 まず死神について考えていこう。死神という存在について。概念について。

 アニメや漫画でお見かけするが多分日本よりも海外の方が身近な存在だろう。

 ここでいう「身近」は勿論側にいる事ではなく、物語などで目にする機会が多いことを指す。死神なんて恐ろしい存在が町中にあふれていたらそんな町さっさと焼き払った方が良い。最悪だ。

 何故最悪か?それは死神の性質、に起因する。

 私の思う死神、それはカード占いで最も引き当てたくない物、なんかではなく、「魂を狩りとる物」だ。

 生きている人間を、死んでいる人間へ、生者を亡者へと変えてしまう恐ろしい存在…。


「そうかそうか、君はそんな風に死神をねぇ…。現代だとライトノベルあたりによく登場でもするのかな?

わざわざ知らない人間に一から教えるなんて骨が折れる。

余談だけれど、この通り幽霊でないから足は透けていない、だから骨は本当に折れるよ。ポキッとね。接骨院のお世話にならないと」

「…とても面白いお話ですね」

「真顔で言われてもなあ…。説得力ないよ、ほら、笑って?」

「笑えませんよ…。何故なら…」

 何故なら…。


「この世の中に死神なんて物は存在しない!存在していたとしても霊的体験を一切してこなかった私に見えるはずがない!つまり!貴方は!」


「「自分を死神だと言う頭のおかしい人間だ逃げるのが吉!!!」」


 私は肺の空気を全部押し出しそう叫ぶと外へ向かって駆け出した!

 急げ急げ急げ!

 面倒な人間に関わるとロクな事がない!

 自殺云々の前に面倒ごとで日が暮れる!

 ここは惜しいが家に帰り、多少面倒になるかもしれないが携帯で色々調べて目的をたっせ「初対面の相手に向かって頭のおかしい人だ!、なんて酷くないかい?!」


 私は足を止めた、止めざるを得なかった。

 男が、私を遮るように立っていたからだ。

 男の顔はそのままの意味で目と鼻の先。今にも触れてしまいそうだ。実際、先ほど言葉を発した男の吐息が鼻にかかっている。

 元からここに立っていて、まるで私からこの男の懐に入り込んだように、当たり前のように男は立ちはだかっていて…。

「驚いた顔、しているね?」

 吐息が鼻にかかる。

 無臭。人間とは思えない程に、匂いがしない。存在していないように。存在などこの世には無いように。

 近くで見る男の顔はとても整っていた。

 少し垂れ目で何事も面白い、とでも言いたげに少しつり上がった口角、高い鼻。

 こんな場でなければ心が跳ねていたかもしれない。

 青春らしく、ドクン、と言う音が聞こえてこの男以外見えなくなるほどの熱い恋に落ちていたかもしれない。

 けれど今は早く音を叩く心臓は恐怖と驚愕によるものだし、落ちたのは恋でなく私のお尻だ。見事に腰が抜けて地面に盛大に尻餅をついた。

「あはは、大丈夫かい、少し驚かせすぎた…かな?

けれど話のはの時も始まっていないのに人を変人扱いして走り去ろうとする君にも、非があると俺は思うよ?」

 男の言葉が耳に入らない。

 何だったんだ今のは…。まるで人間でないような、絶対に人間にはできない、そう、言うなれば、死神ならばできるような、今の動きは…。

「おっ、少し信じようって気になった?

 大丈夫大丈夫、信じてもらえないのは毎回のことだ。実のところ一番骨が折れる作業はこれだよこれ。

今まで一切関わってこなかった物と関わるんだ、そりゃあ色々と必要なのかもしれないけれど魔法的な物でサクッと記憶書き換えとかできないのかな…」

 初めて私に語りかけたときよりも大分口調が崩れている。

 どうやら「かっこいいキャラ」でも作っていたようだ。

 なんだ、「人間らしい」ところもあるじゃあないか。

 私は顔を上げた。もう、怖くはない。

 …まあ、驚きは大分したけれども。心臓に悪い。

「お話、お聞きします。すみません、逃げようとして。突然のことに混乱してしまって。

死後の世界を望んでいたのに現実に捕らわれすぎていました」

 あははっ、と私が笑うのにつられてか彼も「あははっ」と笑う。

「さあ、話をしよう。悪いニュースを先に伝えてしまおうかな」

私の手を取り立たせると彼はコホン、と咳払いをし、格好をつけて言い放った。


「君は死ぬことができない」


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